遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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破滅の女神ルインを呼びだした主人公は、女神との生活に備えて必要な物を買いにデパートまで行くが…?


第2話:「女神様との楽しい(?)お買いもの」

「こんなもんかな」

 

一人机に向かっていた俺は、たった今組みあがったデッキを机の上に置いて小さく呟いた。

ルインが現れて一日経った今日、俺は『破滅の女神ルイン』と、それ専用の儀式魔法カード、『エンド・オブ・ザ・ワールド』のカードを、なんとかしてデッキに組み込もうと模索していたのだ。元々、俺のデッキは儀式専門のデッキではなかったのだが、この二枚のカードの投入により俺のデッキの方向性がガラリと変わった。

 

「さて、今日はどうするか…」

 

デッキが組みあがってひと段落した俺は、休日の午後をいかにして過ごすかを考えた。

 

「なぁ、ルイン」

 

「む?」

 

俺の部屋の端でずっと膝を抱えてテレビを見ているルインに、俺は声をかける。

 

「今日の午後、どこか行きたい場所はあるか?」

 

「私は特に…一日中このテレビという物を見ていてもいいのだが」

 

どうやらこの女神様、テレビをさぞ気に入ったご様子だ。

全く…テレビが好きなカードの精霊なんて…。

 

「そういえば、カードの精霊は他人には見えないっていう噂があるんだが、お前はどうなんだ?」

 

限られた者にのみ見ることができるとされているカードの精霊…その存在が見えない人に対しては、見える者がただの不思議ちゃんか電波扱いされるという話をよく聞く。

 

「主よ、私をそんじょそこらの精霊と一緒にされてもらっては困るな」

 

「どういう意味だ?」

 

テレビから目を離すことなくルインは話を続ける。

 

「精霊は精霊でも、私は女神という存在だ。他の精霊とは精霊としてのランクが違う。故に一度この世界に顕現すれば、主以外の人間でも私の姿を目視することができる」

 

「ようは俺以外でも姿が見えるってことか…よし」

 

それを聞いて俺はある決心をし、席を立ち、ルインの元に歩み寄る。

 

「どうした主?」

 

ようやくテレビから目を離し、俺の方を見上げて不思議そうな顔をするルイン。

 

「午後の予定が決まった。俺と一緒に買い物しに街に行くぞ」

 

「私も行くのか?」

 

「当然。お前の姿が誰にでも見えるっていうなら、まずは普通の服を手に入れなきゃいけないからな」

 

俺はルインの着ている不思議な紋様が描かれたノースリーブの服と、頭に付けている被り物を指さして言う。

いくら本物のカードの精霊とはいえ、その存在をおおっぴらに世間に広めるわけにはいかない。出来うる限りこのルインには普通の人間としての振りをさせておかないと…。

 

「うむ…わかった、主の命令とあれば仕方ないな」

 

ルインは大人しくテレビのリモコンを手にし、テレビの電源を切る。

 

「では、行くとしようか主」

 

「待て!」

 

なに食わぬ顔で部屋を出ようとするルインに俺は待ったをかける。

 

「なんだ?」

 

「その格好で外に出るわけにはいかないだろ…」

 

 

 

 

 

―――――第2話:女神様との楽しい(?)お買いもの―――――

 

 

 

 

 

「あ…主よ…この格好はさすがに…」

 

「我慢してくれ」

 

そんなこんなで俺とルインは街に出ることになった。

で、問題なのはルインの格好なのだが…さすがにあの格好のまま表を歩かせるわけにもいかず、今は俺が授業で体育のときに使うジャージを着せている。

幸い彼女の背が高いおかげで、男用のジャージは無理なく着せられたのだが…それでも長い銀髪に不釣り合いなのには変わらず、周囲の注目を集めることになった。

…某ジャージ部の部長が見たら勧誘されるかもな。

 

「これからどこに行くのだ?」

 

「ひとまず、デパートに行こう。服もあるし、他にも食品とか買い物しなきゃいかんからな」

 

………

……

 

「おお! なんだこの動く階段は!?」

 

「エスカレーターだよ」

 

デパートに到着して早々、ルインは動く階段ことエスカレーターに驚きの声をあげた。

現代の知識はテレビで学んだらしいのだが、どうやらエスカレーターの存在まではまだテレビでは見なかったらしい。

俺が先にエスカレーターに乗ると、ルインもタイミングを見計らいながらおそるおそるエスカレーターに乗る。

 

「おっ…おおぅ」

 

歩かずとも自動的に上に昇っていく階段の乗り心地に、最初はおっかなびっくりの様子だったが、すぐ慣れたようで降りる頃にはこんな事を言い出した。

 

「なるほど、乗っているだけで前に進むのか。これはなかなか楽しいものだな! よし、もう一度乗ってくる!」

 

「頼むからやめてくれ」

 

………

……

 

「さぁて、まずは服を……ってあれ?」

 

エスカレーターを乗り継ぎ、婦人服売り場まで来た俺だったが、ふと後ろを振り向くとさっきまで後ろに付いてきていたはずのルインの姿がない。

全くあいつ…どこに行ったんだ?

