遊戯王 ああっ破滅の女神さまっ   作:ダルクス

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風邪をひいてしまったために、学校を早退して家に帰ってきた主人公。
ルインはそんな主の様子を見て、何か命にかかわる大きな病気にかかったのではないかと誤解し、奮闘するが…?


第9話:「デッキ破壊ではないけどウイルスにはご用心を」

ルインが現れて1ヶ月くらい経ったある日のこと…。

 

「ハークッション! うぅっ…」

 

「だ、大丈夫?」

 

「大丈夫だ…」

 

と言ったものの…なんだか寒気がする…この時期に風邪をひいちまったかな…?

 

「保健室行く? 大事になる前に休んだほうがいいよ?」

 

「ん…そうさせてもらおうかな…ヘークッション!」

 

どうやら俺は風邪をひいてしまったらしい。ゾクゾクするし、頭も少し痛いし、額に手を当ててみると熱もあるようだ。

というわけで授業を途中で抜け出して保健室の先生に診てもらったところ、やはり風邪だと診断され、俺は学校を午前中で早退することにした。

 

 

 

 

 

―――――第9話「デッキ破壊ではないけどウィルスにはご用心を」―――――

 

 

 

 

 

「うぅ…クラクラする…」

 

フラフラとなりながらも、俺はなんとか家に辿り着いた。

 

「ただいま…」

 

靴を脱ぎ、リビングに上がると、家に居着いた破滅の女神様が俺を出迎えてくれた。

 

「ん? 主、今日は早いな」

 

「いや、ちょっと風邪をひいたらしくてな…今日は授業を途中で抜け出して来たんだ」

 

「かぜ? 確かに今は心地良い風が吹いているが、風とは引いたりもするのか?」

 

「その風じゃない。病気の方の風邪だよ、病気」

 

ルインのお決まりともいえるボケにツッコミながら、俺は答える。

 

「あぁなんだ、そっちの風邪か。……病気!? 病気だと主!? 大丈夫なのか!?」

 

俺が病気だと聞き、かなり動揺するルインだが、俺はそんなルインを落ち着かせながら、棚の中に仕舞ってあるはずの薬箱を探す。

 

「あぁ、大丈夫大丈夫。薬飲んで寝れば1日で…―」

 

棚の中から薬箱を探しあて、風邪薬を飲もうと薬箱の中を見る。

…が。

 

「…風邪薬が無い……そういや無くなってたんだったな…」

 

「主、どうした?」

 

「あ、いや何でもない…とりあえず俺は寝るよ…」

 

「主、私に何かできることはないか?」

 

何故だかわからないがルインはすごく眼を輝かせて俺に聞く。

だが…体が衰弱している俺にとっては、ルインが問題を起こさずに静かにしてくれていればそれでよかった。

 

「無い。大人しくしててくれればそれでいい」

 

二階に上がろうとした時、後ろからルインが微妙に何かを期待しているような視線を向けてきたが、それだけ言うと俺は自分の部屋へと戻って、制服姿のままベッドに倒れこんだ。

 

………

……

 

ボカーン!!

「わーーーっ!!」

 

「…!?」ガバッ

 

多分、あれから1時間も経っていないだろう。俺は下で「大人しくしていろ」と指示しておいたはずのルインの悲鳴っぽい声で起こされた。

 

「…なんだってんだ?」

 

だるい体を引きずってリビングに降りてみる。台所に入ったとき、俺はそこでなんとも得体の知れない光景を目にした。

 

「あ、あるじ~……」

 

「………何やってんだお前は?」

 

台所の壁や天井には、何だかドロドロした白いもんが付着しており、ルインも当然、頭から被って全身が謎の白い液体まみれであった。

ルインは何故かエプロン姿で半泣きで座っている。

 

「え、えっとその…」

 

「何やってたんだ? 正直に答えれば怒らない」

 

「あ、主が病気に侵されたと聞いたので、何か栄養のある物でも作ろうかと思ったのだが…」

 

言い難そうに語っているルインの話を聞くに、俺の為に料理を作ってくれようとしていたらしい。何を作っていたかは…何だか怖くて聞けなかった。

 

「その、あの…実は私、料理なんてした事がなくて…」

 

「…ルイン」

 

「ぅ…すまない、こんなだめな女神で……料理一つできないなんて…」

 

「……はぁ~。ほら、顔こっちに向けて」

 

かなりションボリしているルインに、俺はズボンのポケットからハンカチを取り出し、ルインの顔に付いてる謎の白いのを拭き取る。

 

「大人しくしてろって言っただろ? 気持ちは嬉しいけど、俺は本当に寝てるだけで大丈夫だから」

 

「ほ、本当か? 私はてっきり、主の命に関わるものだと…」

 

「そんな大げさな。一日寝てれば大丈夫だ。ほら、体は自分で拭けよ」

 

「あ、あぁ…」

 

