遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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激闘を繰り広げるアリアとのデュエルに、自らのデッキのエースである『破滅の女神ルイン』を奪われてしまう。
果たして自分と対峙する本気のアリアに、勝てる手段はあるのか?


第16話:「破滅だけでも、救世だけでも」

「え…なに……?」

 

「…アリア、さっきから様子がおかしいみたいだけど、大丈夫か?」

 

「う、ううん! 大丈夫大丈夫! 私のターン!」

 

またアリアの様子が一瞬おかしかったような気がするが…すぐにいつもの様子に戻った。

なんなんだ…? この妙な胸騒ぎは…?

 

 

 

 

 

―――――第16話:「破滅だけでも、救世だけでも」―――――

 

 

 

 

 

「(さっきから私の頭の中で響く声…あの声は一体何なの…?) …私は、『甲虫装機ホッパー』を召喚!」

 

【甲虫装機ホッパー】☆4 闇 昆虫族 ATK/1700 DEF/1400

 

腰に二本の槍を携えたバッタを模したモンスターが出現する。

 

「いくよ…バトル! まずは『破滅の女神ルイン』で裏守備モンスターを攻撃!」

 

プラネイト・キャプチャーからまた電磁波が放出されると、『ルイン』が自分の意思とは逆に腕を上げ、俺の守備モンスターにロッドを向ける。

 

 

 

「この攻撃が通れば、効果によって二度目の攻撃が繰り出され、主は直接攻撃を受けることになってしまう…」

 

「そうなればおしまいですわ!」

 

 

 

「いくよ! 破滅への序曲、≪エンド・オブ・ハルファス≫!! えへへ♪ 実は一回言ってみたかったんだ♪」

 

ロッドの先に魔力が溜まり、今にも攻撃が放たる…この時だ!

 

「そうはさせない! リバースカードオープン! 『デモンズ・チェーン』!!」

 

「え…!?」

 

「このカードはモンスター1体を対象にし、対象にしたモンスターの攻撃及び効果の発動を封じる永続トラップだ! 俺が対象にとるのはもちろん…『破滅の女神ルイン』!!」

 

表側になった『デモンズ・チェーン』から鎖が放たれ、その鎖は『ルイン』の身体に巻き付き、動きを封じる。

…すまない『ルイン』、しばらくの間だから辛抱しててくれ…。

 

「これで攻撃はできまい! アリア!」

 

「うぅっ…でもまだまだ! 私には『ホッパー』が残ってる! いっけぇ『ホッパー』! 裏守備モンスターに攻撃! ≪ホッピング・ランス・パイル≫!!」

 

『ホッパー』が羽根を開き、上空へ跳ぶと両手で槍を構え、そのまま俺の裏守備モンスターに振り下ろし、槍で貫く。

 

「やった! …っ!?」

 

と、次の瞬間、攻撃され、裏から表になった俺のモンスターが突然アリアの手札に飛び付き、そのカードをもしゃもしゃと食べてしまった。

 

「な、なにこれ!?」

 

「驚くこたぁない。お前が攻撃したモンスターが…この『メタモルポット』だっただけの話さ」

 

「め…『メタモルポット』って確か…!」

 

「そう、『メタモルポット』が表になったとき、互いは手札を全て捨て、その後デッキからカードを5枚ドローする。お前は手札を1枚持っていたからそれを捨て、5枚ドローするが、生憎俺には手札がない。よって無条件でカードを5枚ドローすることができる!」

 

【メタモルポット】☆2 地 岩石族 ATK/700 DEF/600

 

アリアの手札のカードを食べた後、『メタモルポット』は消滅する。

 

「な、なんて事…まさかこんな方法で手札を増強してくるなんて…」

 

「〝こんな方法で″っていうのはお互い様だな」

 

俺とアリアはデッキから新たに5枚のカードをドローする。

全く…俺もお前も驚かされてばかりだな。

 

「うん。でもまだ油断するのは早いよ、手札が5枚に増えたのは私も同じ…そして手札が増えたおかげでまたこんなコンボを使うことができる」

 

…何をするつもりだ?

