しかし、遊煌は自分の中に宿った“覇王”という存在がどうしても気になる。
そんな時、ルインは覇王のことを知るとある2人の精霊を遊煌の前の呼び出す。
その精霊とは…?
第20話:「二人の天使 ~Twin Angel~」
「……ここは……どこだ…?」
薄く目を開けて見てみると、周りは全て光、光、光…全てが光に包まれていた。
私は…その光の上を力なくただフワフワと浮いていた。
ああ…そうか。私は死んでしまったのか…。ごめんな、主…主との約束、守れそうにないな…。
―諦めては、いけない―
誰…? 誰だ?
私に…語りかけるのは…?
―破滅の女神ルインよ、貴女はまだ死んではいない―
この声…私は昔どこかで…。
―覇王の意識が宿ってしまったあの青年を守ってあげられるのは、貴女だけ…―
覇王…? あの青年とは…もしかして主のことか…?
―彼の元に戻るのです、破滅の女神ルイン。更なる危機が、彼に迫っている…―
謎の声はそこで途切れた。
その瞬間、何故か私の意識はハッキリとしていき、感覚が鋭くなる。
この感覚…主が私を待っている…?
―――――第20話:「二人の天使 ~Twin Angel~」―――――
「さて…そろそろ話してくれるか?」
「わかった」
約束通り、ご馳走を作ってルインに振る舞った後、俺はあの後ルインの身になにがあったのかを聞くことにした。
いくらルインが俺達の元に戻ってきてくれたのが嬉しいといっても、あの時ルインに何があったのか…それを知る必要が主である俺にはある。
ルインは落ち着いた口調で話し始めた。
「エンド・オブ・ザ・ワールドを止めるために全ての力を使い果たした私は、この世界で肉体を維持できるほどの力が無くなってしまったために、消滅した」
「消滅したって…それじゃあお前やっぱ死んだのか!?」
「死というよりかは…我々精霊は力を使い果たすとこの世界で具現化できる肉体が無くなってしまったため、魂だけの存在になったのだ」
「魂…それで、どうしたんだ?」
「うむ…実体の無くなってしまった私は、意識体だけの存在となり、しばらく次元の狭間の中でただ流されていた…その時だった。何者かの声が聞こえてきた」
「声…?」
「それは一体誰の…?」
「姿は現さなかったが…あの声に私は聞き覚えがある。あの声は確かに…デュエルモンスターズ界の天界を統べる王、シナトのものだった」
「シナト…? シナトってあの、『天界王シナト』のことか?」
ルインの言うシナトなる人物…その名前には俺も聞き覚えがある。実際のデュエルモンスターズの中にも、『天界王シナト』というモンスターがいるからだ。
「うむ、その声に導かれるままに次元の波を越え、今ここにこうして復活を果たしたというわけだ」
「そうだったのか…」
経緯はどうあれ、ここにこうして以前と同じようにルインがいてくれている、それだけで俺は満足だった。
「だが…シナトは気になる事を言っていた」
「な、何を言っていたんだ?」
「…」
俺が聞くが、ルインは口を噤んでしまった。どうやら言おうか言わまいか迷っているようだった。
「ルイン、俺はお前が戻ってきてくれて本当に嬉しいと思ってる。できるならこれからずっと平和に過ごしていきたい。でもお前が今言おうとしていることは、その平和を壊してしまう可能性がある。だから言いたくないんだろ」
ルインはコクリと無言で頷いた。
「ならなおさら話してほしい。せっかく戻って来たこの平和が、なんの前触れもなく壊れるなんて、それこそ俺は嫌だ。だから、せめてその危険に対する準備をするためにも、俺は知りたい」
「…わかった」
俺の決心をわかってくれたのか、ルインは話してくれる気になってくれたらしい。
「シナトはこう言っていた…『更なる危機が、主に迫っている』と…」
