遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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加護アリアは一人自室で悶々としていた。
というのも、最近自分が気になっている男性に姉と名乗る女性が出現し、どうしたものかと思っているためである。
考えているだけでは始まらないので、外に出て新発売のカードを買いに行くことに。


第11話:「加護アリアの憂鬱」

「はぁ~あ…」

 

休日の午後、私、加護アリアは勉強机にもたれかかって項垂れていた。

というのも、私には最近気になっている人がいる…。いや、最近というよりかはずっと昔からだったんだけど、その気持ちに気付いたのが最近というか…。

しかも私は、普段元気な女の子キャラで通っているけど…一緒に昼食に誘ったり、一緒に帰ろうと誘うこともできないヘタレなのだ。昔は…小学生くらいの頃はよく一緒にいたのになぁ…。

 

でも…。

 

今までは友達として接しているだけで、私は満足だった。しかし、最近になって気になることが起きた…。

その人の姉という人が現れ、今はその人と二人っきりで暮らしているらしい。

それも超絶美人。でも腹違いとはいえ、一応姉弟なんだから間違いなんて起こらないとは思うけど…それでもやっぱり気になる。

あ~あ…どうしたらいいんだろ…。

 

「…あ、そうだ。そう言えば今日は新しいパックの発売日だったんだ!」

 

私はふと、今日がデュエルモンスターズの新パックの発売日だったことを思い出した。早く買わないと売り切れてしまう…。

今は悩みのことは少し忘れて、気分転換も兼ねて私はカードを買いに家を出た。

 

 

 

 

 

―――――第11話「加護アリアの憂鬱」―――――

 

 

 

 

 

「ルインさん…主様は先ほどから机に向かって黙々と何をしているのですか?」ヒソヒソ

 

「さぁ…だが『絶対に騒ぐな』と言っていたからよほど大事なことなんだろが…」ヒソヒソ

 

「よしできたっ!!」

 

「「…!」」ビクッ

 

俺はずっと机に向かってデッキの調整をしていたが、今しがたようやく作業が終わり、思わず大きな声を出した。

 

「ん? どうしたんだ二人とも?」

 

「あ、主こそ…急に大きな声を出すから」

 

「ビックリしてしまいましたわ」

 

どうやら俺の声で二人を驚かせてしまったらしい。

 

「そうか? すまんすまん」

 

「で、主様。先ほどからずっと机に向かって何をしていたのですか?」

 

「デッキの調整だよ。ほら、今回ウェムコのカードを新たに入れたから、それと相性の良いカードもいくつか入れたから、それの調整をしてたんだよ」

 

俺は二人に完成したデッキを見せながら言った。

 

「そうだったんですか」

 

「それで、デッキの調整は終わったのか?」

 

「一応はな。でもまだ実戦では使ってないからどんな感じになるのかはわからないけど。だからこれからちょっと外に行ってくる」

 

俺は組みあがったデッキとデュエルディスクを鞄の中に入れ、外出する準備をする。

 

「なんだ、どこに行くんだ?」

 

「実戦ということは…デュエルをしに行かれるのですか?」

 

「そうだ。これからちょっとカードショップで大会が開かれるんだ。それに行って、自分のデッキを試してくるよ」

 

「かぁどしょっぷ?」

 

「主様、そこはどのような場所なのですか?」

 

…そうか、こいつらはカードショップを知らないんだったな。

 

「カードショップってのは、その名の通りカードを専門的に取り扱って、販売や買い取りを行う店のことだ。場所によっては大会を開く場所もある。いろいろなデュエリストが集まるから、デュエリスト同士の交流を深めやすいんだよ」

 

「なるほど、確かにその場所ならば誰かしらデュエルする相手がいるということだな」

 

「そういうこと。じゃ、行ってくる」

 

俺の説明で納得したルインとウェムコを尻目に、俺は外に出ようと部屋のドアノブに手をかけた。しかし、

 

「待ってくれ主、私も行きたい」

 

「…え?」

 

「せっかく主が休日だというのにまた留守番されるのもつまらない。たまには外に行ってみたい!」

 

「わたくしも! 主様をお一人で外に行かせるわけには参りません! いつ何時、どのような危険があるかわかりませんから!」

 

と来たもんだ…。

まぁ、ある程度はこう言いだすだろうなと予想はしてたけどな。

 