こんな広いところであんな右も左もわからない女神を野放しにすれば、何をしでかすか分からない…。急いでルインを探そうと、俺は上ったエスカレーターを一旦降り、下りのエスカレーターに乗ろうとした…その時。

 

ピンポンパンポーン

『迷子のお知らせを申し上げます』

 

突然チャイムと共に場内アナウンスが流れた。

 

『え~…破滅の女神のルイン様の主様。迷子センターにて―……』

 

この時、俺はすでに脇目も振らず走り出し、迷子センターへと駆け抜けていった。

 

………

……

 

迷子センターに到着し、俺はその扉を開ける。

 

「ルイ……なっ!?」

 

そこで俺が目にしたのは…何とも衝撃的な光景だった。

 

「や、やめっ…こらっ! やめろ~~!」

 

「あははっ! おねえちゃんよわ~い!」

 

「なんでじゃーじなんて着てるの~?」

 

「こ、こらっ! 服を引っ張るな!」

「ねぇ、なんでおねえちゃんのかみぎんいろなの~?」

「痛っ! ちょっ、か、髪はやめろ! 髪は引っ張るな~~!! わ、私は破滅の女神なんだぞぉ!?」

 

迷子センターにいた、迷子になっているちびっ子達に襲われ……もとい遊ばれていた。3、4人の男の子や女の子に圧し掛かられている。

 

「あ、ルインさんの主さんですか?」

 

面白いのでしばらく見ていたら、迷子センターの係のお姉さんが俺に話しかけてきた。それにルインも俺の存在に気づいたらしく、

 

「あ、主! た、助けてくれっ!」

 

少々涙目で俺の後ろに隠れた。女神がちびっ子を恐れてどうする…。

 

「あ、すみません。うちの……えっと、姉がお世話になって」

 

言った後でなんだが、正直この嘘はどうかと思った。だって片やのどこにでもいる普通の純日本人の青年と、片や髪が銀色で十人に聞いたら十人とも美人だと言うほどの整った顔立ちをしている破滅の女神様だぜ? ジャージ着てるけど…。

 

「お姉さんなんですか?」

 

「あ、はい。つい最近まで海外に住んでたものですから、その…ここでの常識がちょっと…」

 

やはりこのごまかしは無理があるか…と思ったが。

 

「あぁ、そうなんですか。次からはお姉さんから目を離さないでくださいね」

 

「は、はい」

 

意外にも物分かりの良いお姉さんでホッとしつつ、俺はルインの手を引いて迷子センターの扉を開けた。

 

「ばいば~い、めがみのおねえちゃん!」

 

「またカイバーマンごっこしようね~」

 

その際、何人かのちびっ子達に見送られた。

 

「う…うむ、バイバイ」

 

若干引きつった顔をしてルインは応え、俺とルインは迷子センターを後にした。

 

「ルイン…またなんでこんな所に?」

 

「い、いや…あの動く階段に乗っていたら、いつの間にか…」

 

ルインは申し訳なさそうにうつむく。

 

「はぁ…お前なぁ、これからは俺の傍を離れるなよ?」

 

「わ、わかっている!」

 

先ほどのちびっ子との戯れがトラウマになってしまったのか、微妙に落ち込み気味なルインを引き連れて、俺達は買い物を続行した。

 

………

……

 

「へぇー、新しいストラクチャーデッキ出たんだ。今度は海竜族が主体のデッキか」

 

おもちゃ売り場にて、俺は新発売のデュエルモンスターズの新しい構築済みデッキを見ていた。

 

「おい主、この『ぶらじゃー』というのはどうやって使うんだ?」

 

その時、またどこかに行っていたルインは、この場にもっとも相応しくない物を手に持って、俺の前に広げて見せてきた。

 

「黒か………じゃなくて! そんな物どっから持ってきた!?」

 

「あそこの〝らんじぇりーうりば″と言う所からだが」

 

と、ルインは女性用下着売り場の方を指さしながら答えた。

 

「すぐに戻してこい!」

 

「何故だ? あ、そうだ。私にはよく分からないから主も一緒に来て選んでくれ。よくは知らないがこれは女性が……って、なぜ主は顔が赤いんだ?」

 

「いいから戻してこい!!」

 

俺の顔に覗き込んでいるルインの手を引いて、ルインが持ってきた下着を元の場所に戻しに行った。その際、周りの人からのクスクス笑いが心に痛かった…。

 

………

……

 

「はぁ…なんだか凄く疲れてきた」

 

「いや~、買い物とはなかなか楽しいものだな」

 

こっちは全然楽しくない!と、心の中でルインにツッコミつつ、俺は何気なく掲示板に張られてある広告を目にした。

 

「デュエルモンスターズの大会…? 今日午後三時から屋上でか」

 

どうやらこのデパートで、これからデュエル大会が開かれるらしい。

 

「へ~、優勝賞品はこのデパートで使える一万円分の商品券か。新デッキも試してみたいし、ちょうどいいかもな」

 

「なんだ主、この大会とやらに出るのか?」

 

「ああ。参加自由らしいし、優勝すれば商品券貰えて金も浮くし、デッキもデュエルディスクもカバンの中にあるしな」

 

そう言って俺はカバンの中にあるデュエルディスクとデッキをルインに見せる。

デュエリストたる者、この二つは常に持ち歩いてないとな。

 

「このデッキに、私のカードが入っているのだな」

 

「そうだ。受付は二時半からか…よし、すぐに屋上に行くぞ」

 

「うむ、わかった」

 

俺達はエレベーターに乗り、屋上へと向かう。

その際にまたルインが「動く部屋だ~」と言って騒いだのは、言うまでもない…。




女の子のジャージ姿って…なんかいいよね!

というわけで今回はお買いもののお話です。
冒頭の膝を抱えてテレビを見るルインの姿はアストラルをイメージしましたw
それにしてもこの女神、ダメダメである(主に託児所のあたり)

次回はデュエル回です!
対戦相手のデッキはまさかの…!?
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