「更なる危機…それは一体どんな危機なんだ?」
「…わからない。そこまでは言っていなかった」
ルインは知らないか…だが俺にはなんとなくわかる。
あの時発動した謎のカード…『超融合』。デミスが最後に呟いた〝覇王″という言葉…そしてなによりも、あのカードを発動した時に俺の中に入ってきたドス黒い感情の塊…。
具体的なことはいえないが…それでも俺にはわかる。これから先、俺の身には何か危険な事が起ころうとしていることが。
そしてデミスの事件がまだ、序章だということが…。
「なので、強力なアドバイザーを2人ほど、呼ぶことにした」
「アドバイザー? 誰なんだそれは一体?」
「主は確かデッキに『デュナミス・ヴァルキリア』と『勝利の導き手フレイヤ』のカードを入れていたよな?」
「あ、あぁ」
唐突にルインの言った2枚のカード。それは確かに俺のデッキに入っている天使族モンスターだ。『デュナミス・ヴァルキリア』は効果を持たない通常モンスターだが、攻撃力が高いので主にデッキの主力モンスターとなっている。『勝利の導き手フレイヤ』は能力値は低いが、他の天使族をサポートする能力を持っている。
「ならば、そのカードをここに持ってきてはくれないか?」
「わかった…ちょっと待ってろ」
ルインが何をしようとしているのか…なんとなーくわかった気がする。
………
……
…
俺は二階の部屋から二枚のカードとデュエルディスクを持って来た。
ルインの言っていた『デュナミス・ヴァルキリア』と『フレイヤ』のカードだ。
「これでいいか?」
「うむ、ではディスクにカードをセットしてくれ」
俺は言われるままにディスクを起動させ、二枚のカードをセットする。
ルインをディスクの上に両手を翳し、何か呪文のようなものを唱える。すると、青白い光がボウッとルインの掌から光り、2枚のカードを照らしていく。
直後、ディスクから眩い閃光が放たれ、俺とウェムコは目を瞑った。
しばらくすると閃光は止み、おそるおそる目を開けると…そこには二人の天使の少女が立っていた。
一人は短く切り揃えられた紫色の髪に青い瞳、白い大きな機械的な翼を持つ天使。
もう一人の天使はチアガールがよく使う赤いボンボンを二つ持ち、肩まで届く青い髪にアホ毛が二本の少女。
間違いない…カードイラストやソリッドビジョンでよく見る『デュナミス・ヴァルキリア』と『勝利の導き手フレイヤ』がそこには立っていた。
「…」
「…」
二人は目を開けると、何も言わずに周囲を見回す。
そしてフレイヤの視線がルインを捉えるとパァっと表情が一気に明るくなりこう言った。
「お……お姉さまあぁぁ♪」
ガバッ
「こ、こらフレイヤ! いきなり抱きつくな!」
「嫌ですぅ! フレイヤは…フレイヤはずっっっと寂しかったんです! だからルインお姉様とこうしていたいですぅ♪」
ああ、なるほど…フレイヤってこういうキャラなのか…。
しばらく攻めフレイヤと受けルインの禁断の愛劇場を見ていた俺だったがウェムコが止めに入った。
「ほ、ほら…フレイヤちゃん…でしたっけ? ルインさん嫌がってるみたいですし…」
「やーでーすー! フレイヤはお姉様と一つになりたいんですー!」
何か意味深で危ない事言ってるぞこの娘…。
「天領遊煌…貴方が私のマスター殿ですね?」
「あ? ああ、そうなるな」
呼びだしたのはルインだが、このカードの所有者は俺だ。だから必然的に、この2人のマスターは俺という事になる。
「お初にお目に掛かります、マスター殿。そして救世の美神殿。私は『デュナミス・ヴァルキリア』、以後『キリア』とお呼び下さい」
ヴァルキリアはお辞儀をし、落ち着いた口調で俺に挨拶した。
「ああ…こりゃどうもご丁寧に」
ヴァルキリア…いやキリアはこういうキャラか。今までのより幾分常識がありそうで少し安心した。