 

「私は『甲虫装機ホッパー』の効果発動! 手札から『甲虫装機ホーネット』を装備する! ≪ゼクト・イークイップ≫!!」

 

『ホッパー』の槍が消え、代わりに右腕にパイルバンカーが装着される。

 

甲虫装機ホッパー:ATK/1700→2200 DEF/1400→1600 ☆4→6

 

「『ホーネット』をドローしていたのか…!」

 

「さらに手札から『甲虫装機ギガウィービル』を『ホッパー』に装備! このカードを装備したモンスターの元々の守備力は2600になる!」

 

『ホッパー』の背中に巨大な翼が装着される。

 

甲虫装機ホッパー:DEF/1600→2800

 

 

 

「ん? 確か『甲虫装機』達の≪ゼクト・イークイップ≫の効果は1ターンに一度だけではないのか? 何故2体も『甲虫装機』を装備できるんだ?」

 

「そうですわねぇ…たしかさっきのデュエルでも、アリアさんは『ギガマンティス』を装備してましたが…」

 

「あぁ、それは『ギガウィービル』や『ギガマンティス』の装備は『ギガウィービル』、『ギガマンティス』自身の効果で装備できるからさ。このお陰でフィールドにいる『甲虫装機』は自身の効果を使わず、手軽にパワーアップができるのさ」

 

阿部さんがルインとウェムコに説明する。

 

「なるほど、そういうわけだったのか」

 

「まぁそいつらが墓地にいる場合はフィールドの『甲虫装機』が効果を発動しないと装備できないがな」

 

「そう言えばアリアさん、さっき『センチピード』の効果で『ギガマンティス』をデッキから手札に加えてましたよね」

 

「そしてその『ギガマンティス』は『メタモルポット』の効果で墓地にいる…」

 

「「ということは…?」」

 

 

 

「そして私は『ホーネット』の効果発動! 装備されているこのカードを墓地に送り、選択したカード1枚を破壊する!」

 

俺のフィールドにあるのは『デモンズ・チェーン』のみ…だがこの状況で『デモンズ・チェーン』を破壊するのか…?

…まさか!

 

「私は…『ギガウィービル』を破壊!」

 

『ホッパー』は自身の翼にパイルバンカーを放つと、翼は消失し、攻守とレベルは元の数値に戻る。

 

甲虫装機ホッパー:ATK/2200→1700 DEF/2800→1400 ☆7→4

 

この戦術…アリアがさっき見せたものに似ている…だが装備されていたのはさっきとは違い、『ダンセル』ではなく『ホッパー』…モンスターの大量展開はできないはずだが…?

 

「装備状態となっていた『ギガウィービル』が墓地に送られた場合、墓地に存在する『甲虫装機』1体を特殊召喚できる!」

 

「なにっ!?」

 

そうか…墓地のモンスターを蘇生するために自分のカードを…!

 

「私は墓地から『甲虫装機ギガウィービル』を特殊召喚!」

 

【甲虫装機ギガウィービル】☆6 闇 昆虫族 ATK/0 DEF/2600

 

「蘇生したのが攻撃力ゼロの『ギガウィービル』だと…?」

 

ということは…アリアの狙いは…!

 

「そして魔法カード、『共振装置』を発動! このカードは自分フィールドの同じ種族・属性のモンスター2体を指定し、選択したモンスター1体のレベルをもう1体と同じレベルにする! 私はレベル6の『ギガウィービル』を選択し、『ホッパー』のレベルを同じ6にする!」

 

甲虫装機ホッパー:☆4→6

 

「これでまた、同じレベルのモンスターが2体…」

 

やはり…ここに来てくるのか! アリアのエースモンスター!

 

「いくよ…私は同じレベルのモンスター、『甲虫装機ギガウィービル』と、『甲虫装機ホッパー』でオーバーレイ! 2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!」

 

 

 

 

 

 ―無敵の装甲をその身に纏いて―

 

 ―神秘のボディが光りを放つ!―

 

―気高き姿よ、敵を貫く刃となれ!!―

 

 

 

 

 

「エクシーズ召喚! 装着せよ、『甲虫装機エクサビートル』!!」

 

【甲虫装機エクサビートル】★6 闇 昆虫族 ATK/1000 DEF/1000 エクシーズ

 