ルインからエプロンを受け取り、俺はそのまま洗濯機に直行し、洗濯機にエプロンを放り込む。そして台所に戻って、頭痛がする中、天井などに付着しているのをルインと一緒に拭き取っていった。

 

「ハァ…終わった」

 

「本当にすまなかった…主」

 

「もういいって。それじゃ俺はまた寝るから、今度こそ大人しくしてるんだぞ?」

 

「わかった。でも何かあったら言ってくれ」

 

「はいよ」

 

そして、ルインが大人しくしてくれる事を祈りつつ、俺は部屋へと戻り、再びベッドの上に倒れこんだ。

 

………

……

 

「……ぅ…ん」

 

あれからどれ位経っただろうか。目が覚めると、既に外は夕方だった。

喉も渇いたので、俺はリビングに降りる。

やけに静かな家…。

ルインも寝ているのかと思い、リビングの扉を開けた。

 

「…ん? あれ?」

 

いない…ルインがいない。

台所、洗面所、風呂場と…家の何処を探してもルインはいなかった。

何処へ行ったんだ?と思いながら玄関に行った時だった。

 

「ただいま。ん? 主、起きてて大丈夫なのか?」

 

まるで何事も無かったかのように、ルインが玄関に入ってきた。

しかも、大きな紙袋を両手で抱えて。

 

「ルイン…お前何処行ってたんだ?」

 

「“やっきょく”という所に」

 

「薬局? 何で薬局なんかに行ってたんだ?」

 

「何を言う。その店には、主の病気を治す薬があるのだろう? これに書いてあった」

 

ルインは一枚のチラシを見せる。

そこには、薬局の開店1周年記念セールがあると書いてある。

 

「さっき主が、“かぜぐすり”が無いと言っていたのを聞いていたから」

 

「あ…あーそういうことか。まぁ、それはありがたいけど、金はどうした?」

 

「主の財布から」

 

「なにぃっ!?」

 

ズボンのポケットを漁る。確かに俺の財布が無い…。どうやら俺が寝ている間にこっそりと抜き取ったのか。

とりあえず、俺はずかずかとルインの前まで行くとその額に軽くデコピンする。

 

「いたっ! いだぁ…な、なにをする主…!」

 

「いいかルイン? 人の財布を勝手に持っていくのは泥棒なんだぞ? 俺には…まぁ今回は仕方ないとして、俺以外の人には絶対してはいけない。わかったか?」

 

「う、うむ…わかった、すまなかったな、主」

 

おでこをさすり、少し涙目なルインは頷く。

 

「それにしても…」

 

この目の前の大きな袋は何だ?風邪薬だけでこんなにはいかないぞ…。

俺は袋の中を漁ってみると、

 

「風邪薬…はあるな、他には塗り薬、バンドエイドに綿棒……」

 

袋の中には全種類の品物があるんじゃないか?というくらい、色々な薬やら何やらが詰まっていた。

 

「えっとあとは……なっ!? こ、これはっコンド……っ!! ゲフンゲフンっ! る、ルインさん!? お前は…その…これの使用方法を知っているか?」

 

「? わからないが、何かの薬なのか?」

 

「い、いや知らなきゃいいんだ!」

 

「主、顔が赤いぞ? 風邪が悪化しているのではないのか?」

 

「な、なんでもない! 大丈夫だ!」

 

無知というのは時に残酷だ…。

 

「よし、では私はアレを作るとしよう。主は部屋で寝ていてくれ」

 

「アレ? アレってなんだ?」

 

ルインは不意に立ち上がり台所へと歩き出した。

 

「いいからいいから、主は部屋に戻っててくれ。病人は病人らしく、大人しくしてないとダメだぞ?」

 

「ちょっと待て。お前はもう昼間の事を忘れたのか?」

 

この体調で、また台所の掃除をさせられるのは流石にもう勘弁だ…。

 

「むぅ、大丈夫だ。やっきょくに行った帰りに、隣のおばあちゃんから教わってきた料理を作るだけだ。昼間のような失敗はない。……たぶん」

 

ルインの口からちっちゃく出た「たぶん」という言葉を聞いて、俺は少し不安になった。

 

「多分って……また昼間のようになっても俺は知らないからな?」

 

「任せてくれ!」

 

自信たっぷりの返事で答えるルイン。

その姿に若干不安を覚えつつも、身体のダルさに勝てない俺は自分の部屋へと戻った。

 

………

……

 

コンコンッ

 

それからしばらく経つと、部屋のドアがコンコンとノックされた。

 

「主、入るぞ?」

 

ドアが開くと、そこには小さな土鍋を持っているエプロン姿のルインがいた。

ルインは何やら自信ありげに近づき、勉強机の椅子に座る。

 

「何を作ったんだ?」

 

「おばあちゃんから教わったおかゆという料理だ。おばあちゃんが言うには、風邪には最適の食べ物らしい」

 

土鍋の蓋を開けると、白い湯気とともに中央に赤い梅干がある、確かにお粥がそこにはある。

 