「それではマスター殿、早速話の方へ」
「そうしたいんだが…あいつらはいいのか?」
俺は相変わらず絡み合っているルインとフレイヤを指さした。フレイヤは自分の唇でルインにちゅーしようとしているようだが、ルインの手がフレイヤの身体と頭を掴んで自分の方へ来ないよう必死だ。
するとキリアはスタスタと歩いていくとフレイヤの首根っこを片手で掴んでルインから引きはがす。
「うひゃあ!?」
「こらフレイヤ、女神様は嫌がっているぞ。戯れもそこまでにしないと、お前だけ天界に送り返すぞ」
「うー…すいませんキリア先輩…」
それを聞き、しょんぼりと大人しくなるフレイヤ。
よかった、どうやらキリアはかなり出来る娘みたいだ。
「二人は私が天界にいた頃の友人のキリアとフレイヤだ」
「フレイヤです! どーも♪」
ルインが改めて二人を紹介した。
キリアがフレイヤから手を離すと、フレイヤは満面の笑みで俺たちに自己紹介した。
フレイヤも結構アレだが、しかしこの笑顔を見る限りなかなかいい娘のようで安心した。
「最初は私一人で来るはずだったはずなのですが…フレイヤも付いて行くときかなくて…マスター殿、何分御迷惑をお掛けするかもしれませんが…」
キリアが深々と頭を下げた。
「ああいや、俺は別に気にしないから」
こうなりゃ三人も四人も大して変わらないしな。
「では、そろそろ本題の方に」
それぞれの紹介が終わると、キリアの表情が険しくなり、皆の顔も真剣になる。
まずは話し合いのためにみんなでテーブルにつくと、まずはキリアが話し始めた。
「今から数十年前の話になりますが…デュエルモンスターズ界に『覇王』と名乗る闇のデュエリストが現われ、世界を支配しようとしました」
「覇王…」
忘れるはずはない。
デミスが最後に俺に言った言葉…。
「元は純粋な心を持つデュエリストだったのでしょう。しかし、何があったのかはわかりませんがそのデュエリストは悪の道に走り、覇王となりました」
キリアは更に話を続ける。
「覇王その有り余る力で猛威を振るい、各地のならず者やモンスターを従えてやがて巨大な軍隊を作りあげ、世界を支配しようとしました。そして覇王の力の象徴とも言えるカードが…『超融合』のカード」
「『超融合』…」
俺はあの時聞いた謎の声と、いつの間にか俺の手の中にあった謎のカードの事を思い出した。
あれ以来あの声は聞いていないが…あれが覇王だったのだろうか…?
そして『超融合』のカード…あのカードも発動したのは一瞬だったが、その強大で禍々しい力の渦に何もかもが呑みこまれてしまうような…そんな感じだった。
「『超融合』はフィールドのあらゆるモンスターを融合し、全く新しいモンスターを作り上げる無敵のカード…さらに『超融合』の発動を無効にする事はできません」
「絶対無敵のカードってわけか…」
何そのチート効果…。
だが、皮肉にもあの時はそのカードのお陰でルインはマアトへと姿を変え、あの窮地を脱することができたんだ。
もしあの時にあの奇跡が起こらなかったら…今頃俺たちは…いや、世界は今の形を為していなかったな。
「その後、本格的にデュエルモンスターズ界全土に攻撃を仕掛ける前に、覇王の元仲間数名が城に乗り込み、見事覇王を討ち倒しました。それにより、覇王だったデュエリストも正気を取り戻し、覇王の軍も散り散りとなり、世界の平定は守られました」
「結局覇王は何がしたかったんだ?」
「それはわかりません…本当に世界の支配が目的だったのか…あるいは別の理由だったのか…今となっては誰にもわかりません」
元覇王だったデュエリスト…そいつが何者であったにしろ、自分の心をそこまでの闇に堕とすとは…よほど心に深い傷を負った出来事でもあったのだろうか…。
