ホロホロしちゃっていいじゃない!   作:てんりょう

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第2話「よくある日常?」

COVER Academy GC(カバー アカデミー ゲートコミュニティ)

 

通称CAGC。

 

ここは世界を熱狂させる人材を創出することを目的として設立されたゲートコミュニティ。

 

世界中から有名無名問わず様々な人材・設備を探し出し、意味の有る無しに関わらず技術や知識をかき集めた唯一の場所。

 

設立から10年以上立つ今も尚、世界を席巻する人材や技術を世に送り出している。

 

例えば最新VR技術もここの発明だ。

 

専用ゴーグルを着ければ誰でもものを掴む感覚すら体感できる装置ができている。

流石に指定の場所以外での使用は禁じられているが、ゲームやレジャーだけでなく医療や警察消防などの訓練としても用いられている。

 

僕はそんな場所にある大学部で学生生活を謳歌している。

 

別に世界を支える人材になりたいとか、新技術の開発とか、そんな願望があるわけじゃない。

 

たまたま生まれた場所がここだっただけで、たまに外から来る人たちのような燃え上がるような情熱なんてない。

 

外に出たいわけじゃないけど、熱中できる何かを探していたいだけ。

 

まだそんな感じでいいと思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ、ねっむ……」

 

結局ほぼ徹夜でPEACH TRAINSをやってしまった。

 

戌神さんの泣きの1回で結局追加でやってしまった。知らないうちにコントローラー握ったまま寝落ちしていた。

 

妙な重さを感じて目を覚ました時腹と胸の上に獅白さんと白上さんの頭が載ってた時は驚いた。

 

幸い2人とも完全に寝てたから起こさないように頭を動かしてから抜け出して部屋の片付けをして。

 

後から起き出してきた大神さんも手伝ってくれて。

 

ある程度片付いたからいい時間だったので合鍵での戸締まりをお願いして部屋を出た。

 

不用心? もうこんなこと何度もあるから今更感がある。

 

大神さんがいるし変なことは起きない。

 

見せられないものはわからないよう厳重に隠してあるし。

 

だけど、流石に睡眠時間が足りない。

 

講義中もずっとあくびが止まらなかった。

 

念の為録音録画はしたから最悪見直せばいいから講義内容は安心だけど。

 

この講義抜き打ちテストがあるから気が抜けない。

 

とりあえずこのままだと辛いから学食で少し寝よう。

 

腕時計を確認すると10:00。ちょうど開いたばかりだから席も空いているだろう。

 

僕はそう思って足を学生食堂へと向けた。

 

今日は講義ももう終わりだから、最悪多少寝過ごしても問題ない。

 

5分も歩くと到着したそこは予想通り客の姿はほとんどなかった。

 

入り口から目立たない隅の方で窓際の日がよく当たる席に座る。

 

一息ついて、そのまま腕を枕にして目をつぶる。

 

やはり限界に近かったのか一気に意識が遠のいていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重い。

 

頭の上に何かが載っている?

 

そんな違和感を覚えながら意識が浮き上がるのを感じる。

 

「あ、やべ……」

 

同時に聞こえてきた可愛らしい女の子の声。

 

何故か焦った気配を感じるそれを聞きながら目を開ける。

 

まず目に入ったのは水色の髪と人参の髪飾り。

 

見覚えのあるとあるいたずら兎の要素にがばっと体を起こした。

 

同時に後ろから聞こえたどさっという音。

 

後ろへと視線をやると、兎のイラストが記載された見知ったデザインのカバンとノートや筆箱などが落ちていた。

 

次いで声のした方へと視線を向ける。

 

視界に入るのは白いうさ耳と人参のアクセサリーを付けたおさげの少女、兎田ぺこらさんだ。

 

視線は泳ぎ口元も引きつっており、明らかに何かしたことがわかる。

 

まあ、予想はついていたわけだが。

 

僕はため息をつくと一歩兎田さんの方へと距離を詰めた。

 

それに合わせて身の危険を感じたのかばっと振り返り逃走する素振りを見せる兎田さん。

 

しかし遅い。

 

頭一つ低い位置にある彼女の頭を掴んで逃走を防ぐ。

 