地面を割って出現したのは黄金に輝く装甲を纏った巨大なカブトムシ…その周囲を2つの星が回っている。

『エクサスタッグ』に続いて『エクサビートル』まで出てくるとはな…エースモンスターの猛攻…まさに今のアリアは鬼神の如き強さだ。

加えてフィールドには俺から奪った『ルイン』までいる…。

 

「ここで『エクサビートル』の効果発動! エクシーズ召喚し成功したとき、自分、もしくは相手墓地のモンスター1体をこのカードに装備する! 私が装備するのは『ギガマンティス』! ≪ゼクト・イークイップ≫!!」

 

『エクサビートル』の両手に『ギガマンティス』の鎌が握られる。

 

「『ギガマンティス』が装備されたとき、装備モンスターの元々の攻撃力は2400になる。さらに『エクサビートル』の効果で、装備したモンスターの半分の攻撃力分、このカードの攻撃力を上げる。よって、その合計攻撃力は…3600!!」

 

甲虫装機エクサビートル:ATK/1000→3600

 

攻撃力3000越えの『エクサビートル』に、俺から奪った『破滅の女神ルイン』…。

ぱっと見れば絶望的なこの状況…しかも俺のフィールドには『ルイン』の行動を制限している『デモンズ・チェーン』1枚のみ…。

しかもその『デモンズ・チェーン』も、『エクサビートル』の効果にかかれば難なく除去できてしまう…。

 

「どう? この布陣、そうそう突破できるものじゃないでしょ?」

 

「…あぁ、ちょいとばかし厳しいな」

 

「(一応『エクサビートル』の効果で『デモンズ・チェーン』は除去できるけど…もうバトルフェイズは終了しちゃったし、次のターンで『エクサビートル』の効果を使って『破滅の女神ルイン』を自由にすれば、私の勝ち!) これで私の出せる全ての力を出し切った…あとは最後のターンで、これを越えられるかどうかだよ!」

 

「そうだな…だが俺は、最後まで俺のカードを…デッキを信じて戦う!」

 

「その意気だよ…見せてみて、君の本気を! ターンエンド!」

 

△△―――

□□―――

アリア:手札2枚 LP500

モンスター:『甲虫装機エクサビートル』『破滅の女神ルイン』

魔法・トラップ:『甲虫装機ギガマンティス』『甲虫装機エクサスタッグ』

 

 

 

「これでアリアさんのフィールドには攻撃力3600の『エクサビートル』と、奪われたルインさんがいる…」

 

「対する主のフィールドにモンスターは存在しない…つまりはこのターンでなんとかしなければ、主に勝ち目はないわけか…」

 

「全てはさっきの『メタモルポット』の効果で引いたカードと、このドローに賭かっているわけですわね」

 

「大丈夫だ…主ならばきっとやれる! 私は…そう信じてる!」

 

「わたくしも信じますわ…主様の勝利を」

 

 

 

「…フゥー…」

 

デッキの一番上のカードに手をかけ、俺は呼吸を整える。

今の俺の状況は明らかに不利…一応さっきの『メタモルポット』の効果で逆転できる可能性のカードを引き当てることはできたが…あともう一歩だけ足りない。

そのあと一歩…残された勝利のパズルへの1ピースをここで引き当てなければ…俺は負けてしまう。

アリアとは…これまで何度もデュエルしてきた。しかし、今回のデュエルはまさに互いの死力を尽くすほどのデュエルだ。

アリアはこれで全力を出し切ったと言った…ならば! 俺も全力を出し切る…そのためにも!

 

「…俺のターン」

 

ここで引き当てる……あのカードを!

 

「……ドロー!!」

 

 

 

 

 

………―!

 

 

 

 

 

「…きたか」

 

(な…何を引いたの…?)

