ホロホロしちゃっていいじゃない!   作:てんりょう

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※注意※

本話は多大な「ご都合主義」「独自解釈」「独自設定」が含まれます。

「イメージが違う」「口調がおかしい」等々感じられる方はブラウザバックをお薦めします。




第6話「赤青緑と飲み過ぎ注意」

目の前にドアがある。何の変哲もない、至って普通でどこにでもあるマンションのドアだ。

 

だが、そこに対して手を伸ばせないでいた。

 

理由は1つ。

 

(まさかお呼ばれされることになろうとは……)

 

目の前の部屋の主が潤羽さんだということだ。

 

正直な所、女性の家に行くとか初の経験で緊張どころか戦慄している。

 

とはいっても他に2人いるのでそう特別なことではないはず。

 

だが意味もなく扉の前で固まってしまっていた。

 

過去とは違い潤羽さんたちに自分への悪意は無い……とは思う。

 

こればかりはどうしょうもない。

 

そうやっていると……

 

「先輩、何やってるぺこか?」

 

「うわっ?!……ああ、兎田さんか」

 

気付かないうちに兎田さんが近くに来ていた。

 

手には大きめの袋を持ち、変なものを見るように半目でこちらを見つめられている。

 

「ああ、いや……。女の子の部屋に来るのは初めてだから緊張しちゃって」

 

「今更何言ってるぺこか。ほら、さっさと入るぺこよ」

 

「あ、ちょっ……」

 

「るしあー、今着いたぺこよー!先輩も一緒ぺこ!」

 

『どうぞー!』

 

兎田さんがなんの躊躇いもなくドアを開け、ずんずんと奥へと進んでいった。

 

その後を追いかける。

 

玄関には兎田さんが脱いだものの他に2足靴があったので自分が最後だろう。

 

緊張で高鳴る心音を聞きつつ、奥へと足を進めた。

 

「あ、先輩、Ahoy〜」

 

リビングへと着くと、潤羽さんとは違うテンション高い女性の声が迎え入れてくれた。

 

そこにいたのは、赤い髪をツインテールにしていて、赤い服を着た女性、宝鐘マリンさん。

 

兎田さんたちと同期でかなり行動力のある女性だ。

 

世界連結を受けて世界間の移動が可能となった今、世界間航行船を自分で作り、世界を渡ることを目的として様々な勉強をしている。

 

学生ながら自ら企業を立ち上げる才女……

 

「あはははは!」

 

なのだか、今のこの姿からは想像ができない。

 

お酒の缶を片手に既に出来上がってるようだ。

 

飲んでいるのはチューハイのようだ。甘くて飲みやすく、女性人気の高いブランド品である。

 

「マリン、もう出来上がってるぺこか?」

 

「あははー! 船長はまだ大丈夫ですよ?」

 

いつもに増してハイテンションな彼女の姿に溜息をつきつつ、ぺこらさんは台所へと向かっていった。

 

それを視界に収めつつ、何となく落ち着かなくて立ったまま部屋を見回す。

 

潤羽さんらしい色合いやデザインの家具で揃えられ、統一感が感じられた。

 

机の上やベッドの上に小物やぬいぐるみが置いてあるところも可愛らしい感じがする。

 

「センパーイ、何ぼーっと立ってるんですか? 早く座ったらどうです?」

 

「あ、うん……」

 

言われるがまま、宝鐘さんの近くの開いてる場所に腰を下ろした。

 

「どうしたんですか? なんか緊張してません?」

 

「そりゃそうだよ。女の子の部屋に入るなんて初めてだし」

 

「へー、ちょっと意外」

 

僕の言葉がそれほど意外だったのか、宝鐘さんが目を丸くしていた。

 

何故そんなに意外そうな表情をされてるのだろう。

 

そんな考えが表情に出ていたのか、もう一本チューハイを取り出してプルタブをブシュッと開けながらニヤリと笑った。

 

「だって〜先輩の周りには色んな女の子がいるじゃないですか。フブキ先輩とかミオ先輩とかるしあとか」

 

