遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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『レアル・ジェネクス・クロキシアン』の召喚でヒータのモンスターを奪い、一気に優勢に立った遊煌。
しかしヒータも一筋縄ではいかず、さらなる戦術を用いて遊煌を追い詰める。
そして遊煌に明かされる衝撃の真実とは…?


第30話:「地獄の炎帝と炎霊」

「怒涛の攻撃だね、あのお兄さん」

 

「そうね、でもヒータもこのままじゃ済まさないでしょうね。ヒータの戦術は、『龍炎剣の使い手』を軸にしただけのものじゃないから」

 

「ヒーちゃん、がんばって~! 応援してるよぉ~!」

 

「ヒータ先輩! 勝ってくれなきゃ困るんですから絶対勝って下さいね!」

 

4人の霊使いの少女達はヒータに対してエールを送った。

 

 

 

 

 

―――――第30話:「地獄の炎帝と炎霊」―――――

 

 

 

 

 

「くっ…アタシのターン! ドロー!」

 

これでヒータの場にモンスターはいなくなった。だが、まだ厄介な『血の代償』が残っている…油断はできない。

 

「アタシは『ポケ・ドラ』を召喚!」

 

【ポケ・ドラ】炎 ドラゴン族 ☆3 ATK/200 DEF/100

 

ヒータの場に小さな炎を吐くかわいらしいドラゴンが現れた。

 

「『ポケ・ドラ』が召喚に成功した時、デッキから『ポケ・ドラ』1体を手札に加えることができる!」

 

ヒータのデュエルディスクがカードを1枚選び出し、それを手札に加える。

 

「さらにライフを500払い、モンスターを召喚する!」

 

「な、なにっ!?」

 

「どうしたよ?」

 

「お前…そんなにライフ払っちゃって大丈夫なのか…?」

 

あまりにも顧みずなヒータの行動に、敵であるはずの俺は思わず心配をしてしまった。

 

「ハッ! 人の心配なんかしてる場合かよ! アタシはどうあってもお前を許さないって決めたんだ…お前に勝って、アタシに恥をかかせたことを後悔させてやる!」

 

「…なぁ、さっきから聞きたかったんだが、俺お前に何かしたか?」

 

その一言でヒータの動きが止まり、顔を俯かせる。

俺が何事かと思っていると、突然拳を握ってフルフルと震え始めた。

 

「…お前、覚えてないのか…?」

 

「気絶してた時のことはあまり…」

 

俯いててもわかるくらいに段々と顔を赤らめるヒータ。そして蚊の鳴くような小さな声でボソボソと呟く。

 

「…―だろが」

 

「え、なんだって? よく聞こえないんだが…」

 

「あ…アタシのスカートずり下げただろうがっ!!」

 

軽く涙目になりながらヒータは叫ぶ。そのあまりもの大声にビリビリと空気が震え、一瞬の沈黙の後ギャラリーの観客達がざわざわと騒ぎだした。

 

「え…えぇ~!? そ、そんなの俺知らないぞ!?」

 

「そこの4人が証人だ! 聞いてみろ!」

 

ヒータが観客席にいるエリア、アウス、ウィン、ライナを指差した。俺はすごすごとステージを一旦離れてそこまで駆け寄り、4人に事情を聞く。

 

「な、なぁ…俺があいつのスカートずり下げたって…」

 

「うん、本当よ」

 

「ヒータが私の杖でお兄さんの脇腹突っついた時だったよね」

 

「ばっちり見えてたです…」

 

「私も見ました。いきなりヒータ先輩のスカート降ろすからビックリしましたよ」

 

Oh…マジですかー…。意識が朦朧としていたとはいえ、それは確かに女の子からしたらとんでもないことだし、俺が怒られてもしょうがないのかもしれない…。

…だけど。

 

「で、でもさぁ…そもそもあんな色気ない奴のスカート降ろしたって何の得にもならない気が…」

 

と、小声で愚痴を言ったつもりだったのだが…。

 

ピクッ

「…今…なんつった…?」

 

背後からドスの利いた声が聞こえてきた。

後ろを振り向くと…すぐ真後ろにヒータがいた!

 

「げぇっ! お前っ…!」

 

「今なんつったオラァ!!」

 

すごい剣幕で俺の胸倉を掴んでくるヒータ。そのままギリギリと締めあげられ俺の足が宙に浮く。こんな力どこから…!