 

「俺は手札より速攻魔法、『ダブル・サイクロン』を発動!」

 

「『ダブル・サイクロン』!?」

 

 

 

「なに? 『ダブル・サイクロン』て…普通の『サイクロン』なら知ってるけど…」

 

聞き慣れないカードに、星華は阿部さんに尋ねる。

 

「あのカードは自分と相手の魔法・トラップカードを1枚づつ破壊するカードだ」

 

「アイツ、なんでそんなカードを? 自分のカードを破壊って…普通に考えたらデメリットじゃない」

 

「確かに、普通の『サイクロン』みたいに相手のみのカードを破壊できるわけじゃないからコンボ性が求められるカードだが…しかしこれは…!」

 

 

 

「このカードの効果により、俺は俺の『デモンズ・チェーン』を破壊し、お前の…『甲虫装機エクサスタッグ』を破壊する!」

 

「…!」

 

「『エクサスタッグ』だと!? 一体どこに…?」

 

『エクサスタッグ』を破壊する、という俺の言葉にアリアはハッとした表情を見せ、ルインは困惑した表情を見せる。

 

「『ゼクト・コンバーション』…相手モンスターのコントロールを永続的に奪う強力なカードだが、それにはもちろん弱点もある。この効果によって攻撃対象になった『甲虫装機』は、あくまで装備カードとなるだけで、消滅するわけではない。即ち…―」

 

フィールドに2つの竜巻が発生し、一つは『ルイン』の動きを封じている鎖を呑みこみ、そしてもう一つは…!

 

「装備カード扱いとなっている『甲虫装機』を破壊しさえすれば、奪われたモンスターは元のプレイヤーへとコントロールが戻る!」

 

「し、しまった…!」

 

もう一つの竜巻は、『ルイン』の周囲をぐるぐると回り電磁シールドで行動を封じているプラネイト・キャプチャーを呑みこむ。

『デモンズ・チェーン』もプラネイト・キャプチャーも、吹き荒れる竜巻によってバラバラになり、『破滅の女神ルイン』は、2枚のカードの呪縛から解放され、俺のフィールドに舞い戻る!

 

「『破滅の女神ルイン』が…!」

 

「これで俺の『ルイン』は返してもらったぜ、アリア! ついでに『デモンズ・チェーン』の呪縛からも解き放たれ、攻撃もできる!」

 

 

 

「そのための『ダブル・サイクロン』…!」

 

「なるほどな。普通の『サイクロン』じゃ、装備カード扱いになっている『エクサスタッグ』を破壊することはできるが、自身が発動した『デモンズ・チェーン』がまだ残っているため、コントロールが戻っても攻撃することができない」

 

「それを2枚同時に破壊することで…2枚のカードの呪縛から解放したってわけね」

 

 

 

「で、でも、まだ私のフィールドには攻撃力3600の『エクサビートル』がいる! たとえ『ルイン』が戻って来たとしても、倒すことは…!」

 

「それはどうかな?」

 

「…!」

 

「俺はさらに装備魔法、『契約の履行』を発動! このカードは、ライフを800支払うことで墓地の儀式モンスター1体を特殊召喚し、装備する!」

 

「墓地の儀式モンスター…!?」

 

「俺が復活させるのは…当然、『救世の美神ノースウェムコ』!!」

LP1650→850

 

墓地から光の柱が伸び、その中から『救世の美神ノースウェムコ』が復活する。

 

「〝女神″と〝美神″…ここに降臨!!」

 

『破滅の女神ルイン』と『救世の美神ノースウェムコ』は互いに共闘しあう姿勢を取り、『エクサビートル』の前に対峙する。

 

 

 

「すごい…私の〝破滅の女神″とウェムコの〝救世の美神″…その両方をフィールドに揃えるとは…!」

 

「双方ともにエースモンスター2連続とは…やはり主様も負けてはいませんね」

 

 

 

「で…でもでもでも! 『ノースウェムコ』も攻撃力は2700だし…儀式召喚したわけじゃないから効果破壊による耐性も付いていないし…!」

 

「まだだ! さらに俺はチューナーモンスター、『ブーテン』を召喚!!」

 

【ブーテン】☆1 光 天使族 ATK/200 DEF/300 チューナー

 

俺のフィールドに小さな豚の天使が出現する。

 

「レベル1のチューナーモンスター…? まさか……!」

 

「俺はレベル7の『救世の美神ノースウェムコ』に、レベル1の『ブーテン』をチューニング!!」

 

『ブーテン』が『ノースウェムコ』の頭の上をくるくると回ると、自身は星となって消え、『ノースウェムコ』もまた、星と重なり合う。

 

 

 

 

 

―純白の光の狭間より生まれし聖竜よ―

 