他にもししろんでしょーすいちゃん先輩でしょーかなたでしょー……なんて名前を羅列しながら指折り数える宝鐘さん。

 

「こんなに女の子の知り合いがいて、部屋に上がったことないとなんて、意外過ぎですよ」

 

「……まあ、部屋に押しかけられる場合の方が多いからね。家は講義棟から近いし」

 

ぐいっとチューハイを呷りながら面白そうに目を細める彼女に、溜息まじりに答える。

 

いや、贅沢な悩みだなとは思う。彼女たちの容姿等を思えばこそだ。

 

でも、だからこそ……

 

「僕なんかにはもったいないとは思うよね」

 

「……えー」

 

ジト目でこちらを見つめる宝鐘さん。なぜそんな目で見てくるのか。

 

「……先輩って結構自己評価低いですよね」

 

「そう? 星街先輩とかぼたんさんたちを考えると妥当じゃない?」

 

「いや、そのあたりのリアルチート勢と比較されても……」

 

「あと宝鐘さんも凄いよね」

 

「……いきなり持ち上げてくるの勘弁してください」

 

宝鐘さんが恥ずかしそうに視線を切る。いつも思ってることを口にしただけなのだが。

 

「マリン、先輩はいつもこんな感じなの知ってるんだから慣れないと……」

 

「そうぺこ」

 

キッチンの方から潤羽さんと兎田さんがやってきた。

 

それぞれ料理が盛り付けられた器を持っている。そこから漂ってくる香りが食欲を刺激してくる。

 

「あ、ごめん。手伝えばよかったね」

 

「いえいえ、今日は私がお呼びしたんですから、ホストらしくさせてください!」

 

そういうと潤羽さんはテキパキと料理や取皿などを準備していく。

 

このあたりの手際の良さは流石だ。

 

あっと言う間に準備が終わり、目の前には美味しそうな食事が並ぶ。

 

「さて、今日は実はもう一つありまして……」

 

そういうと、再びキッチンへと戻る潤羽さん。

 

冷蔵庫を開ける音がしたかと思うと、すぐに戻ってきた。

 

その手に液体の入った瓶を持って。

 

翡翠色の透明なガラス瓶で作られたそれからチャプチャプと音がする。

 

ラベルはないが表面に刻印の彫ってある見覚えのない瓶に首を傾げる。

 

「潤羽さん、それなに? あまり見ない瓶だけど」

 

「これですか? 実は実家から送られてきた向こうでしか手に入らないお酒でして。かなりのレアものなんです。折角だから出そうかなって」

 

お酒……。

 

「あ、それ船長も飲んだことある。おいしかったですよー!」

 

しかも美味しい……。

 

「それはすごく楽しみなんだけど、良いの?」

 

「良いんです。私はそこまでお酒飲まないですし、先輩いつも言ってるじゃないですか」

 

「食事もお酒も、誰かと一緒のほうが美味しいぺこっていつも言ってるぺこな」

 

潤羽さんの後ろから兎田さんがワイングラスを持ってきて、机に置いていく。

 

慣れた手付きでスクリューキャップが開けられ、透明な液体がそれぞれのグラスに注がれた。

 

どことなく甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 

「さ、先輩。音頭をどうぞ」

 

「えっ?」

 

「えっ? じゃないですよ、一番年上の先輩が音頭取らなくてどうするんですか?」

 

「そうぺこよ。こういうときは年長者が仕切るべきぺこ」

 

3人とも既にグラスを片手に構えて、こちらの動きを待っていた。

 

こういうのは苦手なのだが、しょうがない。 

 

「えっと、じゃあ、乾杯!」

 

「「「カンパーイ!」」」

 

グラス同士の当たる軽やかな音ともに、3人の楽しげな声が重なった。

 

そして、早速グラスに注がれたお酒を口に含む。

 

まず甘い香りが口の中に広がった。

 

そして、舌の上に果実のような甘みが広がったかと思うと、すぅとスッキリと消えていく。

 

とても美味しく、飲みやすいお酒だ。

 

思わずぐいっと煽ってしまった。

 

「はい、先輩。どうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

間を開けずに潤羽さんがグラスに注いでくれる。

 