 

「こ、こらこらヒータさん! 今はデュエル中ですから暴力は…!」

 

「…ふん!」

 

ドリアード先生が止めに入ってくれて、俺はその場に乱暴に降ろされた。絞められた首を擦り、咳をして呼吸を整え、なんとか立ち上がる。

 

「わかってますよ先生…こいつだけは…デュエルで決着をつけます!」

 

と、元の位置に戻った俺とヒータはデュエルを再開する。…ただし、ヒータだけは先ほどまでとは違い凄い剣幕だ。あの周りだけピリピリと明らかに先ほどまでとオーラが違う。こりゃどちらが勝っても負けても血を見ることになりそうだなぁ…まいった。

 

「さっきの続きだ! 『血の代償』の効果を発動! 『ポケ・ドラ』を召喚!」

 

ヒータ:LP900→400

 

「そして『ポケ・ドラ』の効果発動! だが、この効果は『エンペラー・オーダー』の効果で無効にし、1枚ドローする!」

 

なるほど、『エンペラー・オーダー』の効果で無効にできるモンスターは何も『龍炎剣の使い手』だけではないということか。どうやらヒータのデッキにはこの手の炎属性モンスターが多数入っているらしい。そしてこれでヒータの場に同じレベルのモンスターが2体並んだ。ヒータの残りライフ的にもう払う余裕はないはずだ…ということは、ここでエクシーズ召喚を狙ってくるか…?

 

「さらにリバースカード、『非常食』を発動! アタシの場の魔法・トラップカード1枚を墓地に送る度に1000ライフを回復する! アタシは『エンペラー・オーダー』を墓地に送り、1000回復!」

 

ヒータ:LP400→1400

 

「ここで非常食か…!」

 

これで最大あと2体モンスターを通常召喚できる。どうやらヒータは本気で俺を叩き潰すつもりらしい…その迫力に気圧されてしまい、少しこの後の展開が苦しくなってきたな…。

 

「さらにライフを500払い、『ポケ・ドラ』2体をリリース!」

 

ヒータ:LP1400→900

 

「リリース!? アドバンス召喚か!」

 

このためにステータスが低くてサーチ効果のある『ポケ・ドラ』を場に並べていたのか。2体の『ポケ・ドラ』の体が炎に包まれ、その炎が一つに交わると巨大な轟炎となって俺の前に熱風が吹き荒れる。

 

「『ヘルフレイムエンペラー』をアドバンス召喚!」

 

【ヘルフレイムエンペラー】炎 炎族 ☆9 ATK/2700 DEF/1600

 

轟炎は半人半獣の獅子の形に姿を変える。その燃え盛る熱波は俺のフィールドにまで届き、思わず腕で顔を覆うほどだ。

 

 

 

「出た! ヒータのエースモンスター!」

 

「あれに加えて激怒したヒータ…こりゃ手がつけられないわ。賭けは私の負けかなぁ」

 

エリアが叫び、アウスが頭を抱える。

 

 

 

「『ヘルフレイムエンペラー』の効果発動! このカードがアドバンス召喚に成功した時、墓地の炎属性モンスターを5体まで除外することで、除外した数だけフィールドの魔法・トラップカードを破壊する! アタシは墓地の『ポケ・ドラ』1体をゲームから除外し、お前の伏せカードを破壊する!」

 

「なにっ!?」

 

「焼き尽くせ、≪ブレイズ・パイロニクス≫!!」

 

『ヘルフレイムエンペラー』の手に燃え盛る炎の球が握られ、俺の伏せカードに向けて放たれる。放たれた炎は俺の伏せカードに燃え広がり、灰も残さず焼き尽くした。

 

「『女神の加護』が…」

 

「『血の代償』効果発動! ライフを500払い、『炎の女暗殺者』を召喚!」

 

ヒータ:LP900→400

 

右手に短いナイフを持った、大胆に肌を露出した女の暗殺者が現れた。

 

【炎の女暗殺者】炎 炎族 ☆4 ATK/1500 DEF/1000 リバース

 

「さらに、墓地の炎属性モンスター『ポケ・ドラ』を除外することにより、『インフェルノ』を特殊召喚する!」

 

