そんな時、ルインは主人公の父親が遺したダンボールの箱を見つける。
ダンボールの中身は大量のカード、主人公はそこで1枚の魔法カードを見つける。
そのカードとは…?
「ん~…どうすっかな~」
ある日、俺は学校の下校途中に物思いに耽っていた。それは俺のデッキの活用方法についてだ。
俺のデッキは現在、儀式モンスターである『破滅の女神ルイン』を中心とし、『ルイン』の能力を最大限に活かすためのサポートカード(主に儀式関連)と、あとは各種天使族と汎用系魔法・トラップカードで構築してある。
しかし、儀式関連のサポートカードに対して、デッキの要である儀式カードがあまりにも少なすぎるのである。それもその筈、俺のデッキに儀式魔法・モンスターは『破滅の女神ルイン』と『エンド・オブ・ザ・ワールド』しかない。
つまりは『ルイン』を召喚した後、または何らかの方法によって『ルイン』が除去されてしまった場合は、デッキに数多入っている儀式サポートのカードが腐ってしまう可能性があるのだ。
そんなわけで俺はデッキにもう一枚づつくらい儀式魔法・モンスターを入れようと考えているのだが…これが何が良いのかなかなか思いつかない。
家に帰る前にまでは考えておきたいと思っていたのだが…答えが出ぬうちに家の前にまで来てしまった。「ま、続きはデッキと相談しながら考えてみるか」と思い、俺は家のドアを開ける
「ただいま~」
「おかえりなさい、主」
―――――第10話「破滅と救世 ~Ruin or Messiah~」―――――
玄関に入ると、家のリビングからもうすっかり現代に馴染んだ破滅の女神が出てきた。
しかし、俺はすぐにルインが持っているある物に目がいった。
「何だそれ?」
「離れの…何か妙な部屋を掃除してたら見つけた。何か色々な物が置いてあった部屋なんだが…」
ルインは大きなダンボールを抱えている。
「離れの部屋? ……あぁ、そりゃ親父の蔵だな」
「主の父親の?」
「ああ、親父は自称考古学者で、昔は俺を放っておいて世界中旅してたから、よく変なガラクタがたくさん送られて来たんだ。そーいうのは置き場所に困るから、蔵に置いておいたってわけだ」
俺はふと、ルインが召喚されたときのことを思い出した。
今思えば、親父の遺産(?)から今の生活が始まったんだったなぁ、まぁ悪くはないが。
「なんだ、それではまるで私のカードが変な物みたいな言い方ではないか」
俺の話を聞いてルインがむぅっとふくれっ面をする。
「んな事ないって、もちろんルインは別さ。ルインが来てくれたおかげでデッキが強化できたし、普段の生活でも俺はとっても助かってるよ」
「…本当か?」
「ああ、本当だとも」
「ん、それならばいい♪」
俺の言葉に納得したのか、ルインは満足そうに笑みを零す。
まぁ後者はちょこっとだけ嘘が混じってるけどね…。
「にしても、何が入ってんだ?」
話を戻し、俺はルインが抱えているダンボールに手をとり、開けてみようとする。
「開けるのか?」
「まぁな」
俺はしゃがんで床に置いてあるダンボールを開け始める。だって、ここまでルインが運んできたんだしやっぱり中身気になるし…。
俺と同じくルインもしゃがみ、俺はダンボールを開け終え中身を見た。
「……なんじゃこりゃ?」
てっきり変な眼がある金色のアイテムや、古びた錬金術の本とかが出てくるのかと思っていたのだが、実際はかなり違う物が出てきた。
「これは…カード?」
そこにあったのはデュエルモンスターズのカードだった。
それも一枚や二枚ではない、何十枚、何百枚ものカードがダンボールいっぱいに敷き詰められていた。
「何故こんな数のカードがここにあるのだ…?」
「メモが入ってる…おい、こりゃ俺の親父の字だ!」
「何て書いてあるんだ?」
「ちょっと待ってろ…なになに?」
メモにはこうあった。
『カードの精霊という存在に興味を持った私は、各地を転々としながらその土地で精霊が宿ると噂されるカードを片っ端からかき集めた。しかし、どれもこれも紛い物だったらしい…いや、単に私にその素質が無いだけなのかも…』
あれ? なんかデジャヴが…。
「要するに主の父親殿は騙されたというわけだな」
「しょっちゅうだよ…安易にオカルトなことを信じるなっていつも言ってたのに…その度に真面目な顔で『私は浪漫を探しているのだ(キリッ』って言い返されたよ…」
「しかしよかったではないかカードで。これはガラクタではないだろ?」
「しかしなぁ…『闇の芸術家』に『モリンフェン』…『レオ・ウィザード』と…どれもこれも使えそうなカードは…ん?」
その時、俺はとある一枚のカードに目が行った。
ダンボールの中のカードはどれもこれもモンスターカードなのに、一枚だけ緑色のカードが…そう、魔法カードがあったのだ。
「なんだ…? 一枚だけ魔法カードが…」
俺はそのカードを手にとって見てみる。
カード名は『救世の儀式』…そしてカードの右上のアイコンにはその名を示す通り儀式のアイコンが描かれていた。
「儀式魔法? ということは対になる儀式モンスターがいる筈だが…」
ダンボール内のカードを漁っていると、一枚だけ青い縁をしたカードが目に入った。
青い縁は儀式モンスターの証、そのカードを手に取る。しかし…。
カッ!!
