ホロホロしちゃっていいじゃない!   作:てんりょう

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第13話「たまにはショコラのような甘い時を」

 

「それじゃぁ、お邪魔〜!!」

 

「またね〜」

 

「ふぁ、あむ、お疲れ〜」

 

「いつもありがとう、トウマ君」

 

「うん、お疲れ……」

 

ころねさん、おかゆさん、フブキさん、ミオさんの4人を睡魔で重い瞼をこすりながら見送る。

 

昨晩から続いたゲーム三昧も終了。元気いっぱいなころねさんに戦慄を覚えながら、こちらも研究室へ向かう準備をする。

 

頭は眠気でぼんやりとしているが、心は充実していた。

 

「しかし、皆心配してくれてたんだなぁ」

 

10日ほど前、不覚にも体調不良で高熱を出し鷹嶺さんと博衣さんに看病してもらい、その後2人をそれぞれ約束の場所に連れて行った後。

 

『後輩君、大丈夫?』

 

『トウマ先輩、大丈夫でござるか?』

 

『ちわーっす、トウマ君、大丈夫っすか?』

 

『こんぬい~。先輩、元気になったみたいで何よりです』

 

ときの先輩、風真さん、大空さん、不知火さんは、まあ普通だった。

 

ちょっとチクリと苦言は呈されたものの、まあ一般的な範囲内のもの。

 

だけど。

 

『トウマ君!? 大丈夫なの?! また無理してない?』

 

『トウマ君、話は聞いたよ?! ウチ、今度料理つくりにお邪魔するね』

 

『トウマ先輩、今度マッサージしに行きましょうか?』

 

星街先輩とミオさん、そしてぼたんさんが若干過剰な反応を示したのが申し訳ないような嬉しいような。

 

また心配をかけたせいか、ここ数日何人も様子を見がてら遊びに来ていた。

 

鷹嶺さんと博衣さんとの約束の翌日にはぼたんさんと尾丸さんが。

 

その翌日には不知火さんと白銀さん、宝鐘さん。

 

そして今日、というか昨日はころねさん、おかゆさん、ミオさん、フブキさんの4人。

 

フブミオの2人はやばかった。

 

いつもなら半人分くらいは距離が空いているのに今日に限っては肌と肌が触れるか触れないかの距離感だった。

 

かといってころねさんとおかゆさんが平常通りだったかというと、多分違う。

 

いや、表面上はいつも通りだったのだけど常時注意がこっちに向いているのをなんとなく感じていた。

 

まあ、それだけ心配をかけたということで反省するしかないのだが。

 

4人ともアカデミーでは会うものの、プライベートで中々機会が合わなかったのもあるのかもしれない。

 

ともかく久しぶりに4人と一緒に夜通し遊んでしまったが、今日は教授から言いつけられた用事があるので研究室にはいかないといけない。

 

一緒にやる人もいるから、さぼるわけにはいかない。

 

「ちょっと早いが、仮眠ついでに研究室に行こうか」

 

今はまだぼんやりしている頭を抱えながら、歩いて研究室へと向かう。

 

いつも通りアカデミーを歩き、研究室の扉を開ける。

 

「おはようございます……誰もいないか」

 

挨拶しながら中に入るが、だれも中にいなかった。まあ、教授がいないのはいつものことだけど。

 

(まあ、教授はふらふらしてるからしょうがないか)

 

納得するとそのまま奥の作業スペースに向かい、しかし近くにあったソファが目に入った。

 

途端に頭を襲う眠気。そして視界に入る来客用のソファ。

 

その柔らかさを知っていて、そして来客がないことも把握している。

 

そして時計を見るとまだ時間には少し余裕があった。

 

「…………ちょっとだけ寝るかな」

 

誘惑には抗えない。

 

スマホのタイマーをセットし、靴を脱いでソファの上に寝転がった。

 

やはり徹夜でのゲームは体力を消耗していたのだろう。瞼を閉じるとすぐに意識も沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

side Choco Yuzuki

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっこ~ん。おはようございます」

 

研究室の扉を開き、挨拶しながら中に入る。

 

今日はゼミではなく教授から申し付けられた雑務をするためにきた。特に講義もなく、本来なら来なかったのだけど。

 

(今日はトウマ様と作業~)

 

危うく寝坊しかけたけど何とか約束の時間に間に合ってよかった。ありがとうスバル様。

 

「あれ? ちょっこ~ん。トウマ様~??」

 

珍しい。

 

研究室内にトウマ様の姿が見えない。

 

いつもなら約束の時間より早く来ているのが普通なのに。

 

「ん~~~?……あっ」

 

きょろきょろと室内を見渡すと来客用のソファのところでスヤスヤと眠っていた。

 

寝ている間にずれ落ちたのか、頭がひじ掛けから落ちていて少し寝にくそうだ。

 

「……そうだ!」

 

ちょっと眉をひそめているトウマ様を見ていてやりたいことが思いついた。

 

(そうと決まればさっそく……)

 

私はトウマ様を起こさないよう、静かに作業を開始した

 

 

 

 

side out……

 

 

 

 

 

 

ふわりと甘い香りを感じる。

 

柔らかい何かに包まれているような、どこか安心する感覚。

 

何故かはるか昔に触れた暖かさを覚え、その後意識がゆっくり浮上するのを感じた。

 

「ん……」

 

少し薄暗いなと思いながら目を開けると、桃色の服が視界に入った。

 

同時にはっきりと伝わる2つの感触。

 