【インフェルノ】炎 炎族 ☆4 ATK/1100 DEF/1900

 

「これで同じレベルのモンスターが2体並んだか…」

 

「いくぞ! アタシはレベル4の『炎の女暗殺者』と『インフェルノ』でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

『炎の女暗殺者』と『インフェルノ』は炎を纏いながら一つとなり、そこからさらに強大な炎を纏ったモンスターが誕生する。

 

 

 

 

 

   ―炎纏いし亡霊よ―

 

―灼熱の刃を滾らせ魂を狩り取れ!―

 

 

 

 

 

「エクシーズ召喚! 燃え盛れ、『ヘルフレイムゴースト』!!」

 

【ヘルフレイムゴースト】炎 炎族 ★4 ATK/2200 DEF/2000 エクシーズ

 

顔は綺麗な女性だが、それ以外の部位は全てが炎に包まれている不気味なモンスターが出現した。『ヘルフレイムゴースト』は肩に2つの刃を持つ鎌を担ぐと、俺の場のモンスターを一瞥する。

 

「『ヘルフレイムゴースト』の効果発動! オーバーレイユニットを一つ取り除き、このカードの攻撃力を相手のエンド時まで500ポイントアップさせる!」

 

ヘルフレイムゴースト:ATK/2200→2700

 

「攻撃力2700が2体か…!」

 

「いくぜ! まずは『ヘルフレイムゴースト』で『バルキリー・ナイト』を攻撃! ≪バーニング・ソウルシザース≫!!」

 

『ヘルフレイムゴースト』が鎌を振りかざし、それによって『バルキリー・ナイト』が一刀両断されてしまった。

 

「くっ…」

 

遊煌:LP1600→800

 

「続いて『ヘルフレイムエンペラー』で『レアル・ジェネクス・クロキシアン』に攻撃!≪ブレイズ・オブ・デストラクション≫!!」

 

『ヘルフレイムエンペラー』の両手に溜められた火炎が一気に放出され、『レアル・ジェネクス・クロキシアン』の巨体を包み込む。『クロキシアン』の黒鋼のボディは灼熱の炎によって溶かされてしまい、そのまま焼き尽くされてしまった。

 

「やるな…!」

 

遊煌:LP800→600

 

「どうだ! これでお前の場のモンスターは全滅、私のフィールドには攻撃力2700のモンスターが2体! 勝負はついたな!」

 

「…そんなこと、まだわからないだろう」

 

「ほう、言うじゃねぇか。変態じゃなけりゃその根性を見込んでやろうと思ったけどな。まぁ、アタシはこれでターンエンドだ!」

 

△△―――

□――――

ヒータ:手札1枚 LP400

モンスター:『ヘルフレイムエンペラー』『ヘルフレイムゴースト』

魔法・罠:『血の代償』

 

「この状況、引っくり返せるもんならやってみやがれ!」

 

 

 

「ヒータもなかなかやるね、あそこまでやられておきながら巻き返すなんて」

 

「わ、私だったら諦めちゃうかも…」

 

「おっかないわね~、女の執念ってのは」

 

「アウス先輩も女じゃないですか…」

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「ま、今だったらまだ土下座で許してやらんこともないぜ。男っていうのはそもそも諦めがかんじ…―ん!?」

 

べらべらと御託を並べているヒータの前に、幾本もの光の剣が出現し、モンスター達を囲む。その光の剣に臆してしまい、モンスター達は攻撃意欲を失くしてしまう。

 

「ひ…『光の護封剣』!?」

 

「そうだ。『光の護封剣』の効果により、相手プレイヤーは3ターンの間攻撃することができなくなる」

 

俺は手札の『光の護封剣』のカードを掲げながらそう言った。

 

「この土壇場でそんなカードを引くなんて…!」

 

「お前が『ヘルフレイムエンペラー』を召喚してくれたのがさっきのターンで良かったよ。次のお前のターンで召喚されたら、『光の護封剣』も破壊されてたからな」

 

「くっ…!」

 

これでなんとか3ターンは生きながらえることができる。この隙に攻める算段を立てておかないと。

 

「俺は『終末の騎士』を召喚!」

 

「さっき手札に戻したやつか…!」

 

「『終末の騎士』の効果でデッキから闇属性モンスターを墓地に送る。俺は『儀式魔人プレサイダー』を墓地に送り、ターンエンドだ」

 