「うおっ!?」
「きゃあぁっ!」
俺が触れた瞬間、カードは同時に眩く光りだし、それに驚いて俺とルインは目を瞑り、思わずカードを放り投げてしまった。
白く眩しい光はだんだんと治まっていき、ようやく目を開けることができた。
だがそれと同時に、俺は目の光景に思いっきり目を見開いて驚いた。
「お呼びでしょうか?我が主様」
「なっ……」
…出た、また出た、またやっちまった…そんな言葉が俺の脳裏をループしている。
ルインもその存在に気づいたのか、俺の背後からその人物を恐る恐る覗いている。
驚きの俺とルインの目の前で、跪くそいつは、長い金髪に金と青色の大きな帽子(?)に同色の服。
片手には変な杖を持っており、静かで穏やかな声。
こっちを見上げると、優しそうに微笑んだ表情のままこちらを見つめていた。
顔つきや、スラッとした体つき、そして膨らんでいる胸を見て女性だとわかった。
「え~っと…どなたですか?」
とりあえず混乱している頭を静めて、俺はゆっくりをそいつに聞くと微笑んだ表情のまま女性は口を開く。
「わたくし、このカードに宿りし精霊で救世の美神、〝ノースウェムコ″と申します」
「ノース…ウェムコ…?」
「主? これはいったい…」
俺の後ろにいるルインも不思議そうな口調で尋ねてくる。
この時、俺は全てを理解したような気がした。ようはルインと同じく、カードに宿っていた精霊を俺がまた呼んでしまったという事なんだろう。
「…まぁ、こんなところで立ち話もなんだし」
とりあえず、ルインとノースウェムコをリビングに連れて行った。
………
……
…
「なるほど」
とりあえずリビングでお茶を啜りながら俺はノースウェムコから色々と聞いた。
「つまり、あんたは世界の終わりが来たときのために、世界を救う主を外敵から守護するための存在だと?」
「はい」
「……はぁ」
「お茶のおかわりはどうする主?」
「もらう…」
ルインがお茶を入れ直しに行くと、思わずため息が出た。
「主様、どうかなさいましたか?」
「何でもない…」
世界を救う主? まさかそれが俺だとでも?
冗談じゃねぇよ全く…、だいたい世界の危機なんて、起こるわけないだろ…。
「そうですか。…それでしたら主様、わたくしから一つお聞きしたいことがあるのですが」
「何だ?」
「あの女は何者ですか?」
ノースウェムコは静かに俺に聞くと、奥でお茶を入れているルインを指差していた。
“あの女”とはルインのことらしい。それについて俺は丁寧に説明した。
「お前と同じカードの精霊の、破滅の女神のルインだ」
「破滅…? ま、まさか! あいつは主様を破滅に導こうとする悪い女神!?」
「…は?」
ノースウェムコが突然とんでもない事を言って立ちあがった。
「そ、それは違…―!」
「主様に仇なす者は、このわたくしが排除します!」
ノースウェムコの問いに弁解する余地もなく、彼女は何かとてつもなく物騒なことを口にして、テーブルを飛び越えてルインのいる台所に駆けていく。
「な、なんだいきなり!?」
「黙りなさい女邪神! 主様を破滅に導こうなどど考える不届き者はこのわたくし、救世の美神ノースウェムコが成敗いたします!」
「お前は一体なにを…! あ、主! これはいった…―!」
ルインの声が聞こえた瞬間、ノースウェムコが杖から放った攻撃により、台所は閃光に包まれた。そして恐らくルインもそれに応戦したんだろう、直後にすんごい爆発音が響いた。
「主様はわたくし守ります!!」
「私は主に何も悪い事はしていないぞ!?」
二人の口論の中、閃光と爆発が繰り返される。
「おいお前らやめろ!! 家を壊す気か!?」
俺の怒号も虚しく二人は戦闘を止めない。もはやこれまでかと家の崩壊を覚悟したが、ルインVSノースウェムコの争いはあっさりとケリがついた。
「これでトドメ…―っ!? しまった…っ! 久しぶりだから魔力が…!」
ふと爆発音が止まった。
