その声の主に導かれるままに発動した謎のカード…『超融合』。
その力により、“破滅の女神”は“真理の女神”にへと変貌を遂げる。
世界を命運を賭けた戦い、ついに決着!
「『マアト』…だと…?」
ルイン…いやマアトは、デミスの前に対峙したまま微動だにしない。
「ふん、面白い!」
デミスが斧を上に翳す。
そこから青黒い炎が出現し、どんどん大きくなる。デミスの技、≪終焉の嘆き≫だ。
デミスも本気らしいのか、今回は今までのとは違いとてつもなくデカい!
小さくても威力があるのに、あんなのをぶつけられたら…!
―――――第19話:「終わりの始まり(後編)」―――――
「ルイ……マアト!!」
「主よ、今こそ私達の力を一つにするのです」
俺が叫ぶと、マアトは俺の方を向いて静かにそう答えた。やはり口調もルインとは違う…。
俺達の力を一つにする…? それは一体どういう意味なんだ…?
「よくお聞きください、主よ。デッキとは希望…カードとは未来…それを引き当てるのはデュエリストの宿命…心の目で見て、カードをお引き下さい。真理の力が、貴方を導きます」
「真理…わかった!」
目を閉じ、デッキの上に手を当てる。そして感じ取る…デッキの中に眠るカード達の脈動を…。
わかる…わかるぞ! 1枚1枚がそれぞれ、違う形で俺に語りかける…このカードは…そう!
「いくぞ、マアト! 俺のデッキよ…真理の可能性を俺に見せてくれ!」
目を閉じたまま、デッキからカードを引き抜く!
「≪
引いたカードは…!
「感じる…感じるぞ! このカードは『死者蘇生』!!」
そして引き当てたカードを見てみる…やはり『死者蘇生』のカード!
「すごい…! カードを見ていないのに言い当てるなんて…!」
そんな俺の姿を見て、ウェムコが呟く。
ドローした『死者蘇生』を掲げると、光の柱となってマアトの中に吸い込まれる。それと同時に、マアトの力が増しているようだ。
「なにっ!?」
その光景を見て、デミスが驚きの声を上げる。
まだまだ…デミスに勝つには、これだけの力じゃ足りない!
「2枚目…ドロー!! …『マシュマロン』だ!」
もちろん引いたカードは『マシュマロン』だった。
『マシュマロン』のカードもまた、マアトに吸い込まれて力となる。
「おのれぇ…! こんなことで我に勝てるなどと思うなよ!!」
ふとデミスを見ると、デミスの発生させた青黒い炎はとてつもなくデカくなっており、もうデミスの身の丈以上もある。
デミスはそれを今にもマアトに向けてぶつけそうな勢いだった。あんなのを放たれたら本当に世界が終わってしまうかもしれない! だがその前にせめて…せめてもうあと1枚だけ!
「3枚目…ドロー!!」
「喰らうがいい!! ≪終焉の嘆き≫!!」
俺がカードの名前を宣言し終わらないうちに、ついにデミスが炎を放った! その大きさはデミスの身長の三倍はあるだろう。
その攻撃がマアトに届く前に、俺はカード名を高らかに宣言する!
「3枚目は…『オネスト』だ!」
『オネスト』が光の柱となってマアトに吸い込まれるのと、デミスの≪終焉の嘆き≫がマアトに直撃したのはほぼ同時!
凄さまじい衝撃波と熱波が押し寄せ、俺の体は宙を舞い、吹き飛ばされる。しかし、そんな俺の体をウェムコが支えてくれたおかげで、そこまで遠くに飛ばされなくて済んだ。
「主様! 大丈夫ですか!?」
「俺は…大丈夫だ! それよりもマアトは!?」
俺たちは上空へ目を向ける。
黒煙が立ち込め、青い炎が尚も大気を燃やす…デミスの方は健在…だが力の大半を使ったからなのか、かなり息が上がっているようだった。
一方、マアトはというと…、
「「「…!?」」」
その姿を見て、俺、ウェムコ、デミスの3人が驚く。
なぜなら、あれだけの攻撃をマトモに受けたにもかかわらず、そこには…先ほどと同じく、微動だにしないマアトの姿があったからだ。
しかもその身にはもちろんのこと、全身に纏う煌びやかな装飾にすら、傷は一つもついていない。
「主、貴方の力、見事に受け取りました」
マアトは俺の方に視線を送る。
そして力が弱まっているデミスに、その手に持つ長いロッドの先を向ける!
「真理の福音、≪アメミット・ジャッジライト≫!!」
それは、一瞬の出来事だった。
マアトのロッドの先から放たれた閃光が、巨大な鰐の頭部のような形を作り、デミスに迫る!