ぎくりと動きが止まる兎田さん。

 

「……な、なにぺこか? ぺこらはこれから食事をとりに行くぺこよ?」

 

「うん、そうだね。だけどその前に何か言うことがあるんじゃないかな?」

 

「あーえーっと、そのー……」

 

「はい、時間切れ。お仕置きです」

 

両手で彼女の頬を掴み、そのまま引っ張った。

 

「ふぇこー!?!?!?!」

 

「前にも言ったよね、いたずらするなって」

 

「ふぉめんふぇこ、ふぉめんふぇこ」

 

「んー? 何言ってるかわかんないなー」

 

「ふぇー?!?!?!?!」

 

まあ、お仕置きとは言うものの痛くならない程度にしているのだが。

 

悪戯といっても悪意があるわけでもない、半分あいさつに近いものだと感じている。

 

とはいってもそれはそれ、イラっとする分はやり返すのだが。

 

「……トウマ先輩にぺこら先輩、何やってるんですか?」

 

「こんドラゴーン、やってますね~パイセン方」

 

そこに現れたのは頭に手裏剣星形の輪っかを有する天使の少女、天音かなたさんと特徴的な角と尻尾を持つ竜娘、桐生ココさん。

 

かなたさんのジト目とこちらを咎める声にお仕置きの手を止める。

 

「あ、今日の日替わり定食もおいしそうだね」

 

「いやぺこら先輩はいいんですか?」

 

「まあ、そんな思いっきりは引っ張ってないし」

 

頬をさすりながらこちらをじっと見つめるぺこらは置いといて、2人が持ってるトレイにある日替わり定食に目を向ける。

 

「ほら兎田さん、おわびに昼ご飯おごるから機嫌戻してよ」

 

「え、ほんと? やったぺこー!」

 

わーい、と喜ぶ兎田さんの声とよかったですね、という桐生さんの声、席はここに取っておきますねという天音さんの声を後ろに聞きながら食券を買うべく券売機の有る入口へと向かう。

 

道中時間を確認すると11:30。1時間30分ほど寝ていたのか。

 

短い割にはだいぶ回復した感がある。

 

券売機近くにつくと何人かが並んでいたが、それほど待たなくても良さそうだ。

 

並びながらスマホを取り出し、よく見る小説サイトをチェックする。

 

お気に入りの小説の更新は無いようだ。

 

「あれ、先輩今からお昼ですか?」

 

今日はよく声を掛けられる日だなと思いながら後ろを振り向く。

 

そこに立っていたのは緑髪を左右にお団子にしてドクロのアクセサリーを付けた少女、潤羽るしあさんだ。

 

「あ、潤羽さんも今からお昼?」

 

「そうなのです。お昼から講義があるので。先輩は?」

 

「僕はもう終わってて、実はさっきまでここで寝てたんだ」

 

話しながら当初購入予定だった食券を2人分から3人分に変更。さくっと購入して潤羽さんに渡す。

 

「え、先輩これって……」

 

「ま、偶にはね」

 

「そんなこと言って、毎回じゃないですか」

 

「一応僕は先輩だから」

 

「もう。……今度お邪魔するときは何か持ってきますね」

 

るしあに無事食券を受け取ってもらえたことで、2人で並んで列を進む。

 

この食堂にはCAGC驚異の新技術である全自動高速調理機が設置されていて、どんどん列が流れていく。

 

「そういえば、なんで3枚なんですか?」

 

「ああ、兎田さんの分」

 

「ぺこら、先輩に何させてるんですか……」

 

「まあまあ」

 

若干げんなりしてる潤羽さんをなだめながら調理されて配膳されたトレイのうち2つを両手で持ち上げる。

 

残りの1つを潤羽さんが持ったのを確認して、そのまま天音さんたちがいる席に向かう。

 

到着すると机を挟んで左右に分かれて座っていた。

 

片方の窓際から桐生さんと天音さん、反対側の窓際に兎田さんが座っていた。

 

兎田さんはお腹がすいているのか机の上でぐでーっとしている。

 

対して桐生さんと天音さんは2人で何か話していたが、律儀にも僕が戻るのを待っていたようだ。

 