それをまず一口飲んだあと、潤羽さんが作ってくれた料理に目を落とした。

 

目の前にはは魚の煮付とサラダ、それと野菜の天麩羅。

 

まずは煮付けを取ろうと取皿に手を伸ばし、

 

「はい、先輩」

 

「あ、宝鐘さんもありがとう」

 

今度は宝鐘さんが取皿に煮付けなどを取って渡してくれた。

 

それに感謝しつつ、まずは手を合わせる。

 

「いただきます」

 

まずは煮付けを口に入れた。

 

程よく甘辛く煮付けられた身が口の中でほろほろと崩れていく。

 

身の味と味付けのバランスが良く、煮汁だけでも身だけでも味わえない絶妙さ。

 

「うん、美味しい!」

 

そして、この味付けがお酒にとても良くあっている。

 

お酒、煮付、お酒、煮付と次々に運んでいく。

 

「はい、先輩。今度はぺこらがお注ぎするぺこよ」

 

「兎田さん、ありがとう」

 

飲み終わったのを見計らってか、兎田さんが瓶を差し出してきた。

 

それにグラスを差出し、注がれるお酒の音を聞く。

 

 

 

 

 

これ以降の記憶は残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

side:Rushia

 

目の前で先輩が顔を赤くしてふらふらと不規則に揺れ始めた。

 

(上手く行ったのです)

 

それを見てマリン、ぺこらと視線を合わせて頷きあい計画が順調であることを確信した。

 

今日の食事会はこれが目的だった。

 

このお酒は魔界で手に入る飲みやすさに反して度数が高く、いっきに酔いが回る特別なお酒だ。

 

酒豪同士で飲み比べに使ったり、まあ、そういう用途で使われることもあるもの。

 

それを使って先輩を酔わせ、いろいろ話を聞き出すためマリンとぺこらに協力してもらった。

 

(最近、先輩の周りの変化がいろいろありすぎなのです)

 

たとえばフブキ先輩とミオ先輩だ。

 

ミオ先輩とトウマ先輩がカフェでお茶している姿を見たが、尻尾はぶんぶんと千切れんばかりに振れているし、その顔は他の人と話しているのとは全く違う表情をしていた。

 

本人が自覚しているかはわからないが、あんな幸せそうな表情を浮かべているのを見ると勘違いされても反論できないだろうに

 

フブキ先輩はトウマ先輩との距離が物理的に縮まっていた。学内では親しみやすい雰囲気を発しながらも一定以上異性との距離を詰めさせず【不可触】とまでいわれている彼女が、あんなに積極的にトウマ先輩に抱きついているのを見て目を疑った。

 

他にはころね先輩とぼたんちゃんだろうか。

 

ころね先輩は結構抱きついている印象が強いが、抱きつき方が今までと違ってじゃれあうから所有権を主張するようなものに変わっている。

 

ぼたんちゃんはクールというかどこか冷静に物事を把握していることが多いが、トウマ先輩の前では柔らかいというか甘えにいってる印象を感じ始めていた。

 

おかゆ先輩は、よくわからない。いつも通りつかみどころがないため変化が見て取れなかった。

 

それがここ最近の変化だ。

 

(きっと何かあったのです)

 

一番の変化は先輩だ。

 

今まで名字でしか呼んでなかったのに、フブキ先輩、ミオ先輩、おかゆ先輩、ころね先輩、ぼたんちゃんについては名前呼びになっていた。

 

それだけじゃなく、私たちとの接し方も変わった気がする。

 

(その理由を今日聞き出すのです。できれば私たちをどう思っているかも!)