「何っ!? こ、これは…この力は…やはり……!」
刹那、巨大な光の鰐は、デミスを呑み込んだ。
「ぐっおおおおぉおぉおぉおお!!」
デミスは叫び、光にその身を灼かれながら空から地面に落ちた。
「や…やった! やったぞ!」
ズシンと言う音が響き、デミスは力なく横たわる。俺はこれで勝利を確信した。
しかし…、
「ぐっ…! ふっ…フフフフ…」
「…!?」
あれだけの攻撃を受けてもまだ、デミスは再びゆっくりと立ち上がり…そして笑い始めた。
「まさか…貴様が覇王の後継者とはな……」
「何だと…? 覇王…?」
覇王とは一体何なのか…それについてデミスに問いただそうとしたが、デミスはさらに話を続ける。
「だが…エンド・オブ・ザ・ワールドはもう止まらない…! もうじきこの世界は消滅する…我の勝ちだ! ククク…ハーッハハハハハ!!」
言葉はそこで途切れ、デミスの姿は突然消えた。
改めて空を見ると、そこにはマアトがいる。…が、今の一撃で力を使い果たしたのか、徐々にその姿が解けていく。
やがて、俺がよく知る、いつものルインの姿に戻った。
「ルイン! 大丈夫か?」
「あぁ、私は問題ない」
ルインは俺の前に降り立つ。
不思議と先ほどまで傷だらけだった箇所は治っているようだった。融合していたおかげなのだろうか…?
「デミスは…どうなったんだ?」
「…死んだわけではない、トドメを刺す前に姿をくらませてしまった。いずれはまた復活するだろう…。だが、あれだけのダメージだ。復活するのはかなり時間がかかると思われる。それよりも、今はエンド・オブ・ザ・ワールドを…」
「止められるのか…?」
「…デミスと戦っている間に、儀式の段階はかなり進んでしまったようだ。今はもはや最終段階といったところだが…この状態で止められるかどうかは…正直五分五分といったところだ」
「そんな…」
確かに、上空に輝く巨大な魔法陣は、先ほどよりも光を増しているようにも見える。
どうやらデミスは、俺達を足止めするために闘っていたらしい。
「…かくなる上は私の全ての力を使い、エンド・オブ・ザ・ワールドを止める」
「おい待てよ…それってまさか…!」
嫌な感じを察し、俺はルインに問いただそうとする。
しかし、ルインは落ち着いた口調で話す。
「大丈夫だ主。たとえこの身が砕け散っても、私はまた必ず主の元へ帰ってくる」
ルインは笑っていた。優しく…朗らかに…。
「主様…ここはルインさんの言う通りかと…」
「…他に方法は無いんだな…?」
「あぁ…」
「そうか…。本当に帰ってきてくれるんだな…?」
「約束する」
「…わかった。いやルイン、行ってこい。帰ってきたら、またみんなで美味い物でも食おう」
「ソフトクリームもあるか?」
「勿論だ」
「なら、早く帰ってこなければならないな。…行ってくる」
「…頼んだぞ」
短い間だったが今までルインと過ごした日々が、まるで走馬灯のように俺の頭の中を回る。
ルインはどんどん空の上へと飛んでいく。そして、杖を翳すと何かをぶつぶつ唱え始める。
しかしその直前、ルインが俺に分け与えてくれた力のお陰か、ルインが俺に言った最後の言葉がはっきりと聞こえた。
「貴方に出会えて本当に良かった…私のたった一人の主、
その時、ルインは始めて俺の名前を呼んでくれた。
直後、何かが爆発したかのように空が眩く光り、俺は思わず目を瞑った…。
………
……
…
…ま
…じ…さま
なんだ…? 誰かの声が聞こえる…。
もしかして……ルイン…?
「主様!」
「…!」ハッ
ウェムコの声で俺は目を覚ました。
あの後、ルインが呪文を唱え始め、空が光ったあたりから記憶がない…。気絶してたのだろうか?
「これは…」
上を見ると、空を覆っていたあの巨大な魔法陣はもう無くなっている。
そして周りを見ると、倒れていた人達が一人、また一人と起きあがっていく。どうやら意識が戻り始めているようだった。
「止めた…のか…?」
「そのようです」
どうやらルインのお陰で世界は救われたらしい。
「やったな、ルイン。……ルイン?」
周りを見回しても、空を見上げても、ルインの姿はどこにも無かった。
「ウェムコ、ルインは…?」
ウェムコは残念そうな表情を浮かべると、無言で首を横に振った。
「……わかりません…私も気を失っていたんですが、目が覚めたときにはルインさんの姿は何処にも…」
「そんな…!」
嘘だろ…? まさか…本当に死んじまったのか…?