「話はまだ終わりません。実は…覇王の配下の幹部の一人に、デミスらしき人物がいたと…」
「何だと!? でも…あいつはお前と同じ様にカードに宿っていた精霊だったんじゃなかったのか!?」
俺はルインを見る。
元々カードに宿っていた精霊だというのであれば、それがデュエルモンスターズの世界にいて、覇王の部下になっていたというのはどう考えても不自然だった。
すると、俺の質問に対しルインは少し視線を落とし、呟くように答えた。
「…主、実は私もデミスも単なるカードの精霊ではない…私達二人は…とある罪によってカードに魂を封印されていたのだ…」
「罪…だって…?」
二人の犯した罪とは一体何なのか…主である俺は知っておかなければならないと思ったが…ルインの表情を見る限り、とても辛い過去のようだ。無理やりに詮索するのは良くないのかもしれない…。
それに、今は覇王とデミスのことを知るのが先決だった。
俺はそれ以上はもう何も言わず、キリアもそれを察したのか話を続ける。
「デミスの封印を解いたのは覇王でしょう。しかし、覇王といえどもデミスのあの強大すぎる力を支配するのはかなり難儀したことでしょう。そこで、デミスの魂は二つに分けられ、二人の魔術師と魔導師の姿になっていたらしいです」
あんなに強いなら…確かに魂を二つにして、力を分散させるだろうな。
しかし…あれほどの力を持つデミスを従えるとは…それだけで覇王の持つ力の鱗片が伺える。
「その後、覇王の元仲間のデュエリストにデミスも同じく倒され、再封印されました」
「その再封印したデミスを、この世界のどっかの誰かがまた解放したってわけか…」
全く、誰だよそんな大バカ野郎は…。
「デミスの事はわかりました。しかし…倒された筈の覇王は再び主様の中に現れた…これはどういうことなんですの?」
ウェムコは今俺が一番気になっている事をキリアに尋ねた。
「数十年前、デュエルモンスターズ界に現れた覇王は異世界のデュエリスト達の手により討伐され、確かに消滅しました。いえ…正しくは消滅したと〝思われていた″というべきですね」
「というと?」
「そもそも、覇王とは実体を持たぬ悪しき闇の権化…元覇王だったデュエリストはその覇王を己の元に従え、その力を自由にコントロールすることができるようになりました。しかし、覇王の闇の意識はその時に抜け落ち、あらゆる世界を回りながら心に闇を持つ者を探し、そしてマスター殿に憑依したものと思われます」
「それが俺にとり憑いた覇王の正体ってわけか…」
覇王の闇の意識…つまりは闇の中の闇…。
元々覇王とはその覇王だったデュエリストの心の闇が生み出したもう一つの人格…その闇部分だけが俺の身体に乗り移ったっていうんだから…こいつは厄介そうだ。
「しかし…主には心の闇なんてものがあるのか?」
ルインが俺に聞いてきた。
確かに、心の闇を餌にしてるなら今現在心に闇など抱いていない俺の身体に、覇王は何故興味を持ったのか…?
「これはあくまで私の推測ですが…もしかしたら覇王は心の闇以外にも餌にしている物があるのかもしれません」
「何だよそれは?」
「それはわかりませんが…マスター殿、ここ最近覇王の気配はありますか?」
「いや、ルインが消えた時から気配も声もしないが…」
「そうですか…ではしばらくは様子を見るしかないようですね」
確かに、実体が無いうえにこうも気配がないんじゃどうしようもない。
「皆、俺の為に済まない」
俺の事をこんなにも心配してくれているみんなに対し、なんだか申し訳なく思ってしまい、頭を下げる。
「何、気にするな。何と言っても私の主なんだからな」
ルインはそう言うと俺を励ましてくれた。
しかし直後…、
「…チッ」
誰かの舌打ちとともにすさまじい殺気がしたような気がしたが…気のせいか?