 

ふんっと気合を入れなおするしあ。

 

「先輩? 聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

「ん~? 良いよ~、何かな~」

 

……一瞬意識が飛んでいた。

 

普段の先輩とは全然違うふわふわとした話し方に、いつもの朗らかな笑みではなく蕩けたような笑みを浮かべている。

 

思わずカワイイと思ってしまった。

 

「んんっ! えっとですね、最近何かあったのです?」

 

「最近~?」

 

「そうぺこ。最近フブキ先輩とかころね先輩とかぼたんちゃんとかと仲良くなったぺこよね?」

 

「そうそう、急に名前で呼び始めるなんて、何かあったとしか思えないじゃないですか。教えて欲しいなーって」

 

「あ〜ん〜まぁ、良いか〜」

 

そういって先輩が話し始めた。

 

まずはぼたんちゃん。アクシデント(これについては教えてもらえなかったが)があって、そのときに名前で呼んで欲しいと言われたこと。

 

次はフブキ先輩。

 

実はトウマ先輩が女性と接するのが苦手だったこと。でもフブキ先輩の言葉で、前向きに接するようになったこと。

 

そして、ミオ先輩、おかゆ先輩、ころね先輩。

 

ミオ先輩は始めて勇気を出して自分から名前で呼んだ事。ころね先輩はいつもどおりの圧だったし、おかゆ先輩はさらっところね先輩に便乗していた。

 

(でも、いくらなんでもやりすぎな気がするのです!)

 

ころね先輩とおかゆ先輩に耳と首筋を噛まれるとか、それキスに置き換えると《あなたは私のものです》って主張な気がする。

 

ぼたんちゃんはトウマ先輩にしなだれかかるとか、貴女そんなキャラじゃないのです。

 

フブキ先輩は胸に抱きしめるとか、普段の鉄壁はどこに行ったのか。

 

ミオ先輩はもうこれ告白ですよね! 幸いトウマ先輩にそんなつもりはなさそうですし、ミオ先輩も聡明な方なのでそれに気づいてはいるでしょうが、自分で近寄っていったのみるとおかゆ先輩たち来なかったらいくとこいってたんじゃないんですか?!

 

マリンを見ると、顔を赤くしながらも興味深そうに話を聞くのに集中していた。意外と乙女なところがある彼女だからわからなくもない。

 

対してぺこらはにやにやと笑いながら手に持つスマホで話の内容を録音していた。あとで後悔することにならなければいいけど。

 

トウマ先輩はそこまで話すとふらふら揺れながら再びお酒を飲み始めた。

 

「ねえ先輩、私からも良いですか?」

 

「ん~?何~?」

 

顔を赤くしたマリンの問いかけに、トウマ先輩の顔がそちらへと向いた。

 

「私たちのこと、どう思ってます?」

 

「「!?」」

 

その問いかけに思わずマリンの方を向いた。

 

「ん~どう思ってる、か~」

 

トウマ先輩が再びお酒を飲むと、グラスへと視線を落とした。残ったお酒を揺らしながら、何か考えているようだ。

 

その様子を3人で固唾をのんで見守る。

 

「とりあえず3人共にいえることは……」

 

「「「……」」」

 

「3人ともとても可愛くて素敵な娘ってことかな~」

 

「「「っ!?」」」

 

口調はさっきまでと変わっていない。でも普段先輩が言わない言葉が出てきて全員に動揺が走った。

 

「まずは宝鐘さんはとてもフレンドリーで僕みたいな陰気な男にも気さくに話しかけてくれるし、努力家で自分を磨くのを怠らない姿勢が素敵だと思ってるよ」

 

「ちょ、せ、先輩!?急にそんな……ちょっと、恥ずかしいです」

 

突然の褒め攻勢に、一気にマリンの顔が一気にトマトのように赤くなった。もじもじと体をくねらせているところを見ると、割とまんざらでもなさそうだ。

 

「兎田さんは……」

 

「え、ちょっと待ってぺこ!?」

 

「いつも明るくて元気いっぱいで、でもちょっと人見知りなのか偶に宝鐘さんやノエルさんに助けを求める姿があって、それがかわいいなって思ってる」

 

「~~~~?!?!?!?!」

 

あ、ぺこらが恥ずかしさのあまり顔を覆ってプルプル震え始めた。

 

「最後に潤羽さんだけど……」

 

「え、あ、私もなのです?!」

 

しまった、油断していた。心の準備がまだできてない!