そのことに申し訳ないなと思いつつ、机の上にトレイを置く。

 

「兎田さん、昼持ってきたから起きて。2人とも待たせてごめんね」

 

「やったー! お昼ご飯ぺこー!! いっただきまーす!!」

 

がばっと体を起こした兎田さんがすぐさまトレイを自分の前へと引き寄せて食べ始めた。

 

「大丈夫です、先輩! 私は待てるドラゴンですから」

 

「折角なら一緒に食べたかったですし」

 

「ありがとう、潤羽さんは兎田さんの横に座ってよ」

 

「ありがとうなのです、トウマ先輩」

 

潤羽さんに空いている席を譲ると、隣の空いてる椅子を持ってきて座る。潤羽さんはやはり礼儀正しい娘だ。こんなことでわざわざお礼を言ってくれる。

 

ちらっと兎田さんに視線を向ける。

 

「……」

 

何故か信じられないものを見たという表情で潤羽さんを見ていた。どういうことだ?

 

「何かな、ぺこら?」

 

「な、なんでもないぺこ。あー、今日の食事もおいしいぺこねー」

 

若干低い声で問いかける潤羽さんとそれに対して視線を露骨に避ける兎田さん。

 

そんな2人の掛け合いを聞きながら食べ始める。

 

しかし自動高速調理機の進歩はすごい。短時間でこんな味を出せるのだから。

 

少なくとも自分の調理技術ではこの味は出せない。

 

「そういえば先輩、会長と一緒に今日遊びに行っていいですか? ちょっと教えてほしいことがあるんですが」

 

「うん? 別に構わないけど……」

 

「やたー!!」

 

ぱっと頭の中で予定を確認し、特に問題ないため承諾する。

 

申し訳なさそうにお願いを口にする天音さんと大袈裟に喜ぶ桐生さん。

 

「あー。ずるいぺこ! ぺこらも遊びに行きたいぺこ!」

 

「せ、先輩、るしあも行っていいですか!? 私も教えてほしいことがあるんです!!」

 

途端に参加を表明してくる兎田さんと潤羽さん。

 

うーん、2日連続で僕の部屋に来客が多いのは予想外だ。

 

とはいっても天音さんたちに許可を出した手前、兎田さんたちを断るのは難しい。

 

しょうがない。

 

「別にいいけど、2人とも大丈夫なの?」

 

「私は大丈夫です!! 大丈夫にします!!」

 

「そ、そう」

 

「ぺこらも大丈夫ぺこ!」

 

「うん、君はそうだと思ってた」

 

とりあえず予定は大丈夫そうだ。若干潤羽さんの圧が強い気がするけど気にしないでおこう。

 

しかし、昨日今日と来客が続くものだ。

 

「それで、何時ころに来るの?」

 

「えっと、もしよければ今からでも良いですか?」

 

「そうですね、どうせなら長く遊びたいです!!」

 

「むう、私はこれから講義があるのです……。でも終わり次第すぐ行きます!」

 

「ぺこらも今日は終わったぺこなので、いつでもOKぺこ!」

 

潤羽さんだけ講義後になるが、外の3人はすぐにでも来たそうだ。目がキラキラしてる。

 

「……じゃあ、これからお菓子でも買いに行ってからにしようか」

 

「「「わーい!!」」」

 

「先輩、絶対後で行きますからね!」

 

「大丈夫、わかってるから」

 

ぐぬぬと悔しそうにしている潤羽さんを宥めながら、自分のトレイを持って席を立つ。

 

今日も騒がしい夜になりそうだと内心呟きながら。

 

しかし自然と緩んでしまう口元を4人に見られないように彼女たちより先に歩き始めた。

 

 

 




兎田ぺこら:いたずら兎。だけど相手を見る目は優れており、誰にでもするわけではない。

桐生ココ :仁義と任侠を重んじるドラゴン娘。天音かなたとシェアハウスしている。

天音かなた:良心その3。握力50kgを持つ天使娘。根がまじめで努力家。

潤羽るしあ:良心その4。寂しがりや。死霊術を使えるらしい。激しく動揺したりするとびっくりするほどの声を張り上げることも。
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