「と、とにかく今日は皆疲れただろうしそろそろ終わりにしよう。キリアとフレイヤも今夜はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます、マスター殿」
「…ありがとうございます」
あ、そういや部屋数が…。
「しまったなぁ…ウチ、部屋が四つしかないんだ、誰かが相部屋しないと…」
この家の2階には元々、俺の部屋、親父の部屋、母親の部屋、そして物置として使っていたもう一つ空き部屋の、計4つの部屋がある。空き部屋の荷物は全て蔵の中に移動させてあるから、間接的に4つの部屋が使える状態になっている。
しかし、現在今ここにいるのは5人…どうやっても部屋が一つ足りない。
しかし、「相部屋」という言葉を聞いた瞬間、フレイヤの顔がぱぁっと輝いた。
「…!! じゃあ私、お姉様と…―!」
「駄目だ、フレイヤは私と一緒に…っと、やはりマスター殿、貴方の部屋でフレイヤを一緒にしてはもらいませんか?」
「「え″ぇっ!?」」
キリアの突然の提案に俺はかなり動揺した。
いや、俺だけではない。フレイヤも同様に、俺と同時に「まさか!」という声をあげた。
そりゃそうだろう…だって年頃の男子と女子が一緒に寝るなんて…。
「ウェムコの部屋は…」
「すいません主様、私の部屋は少々狭いので…とても2人分のスペースは…」
そういやウェムコの部屋は一番小さい角部屋を使っていたことを思い出した。
なんでも、本人はあまり広い部屋は落ち着かないんだとか。
「あ、そうか…キリア、どうしても一緒は駄目なのか?」
「申し訳ありませんマスター殿、こればっかりは…」
キリアにも何か事情があるんだろうな。余計な詮索はしないでおこう。
「じゃあ…俺はまぁいいけど」
こうなっては仕方がない。俺は渋々承諾した。
………
……
…
「はぁ~あ、何で私がアンタみたいな男と一緒に寝なきゃいけないんだろ」
今、二階の俺の部屋には俺とフレイヤの二人きりだ。
しかし、ここにいるフレイヤはさっきのとはまるで別人だった…。
「ちょっと、聞いてんの?」
「…ああ聞いてるよ」
さっきのしとやかそうな態度とは裏腹に、今のフレイヤはかなり高飛車だった。
どうやらこいつ…ルイン達の前ではいい顔していて、そうでない奴の前ではこういう態度を…あれ? なんかデジャブが…。
………
……
…
~小日向家~
「へーっくしょん! …ふふ♪ きっと誰かが私のこと褒めてるのね♪」
…
……
………
「それにしても狭くてきったない部屋ねぇ、ちゃんと掃除してんの?」
「大きなお世話だ!」
確かに床には脱ぎ散らかした服とか漫画とかが散らかってはいるが、急に俺の部屋で女の子と一緒に寝るなんて思ってもみなかったから片づける暇なんてなかったんだ…。
まぁこの程度はすぐに片付くので、俺は服や漫画を元あったところに仕舞う。
なんだかんだ言って女の子だし、物が散らかってるところに寝かせるわけにもいかないしな。
「あ、そうだ。アンタ今夜は床で寝なさいよ」
「なっ…!」
その言葉に俺は驚愕した。
だって…ここは俺の部屋だぞ!? ずうずうしいにもほどがあるだろ!
「アンタまさか、いたいけな乙女を床で寝かそうって思ってたわけ?」
「…」
反論の余地は…どうにも無さそうだった。
ったく、これのどこがいたいけな乙女なんだか…。
「それからもう一つ、もし私のベッドに入ってきたらその時は…わかってんでしょうね?」
「…」
私のって…それ俺のベッドなんだけど…。
もはや何も言う気力が起きず、俺はそのまま溜息をついて床にあぐらをかいて座る。
「ったく、ルインお姉様の主だか覇王だかなんだか知らないけど、もし私のお姉様に手を出したら…」
「…手を出したら?」
「その時は私も混ぜなさい」
「止めるんじゃないのかよ!?」
思わず突っ込んでしまった。
今のはもしかしてボケで言ったのか…いや、こいつのことだから案外本気で言ったのかもしれん…。
「ねぇ、アンタ今までお姉さまと一緒に暮らしてたんでしょ? じゃあお姉さまの入浴とか見た事ある?」
…いきなりなにを聞いてくるんだこいつは…?