1つは後頭部、もっといえば頭が乗っている柔らかい何か。

 

もう1つは髪を優しくなでる細い指の感触。

 

そして鼻腔をくすぐる甘い香り。

 

まるでお菓子のようなそれを認識して、

 

「あ、起きましたか? ト・ウ・マ・さ・ま」

 

「……?!?!?!」

 

今自分が癒月さんに膝枕されていることに気が付いた。

 

そして目の前にあるのが彼女の胸であることに思い至り、咄嗟に顔を背ける。

 

「あ、ちょっと、急に動かないで? 危ないわよ?」

 

勢いが付きすぎてバランスを崩してそのままソファから落ちそうになるが、彼女がそっと肩を抑えてくれたおかげで落ちずに済む。

 

「あ、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

そのまま癒月さんは髪を漉くように頭を撫で続ける。

 

恥ずかしいやらこそばゆいやらで、顔が真っ赤になっていくのがわかる。

 

しばらくの間なすがままになっていたが、はっと自分が何をしに来たかを思い出した。

 

「ごめん、癒月さん!! 今何時?! 僕寝すぎてたんじゃ」

 

「大丈夫よ」

 

「そう、よかっ……」

 

「もう終わらせたから」

 

楽しげな癒月さんの声とは裏腹に、さぁっと血の気が引いた。

 

思考が一瞬で真っ白になり、体が反射的に態勢を変えようと動き、

 

「トウマ様、落ち着いて」

 

それがわかっていたかのように肩と頭を癒月さんに抑えられる。

 

「で、でも……」

 

「いいから。ほら、深呼吸して……」

 

彼女は引き続き僕の頭を抑え、そして子供を落ち着かせるようにゆっくりと撫でた。

 

言われるがまま、深呼吸を繰り返す。

 

焦っていた頭が少しだけ落ち着きを取り戻した。

 

「そんなに怯えなくても大丈夫よ。量は大したことなかったし、それに……」

 

視界に影が落ち、首筋に髪が触れた感触で彼女が顔を寄せたのを感じる。

 

「これはあのときのお、れ、い」

 

「っ?!?!」

 

蕩けるような甘い囁きと、耳を擽るか細い吐息に思わずびくんっと反応してしまう。

 

そんな自分の様子にクスクスっと笑う彼女の様子に顔が熱くなる

 

「あ、あのときって何のこと?」

 

「私たちがまだ入学したての頃、初めての合同飲み会のとき、ちょこを助けてくれたじゃない」

 

「初めての飲み会……」

 

言われて思い出す。

 

確か入学して間もなく、同学年の誰かが飲み会を企画してそれに参加したことがあった。

 

言われればその時に癒月さんもいた気がする。

 

だけど……

 

「助けるって、何か特別なことしたっけ?」

 

「あら、覚えてないの? 私がしつこく絡まれていたところを助けてくれたじゃない」

 

「絡まれてた……ああ、そんなことあったね」

 

少しだけ記憶が甦った。

 

執拗に癒月さんに酒をすすめながら強引に口説こうとしていた男が一人いた気がする。

 

あのときは……

 

「あのときトウマ様は、敢えて空気を読まずに私と彼の間に入って、彼とお酒を差し交わした」

 

「あぁ、そうだった。そんなこと、あったね」

 

「あのときの彼の顔は傑作だったわ」

 

「でも、そのあと百鬼さんとローゼンタールさんが来て嬉しそうにしてたよね」

 

「「速攻で呑み潰されてたけどね」」

 

同時にそういって、クスクスと二人で笑う。

 

良き、かはともかく懐かしい思い出。そのあと二人のターゲットにされて苦労したのも、まあいい思い出だ。

 

「だから、僕のじゃなくてあの二人のお陰だよ」

 

「だけど、貴方が来てくれたおかげで二人がくる余裕ができたのよ?」

 

少しの間、僕らの間を沈黙が支配する。

 

その間、ゆっくりと動き続ける彼女の指先。それにくすぐったさと、それ以上の安心感を覚えた。

 

「……ふぅ、トウマ様はいつもそう。そうやっていつもかわしていくんですから」

 

ひどい人と、彼女が呟くと同時に頬を軽く突かれた。

 

「そう? 僕としては正当な評価をしてるつもりなんだけどな」

 

「トウマ様? 自分を客観的に見るのは大事ですけど、他の人が貴方をどう思っているかは、ちゃんとわかってあげないとね?」

 

「う……」

 

「これは私が貴方にお礼をしたいと思ったからしたの」

 

だから、ちゃんとうけとってね?と、耳元で囁かれた。

 

「……なんというか、慣れない」

 

「あら、てっきりミオ様とかすいせい様に似たようなことされてると思ったんだけど、違った?」

 

「……ないない。ないよ?」

 

「…………まぁ、いいですけど」

 

ミオさんの誕生日の前日と、星街先輩とのプールデートが思い起こされるも表情と声音に出ないよう抑え込んだ。

 

やや訝しそうな癒月さんの声音。

 

「それより、いつまでこのままなのかな?」

 

「それはもう、私が満足するまでよ♪」

 

話題を変えるべく、暗にこのはずかしい態勢から抜けたいと言ったものの、彼女はあっさりと却下した。

 

「トウマ様にこんなことできる機会はなかなか無いから〜今日は堪能させてもらいます」

 

「……誰かが来る前には解放してよね?」

 

「努力はしま〜す」

 

そんな楽しそうな彼女の声にやや不安を感じながらも、大人しく身を任せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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