 

「お淑やかで家庭的ですごいねって思う。今日の食事も美味しいし。こんな可愛くて家庭的な娘そういないよね」

 

「っ~?! も、もういいのです!」

 

ああ、ぺこら達はこんな衝撃を受けたんですね。一気に顔が熱くなりました。

 

そんな私たちの胸中なんていざ知らず、先輩は呑気にお酒を追加で飲み始めていた。

 

「そ、そうぺこ! 先輩は私たちに不満とかないぺこか?」

 

これ以上言われてはたまらなと、ぺこらが質問を変えた。ナイスプレーだよ、ぺこら。

 

「不満~?」

 

すると、先輩の動きが止まった。ゆっくりと飲んでいたグラスが机に置かれる。

 

(ね、ねえマリン? 先輩なんか雰囲気違くない?)

 

(う、うん、船長もそう思う)

 

そっとマリンに近づき、こそこそっと話す。

 

今までが亀のようだとするなら、今は毛を逆立てて怒る犬のような……。

 

すると、先輩の揺れが止まった。

 

「不満……そんなの、あるに決まってるでしょ!!」

 

「「「!?」」」

 

突然先輩が吠えて立ち上がった!

 

あの大人しい先輩があんなに感情を露にするのをはじめてみた。

 

「まず無防備すぎる! 僕も男なんだ! 女の子の隣に座ったり、抱きつかれたりして何も思わないわけないだろう!」

 

「特にころねさんにフブキさん! あんなに無防備に抱きつかれると困るんです!最近はぼたんさんもボディタッチが増えてきてるし!」

 

「ミオさんもなんか最近表情が一層可愛らしくなってるし! おかゆさんなんか妙にからかい方が露骨だし!!」

 

「……」

 

こんなに取り乱す先輩も初めて見たかも。今まで溜まっていた不満、というか自分の我慢が解き放たれてますね。

 

マリンもぺこらも呆気にとられてる。

 

「いや、みんな隔意はないのは確信してるし、たぶん好意を持ってくれてるんだろうけど親愛以上かどうか判定できないから我慢が限界超えそうで怖いんだよ!!」

 

トウマ先輩が頭を抱え始めた。

 

「それに3人とも!!」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

先輩が急に急に立ち上がり、

 

急に呼ばれて、思わず姿勢を正す。

 

「君たちのような美人に優しくされちゃうと勘違いしちゃうのが男で、僕もそんな1人です! くれぐれも、くれぐれも注意するように!!」

 

「「「はい……」」」

 

「よし!……」

 

満足したように頷くと、先輩が糸の切れた人形のように座り込んだ。

 

そのまま崩れ落ちるように横になった先輩に慌てて近寄る。

 

「先輩!? 大丈夫ですか!?!?」

 

「ちょっと、先輩大丈夫ぺこか?」

 

「トウマ先輩!? しっかり!?」

 

先輩の口元に耳を寄せて呼吸を確認する。

 

「スースー」

 

聞こえてくるのは先輩の穏やかな寝息だった。特に弱くもなく、穏やかなそれにひとまず安心した。

 

「もう、びっくりさせないでほしいぺこ」

 

「まあまあ、とりあえずなんともなさそうだったからいいじゃないですか」

 

一先ず先輩の頭を掴んで、自分の膝の上に乗せた。

 

膝の上にある、先輩の穏やかな寝顔を見つめる。そっと顔にかかる髪を払う。

 

穏やかなその表情に温かい気持ちがあふれてくる。

 

「ほんと、呑気に寝てますね……」

 

「触ってもまったく起きないぺこね」

 

ぺこらがツンツンと先輩の頬をつつく指を軽く払う。

 

「でも、驚いたね」

 

「そうぺこね」

 

「そうですね」

 

正直、私たちを女として見られていないと思っていた。

 

だから、あんな風に感じてくれてたのかと思うと、ちょっと安心した。

 

「正直、迷惑かけてたかと思ってたぺこだから、ちょっと安心したぺこ」

 

「それに、女性として見られてたのもそうですけど、現時点では決着はついてないですからね」

 

「そうだね。でも、今はこの寝顔を私たちで独占させてもらおうかな」

 

寝てる先輩の顔を揃って見つめながら、3人で静かに笑いあうのであった。

 

 

 

 

 

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