「わかったわかった、お前らには負けたよ。その代わり、きちんとこの世界の服来てけよ」

 

「わかった!」

 

「わかりましたわ」

 

うんうん、せめて外に出るときくらいは普通の格好に…―

 

「おっでかっけ♪ おっでかっけ♪」ぬぎぬぎ

 

「あら? 主様、どうかなさいましたか?」ぬぎぬぎ

 

「…お、お前ら……ここで着替えるなー!!」

 

………

……

 

「…はぁ。全く、出かける前から疲れたぜ…」

 

「まぁまぁ、別に良いではないか。いちいち着替えくらいで気にしないぞ? 私は」

 

「俺は気にするの!」

 

そんなこんなでルインとウェムコをそれぞれ自分達の部屋で着替えさせた後、俺達は件のカードショップへと向かっていた。

 

「うふふ♪ やっぱり主様もそういうところを気にするんですね♪」

 

「俺だって男だ、気にするに決まっているだろ」

 

「では私達二人を連れてお店の中に入ってしまったら、きっと誤解されてしまうかもしれませんね♪」

 

何が楽しいのかよくわからないが…ウェムコは嬉しそうに微笑む。

 

「それについてなんだがウェムコ、俺とお前達との関係を聞かれたらとりあえず 姉弟(きょうだい )ということにしておいてくれ」

 

「主様…いえ、弟君がそういうのであれば♪」

 

「ありがとう。ルインも、いつも通りたのむぞ」

 

「心得た。ある…弟よ」

 

「よしよし。…おっと、言ってるうちに着いたな。ここだ」

 

細い路地裏を抜けると、公園のトイレ裏に出る。

その正面に立つ建物が、俺の行きつけのカードショップ、『 空想美楚(くうそうみそ )キングダム』だ。

 

カランカラン

「こんちわぁ」

 

「よう、久しぶりだな」

 

店の中に入り、声をかけると奥の方から青いツナギを着たイイ男が答え、カウンターの前まで出てくる。

 

「お久しぶりです、阿部っち店長」

 

「よしばらくだな。さっそくで悪いがや ら な い か」

 

「え…なにそれは…」(ドン引き)

 

「遠慮しときます。デュエルで阿部さんに勝てる気がしませんから」

 

「そうかい? そりゃ残念だ♪」

 

「な、なんだ、デュエルの話だったのか」

 

先ほどドン引きしていたルインが安心するかのように呟く。

…一体なんのことだと思ってたんだ…?

 

「そういやそこの二人の美人さんは誰だい?」

 

阿部さんは俺の後ろにいるルインとウェムコを指さした。

 

「あぁ、俺の姉のルインとウェムコです」

 

「初めまして♪」

 

「いつも弟がお世話になっている」

 

「ん、よろしく。というか…お前姉なんていたのか?」

 

「えぇ…腹違いですけどね」

 

「なるほど、道理で似てないわけだ」

 

そう言って阿部さんははっはっはっと笑った。

 

「俺はこの店のオーナーの阿部だ。狭いところだが、まぁゆっくりしていってくれ」

 

と言って阿部さんはまた店の奥に引っ込んでいった。

 

「ここがカードショップか…本当にいろいろなカードが並んでいるな」

 

「カードもいろいろ種類があるんですのね…中にはこんな高価なカードまで」

 

ルインとウェムコはショーケースの中に飾られたカードをキョロキョロと見回す。

 

「あんまし店の物はいじるなよ。じゃあ俺は奥のデュエルスペースに行ってくるから、お前らはここで大人しくカード見てろよ?」

 

「うむ、わかった」

 

ルインとウェムコをその場に残し、俺は店の奥にあるデュエルスペースを覗きに行った。

 

「どうもっス」

 

「おう、久しぶり」

 

「元気してた?」

 

デュエルスペースに行くと、顔馴染みのデュエリストが数名、俺に気付いて挨拶をしてくれた。名も知らぬデュエリストだが、おそらくそれは向こうも同じ。俺達にとって、デュエルという共通点さえあればそれはもう仲間だった。

 

 

 

「あら、アンタ来たの?」

 

 

 

げ…この声は…。

 

「こ…小日向、お前もここに来てたのか…?」

 

他のデュエリストに交じって俺に声をかけてきた女性デュエリスト。

黒髪で短髪、ツリ目なこいつはアリアの友人で俺のクラスメイトの“小日向星華”だ。

 