ヘルフレイムゴースト:ATK/2700→2200

 

この瞬間、攻撃力を上げていた『ヘルフレイムゴースト』の効果が切れ、攻撃力が元に戻った。

 

△――――

□――――

遊煌:手札1枚 LP600

モンスター:『終末の騎士』

魔法・罠:『光の護封剣』

光の護封剣:0ターン目

 

 

 

「へぇ~なるほど、『A・ジェネクス・バードマン』はただの特殊召喚できるチューナーじゃなくって、ああいう風に召喚することによって効果が発動するモンスターを手札に戻して、また効果を使うということもできるわけね」

 

「ねぇアウス、考察はいいけどあの人が墓地に送ったモンスターって…」

 

「『儀式魔人』…つまりは儀式モンスターを使うってわけね。今時珍しいけど、どんなモンスターを使うのかちょっと楽しみね」

 

 

 

「私のターン!」

 

『光の護封剣』は3ターン攻撃させないという強力な効果を持っているが…ここでまたあいつが『ヘルフレイムエンペラー』のような魔法・トラップを除去するカードを引き当てたら…。

 

「チッ…ターンエンドだ」

 

ターンの終わりと同時に、ヒータのモンスターを阻めている護封剣の一部が消える。よかった、このターンは引かなかったようだ。

 

△△―――

□――――

ヒータ:手札2枚 LP400

モンスター:『ヘルフレイムエンペラー』『ヘルフレイムゴースト』

魔法・罠:『血の代償』

光の護封剣:1ターン経過

 

「俺のターン、ドロー!」

 

このカードか…よし、あとはあのカードさえ来れば…!

残り2ターンのうちに引き当てられるか…?

 

「カードを1枚セット。そして『終末の騎士』を守備表示にして、ターンエンドだ」

 

□――――

□■―――

遊煌:手札1枚 LP600

モンスター:『終末の騎士』

魔法・罠:『光の護封剣』、伏せ1枚

光の護封剣:1ターン経過

 

「アタシのターン、ドロー!」

 

ドローカード:『荒野の大竜巻』

 

(き、キター! よし、これであの邪魔な『光の護封剣』を破壊すれば次のターンからアタシが攻撃できるようになる…そうなればアタシの勝ちだ!)

 

…ヒータの表情が変わった。あの表情を見る限り、ドローしたカードは…。

 

「アタシはカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

このエンド時に『光の護封剣』はさらに光の剣が消え、ヒータを阻む剣は残りわずかとなった。

 

(にひひ…♪ 次のターンでてめぇは終わりだぜ!)

 

△△―――

□■―――

ヒータ:手札2枚 LP400

モンスター:『ヘルフレイムエンペラー』『ヘルフレイムゴースト』

魔法・罠:『血の代償』、伏せ1枚

光の護封剣:2ターン経過

 

 

 

「ヒータ先輩のあの顔…」

 

「十中八九『光の護封剣』を破壊するカードを引いた顔ね」

 

「ヒーちゃんっていつも顔に出やすいよねぇ…」

 

「隠し事ができない子なのよ。さ、お兄さんはこのターンでどうするのかしら…」

 

 

 

リバースカードか…それにあの顔、おそらくは『光の護封剣』を破壊するトラップカードか。ということはこのターンでなんとかしないと…俺は負けちまうってことか。

頼む…あとは“あのカード”だけなんだ! このドローで…来てくれ!

 

「っ…ドロー!」

 

…よし、いける!

 

「俺は儀式魔法、『エンド・オブ・ザ・ワールド』を発動!」

 

「ぎ、儀式魔法だとぉ!?」

 

「自分のフィールド・手札から決められたレベル分モンスターをリリースすることにより、指定された儀式モンスターを呼び出すことができる! そして墓地の『儀式魔人プレサイダー』の効果発動!」

 

「墓地からモンスター効果!?」

 

「『儀式魔人プレサイダー』は墓地に存在する場合、このカードを除外することで儀式召喚に必要なリリース分とすることができる。『プレサイダー』を除外し、さらに場の『終末の騎士』をリリース!」

 

「な、何を呼び出すんだ…?」

 

儀式魔法を発動すると青い光と共に魔法陣が出現し、墓地の『プレサイダー』とフィールドの『終末の騎士』の魂がそこに吸い込まれる。

 

