ルインによると、これは世界に終焉を告げる禁術、「エンド・オブ・ザ・ワールド」の発動する前兆だということ。
世界の終焉を阻止するために、彼らはエンド・オブ・ザ・ワールドを引き起こしている者を探す…。
「Zzz…」
大会から数日たったある日のこと。その日、俺はいつも通りに自室のベッドで寝ていた。そこまではいつも通り…そこからは目ざまし時計が鳴って目を覚まし、いつも通りにルインとウェムコと共に朝飯をとり、いつも通りに学校に登校するつもりだった。
そう…〝つもり″だった。
だが、俺の日常は…突然壊された。
グギャアアアアアッ!!
「…!?」ガバッ
突然家の外から聞こえてきた耳をつんざくような、何かの鳴き声…。
声からして人間ではない…かといっても動物らしからぬその声に内心ビビりつつも、俺はベッドから飛び起きて部屋のカーテンをそっとめくって外を見てみる。
「…なっ」
そして…驚愕した。
外にはあろうことか、デュエルモンスターズのモンスター達が街を闊歩したり、空を飛びまわってたりしていたからだ。
―――――第17話:「終わりの始まり(前編)」―――――
「なんじゃこりゃ…」
どうやら先ほどの鳴き声はそのモンスターによるものだったらしい。
モンスターの現実における具現化…その実例が身近なところに2人ほどいるが…こんなにも多くのモンスターがそれも一度に具現化するなんて…。
たしかずっと昔に、今と同じようにモンスターが出現し、空に黒くてでかい目玉が現れたというニュースがあったことを思い出した。
確かあの事件は、海馬コーポレーションのソリッドビジョンシステムの事故と報道されたが…その真意は定かなものではなかった。
そして今外にいるモンスター達も本物…。
外は異様なまでに静まりかえっているが、それだけに時たま聞こえるモンスター達の雄叫びがとても響く。
「主! 無事か!?」
とりあえず制服に着替えると、ルインとウェムコも外の異変に気付いたらしく、俺の部屋まで息を喘がせて上がってきた。
「お、おい! 二人とも…こりゃ一体どういうことだよ?」
二人なら何か知っていると思い、俺はルイン達に今の状況を聞いてみた。
何やら真剣な表情の二人…ここはいつものようにボケるとこではなさそうだ。
「これは……おそらくは禁術、〝エンド・オブ・ザ・ワールド″が発動したのだろう」
「エンド・オブ・ザ・ワールド…?」
その言葉には聞き覚えがある、カードでルイン光臨のために必要な儀式魔法だ。
しかし、ルインの口調からこの現象とカードの効果とはまた異なるものだということがわかる。
「この禁術が発動したが最後…完了すれば、この世界の文明はおろか、人も、動物も、植物も、全てが滅び死の世界と化してしまう。このモンスター達の群れは、デュエルモンスターズの世界から召喚されたもので、儀式を邪魔する者を排除するための尖兵…即ち、世界の終焉を告げる前兆だ」
「なん…だと…?」
俺は信じられなかった。
昨日の夜まで、いやつい5分ほど前までは世界の終わりなど考えもしなかったのに…普通の人間なら信じられるはずもない。
しかし、俺はもう既にトンデモな体験をいくつかしてるからすぐに理解することができてしまった。
「…なら、そのエンド・オブ・ザ・ワールドを発動してる奴をぶっ飛ばせばこれは止まるのか?」
「うむ、完了してしまったら止める術はないが、今はまだ準備段階だ。今ならばまだ止めることはできる」
「主様…まさか」
そんな話を聞いたら…俺がやることはただ一つ。
こっちにはルインもウェムコもいる。俺達がいれば、世界の終焉を止めることはできるはずだ!