「なによ、来ちゃいけないの?」

 

「い、いや…今までここでお前の顔を見たこと無かったからちょっと意外だなって思っただけだよ」

 

ぶっちゃけた話、俺は小日向のことが苦手だった。

こいつは自分の容姿がそこそこ美人だということをいいことに、自分に対して優しく接してくる男どもに対してだけいい顔をし、男にいろいろと貢がせるのだ。で、こいつの腹の中を知っている男(例えば俺みたいな)に対してはというと…。

 

「アンタも今日の大会出んの?」

 

「まぁな。そう言うお前は出るのか?」

 

「ん~…出ようかとは思ってたけど、アンタが出るならやめとこうかしら」

 

「なんだよそれ…」

 

「アンタとデュエルするとテンション下がるのよね~。まぁ私は見学させてもらうわ」

 

「…好きにしろよ」

 

とまぁこんな感じに、そういう男に対しては極端に冷たくなるのだ。

…まぁ、俺はこいつのことなんかなんとも思ってないし、それはこいつも同じ事なんだから別にどうでもいいんだけどな。

 

「星華ちゃ~ん♪ 僕とデュエルしよ~♪」

 

「は~い♪ …じゃあね」

 

そう言うと小日向は自分を待つデュエリストの元に駆け寄って行った。

 

「やれやれ…俺も大会が始まるまで、フリーで誰かとデュエルしてるかな」

 

俺も対戦相手を探すことにした。

 

………

……

 

「はぁ~…まいったなぁ…どこにも売ってないや…」

 

カードを買うために家を出て、コンビニやデパートなど、カードが売ってそうなお店は片っ端から見てきたけど…どこも新発売のカードは売り切れだった。

で、カードを売っているところを探して町中を駆けまわってたんだけど…気が付くと。

 

「あ…あれ…? ここ……どこ…?」

 

いつの間にか私は見知らぬ土地の見知らぬ路地裏にいた。どうやらカードを売ってるところを探し歩いてて、見慣れないところにまで来ちゃったみたい…。

 

「ん…? これってもしかして…私、迷子ってやつ…?」

 

………。

 

「…ま、まっさかぁ~♪ 第一私もう高校生なんだから迷子だなんて…―」

 

まるで自分自身に言い聞かせるかのように独り言を呟く。

…うん、本当はわかってる…何歳になろうと迷子は迷子なんだよね…。

 

「と、とりあえずここを出て、誰かに道を聞いて…―…って、あれ?」

 

誰かに道を聞こうと、この路地裏を抜けたとき、目の前に変なお店が立っていた。

 

「ここ…って?」

 

……

………

 

「よ~し、それじゃ人数もあらかた集まったところで、今日の大会を始めるか~」

 

阿部さんがデュエルスペースにいる俺達に呼びかける。気が付くと、確かに結構な人数の参加者が集まっていて、大会を始めるには十分な人数だった。

当然俺も大会に出場するため、参加名簿に名前を書こうと大会参加者達の列に並んでいた。

…と、その時、カランカランッと店のドアにくくり付けられている鐘が鳴り、誰かが入ってきた。

 

「いらっしゃーい」

 

阿部さんが名簿に名前を書きながら声をかけた。

誰もが「このタイミングで一体誰が入ってきたのだろう?」という顔をしながら、入口の方を見る。俺も釣られて覗いてみた。

 

「…あれ? アリア?」

 

「え…? ふぇえ!? なんでこんなところにいるの!?」

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

店の中に入ってきたのは…間違いない、幼馴染の加護アリアだった。

 

「もしかして…お前もここの大会に出るつもりなのか?」

 

「大会…って?」

 

「お前…もしかしてここをカードショップだと知らずに入ってきたのか?」

 

「カードショップ…? ここが?」

 

そう言ってアリアは店内をぐるぐると見回す。

…どうやら、本当にカードショップと知らずに入ってきたらしい。

 

「そう、俺のカードショップさ。もしかして…二人は知り合いなのか?」

 

「そうです。阿部さん、こいつは俺の幼馴染の加護アリア。アリア、この人はこのショップのオーナーの阿部さんだ」

 

「ど、どうも!」

 

「よろしくな。ところで、君も様子を見る限りデュエリストらしいな。どうだろう? 今日の大会、出 て み な い か」

 

「え!? でも私…カードショップの大会なんて出たことないから…」

 