 

 

 

 

―破滅を司りし混沌のイデア―

 

  ―煌めく天の名の下に―

 

―邪討ち祓う矛先となれ!―

 

 

 

 

 

「儀式召喚! 光臨せよ、『破滅の女神ルイン』!!」

 

輝く魔法陣の中央より出でし女神は、両手を広げて俺のフィールドに降り立つと、目を見開いて対峙するモンスターを見据えた。

 

【破滅の女神ルイン】 光 天使族 ☆8 ATK/2300 DEF/2000 儀式

 

 

 

「なんか出てきたよ!?」

 

「なんですか!? あのモンスターは…!」

 

「モンスターっていうか…女神?」

 

「綺麗ですぅ…♪」

 

 

 

「あのカードは…もしや…!」

 

ドリアード先生が『ルイン』を見て何か言いたそうだったが、今はデュエル中だ。構わずデュエルに集中することにした。

 

「な、なんだよ! 物々しく召喚したわりにはたかが攻撃力2300じゃねぇか! それじゃアタシの『ヘルフレイムゴースト』は倒せても『ヘルフレイムエンペラー』は倒せねぇぞ!」

 

「それはどうかな?」

 

俺はニヤリと不敵な笑みを見せる。さっきのターンでヒータが『ヘルフレイムゴースト』の効果を使っていたら決められなかったかもしれないが…それでもこのフィールドなら!

 

「行くぞ! 『破滅の女神ルイン』でまずは『ヘルフレイムゴースト』を攻撃!」

 

攻撃の命を受けた『ルイン』は片手に持ったロッドをくるくると回し、その先を『ヘルフレイムゴースト』に向ける。

 

「破滅への序曲、≪エンド・オブ・ハルファス≫!!」

 

ロッドの先端から閃光が迸り、『ヘルフレイムゴースト』に直撃し、獄炎の亡霊は破滅の光によって浄化されてしまった。

 

「くっ…効果使っとけばよかったぜ…!」

 

ヒータ:LP400→300

 

「この瞬間『儀式魔人プレサイダー』の効果発動! このカードを儀式の素材に使用したモンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

「だけど、そこまでだ! まだアタシの場には攻撃力2700の『ヘルフレイムエンペラー』がいる!」

 

「あぁそうだな。『破滅の女神ルイン』の効果発動! 戦闘で相手モンスターを破壊した時、もう一度続けて攻撃できる!」

 

「はぁ!? ちょっ…お前! 人の話聞いてなかったのか!? 2300じゃ2700には勝てねぇってガキでもわかるぞ!」

 

「『破滅の女神ルイン』で『ヘルフレイムエンペラー』に攻撃! 虚影潜功、≪シャドウ・ハルファス≫!!」

 

『ルイン』の背後の影が地面に溶け、そのまま一直線に『ヘルフレイムエンペラー』へと伸びる。『ヘルフレイムエンペラー』はその影を睨みつけると拳に炎を灯し、反撃へと転じようとする。

 

「この瞬間、リバースカード発動!」

 

「なっ…!?」

 

「速攻魔法、『月の書』! フィールドのモンスター1体を裏守備表示にする!」

 

「守備表示…? しまった…!」

 

ヘルフレイムエンペラー:DEF/1600

 

「『ヘルフレイムエンペラー』の守備力は1600しかない…!」

 

『月の書』の効果により、攻撃準備をしていた『ヘルフレイムエンペラー』の炎は消え、そのままカードの裏面を被って裏側守備表示へと変わる。そして迫る『ルイン』の影。影は裏守備表示の『ヘルフレイムエンペラー』は呑み込まれ、消滅した。

 

「あ…アタシの…エースモンスターが…」

 

「モンスターを戦闘で破壊したからカードをドローさせてもらうぞ」

 

ドローカード:『オネスト』

 

…もっと早くに来てくれればこのターンで決められたんだが…まぁいいか。

 

「俺はリバースカードを1枚セットして、ターンエンドだ」

 

△――――

□■―――

遊煌:手札0枚 LP600

モンスター:『破滅の女神ルイン』

魔法・罠:『光の護封剣』、伏せ1枚

光の護封剣:2ターン経過

 

 

 

「う…嘘でしょ…?」

 