―希望の(ともしび)となりて…輝き照らせ!―

 

 

 

 

 

「シンクロ召喚! 輝け…『ライトエンド・ドラゴン』!!」

 

星と星とが重なり合い、新たに出現したのは光り輝く純白の翼をその身に纏った聖竜…。

聖竜、『ライトエンド・ドラゴン』は咆哮し、『ルイン』の隣に降り立ち、『エクサビートル』の前に対峙する。

 

【ライトエンド・ドラゴン】☆8 光 ドラゴン族 ATK/2600 DEF/2100 シンクロ

 

「し…シンクロモンスター…!」

 

「これが俺の…勝利の鍵だ!」

 

「で…でも攻撃力はシンクロ素材にした『ノースウェムコ』よりも低いよ!? わざわざ攻撃力が劣るモンスターを召喚して…一体どうするつもり!?」

 

「『ライトエンド・ドラゴン』は、希望をもたらすモンスター…決して約束された勝利ではない…だが俺はその希望を信じて戦う! バトル! 『ライトエンド・ドラゴン』で、『甲虫装機エクサビートル』に攻撃!!」

 

「なっ…!?」

 

『ライトエンド・ドラゴン』の頭部の黄金の装飾が輝くと、そこから口部に向かって光のエネルギーが蓄積されていき、『ライトエンド』は攻撃態勢をとる。

 

「どうするつもりかは知らないけど…迎え討て! 『エクサビートル』!!」

 

『エクサビートル』もまた、右手の槍と左手の鎌を『ライトエンド』に向けて構える。

 

「≪シャイニング・サプリメイション≫!!」

 

「甲神巨槍鎌、≪エクサランス・スラッシュ≫!!」

 

2体のモンスターは攻撃を放ち、『ライトエンド』は閃光のブレスを『エクサビートル』に浴びせ、一方の『エクサビートル』は左手の鎌で閃光のブレスを引き裂きながら右手の槍を構えて突進する。

 

「やった! これで『エクサビートル』の勝ち…!」

 

「ここで『ライトエンド・ドラゴン』の効果発動!」

 

「え…?」

 

「『ライトエンド・ドラゴン』がバトルを行う時、自身の攻撃力を500下げることにより、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を1500ポイントダウンさせる!」

 

「1500!? てことは…!」

 

「≪ライト・インスパクション≫!!」

 

『ライトエンド』が翼を広げると、閃光の波動が『エクサビートル』を包みこみ、その荒ぶる力を封じ込めていく。

 

ライトエンド・ドラゴン:ATK2600→2100

甲虫装機エクサビートル:ATK3600→2100

 

「攻撃力が並んだ…!?」

 

「いっけええええええええええええ!!」

 

『エクサビートル』の左手の鎌が割れ、『エクサビートル』は閃光のブレスをその身にまともに受ける。しかし、負けじと『エクサビートル』も右手の槍を『ライトエンド』の身体に突きさす。

 

『グッ…オオッ…!!』

『グアアアアアアアッ!!』

 

2体のモンスターの怒号が辺りに叫び渡り、そして…2体のモンスターは互いの攻撃を受け、爆散し、消滅した。

 

「わ…私の…『エクサビートル』が…!」

 

「…アリア」

 

「え…?」

 

「いいデュエルだったぜ」

 

「……!」

 

その時、アリアは何故かわからないが…一瞬驚いたような顔をした後、何かを納得したかのように静かに目を閉じ…そして。

 

「…うん♪」

 

とびっきりの笑顔を、俺に見せた。

 

「…これで最後だ! 『破滅の女神ルイン』でダイレクトアタック!! 破滅のへ序曲、≪エンド・オブ・ハルファス≫!!」

 

『ルイン』の攻撃が炸裂し、アリアのライフにダメージを与えると…永遠に続かのように思えた俺とアリアのデュエルは…俺の勝利という形で幕を閉じた。

 

 

 

LP500→0

 

 

 

………

……

 

「…あ~あ…結局負けちゃったか…」

 

「アリア…」

 

「ん…でも…すっごく楽しいデュエルだったよ!」

 

「ああ、俺もだ」

 

俺とアリアは席を立ち、互いに握手を交わす。

 