「行くぞ…世界を終焉させようなんてしてるバカを止めに!」
正直怖い…だが、まだ俺には生きているうちにやりたい事がたくさんある。それはきっと俺だけじゃない…世界中の人達が同じ筈だ。だから…止めなきゃいけない。
「無論だ。だが、その前に…」
外に出ようとした時、ルインは俺の手をとって引き止めた。
「ど、どうした?」
「目を瞑って」
「あ、あぁ…」
ルインに言われるがまま目を瞑った直後、ふわっと青白い光がルインの手から輝き、その光が俺の手を通じて体の中へと流れ込んでくる。
何か暖かく、ルインから俺に流れているような感覚だった。
「…もういいぞ、主」
「ん…何をしたんだ?」
「私の力の一端を、少し主に送ったんだ」
「ルインの…力?」
「あぁ。これで、主はデュエルモンスターズのカードを数枚だが具現化できる」
「へ、へぇ…」
カードの具現化? なにそのトンデモ能力…。
目の前のルインはニコリを笑った、何故かはわからないけど俺の心はドキリとした。
「お、俺デュエルディスク取ってくる!」
何故そんなに慌てるのかはわからなかったが俺は二階の部屋からデュエルディスクを取りに行った。
………
……
…
「あれは、ダーク・キメラにモリンフェン…」
俺達が家の外に出ると、外はモンスター達で溢れていた。
だが不思議と人の気配がしない。
「悪魔族か…」
「主様、ご命令を」
ディスクを起動させ、デッキを装填すると、周りのモンスター達を見る。
やはりどれもこれも見たことあるモンスター達…すると、モンスター達も俺達に気付いたのか、眼をギラつかせ、爪や牙をたて、今にも飛びかかってきそうな感じだ。それを見て俺の背後にいたルインとウェムコもそれぞれロッドを構える。
俺の命令は一つだった。
「とりあえず、この一帯のモンスター達をぶっ倒す!」
「了解だ」
「わかりましたわ!」
その直後、ルインとウェムコの杖から閃光が迸り、周囲に響く爆発音、そしてモンスター達の悲鳴が響き渡った。
ルインの力を分けてもらったとはいえ、かなり不安だった俺は、二人の戦う姿を見てとても心強く感じた。なんてったって破滅の女神様に救世の美神様が傍にいるからな。
「あ、あれは…!」
そのとき、上空から一体の悪魔が俺たちに向かってきた。
その悪魔とは…ジェノサイドキングデーモン。
「大物ダ…」
デーモンがニヤリと笑う。
「主は下がっていろ」
「だ、大丈夫なのか!?」
「安心しろ、すぐにカタをつける」
そう言ってルインはロッドを構える。
確かに、実際のカードの攻撃力ではルインの方が勝ってはいるが…モンスターが実体化したこの場における攻撃数値とは、あくまで基準に過ぎない。若干不安がりつつも、俺はルインの傍を離れる。
「前大戦デノ…我ガ部下ノ敵ヲ取ラセテモラウゾ! 『破滅ノ女神』ヨ!!」
デーモンが剣を振り上げ、ルインに切り掛かる!
ジェノサイドキングデーモンの攻撃に、ルインは宙に浮かび、ひらりとかわすと空中で手に持っているロッドの先をジェノサイドキングデーモンに向ける。
「何ッ!?」
自分の攻撃がかわされ、デーモンが驚きの声をあげる。その最中にルインは呪文を唱え、ロッドの先端に閃光が蓄積されていく。そして…
「くらえ…≪エンド・オブ・ハルファス≫!!」
肥大した閃光の塊は大きな音を響かせながら放たれ、ジェノサイドキングデーモンの全身を呑み込んでいく。
「グアアアアアアッ!!」
大きく不気味な叫びを響かせるジェノサイドキングデーモン。
やがて叫びは聞こえなくなり、大きな爆発音とともに消滅した。
「ルインさん、見事です」
「す、すごいな…」
「主よ、敵はまだまだ来る。油断してはいけない」
「ああ、それじゃ俺も行くぞ! えっと…『ライトエンド・ドラゴン』を召喚!」
俺も自分のモンスターをデュエルディスクにセットし、召喚してみる。すると、いつものソリッドビジョンとは違い、実際の質量を持った純白の光竜が召喚される。
「頼むぞライトエンド! 敵を蹴散らせ!」
俺の意思を理解したらしく、『ライトエンド・ドラゴン』は翼を羽ばたかせ、空を舞う。そして口から光波を出し、モンスター達を蹴散らしていく。
「主! エンド・オブ・ザ・ワールドを引き起こしている奴と思わしき魔力の波動を感知した! こっちだ!」
