遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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ある日、スーパーにお使いに来ていた破滅の女神ルイン。
彼女はそこの福引きでビールを景品として貰うが…?


第8話:「酔いどれ女神様」

「おめでとうございます! 3とーしょー!!」

カランカランッ

 

「…?」

 

ある日の午後、主からの命で“すーぱー”という店にお使いに来た私は、会計の際に店員から“福引き券”なる物を貰った。

これを店前でやっている“くじ引き抽選会場”なる場所に持っていけばくじが引けるというので持っていったのだが…。

 

「はい! 賞品は缶ビール三ケースね」

 

「あぁ…どうも」

 

くじ引きの店員からなにやら厚紙に包まれた六つの缶を三つ私に手渡してきた。

なんだかよくわからないが、タダでくれるというのであれば貰っておこう。

 

「買い物も済んだし、帰るとするか」

 

くじ引きで貰った物を両手で抱えながら、私は帰路についた。

 

 

 

 

 

―――――第8話「酔いどれ女神様」―――――

 

 

 

 

 

「主、今帰ったぞ」

 

「おお、お帰りルイン。頼んだ物はちゃんと買ってきてくれたか?」

 

俺はお使いに出ていたルインを家に迎え入れる。

今まで食事の支度とか家事は全部俺がやっていたんだが、ルインが「私にもなにか手伝えることはないか?」と言ってきた。

せっかくの好意に甘えてスーパーまで夕食の買い出しに行ってもらっていたんだが、『初めてのお使い』というわけではないのだが、ちゃんと買い物ができるか少し心配だった。

しかし、この分を見る限りでは心配無いみたいだな。

 

「それについては問題無いと思うのだが…すーぱーで買い物した際に福引きとやらでこんな物をもらった」

 

「ん? どれどれ?」

 

俺は買い物袋と一緒にルインが腕に抱えている謎の物体を受け取る。

 

「おい、こりゃビールじゃないか」

 

「なんだ“びーる”とは?」

 

「酒だよ。…お前酒は知ってるよな?」

 

「むっ、主は私をバカにしているのか? それくらいは知っている。精霊界にいた頃は、信仰のための貢ぎ物としてよく頂いていたものだ」

 

「へ~、そうだったのか」

 

こっちの世界じゃしょっちゅう面倒事を巻き起こしてるあの破滅の女神様が、精霊の世界じゃ信仰されているなんてちょっと意外だった。

まぁなんだかんだいって女神だし、当然といや当然なのか。

 

「しかにこのビールはどうするか…貰ったにしろ、ウチには飲める奴なんていないし…」

 

当然のことながら俺はまだ未成年だ、飲むことはできない。

すると、ルインが「ここにいるだろ!」という顔をして自分の方を指さす。

 

「…なんだ? お前飲みたいのか?」

 

「うむ、この世界の酒がどのような物なのか是非味わってみたい」

 

やれやれ、女神様もグルメなことで…。

 

「わかったよ、でも飯の後でだぞ」

 

「え~…」

 

「え~じゃない。俺の言う事が守られないんだったら酒はお預けだ」

 

「む…わ、わかった…」

 

飯の途中で酔い潰れられたらたまらないからな。

まぁ幸い、酒自体飲んだことはあるらしいし、そんな事にはならないだろうが…この女神様のことだ、念のためにな。

 

「じゃ、飯作る前に先に風呂入ってくるわ」

 

「あぁ、わかった」

 

ルインによーく言い聞かせた後、俺は風呂に入るために着替えをとりに二階にある自分の部屋へ向かった。

 

「しめしめ…♪」

 

………

……

 

「ふ~、さっぱりした」

 

風呂から上がった俺は、さっそく夕飯の準備に取り掛かろうとキッチンのあるリビングに戻ろうとする。しかし、廊下の辺りで俺はリビングから異様な匂いがすることに気が付いた。

 

「…? なんだこの匂い…アルコール…?」

 

まさか…!と思い慌ててリビングのドアを開ける

そこで…俺はなんとも異様な光景を目にした。

 