「何でだよ…」
俺はその場に力無く座り込む。
確かに世界は救われた。しかし、ルインがいないなんて……。
「主様…ここは人目につきます、一度家に帰って今後の事を考えましょう」
…確かに、ウェムコの言う通りだ。今ここで座り込んでいたって、どうにもならない。
「……わかった」
俺達は一旦家に帰る事にした。
これからのことも考えられるし、もしかしたらルインがフラっと帰ってきてくれるかもしれないと思ったからだ。
しかし、それから何日経っても、ルインは姿を見せなかった…。
………
……
…
「ルインさんが消えて、もう一週間になりますわね…」
夕方、学校から帰って来た俺、『
テレビでは、1週間前にデミスが起こしたエンド・オブ・ザ・ワールドのことについて報道している。
しかし、世間にはあの事件のことはあまり認知されていない。というのもあの時、街の住民達はそのほとんどが生気を吸われ、気絶させられていたために何があったのか覚えていないからだ。唯一、学校のグラウンドでの戦闘が激しかったため、その攻撃の爪痕のことは大きく報道されたが。
そのため、新聞やテレビでは『原因不明! 集団催眠か、もしくは新種のウイルスか?』、『公立高校でテロ? 校庭に巨大な爆発跡が』、『嘘か真か、近隣住民からモンスターを見たという証言が!』といった見出しで報道されていた。
といっても、誰も覚えていないんだからその事件は既に住民達の記憶から忘れ去られようとしていた。学校のグラウンドも、この1週間の間に工事が進められており、もうほとんど元通りだった。
「…そうだな」
ウェムコの呟いた言葉に、俺は短く答える。
ルインがいない時はこんな生活当たり前だったのに…なのに、今じゃウェムコもいるのに何故か淋しい…。
あの時発動した謎のカード、『超融合』はいつの間にか俺のデッキから消えていた。
デミスが最後に俺に言っていた、〝覇王″という言葉の意味も気になる…。
「くそっ…!」
わからない事だらけだった。
せめてルインが居れば…。
「必ず帰るって…約束したじゃんか…」
俺はデッキの中から『破滅の女神ルイン』のカードを取りだす。精霊としてのルインが宿っていたカードだ。
しかしルイン無き今は、それはただのカードだった。
「ルイン…」
『破滅の女神ルイン』のカードを両手で抱く。
本当に死んじまったのか…? そう思うと…また涙が溢れてきた。
「帰ってきてくれよ…ルイン…」
俺の涙が…カードの上に落ちた。
カッ!!
「…えっ!?」
その時、急にカード光り始めた。
突然の出来事に俺もウェムコも動転している。
「これって…まさか…!」
光が止むと…目の前に一人の女性が立っていた。
流れるような銀色の長髪…碧い瞳…そして手には赤いロッドを握っている。
「我が名は『破滅の女神ルイン』。主のお呼びに与り、ここに顕現した」
俺と初めて会ったときと一言一句同じセリフで俺の前に出現した女性…。
「…なんてな。ただいま、主」
そう言って優しく微笑む女神…見間違えるはずもない!
ルインだった。
「おおおおお前本当にルインなのか!?」
「ああ、心配かけて済まなかったな。主、ウェムコ」
「本当に本物なんだな!? ものマネ幻想師やコピックスが化けてるんじゃないんだな!?」
「むっ、そんなに言うなら触ってみろ」
ルインは俺の手をとると自分の胸に押し付ける。
「どうだ、幻想でも幻影でもない。本物だろう?」
「ああ、本物だ……って、お、おまっ! いきなり何を…!」
「? 何って何がだ?」
「な、なんでもない! わかったから!」
俺は慌ててルインの胸から自分の手を引き離す。
…てか、小さいと思ってけど…意外と弾力があるんだな。…って俺は何を考えてるんだ!
確かに実感があった…このルインは幻なんかじゃない! 本物のルインなんだ!
「ルインさーん!」ガバッ
「うおっ! こらウェムコ、いきなり抱きつくな!」
よほど嬉しいのかウェムコはルインに抱きついてきた。
「今まで何処に行ってたんですの?」
「ん…まぁそれについての話は後だ。何はともあれ、改めて言わせてもらう」
ルインが真っ直ぐと俺の方へと向き直る
「ただいま、主」
「ああ、おかえり、ルイン」
約束通り、今夜は御馳走を用意しないとな。
というわけで3話に渡って書いてきたデミスによるエンド・オブ・ザ・ワールド発動篇でした。
主人公のチート技、真眼ドローはどこぞの「最強デュエリストのドローは全て必然、ドローカードさえも創造するドロー」に影響されて考えてみましたw
でも、こちらの方はあくまでデッキの一番上のカードがわかるだけ。漫画版5D'sでアキさんがやってた予見ドローに近いです。
なお、この能力はマアトがいないと使えないのでおそらく今後のデュエルではマアトがいない限りは出ないと思われます。(まぁマアト自体、召喚しにくいモンスターだからそんなバンバン出たりはしないと思うけどw)
そして明らかになった主人公の名前。
ぶっちゃけ、これといったこだわりはないですw ただ光属性のモンスターを多く使うので「天」とか「煌」といった漢字がつかいたかったのです。そして主人公だからやっぱり「遊」の字も。
どっかの名人様メダロッターに名前が似ているのは御愛嬌w
ちなみに、今まで召喚したモンスターの召喚口上にもちゃっかり「煌」の字が入ってたりします。(ライトエンド以外だけど)
さて、ここらへんでああっ破滅の女神さまっ、「女神様との日常編」はお終いとなります!(いつそんな編ができたって?今考えた!)
次回からは…少しシリアスな感じに。「覇王の胎動編」となります。
さっそく次回から新キャラも出てきますので、お楽しみに!