パチパチパチ

 

「いいデュエルだったぜー!」

「あんな熱いデュエル、そうそう見れるもんじゃなかったぜ!」

 

握手を交わすと、ギャラリーの人達が拍手してくれた。

 

「やったなある…じゃなくて弟!」

 

「最後の攻防…流石としか言いようがありませんでしたわ」

 

そしてルインとウェムコの二人ももちろん、俺の勝利を祝福してくれた。

 

「ありがとう、二人とも。…でもさすがにそりゃ褒めすぎじゃないか?」

 

「いえ! 並の人であれば、自身のエースモンスターを奪われ、かつ相手のエースモンスターも出現した時点で敗北を覚悟していたでしょう。しかし、主様は最後まで戦い抜き、勝利しました。それは見事としか言いようがありません」

 

「そ、そうかな…? ま、いいか。ありがとうな」

 

「ま、確かにちょっと褒めすぎな感じはするけどね~」

 

「小日向…」

 

今度は小日向が俺の前までやって来た。

 

「ふん…でもまぁなかなかやるじゃない。ウェムコさん程じゃないにしろ、私も褒めてやるわよ」

 

あれ…? なんだこの変な感じ…まさかこれが…。

 

「小日向…それってもしかして所謂ツンデレってやつか?」

 

「なっ!?」

 

バチンッ!!

 

「バッカじゃないの! 勘違いも甚だしいわ! 私帰る!!」

 

俺に強烈なビンタをかました後、小日向はさっさと店を出て行ってしまった。

 

「なんだってんだあいつ…?」

 

俺はひっぱたかれた頬を擦りながら呟いた。

 

「やれやれ…主様にはまだ、女心というものがわからないみたいですわね~」

 

「ん? なんか言ったかウェムコ?」

 

「いいえ、なんでも♪」

 

ウェムコがにっこりと返してきた。…何か腑に落ちないが…まぁいいか。

 

「ゴホンッ、え~、それではあらためて…優勝おめでとう! 優勝者にはこの店で使える1000円分の割引券の進呈だ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

俺は阿部っち店長から1枚の券を貰う。

それはちょうどお札のような大きさで、左側には1000という文字と、そして券の右側には阿部さんの顔が印刷されているという凝りっぷりだ。

 

「それと、アリアちゃん。君は準優勝だから500円分だ」

 

アリアもまた、500円分の券をもらう。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

パチパチパチ!

 

商品券が手渡されると、また大きな拍手が沸き起こった。

 

………

……

 

その後、貰った商品券で買い物をしたり、店のデュエリストたちと雑談したりフリーでデュエルをしたりした。アリアもすっかりここの雰囲気に慣れ親しんだようで、みんなと打ち解け合っている。

 

「もうこんな時間か…」

 

すっかり夢中になってしまったが、ふと時計を見ると19時をまわろうとしていた。外を見てみると、もうすっかり陽が落ちている。

 

「ルイン、ウェムコ。そろそろ帰るか」

 

「わかりましたわ」

 

「お腹すいた…」

 

こんな時間まで付き合わせてしまったからな…帰ったら何か美味いものでも作ってやるか。

 

「じゃあアリア、俺達そろそろ帰るわ」

 

「うん。…あ、待って!」

 

店を出ようとしたとき、アリアに呼び止められた。

 

「どうした?」

 

「実は…えっとね…私帰り道がわからなくって…だから途中まででいいから、一緒に帰ってくれる?」

 

「そうなのか? もちろんいいぞ。ルイン、ウェムコ、構わないか?」

 

「もちろんですわ」

 

「アリアは弟の友達だからな、私達が気に止める必要はあるまい?」

 

「だそうだ。さ、行こうぜ」

 

「うん♪」

 

………

……

 

すっかり暗くなってしまった夜道を、俺とアリアが隣に並んで歩いている。その少し後ろを、ルインとウェムコの二人が付いて来る。

 

「…久々だね、こうやって二人で並んで歩くのは」

 

「ん? そうか? つい最近まで歩いてたような気がするけどなぁ…」

 

「高校1年生の最初の時まではね。でも中学の頃とは学校の位置が違うし、それに…最近はおじさんが亡くなったりとかで忙しくてあんまり一緒に学校に行けなかったから」

 