「こいつの肩は~ヒック♪ 赤く塗らねぇのかい~?♪」

 

「…?」

 

どうにもルインの様子がおかしい…リビングのテレビでソファーに座りながらアニメのDVDを見ながら、赤ら顔で下っ足らずな口調でDVD内のセリフを真似して喋っている。俺はふと、ルインの手に握られている物を目にする。

 

「お前…あれほど言ったのに酒開けたのか!?」

 

そう、ルインの手には、食事の後でと約束していた筈のビールの缶が握られており、しかもすでに数本飲みほした後らしく、床には開きビールの缶が三本も転がっていた。

 

「ん~? あ、あるじら~♪」

 

今やっと俺の存在に気付いたらしく、ルインは赤い顔をしながら俺の方に手を伸ばしておいでおいでをするように手を振る。

 

「あるじもいっしょに飲も飲も~♪」

 

「…その前に聞くが、お前もしかして酒弱いのか?」

 

「ん~? 私が酒に弱いだと~? そんなわけないだろう!」バンッ

 

「うおっ」

 

俺の言葉が気に障ったのか、いきなりテーブルを叩くルイン。

 

「私はこのとおり強いんだぞ~♪ んぐっ…んぐっ…」ぐびぐび

 

そう言ってルインは手にあるビールの缶を口にあて、傾けて喉を鳴らして飲み始める。

 

「そ…そうか」

 

いやどう見ても逆に酒に呑まれているようにしか見えないんだけど…。

というかルインがこんなに酒に弱いなんて知らなかったなぁ…きっと精霊界にいた頃は大変だったんだろうな。

 

「それよりもはやくあるじも一緒に飲も~よぉ~♪」

 

そういうわけですっかり出来上がってしまっている破滅の女神様は、俺の手を引っ張って自分の隣に座らせ、ビールの缶を手に握らせる。

 

「いや…俺未成年だし…」

 

「そんな細かいこと気にするな♪ 四捨五入したら二十歳ではないか♪」

 

「…そういう問題じゃないだろ」

 

仕方ないので、ルインがビールをぐびぐび飲んでいる一瞬の隙を見てルインの隣を離れ、冷蔵庫の中から烏龍茶を取りだす。ルインにバレないよう、これをビールに見立てて飲むとしよう。色も似てるし、ルインは酔いまくってるし、まず気付かれないだろう。俺は烏龍茶をコップに注ぎ、再びルインの隣に座った。

 

「よしあるじ、ほら、かんぱーい♪」

 

「お、おう。かんぱーい」

カチーンッ

 

ビールの缶と烏龍茶の入ったガラスのコップで乾杯をし、俺とルインの二人だけの飲み会が開催された。

 

………

……

 

「…はぁ」

 

始まって数分、俺は驚きでため息が出た。

それは何故かと言うと、ルインのビールを飲む速さが尋常ではなかったからだ。

俺が烏龍茶をちびちびと飲むのに対し、ルインはぐびぐびと尋常ではないペースで飲んでいたからだ。

 

「んぐっ……ぷはぁ!」

 

「…これで10本目か」

 

酒を飲まない俺であってもわかる、普通の大人であってもさすがにこんな短時間にこれだけの量はまず飲めないだろう。そしてそんなに飲めば更に酔うのは当たり前であり、ルインは色々な反応を俺に見せる。

 

「全く…あの時のこどもらめ……はめつのめがみたるわわひを何だと思ってるんだ! わらひだって…ヒック…わらひだってカードのせいれいなのに! めがみなのに! なんだ! あのわらひにたいしての残酷なまでのむじゃきなはんのうは! …ヒック…あ~! 思いだしたら腹が立ってきた! …ヒック」

 

以前デパートの時にあった子供達に遊ばれた時の不満をしゃっくり混じりの怒鳴り口調で怒ってみたり。

 