そう言えばアリアは、デュエルモンスターズは俺と同じくらい長くやっているのにまだショップの大会には出たことが無いんだったよな。

 

「どうかされましたか主様?」

 

「おや? お前は…」

 

と、アリアが来たことに気が付いたらしく、今度はウェムコとルインが寄ってきた。

 

「あ、どうもお姉さん! …って、増えてる!?」

 

アリアはルインを見て、次にウェムコを見て、かなり驚いたという表情をした。

しまったなぁ…まさかここにアリアが来るなんて思わなかったから…。

仕方ない、ここは嘘も方便ということわざに則っていつもの誤魔化しで…。

 

「あぁ…えっと…ルインのことは知ってるよな? こっちの金髪の人は俺の…二人目の姉のウェムコだ。ウェムコ、こっちは俺の幼馴染の加護アリア」

 

「まぁ♪ ある…弟君の御学友さんでしたのね♪ わたくしはウェムコと申します。よろしくね、アリアちゃん♪」

 

「は…はい! どうも! (ルインさんも綺麗な人だけど…ウェムコさんも負けず劣らず綺麗な人だなぁ…金髪だし…背高いし…)」

 

ウェムコとの挨拶を交わすと、アリアは何故だかいつもの元気な表情を曇らせる。

と、その時。

 

「あら? アリアじゃない!」

 

「え? …あ! 星華ちゃんまで!?」

 

「奇遇ね、こんなところで」

 

今度は小日向がアリアの存在に気が付き、デュエルスペースの方から出てきた。

この二人はクラスでも親友同士だからな。

 

「アリアも大会出るためにここに来たの?」

 

「わ…私は別にそういうつもりで来たわけじゃないんだけど…」

 

「アリアが出るんなら、私も出てみようかな♪ アリアとの本気のデュエルも随分久々だし」

 

「え? 星華ちゃんも出るの!?」

 

「あれ…? お前さっき出ないって言わなかったっけ?」

 

確かさっき、俺が出るなら出ないとかなんとか言ってたよな…。

 

「なによ! アリアが出るから私も出るの! 悪い!?」

 

「い、いや…別にいいけど…。でも肝心のアリアの意見も…―」

 

「う…うん、わかった! 私も出てみる!」

 

「ほんとか? アリア、嫌なら無理しなくていいんだぞ?」

 

「いいの。考えてみれば私、デパートの大会とかそういう小さな規模でやる大会にはちょこっと出てたけど、こういうカードショップで本格的にやる大会はまだやったことがなかったの。だからいい経験になると思うから、出てみる♪」

 

「そ、そうか? ならいいんだが…」

 

やっぱりアリアもデュエリストってことなのかな。他の仲間がデュエルしてるのに、自分だけ大人しく見てるなんてつまんないことできるはずないもんな。

 

(本当はこの大会で、何かのきっかけができればいいな…なんて思ってたりもするんだけどね♪)

 

「ん? アリア、なんか言ったか?」

 

「な、なんでもないよなんでも! アハハ…」

 

なんか言ったような気がしたんだが…気のせいだったかな?

 

「よ~し、じゃあ新たに2人追加…っと。あ、ちなみに今日の大会はいつもの大会とは少し違うから注意しろよ~」

 

「いつもと違う…? 何が違うんですか?」

 

「それは後で説明する。よし、じゃあまずは対戦者をランダムに決めるぞ~」

 

阿部っち店長が対戦者を発表するらしく、参加者たちがゾロゾロと集まってきた。

自分の対戦相手が誰なのか、聞き洩らすわけにはいかないからな。

だが俺は相手が誰だろうと、全力でデュエルするだけさ!




今回の話は当初、アリアちゃん視点がメインの話にするつもりだったんですが、結局主人公の視点が多くなってしまいましたw

前回のウェムコさんに引き続き、新たにキャラが2名登場!
阿部っち店長はまんまあの阿部さんがモデルですw
もう一人の小日向星華は、響先生と同じく漫画版GXのオリジナルキャラです。
個人的には結構好きなキャラなのに、漫画版GX最終巻では一人だけキャラ紹介がハブられていたりとちょっと不遇…。
一巻だけに登場した龍牙先生は出てたのに…カイザー海馬ですらあったのに…。

次回からまたデュエル回に突入します。
大会なのでしばらく続きます。お楽しみに!
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