粉塵が止み、俺は恐る恐る台所の方を覗くと、台所は見るも無残な姿と化していた。しかし、ルインは頬が少し汚れている程度だったので確認すると安心。
そしてノースウェムコの方を見ると、力弱く床にペタンと座りこんでいた。
「…どうしたんだ?」
「急にノースウェムコの動きが止まったと思ったら、あのようになってしまった」
ルインも驚きが混じっている口調で俺に説明している。
俺は彼女の顔を覗き込むと、それと同時に。
ぐ~
「…///」
突然腹の虫が室内に響渡った。それと同時にノースウェムコの頬が赤く染まり、恥ずかしそうに視線をそらす。
「…主様、お恥ずかしいのですがお願いがございます…」
「はい?」
「お腹が空きました…。な、何か食べる物を…―」
バタッ
そう言うとノースウェムコは気を失い、俺の腕に倒れこんでしまった。
「何かと言われても台所はこの有様だしな…」
「………よし、ルイン、寿司食うぞ」
「す、寿司ぃ!? 正気か主!?」
「ああ、もうヤケだ! こーいう時は寿司でも食う! 寿司だけじゃない! ピザにカツ丼にラーメン! とにかく出前だ出前!」
なんかもうどうでもよくなってきたので、半ばヤケになりながら俺は電話で片っ端から出前の注文をした。
………
……
…
「ふぅ…ご馳走様でした♪」
食事を終え満腹になったノースウェムコはナプキンで口元を拭うと再び元気を取り戻したようだった。
「あんなに用意したのにまさか全部食べるとはな…」
もちろん俺とルインもいくらかは食べたのだが、山のように用意した食事を短時間で平らげたノースウェムコの食欲に、俺達はただただ驚かされた。
「ルインさん、先程はごめんなさい…わたくし、あなたが主様に害をなす存在だと勘違いして…」
「私はもう気にしていない。だからお前も気にするな」
どうやら二人は仲直りしたようだった。
「まぁなんだ、呼び出しちまったからには仕方ない。これからはよろしくな、ノースウェムコ」
「はい。あ、そうだ、主様。これを渡しておきます」
ノースウェムコが俺に渡してきたのは二枚のカードだった。
「そのカードは私の…―」
「あー言わなくてもわかる。〝力の一部だから大切にしてほしい″って言うんだろ?」
「はい♪」
まぁ、そういうことだ。
儀式モンスターの『救世の美神ノースウェムコ』、それとノースウェムコ降臨のために儀式魔法カード、『救世の儀式』。
どうやら俺のデッキに対する悩みはこの二枚のカードのお陰で解決しそうだな。
「それから、私のことは愛着を持ってどうぞ〝ウェムコ″とお呼びください。本名は少し長いので…」
「ああわかった。よろしくなウェムコ」
「はい♪ ルインさんも、よろしくお願いしますね♪」
「うむ。共に主に仕える身として、こちらからもよろしく頼む」
破滅に救世か…。
正直よくわからないが、今は消し炭となった台所を修復するのにどれだけの金額が掛かるかが心配だった。
………
……
…
―風呂前・脱衣場―
「あの…ウェムコさん?」
「はい、なんでしょうか?」
「俺の身を守るのはわかったけど風呂にまで付いて来なくていいからね?」
「そういうわけにはまいりません!全ての装備を解除する入浴時こそが特に危険なのです! ですので、わたくしのことはどうかお気にせずに」
「いや…気になるから」
「では、わたくしも御一緒に入れば問題ありませんね?」
「おおありだ! だ、だからそうじゃなくて…―!」
「なんだウェムコ、主と風呂に入るのか? ウェムコばかりずるいぞ、私も主と一緒に入る」
「ええい! 話をややこしくするな!」
どうやらウェムコもまた、ルイン同様になんか一部現代の常識に欠けているということが判明した…。
というわけで、今回から新たに救世の美神ノースウェムコさんが登場しました。
長らく日常回でしたが、次々回からまたデュエルをやりますので、その時にウェムコさん初使用という形になります!
お楽しみに!