「ばっ…バカ、な、何言ってんだ……ねーよ」
「え~、マジで~? もったいな~い。お姉様の裸、私天界の大浴場で何度か見た事あるんだけど…お姉さまの裸、すごく綺麗なんだから♪」
「へ…へぇ、そうかよ」
そういやルインの胸の感触……しばらく忘れられそうにないな…。
と、その時だった。
コンコンッ
『主~?』
ドアの外からノックと共にルインの声が聞こえてきた。
こんな話をフレイヤとしてたもんだから、不意に聞こえたルインの声に俺はかなりびっくりしてしまった。
「はーい! なんですかお姉さまぁ?」
と、ルインの声を聞いたフレイヤが勝手に部屋のドアを開ける。
ドアの前には、風呂上りで濡れた髪をタオルで巻き、パジャマ姿のルインが立っていた。
十分にあったまったのだろう、湯気があがり、顔を赤らめ、着ているパジャマのおかげで身体のラインがくっきりと表れている。
…で、さっきまであんな話をしていたから俺の視線は自然にルインのそんなところを見ていた。
(い…いかんいかん! 何を見てるんだ俺は!)
俺は頭をぶんぶんと振り、煩悩を振り払おうとする。
「主はなにをやってるんだ…? あ、風呂上がったから次主かフレイヤ、どっちか入っていいぞ」
「…あ、じ、じゃあ俺が先に…―」
「私先に入りまーす♪」
「入る」、とまで言い終わらないうちに、フレイヤが大きな声で俺の声をかき消すと同時に、手を上げてルインの視界から俺を遮った。
「そうか。ならフレイヤ、先に入ってくれ。後に主もいるからなるべく早くに上がってくれよ」
「はーい♪」
それだけ言うと、ルインはドアを閉めて自分の部屋へ戻っていった。
「じゃ、そういうわけで私お風呂入ってくるから」
「お、俺を先に…―」
ただでさえこいつらのことで疲れているのだから、せめて風呂くらいはなんとか先に…と言おうとしたが…こいつが俺の申し出なんか聞きいれるわけもなく…。
「はぁ!? 何
そしてこの言いようである。
ひでぇ…こいつ、天使どころか鬼じゃねぇか…。
「ま、アタシの残り湯を堪能できるんだから、ありがたく思いなさいよね♪ べー」
バスタオルを手に取ると部屋を出て、最後に俺にあっかんべーをするとフレイヤはうきうきと風呂場に向かって行った。
一人残された俺はそのままベッドに倒れ込み…そして軽く後悔した。
「何であんなの呼び出しちゃったんだろう…」
………
……
…
「…やっと…風呂に入れる…」
フレイヤが出てようやく俺が風呂に入る番になった。
「ったくフレイヤめ、一時間以上も風呂に入りやがって…ルインが俺が後にいるから早く上がれって言ってただろうに…何で女ってのは風呂に入る時間が長いんだか…光熱費もバカにならないんだぞ…」
…と、フレイヤへの不満を独り言で愚痴りながら、着替えを持ち1階の風呂場を目指し階段を下りる。
家の中が静かなのをみると、ルイン達はもう寝てしまったらしい。
風呂場の前に行くと、ドアノブを掴み、中へと入った。
「おや? マスター殿」
「ぬおっ!?」
だ…誰かいた。俺は変な声を出して慌ててドアを閉めてしまった。
見覚えのある綺麗な紫色の短髪に、聞き覚えのある声…。
あの大きくて白い翼とかなくて一瞬誰だか分からなかっけど、あれはキリアだ。
そういやキリアはまだ入ってなかったのか…いかん出直すか。
一旦部屋に戻ろうと踵を返すと、突然ドアが開き内側からキリアの手が俺を掴んだ。
「な、なんだキリア?」
そして、キリアは衝撃的な一言を俺に告げる…。
「よければ、一緒に入りませんか?」
「……は?」
随分と久し振りの更新となってしまいました…申し訳ないです!
というわけで、新キャラの『デュナミス・ヴァルキリア』のキリアさんと、『勝利の導き手フレイヤ』のフレイヤちゃんが新たに登場となりました。
前半は覇王の説明が主でしたが、後半はフレイヤの本性(?)がメインとなりましたねw
そして最後は…!次回をお楽しみにw