「ひっく…ぐすっ……わたしなんて…ひぐっ…どうせダメでぶざまなめがみだ……。そうさ、ごたいそうなぎしきしょうかんをしても、能力がこうげきりょくたった2300のにかい攻撃というショボすぎる効果では……『わーむ・うぉーろーど』や『かちこちどらごん』を使ったほうがはるかにお手軽で使いやすいんだ…だから……ぅ……うぅっ…」

 

怒ったかと思えば自分のカードとしての能力値について泣き上戸になってみたり。

 

「俺達は死なねぇ! 遺伝子のお墨付きだぜぇぇぇぇぇ!!」バババババッ

 

飲みながら見ていたアニメの真似をして、本当に庭の方に攻撃を撃ってみたりと。

…まぁ、それもこれも今俺が置かれている状況に比べればはるかに序の口なわけだが。

 

「…あの…離れていただけないでしょうか、ルイン様?」

 

「あ~る~じ~♪ んふふ~♪」

 

俺はソファーの上に座っているわけだが、俺の膝の上にルインが頭を乗せて抱き付いているのだ。

まるで猫のようにじゃれ付いてくるルイン。傍から見れば羨ましいと思われるかもしれない光景だが、実際やられると困る…いろんな意味でどうにかなりそうで。

 

「る、ルイン…本当にそろそろどいてくれないか?」

 

「どーしてだ?」

 

「い、色々やばいから…」

 

「何がやばいんだ?」

 

「と、とにかく色々なの!!」

 

ルインに言ったとおり、本当に色々と俺は限界だ。

しかし、そんな事知る由もないだろうルインは一瞬困惑の表情を浮かべるものの、すぐに笑って再び擦り寄る。

無理に動こうとしてこの場を離れようとも試みたが…そうすると泣きそうな目でこちらを見るから反則だ。

 

「はぁ~…」

 

「……主」

 

「ん?」

 

もう我慢するしかないと思いため息が出た時だった。急にルインは静かに俺に話しかける。

 

「主は……この世界が好きか?」

 

「いきなりなんだ?」

 

「答えてくれ…」

 

「…当たり前じゃないか、自分が生まれた世界なんだもの」

 

「そうか…」

 

そう答えると、ルインは何処か安堵したように言った。

 

「私もこの世界で主に会えてよかった…。私も、この世界は好きだ。だから…………―」

 

「…だから?」

 

「……Zzz」

 

「…寝ちゃったか」

 

ルインは何かを言いかけたようだが、そのまま寝息を立ててしまった。

これでやっと動くことができるので、ルインを起こさないようにそっとソファーから降り、ルインを抱きかかえて部屋まで運び、ベッドの上に寝かして毛布をかける。

 

「やれやれ、酔っ払い女神様め」

 

「う…ん…。冗談はよせ……俺はクソ真面目な男だ……ムニュ」

 

何か寝言を言っているようだが、俺は無視して部屋から出て行った。

そしてルインが飲み散らかした、三ケース分のビール、総数18本の空き缶を片付け、夜は更けていった…―。

 

………

……

 

「ぐああっ! あ、あるじぃ~! 頭が痛い~! 昨日の晩の記憶が無い~!」

 

「やれやれ…昨日の晩あんなに飲むからだ」

 

翌朝、ルインの部屋まで昨夜酔いつぶれたルインを起こしに行ってみると案の定、二日酔いで昨夜の事を綺麗全部まるっとすっかり忘れて、頭痛に悩むルインの姿がそこにはあった。

 

「うぐぐっ…ま、まさか酒を飲みすぎるあまりこんな事になってしまうとは…」

 

「ほら、しっかりしろ。水飲むか?」

 

「の…飲む…すまないが飲ませてくれ…」

 

「はいよ」

 

水の入ったコップをルインの口元まで持っていくと、少しずつだがルインは水を啜る。

この分だとどうやら、一限目の授業はサボっちまうハメになっちゃいそうだな。




今回からはちょっとデュエルをお休みして、主人公とルインのイチャラブ…じゃなくて、日常的な話をやっていこうかなと思います。
ちなみに、僕は今でもビールの美味しさが理解できません…。
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