「よし、わかった!」
ルインとウェムコと共にエンド・オブ・ザ・ワールドを使っている奴の魔力とやらを頼りに、モンスター達を撃破しつつ飛び回ってその居場所を探し、俺も走り続ける。
「ん? おい、人が倒れているぞ!?」
それも一人や二人ではない。顔をよく知る近所のおばさん、学校に登校しようとしていたランドセル姿の小学生、ウチの学校の生徒と思わしき制服姿の高校生、朝のジョギングをしていたと思わしきおっさん…誰も彼もが意識が無いようだった。
「この人達は一体…」
「…エンド・オブ・ザ・ワールドの発動には多くの人間の生気が必要だ」
「じゃあ…この人達まさかもう…!」
「いや、必要なのは肉体ではなくあくまで生気だ。この人達は生気を吸われて意識が無いだけで死んでいるわけではない」
「よかった…」
「しかし急がないければなりません…このまま生気を吸われ続ければ、いずれこの人達も衰弱死してしまうでしょう」
ウェムコの言葉に、あまり悠長に探してはいられないのだと悟った。
「そうか…じゃ急いで探さないと」
俺たちはまた走り出す。しかし、俺達の行く手を阻むかのように、モンスター達はどんどん増していき、俺達の足を止める。
「くっ…数が多すぎる!」
「わたくし達だけでは防ぎきれませんわ!」
「なら目には目を、数には数だ! 来い! 『大天使クリスティア』! 『カオス・ソーサラー』! 『終末の騎士』! 『儀式魔人プレサイダー』!」
デッキの上からカードを4枚めくり、その中にあるモンスターカード4体をディスクの残りのモンスターゾーンを全て使用し、召喚する。
彼らは喋りはせず、コクリと頷くとルインとウェムコと共にそれぞれ敵のモンスター達に攻撃を仕掛けていく。
クリスティアとカオス・ソーサラーが攻撃を放つ、終末の騎士とプレサイダーが剣でモンスターに斬りかかる。しかし、クリスティアとカオス・ソーサラーはまだしも、終末とプレサイダーはあまり攻撃力が高くない。1対1であればそこそこ戦えたかもしれないが、戦力差が1対複数ともなると、1体倒してもまた次のモンスターが押し寄せてくる。とうとうモンスターの波に負け、終末の騎士は暗黒界の尖兵ベージに、プレサイダーはレッサー・デーモンの攻撃を受け、やられてしまう。
「終末の騎士! プレサイダー! …ぐっ!」
それと同時に俺の呼吸が一瞬苦しくなり、ディスクに表示されているライフポイントが減少する。
LP4000→3500
「大丈夫か主!?」
そんな俺を心配してか、ルインが駆け寄ってきた。
「あ…あぁ…」
「気を付けてくれ、モンスターがやられると、術者である主にもダメージが及ぶ」
「主様、敵の数が多すぎますわ…! とてもではないですが、わたくし達だけでは押さえられそうにありません…!」
「それなら…!」
そこで俺は一枚のカードを取り出し、そのカードで敵を一掃することにした。
「これでどうだ! くらえ! 『ライトニング・ボルテックス』!!」
俺が発動させたのは魔法カード『ライトニング・ボルテックス』。カード効果は相手フィールドの表側モンスターを全て破壊する強力なカードだ。
眩しい閃光と共に雷撃が辺り一面に炸裂する。
あまりの眩しさに俺は一瞬目を瞑ってしまったが、雷撃が止み、しばらくして目を開けるとモンスター達の声は消え、その気配も感じられなくなった。
これで少しは安心かと思った時、ウェムコが俺の元まで駆け寄ってきた。
「主様! ルインさん! エンド・オブ・ザ・ワールドを発動している者と思わしき人物の居場所が分かりましたわ!」
「よし、ならさっさと行こう!」
居場所がわかったんなら話は早い。早速止めるべく、俺はルインとウェムそしてモンスター達と共にその場所へと向かった。
「待っていろ……デミス…」
その途中、ルインが何か呟いた気がした。
唐突に訪れた世界の終わりですが、デュエルはやりませんw
遊戯王DMのドーマ編やGXの異世界編の時みたく、主人公は実際に直接モンスターを召喚して戦うというスタイルとなります。なんだか能力者バトルみたいな感じw
サブタイには「前編」とありますが、この後中編・後編と続く予定です。
しばらくデュエルをお休みする形となりますが、申し訳ないです。
次回、ルインvsデミス!
そして…覚醒する力!