「ヒータのエースモンスターが…」

 

「たった1体のモンスターで…」

 

「倒されちゃったです…!」

 

エリア、アウス、ライナ、ウィンの4人は一変した戦況に驚きを隠せなかった。

 

「これはもしかするともしかするかもね! ライナ! 賭けの件忘れないでよ~?」

 

「うぅ…が、頑張ってください! ヒータ先輩!」

 

 

 

「ま、マジかよぉ…! アタシの必殺のワンターンキルを防いだうえ、エースモンスターまで…!」

 

ヒータは窮地に立たされていた。当然だろう、先ほどまで自分が勝利するという揺らがない自身があったのだから。

 

「どうする? サレンダーするなら認めてやってもいいぞ」

 

さっきのヒータのセリフをそのまま返してやる。

 

「う、うるせぇ! 勝負はまだわからねぇ! アタシのターン…ドロー!」

 

ここでヒータが何を引いてくるかにもよるが…ヒータにはまだ何か逆転する手立てがあるらしい、引いたカードを見もせずに元々あった2枚のカードに手をかける。

 

「魔法カード、『炎王の急襲』を発動! 相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族、1体を特殊召喚する! アタシはデッキから『リトル・キメラ』を特殊召喚!」

 

ヒータのフィールドに炎が燃え上がり、その中から白い猫のような姿をした合成獣(キメラ)が現れた。

 

【リトル・キメラ】炎 獣族 ☆×2 ATK/600 DEF/550

 

「『リトル・キメラ』はフィールドに存在するとき、炎属性モンスターの攻撃力を500上げる効果を持つ」

 

リトル・キメラ:ATK/600→1100

 

「攻撃力を上げて俺の『ルイン』を倒すつもりか?」

 

だとしたら、俺の手札にある『オネスト』の効果が炸裂する。

 

「いや、まだまだ! さらにチューナーモンスター、『復讐の女戦士ローズ』を通常召喚!」

 

【復讐の女戦士ローズ】炎 戦士族 ☆4 ATK/1600 DEF/600 チューナー

 

復讐の女戦士ローズ:ATK/1600→2100

 

『ローズ』も炎属性であるため、『リトル・キメラ』の効果を受けて攻撃力が上がる。

 

「レベル4のチューナーモンスターか」

 

「いくぜ! アタシはレベル2の『リトル・キメラ』に、レベル4の『復讐の女戦士ローズ』をチューニング!」

 

『ローズ』は薔薇吹雪を吹かせ、自身を4つの星に変えると『リトル・キメラ』と重なり合う。

 

「シンクロ召喚! 来い、『獣神ヴァルカ…―」

 

だがそこでヒータは何か様子がおかしいことに気がついたようだ。光が晴れてもそこには『リトル・キメラ』と『ローズ』しかおらず、自分が呼びだそうとしたシンクロモンスターの姿はどこにもない。そう、いつものシンクロ召喚のようにモンスター同士のチューニングが行われなかったのだ。

 

「な、なんだこりゃ!? どうしてシンクロできねぇんだ!?」

 

「フッ…悪いがな、このリバースカードが発動していた!」

 

俺は自分のフィールドに表側になっているトラップカードを指差した。

 

「トラップカード、『グリザイユの牢獄』! 自分フィールドにアドバンス召喚・儀式召喚・融合召喚したモンスターのいずれかが存在する場合、相手プレイヤーはシンクロ・エクシーズ召喚が行えない!」

 

「なにぃ!?」

 

『プレサイダー』の効果でドローできたこのカードが役に立ってくれたようだ。さて、これでヒータは万策尽きたはずだ。大人しく降参してくれればそれに越したことはないが…。

 

「くっ…くくっ…くそぉ! こんなバカなぁ…! なにか手は…なにか手は…! …ん?」

 

ヒータも負けたくないのか、必死に何か対抗手段を探る。…そして、できるなら俺としては何も見つかってはほしくなかったんだが、何かに気がついた様子で自分に1枚残った手札をまじまじと見る。

 

「…ぷっ…あっははははは! なんだこれ引いてたのか! これで勝負着けられるじゃん!」

 

「…何のカードを引いたんだ…?」

 

しかし勝てるとわかったとたんにこの反応…とことん隠し事が下手なようだなこいつは。

 