「…」

 

「どうした? 食べないのか?」

 

正直、確かに見た目は良いんだが味がどうかはわからない…。

お粥に味もなにも言ってもどうしようもないけど、昼間のことを思い出すと、どうしても躊躇ってしまう。

 

「ち、ちょっと食欲が…―」

 

「だめだ!」

 

「は、はい?」

 

珍しく強い口調でルインが反論してきたため、俺は少したじろぐ。

 

「おばあちゃんが言っていた。『食べるという字は“人”が良くなると書く』、と。食べないと言っても無理に食べさせないと治らない」

 

どっかの天の道を行く者みたいなことを言っている。

どうやら、ウチの隣に住むおばあちゃんからありがたい言葉を聞いたらしい。

 

「主が自分で食べられないというのなら、私が食べさせてやる。ほら、口を開けろ。あーんだ、あーん」

 

ルインは手に持っていた蓮華でお粥をすくい、俺の口の方へと持っていく。

 

「あ、あーん…」

 

少し恥ずかしいが…仕方ない。

 

パクッ

 

「ど…どうだ? お、美味しいか?」

 

「ん…あぁ、普通に美味いぞ」

 

嘘ではなかった。先ほどの失敗で心配してはいたのだが、ルインが食べさせてくれたお粥は不味くもなく、かといって特別美味しいわけでもなく、本当に普通のお粥の味だった。

だが、長らくこうやって誰かに看病され、食事を作ってもらうというのは久しぶりの経験だったため、その味は何故かとても優しい味に思えた。

 

「そ、そうか! よかったぁ…。ほら、冷めてしまうからドンドン食べてくれ!」

 

「お、おぅ」

 

さっきは食欲が無いなんて言ったが、ルインのこの笑顔を見たらそんなことも言えない。俺はお粥をバクバクと食べ、ルインはその様子を隣でとても嬉しそうな顔をして眺めていた。

 

「ごちそうさま」

 

「おお! 残さず綺麗に食べたな!」

 

「あぁ、おかげ様で熱も少し引いたみたいだ」

 

俺は自分の額に手を当てて熱を測ってみる。

 

「どれどれ?」

ピトッ

 

「…っ!?」

 

その時、ルインがいきなり身を乗り出し、自分の額を俺の額に当てて、熱を測る。

当然、俺とルインの顔の距離は文字通り目と鼻の先にあるわけで…。

 

「…~っ///」

 

「そうか? なんだかさっきよりも熱が上がっているように感じるが…」

 

「なっ…!? も、もういいから離れろ! あとは寝てれば自然に治るから!」

 

俺は無理やりルインを俺から引き離す。

 

「なら今日はゆっくり休め、主」

 

「ああ。俺のためにいろいろありがとうな、ルイン」

 

「礼には及ばんさ。ではお休み、主」

 

「お休み」

 

最後にお休みの挨拶をすると、ルインは空になった食器を持って俺の部屋を出て、ドアを閉めた。後に残された俺は、大人しくベッドで寝ることにした。

誰かに看病される…か。考えてみれば、俺の人生の中でそんな経験した覚えは、なかったな….

親父が死んで、この家に帰って来る者がいなくなってから、もしかしたら俺は人の温もりを求め続けていたのかもしれない…。

 

 

 

家族という、温もりを……。

 

 

 

………

……

 

「…なぁ、一つ聞きたいことがあるんだが」

 

「な…なんだあるじ…? ごほっごほっ…!」

 

「女神も風邪引くのか?」

 

「けほっけほっ……す、すまないあるじ…」

 

そう。翌朝、俺はルインの看病あって完全復活を遂げることができたのだが…今度は逆にルインが風邪を引くという事態に陥ってしまったのだ。

おそらく、昨日俺の看病をしている間に風邪が伝染ってしまったんだろう。

 

「いや、十中八九俺のせいだろ。今日は俺も家にいるから、部屋で大人しく寝てるんだぞ?」

 

「あ、あぁ…わかった。……くちゅんっ!! うぅっ…」

 

こうして、昨日とは逆に、こうして誰かを看病するという人生初の経験を、この女神様のお陰ですることになりそうだ。

 

 

 

(しかし…女神、もといカードの精霊も風邪をひくんだなぁ)

 

そんなことを心の内で思い、まずは女神様のためにお粥を作ることにした。




夏から秋へと変わるこの季節は、気温の変化が著しく風邪をひきやすくなります。
自分のところも朝は寒く、昼は暑く、夕方はちょうどよく…という気温変化なので、朝が寒いからといって暖かい格好をしてくると昼に大変なことになりますw

ぶっちゃけこの話は主人公とルインのイチャラブ第2弾と「あばあちゃんが言っていた…」のネタをやりたかっただけなんだけどねw

次回からは、いよいよ新キャラ…というよりかは主人公の扱う二人目のカードの精霊が登場いたします!
果たして誰なんでしょうか?お楽しみに!
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