「そういやそっかぁ…思えば、小学生の頃からアリアとは一緒に学校行ってたんだもんな」

 

「うん、だから…なんだか最近寂しくってさ」

 

 

 

「何だかわたくし達、お邪魔みたいですわね~♪」

 

「むぅ… (何なのだ…このモヤモヤとした気持ちは…)」

 

 

 

「あ、ここからなら私道わかるから」

 

T字路に差し掛かり、アリアがそう言った。右に行けば俺の家、左に行けばアリアの家がある。

 

「そうか? じゃ、ここでさよならだな。また明日、学校でな」

 

「うん、じゃあね」

 

アリアはそう言って、左の道を歩いていく。

 

「…アリア!」

 

「ん?」

 

俺が呼びとめると、アリアは振り向いて俺の方を見る。

 

「もしよかったらなんだけどさ…明日からはまた一緒に学校行かないか?」

 

「え…?」

 

「あ…いや! 無理にとかじゃないんだ! アリアの家からだとウチは学校とは違う方向にあるから…」

 

「ううん! 行く! 私明日からまた一緒に学校行く!」

 

「ほ、ほんとか?」

 

「だからいつまでも寝坊してちゃダメだぞ♪」

 

「お、おう!」

 

「じゃ、また明日ね。おやすみ♪」

 

「おう、お休み!」

 

そう言ってアリアは夜道を早足で駆けて行った。また明日からアリアと学校に登校するのか…こりゃ夜更かしはできないな。

 

………

……

 

(また明日から一緒に学校に行けるんだ…やったぁ♪)

 

そう考えると自然と顔が綻ぶ。私は上機嫌で夜道をすたすたと歩く。

 

「…あ、そうだいけない! 今日発売の新パック、買ってくるの忘れてた!」

 

どうしよう…もうすっかり真っ暗だけど、さっきの阿部さんのお店にならまだ置いてあるかもしれないし…。

 

「う~ん…よし! どうせ一人暮らしなんだから家には何時に帰ってもいいし! 来た道も今度はちゃんと覚えてるし! もう一回阿部さんのとこに行ってこよ!」

 

私はそう決断し、来た道をすたすたと戻り始めた。

 

……

………

 

さて、アリアを送りだしたはいいが、俺達も早く帰らないとな。ウチの女神様がお腹を減らして不機嫌になる前に。

 

「主…」

 

「おうルイン、もう俺の事を〝弟″って呼ばなくてもいいぜ。…って、どうしたんだお前? そんなふくれっ面して」

 

「ふん、別に!」

 

そう言うとルインもまた早足で家の方へすたすたと歩いて行ってしまった。

 

「お、おい! 待てって! もしかしてお腹空いてるから不機嫌なのか?」

 

「ば、バカか! 私は破滅の女神だぞ! 女神がそんな些細なことで機嫌を損ねるか!」

 

「じゃあ何なんだよ? おーい!」

 

「あらあら…やっぱり主様は、もう少し女心を知らなきゃダメですね。うふふ♪」

 

俺は慌てて、ルインの後を追い、その後ろをウェムコが付いて行った。

 

………

……

 

「…え? 今のって…どういうこと……?」

 

さっき別れたばっかで、また顔を合わせるのも気まずいから電柱の陰に隠れて様子を伺っていたんだけど……。

 

(さっき…『もう俺の事を〝弟″って呼ばなくてもいいぜ』って言ってた…? それに〝破滅の女神″って…? ひょっとして…ルインさんとウェムコさんて本当のお姉さんじゃないの!?)

 

でも…デパートで私に会った時…カードショップで私に会った時…。

 

~~

 

『お、俺の姉のルインだ』

『あぁ…えっと…ルインのことは知ってるよな?こっちの金髪の人は俺の…二人目の姉のウェムコだ』

 

~~

 

しっかりと…私に対して〝お姉さん″って紹介してた…。

でも、でも…冷静になって考えてみたらあんなに容姿が違うのに姉弟って…それに〝破滅の女神″ってカードの『破滅の女神ルイン』のこと…? てことは…ウェムコさんも『救世の美神ノースウェムコ』…?