「次のターンでてめぇはおしまいだ! リバースカードを1枚セットして、ターンエンドだ!」

 

高いテンションのせいでちょっと乱暴にディスクにリバースカードをセットし、俺にターンを明け渡した。

それと同時に『光の護封剣』の効果が切れ、全ての光の剣が消滅する。『炎王の急襲』の効果で特殊召喚された『リトル・キメラ』も破壊され、『ローズ』の攻撃力が下がる。

 

復讐の女戦士ローズ:ATK/2100→1600

 

全く…セットしたままその手をずっとリバースカードにかけてて…俺のターンが来た途端に何か発動するのが見え見えじゃないか…。

 

―△―――

□■■――

ヒータ:手札0枚 LP400

モンスター:『復讐の女戦士ローズ』

魔法・罠:『血の代償』、伏せ2枚

 

「…俺のターン、ドロー」

 

とはいえ俺のターンが来たのだからドローするしかない。俺は構わずカードを引いた。

 

「この瞬間トラップカード発動! 『火霊術―「紅」』!!」

 

ヒータが発動したリバースカードは、絵柄に自分が描かれているトラップカードだった。

 

「このカードの効果により、アタシのフィールドの炎属性モンスター1体をリリースし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「なっ…えっ!?」

 

ここにきて大火力のバーンカードだと!?

 

「アタシは『復讐の女戦士ローズ』をリリースし、その攻撃力1600分のダメージを与える! 食らえぇ!!」

 

ヒータの場の『ローズ』は自身を炎の球に変え、そのまま一直線に俺の方に向かってくる。

俺の残りライフはたった600…リバースカードも無いから防ぎようがない…! ここまで来たのに…このダメージを食らったら俺の負け…!

 

「…!?」

 

その時、俺はふとドローしたカードを見た。いきなりのことでドローしたこのカードを見る余裕さえなかったが…それでもこのカードならば…!

 

「お、俺は手札の『ハネワタ』の効果を発動! 手札のこのカードを墓地に送り、このターン俺が受ける全ての効果ダメージはゼロになる!」

 

「なっ、なにぃ!?」

 

【ハネワタ】光 天使族 ☆1 ATK/200 DEF/300 チューナー

 

俺に迫る炎が、手札から突如現れた綿の妖精『ハネワタ』により大口をあけたその中に吸い込まれ、俺へのダメージが及ぶことはなく、『ハネワタ』は消えた。

 

「ありがとう『ハネワタ』!」

 

「う…ウソだろ…!? 今引いたばっかのカードで…ダメージを無効にするカードを引いたってのか…!?」

 

ヒータが信じられないという顔をしているが、だがこれは事実だ。そしてこれでヒータが俺を阻むものは無くなった!

 

「『破滅の女神ルイン』でダイレクトアタック!!」

 

攻撃を宣言すると、『ルイン』はロッドから攻撃を放ち、その光がヒータへと迫る。

 

「み、認めねぇ…! アタシはこんなの絶対…うわあああああっ!!」

 

 

 

 

 

ヒータ:LP400→0

 

………

……

 

「ふぅ…なんとか勝てたか…」

 

あそこまで追い詰められこししたが、結果は俺の勝利だ。というわけで見事に勝利した俺に対して拍手の一つくらいあってもいいものだが…。

 

……。

 

何故か周囲の皆が無言だった。デュエルに立ち会ってくれてたドリアード先生までも。

まぁ土壇場であんなカード引いて、ダメかと思ったダメージを防ぎきっちゃったんだもんな、そりゃ一瞬何が起こったのかわからなくもなるか。

 

「あの~…先生?」

 

「はっ、はい!?」

 

ポケーっとしていたドリアード先生に俺は声をかけた。

 

「このデュエル、俺の勝ちってことでいいん…ですよね?」

 

「あっ、はい! 勝者! え~っと…」

 

「遊煌です、天領遊煌」

 

「勝者、天領遊煌君!」

 

そういやまだ名前も名乗ってなかったな。名前を聞いたドリアード先生は俺の名前を高らかに宣言した。それと同時に静まり返っていたギャラリーから大きな拍手と歓声が沸き上がった。

ま、なんにしても勝ててよかった。

ステージを降りようとした俺に観客席からこちらに入ってきた霊使い達が駆け寄る。

 

