第1話:「舞い降りた女神」
…親父が死んだ。ついひと月前の事だ。
俺の親父は考古学者だった。常に世界中を旅して渡り、帰ってくるのは一年に片手で数えるくらい。たまに帰ってきたかと思えば、怪しい発掘品やオーパーツを土産に渡される始末…はっきり言ってダメ親父の印象しかない。
しかし、そんなダメ親父でも、死んだと連絡が入ったときは悲しかった。
たった一人の息子を残して、親父は外国の遺跡発掘の調査の途中に落盤事故に遭い、そのまま帰らぬ人となった。
親父には兄弟も親戚もいない…故に俺を引き取ってくれる身内などいなかった。しかし、親父が死んだ後も、寂しいという気持ちには不思議とならなかった。きっと、親父の帰ってこない生活に慣れてしまっていたからだろう。
そんな親父の葬儀も終わって一段落し、ひと月ほど経ったある日、俺の家に小包が届いた。差出人は親父の研究グループの一人からだった。
包みを開くと、まず差出人が書いたと思われる手紙が入っていた。
『君のお父さんが自分にもしもの事があった時、君に渡してほしいと言われていた物だ』
手紙にはそう書かれていた。改めて届けてくれた物を見る。
「箱…?」
それは小さな箱だった。いや、おそらく親父が渡したかった物はこの中に入っているのだろう。
俺は蓋に手をかけ、ゆっくりと開ける。
「これって…カード?」
箱の中身はデュエルモンスターズのカードだった。箱をひっくり返して、掌の上にあけてみると、二枚のカードと一枚の紙切れが落ちてきた。
俺はまず、紙切れの方を手にとってみた。そこには親父の字で、こう書かれていた。
『某国を冒険中、私は精霊が宿るといわれているこのカードを発見した。だが精霊が出現するのは限られたデュエリストの手に渡った時のみと言われている。どうやら私はそれに値する人間ではないらしい…。お前になら、このカードが応えてくれるだろうと、私は信じている』
相変わらず、実の息子に宛てたとは思えないほどに堅苦しい文面の手紙を見て、俺は少し懐かしい気持ちになった。
そして改めて、カードの方を手にとってみた。最初は半信半疑だった。確かに俺も精霊の噂は聞いたことがあるが、それは所詮噂程度の物だと思っていた。
た紛い物を掴まされたんじゃないかと思い、まじまじとカードを眺めてみる…その時だ!
カッ!!
「うわっ…!?」
突然カードが光を放ち、俺は思わず握っていた二枚のカードを床に落とし、後ろに倒れ込んで腕で目を覆った。
光が止み、ゆっくりと目を開けてみると…。
「汝、世界の破滅を望む者か? 我が主よ…」
目の前には一人の女性が立っていた。
流れるような銀色の長髪…碧い瞳…そして手には赤いロッドを握っている。
「だ…誰…?」
面喰っている俺に対し、その女は静かな声で答える。
「我が名は『破滅の女神ルイン』。主のお呼びに与り、ここに顕現した」
これが俺と、破滅の女神ルインとの出会いだった…。
―――――第1話:「舞い降りた女神」―――――
「…どうしてこうなった」
今、自分のことを「破滅の女神」と名乗った謎の女性ルインは、居間でこの状況を頭の中で必死に整理している俺の前に対峙して正座している。
「え~とつまり…死んだ親父から送られてきたカードが実は本当に精霊の宿るカードで、あんたはそのカードに描かれている破滅の女神ルイン本人だっていうのか?」
「その通りだ、主よ」
「マジかよ…」
今まで親父から送られてきた物は、みんな紛い物か偽物ばかりだった。今回もきっとその類だと思っていたら…親父の奴、最後の最後でとんでもない物を置き土産に置いてきやがった。
「主よ」
「…ん?」
「主はもしかして、世界の破滅を望んで私を顕現させたわけではないのか?」
ルインは怪訝そうな顔をし、俺に訪ねてきた。
当然か…いきなり呼びだされてさぁ力を使おう!と思ったら単なる手違いで呼びだされたんだもんな…。
「いや、残念ながら…俺はこの世界を一度も破滅させようなんて思ったことはないし、あんたを呼ぶ気もなかった」
「では何故…?」
「こっちが聞きてぇよ…」
でもまぁ…呼んじまったもんは仕方ない。わざわざ呼んでおいて「帰って下さい」なんて言えないし、それにこの人……なかなか美人だし…。
「ん? 何か言ったか主?」
「い、いやなんでもない! まぁとりあえず、あんたが本当にカードの精霊だっていうなら何か精霊らしいことをしてみてくれ」
「精霊らしいこと…?」
ルインは首をかしげる。
「そうだ。あんたが普通の人間じゃないっていう証拠を見せてほしいんだ」
「ふむ…わかった」
そう言ってルインは立ち上がり、家の縁側の方に歩み寄っていく。
「…?」
なにをするつもりだろう?と疑問に思いつつ、その様子を見守る。ルインは縁側の戸を開け、庭に向けて手を持ったロッドを翳す。すると…。
「…ハッ!」
短い掛け声があがり、ロッドの先から火の玉が放たれ、庭に飾ってある灯篭に命中に、粉々に砕け散った。
「なっ…!?」
「どうだ主、これで満足か?」
若干誇らしげな顔で俺に語りかけるルイン。
「え…? あ…はい…すごい…ですね」
「こんなもの、私の力の一部にすぎない。その気になれば世界を一つ滅ぼすことも可能なのだ」
「…えっ!?」
今さらっと凄いこと言ったような…。
「なにはともあれ、これからよろしく頼むぞ、主」
呆然とする俺の前でルインはさらに誇らしげな顔をした。
「は、はい…」
軽い気持ちでルインを迎え入れたのだが…どうやらとんでもなくことになりそうだ…。
はい、というわけで皆さん、久し振りの方はお久しぶり、初めましての方は初めまして、ダルクスと申します!
今回私が書かせていただくのは遊戯王のオリジナル主人公とその精霊、破滅の女神ルインを題材としたデュエル戦記でございます。
この小説は以前にもにじファン様やいろんなサイトの方で書かせていただいていた作品なんですが、この度復活させることとなりました。
それでは皆さん、もしよろしければまた私めの作品にどうかお付き合いください。
また次回! ノシ