 

(え…!? ちょっと…ちょっと待って! わけがわからない……でもルインさんとウェムコさんが実際のお姉さんじゃないってことは確か……それって…)

 

それってつまり……。

 

 

 

 

 

私に…嘘をついてたってこと……?

 

 

 

 

 

「…なんで…?」

 

なんで…なんで私に嘘をつく必要なんてあるの…? 私は小学生の時からずっとそばにいる…たかだか数日一緒にいた偽の姉なんかよりも私の方が…!

 

なのに……なのになんで!?

 

明日一緒に学校に行こうって約束してくれたのに…その約束も嘘だっていうの!?

さっき私に向けられていた笑顔も…さっきのデュエルも…優しさも……!!

 

そんな考えがぐるぐると私の中を周り、気がつくと私は息を荒げ、頭を抱えて道路の真ん中でうずくまっていた。

 

「私は…私はどうすれば!!」

 

 

 

 

 

「闇を恐れるな、我が主よ」

 

 

 

 

 

「……?」

 

頭を抱えてうずくまる私に対し、突然差し伸べられる大きな手…。

 

「貴女の見た愛は、果たして幻想なのか? それとも、貴女の心の渇きが幻想を生むのか…。心の闇の果てに理想を見るのが幻想に過ぎないことは、周知の事実。ならば…この世の全ては幻想に過ぎぬ! では…貴女が為すべきことは何か?」

 

「私が…為すべきこと…」

 

「主よ…我は貴女のお陰で復活を果たす事ができた。我は貴女の下僕の証として、望むのであればどのような終末も呼び起こしてみせよう」

 

「終末…?」

 

ふと私は、私に差し伸べられる大きな手の持ち主の姿を見る。

全身に纏う白と黒の甲冑…背中から伸びる群上色の炎は、まるでマントのように形作り、頭から生やした2本の大きな角に、表情が無いのに…何故か私に対して温かみが感じられる白い髑髏のような顔…。

 

「あなたは…一体…?」

 

その手を掴み、立ち上がると…その手の持ち主は答える。

 

 

 

 

 

「我が名はデミス…〝終焉の王″なり」

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

主「今日の最強カードは?」

 

 

甲虫装機(インゼクター)エクサビートル】

★6 闇 昆虫族 ATK/1000 DEF/1000 エクシーズ

レベル6モンスター×2

このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードの攻撃力・守備力は、この効果で装備したモンスターのそれぞれの半分の数値分アップする。また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、自分及び相手フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚ずつ選択して墓地へ送る。

 

 

主「ランク6のエクシーズモンスターだ。元々の攻撃力は低いが、自分や相手の墓地のモンスターを装備することによって攻撃力を上げる。自分の墓地の『甲虫装機ギガマンティス』や『甲虫装機ウィーグ』を装備し、大幅に攻守をパワーアップできる他、『甲虫装機ギガグリオル』を装備すれば貫通能力も得ることができる」

 

主「また、こちらのカード破壊の効果を無効にし、相手の墓地にいる『スターダスト・ドラゴン』を装備したり、『暗黒界の龍神グラファ』のような墓地で発動する効果のモンスターを装備し、効果の利用を邪魔するなんてこともできる。さらにミラーマッチにおいては、相手の墓地の『甲虫装機ホーネット』なんかも装備し、効果を発動できるぞ」

 

主「『甲虫装機』の名を持ったエクシーズモンスターのため、甲虫装機デッキのエースになりえるかと思いきや…どうにも普通の甲虫装機デッキだとランク6は出にくいため、専ら甲虫装機以外のデッキでの活躍の場が多い。『聖刻竜』デッキや『リチュア』なんかに入れてみよう」

 

主「さて、俺からの解説は以上なんだが…アリアの奴どこ行ったんだ? これアリアのカードだってのに…なんだか嫌な予感がするなぁ」

 

主「ともかく皆、また次回な!」




3話に渡って続いたカードショップでのアリアとの決勝戦も今回で決着とさせていただきました。
この前のZEXALでもあったけど、やっぱり主人公のエースが2体並ぶ様っていうのはかっこいいよね。

そして…ついに姿を現した終焉の王デミス。
次回、急展開&シリアス&リアルファイト。
そしてもうすぐ…第一部終了!
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