「おにーさんすごいわね! あのヒータをやっつけちゃうなんて」

 

「私もまさかあんなところでダメージを無効にするカードを引き当てるなんて思わなかったわ…」

 

「きっとデュエルの神様がお兄さんに味方してくれたんですね♪」

 

「あ~あ…賭けは私の負けかぁ…アウス先輩にご飯奢らなくちゃ…」

 

と、俺のことを讃えてくれた。

 

「み、認めねぇ…」

 

その時だった。『ルイン』の攻撃で吹っ飛ばされ、ステージの端に倒れていたヒータがむくりと起き上がった。

 

「アタシはぜってーに認めねーぞ! こんなデュエル!」

 

起き上がるとボロボロの恰好のままドスドスと向こう側から怖い顔で歩いてきた。

 

「往生際が悪いわよヒータ。そんなこと言ったって負けは負けよ」

 

アウスが歩み寄るヒータの前に立ちはだかってそう言った。

 

「うっ…うっせぇ! あんなところで普通あんなカード引くかよ! きっとなにかイカサマしたに違いないぜ!」

 

「い、イカサマなんてしてねぇよ!」

 

「問答無用! こうなったら魔法で消し飛ばしてやる!」

 

と、どこからともなく杖を取り出し、その炎が灯る先端を俺の方に向ける。

 

「ちょっ、ちょっと待て! さっきのことまだ気にしてるなら謝る! この通り!」

 

俺は必死で手のひらを顔の前で合わせて擦り合わせるがヒータはそれでも許せないらしい。

 

「謝ったって許してやるもんか! 黒こげにしてやるから覚悟しやがれ!」

 

「うわぁっ…!」

 

杖の先端の炎がさらに勢いを増し、その熱さに俺は思わず悲鳴をあげ顔を手で覆う。ヒータのこの怒りっぷり…マジでやるつもりだ! もうダメだ…! と思った時だった。

 

「お待ちなさい!」

 

ドリアード先生が俺達の間に割って入ってきた。

 

「天領遊煌君…貴方に聞きたいことがあります」

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

遊煌「今日の最強カードは?」

 

 

 

『龍炎剣の使い手』

☆4 炎 戦士族 ATK/1800 DEF/1200

自分フィールド上に「龍炎剣の使い手」以外のモンスターが召喚された時、そのモンスターのレベルを1つ上げ、このカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで300ポイントアップする事ができる。

 

 

 

遊煌「一見すると地味なステータスと効果を持つモンスターに見えるが、実はすごいコンボを生み出すキーカードなんだ」

 

ヒータ「こいつがフィールドにいる状態で『エンペラー・オーダー』を発動しておく。するとモンスターが召喚されるたびにその効果がデッキから1枚ドローする効果に変換されるんだ」

 

遊煌「モンスターが多めに入ってるデッキなら、『血の代償』も一緒に発動して大量展開も狙えるし、『神の恵み』も発動しておけば延々とライフも回復できるうえ、『血の代償』のコストもかからなくなる」

 

ヒータ「攻撃力も高いから普通にアタッカーとしても活躍できるうえ、戦士族だから『増援』でサーチしたり、『戦士の生還』で墓地から回収することもできるぞ」

 

遊煌「こいつと『エンペラー・オーダー』、『血の代償』を主軸としたデッキを組む場合、他の炎属性で召喚時に効果が発動されるモンスターを多く入れてみるといい。でも、どんなのがあったっけ?」

 

ヒータ「本編で私が使った『ポケ・ドラ』や『ヘルフレイムエンペラー』、その他には高い攻撃力でアタッカーにもなる『ヴォルカニック・ロケット』やバーン効果を持つ『ファイヤー・トルーパー』や『アチャチャアーチャー』なんかもいるな」

 

遊煌「なるほど、割といるもんだな。炎属性以外でも『ガジェット』系や『王虎ワンフー』など、様々なモンスターがいる。自分の構築に合ったモンスターを入れてデッキを組んでみようぜ」

 

「「それじゃまた次回!」」




今回のデュエルはワンキル特化なデッキが相手という少々難しい構成でしたが、個人的にも魅せるデュエルができたかなと思います。ルインもちゃんと出てきたし。
霊使いは今後も登場予定です。次回も活躍するのでお楽しみに!
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