天を翔ける、されどその翼は黒く   作:紅小豆

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一応タグにもありますが、少々グロテスクな描写が含まれてます。苦手な方はブラウザバックをお願い致します。




「おっ、こっちでも特集されてる」

 

マックイーンさんのデビュー戦から数日が経ちました。あれから僕も彼女も結構注目されるようになりました。いやー、なかなかに鬱陶しいですね。メディアに関してはに関してはしつこすぎてイラつく通り越して呆れ通り越して笑えます。なんとかマックイーンさんの前では平静は保てているって感じですね。

 

 

「ごきげんよう、トレーナーさん」

 

「どうもどうも、それじゃあ早速今日のトレーニングを──」

 

「トレーナーさんは、私の前くらいでは本心をお見せになられるつもりはございませんの?」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 

この人ときたら……またそうやってとぼけるのですね。実を言うと、トレーナーさんが猫をかぶっていらっしゃることについては、前から知っておりました。今までは指摘することもありませんでしたが、最近になって私のいない所でメディアの方の愚痴を頻繁に呟いているのが気になったのです。ストレスを溜め込むのも考えものですし、それに……個人的な理由ではあるのですがせめて私の前では本音で話して欲しいのです。

 

 

「まったく……とぼけても無駄ですのよ」

 

「いやいや、いつも本心で話してるじゃないですか。現に今もこうやって──」

 

「隠れてメディアの方の悪口言ってるの、聞こえておりましたわ。それに、どれだけ巧妙な作り笑いでも、何ヶ月もあなたの担当をやってきた私の目は誤魔化せませんわ」

 

そこまで言ったところでトレーナーさんが俯いてしまいました。

 

「まったく……何を言ってるんだか」

 

「トレーナーさん?そろそろ諦めて──」

 

「とまあそんなアホらしいこと追及する暇があったらとっとと走ってきてくださいな、誇り高き良家のお嬢様?」

 

彼の表情に先程までのような作り笑いはなく、人を見下すような冷たい眼がこちらを見据えていました。

 

「ええ、それではいつも通り、アップから始めますわ」

 

「……軽蔑しないんですね」

 

「当たり前ですわ。以前、貴方と私の間には適切な信頼関係がなくてはならない、と申し上げました。現に今も、私は貴方を心から信じております。ならば、トレーナーさんも私のことを信じていただきたいのです」

 

トレーナーさんは暫く黙りこくった後、少しニヤついた表情で口を開きました

 

「……そういえば、少し前に野球中継のスタンドに映ってたの見ましたよ」

 

「なっ!?どうしてそれを今言う必要がありますの!?」

 

「いやぁ、めちゃめちゃ叫んでましたね(笑)。チョー面白かったですよ」

 

もうっ、普段はあんなすまし顔をしてるくせに、人を煽る時だけはそんな笑顔をするのですね。まったく……頭にきますわ。けれど、安心しました。トレーナーさんが心から笑っているところを見せていただけるのは初めてでしたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ……なんでこんなことに……!」

気がつくとボクは、知らない女の人に追いかけられていた。しかも腰から怪物の爪が生えてる。

「まだよッ!まだ食べ足りないわ!」

 

 

走る、走る、走り続ける。それでもアイツは追ってくる。また走る。怪物の爪が迫ってくる。ボクはしゃがんで避けようとするけど足を刺されてアイツの目の前に無理やり引きずられる。どういうわけか分からないけど、感覚が無い。痛いとも思わない。なぜか持ってたペンを出して思いっきりアイツに突き立てる。でも傷一つつけられず、逆にペンが折れ曲がってしまった。

 

「今からお腹の中ぐちゃぐちゃにしてあげますからね」

 

嫌だ、嫌だ。ボクはこんなところで死にたくない。爪で掴まれて壁に何度も叩きつけられる。痛くはないけど体の至る所から血が流れてるのがわかる。意識も朦朧としてきた。ああ、もうダメなんだ。カイチョーにも、トレーナーにも、マックイーンにも会えなくなっちゃう。そんなの、やだなぁ……

 

そんな時、アイツの頭上の鉄骨が大きな音をたてて落ちてきた。ボクはただ、アイツが鉄骨に押し潰されるのを見ていることしかできなかった。

 

「なん……で、あな……たが……」

 

 

ダメだ。もう無理みたい。アイツが力尽きて動かなくなるのを見届けながらボクも意識を手放した。

 

 

 

──イオー、テイオー!

 

 

「……え?夢?」

 

マヤノの声で目が覚める。なんだ、あれは夢だったんだ。

 

「おはよう。大丈夫だった?すごいうなされてたみたいだけど」

 

「うん、大丈夫だよ。それより、今日何の日か分かってるよね!?」

 

「うん!テイオーのデビュー戦でしょ?マヤ、絶対見てるからね?」

 

「エヘヘ、絶対1着取ってくるから、見逃しちゃダメだよ?」

 

そう言ってベッドから出て、朝の身支度をする。それから食堂に行って、朝食を食べる。うん!今日もここのパンは美味しい!満足するまで食べ終わったあと、昨日から準備しておいた荷物を持って急いで階段を降りる。

 

──テイオーちゃん、頑張ってね!

 

周りから聞こえてきた誰かの声に手を振りながら、寮を出る。駐車場でトレーナーが待ってるのが遠目に見える。ボクは足を速めてトレーナーの方へダッシュする。

 

 

「トレーナー!おはよう!」

 

「おはようテイオー、調子はどう?」

 

「もちろん絶好調だよ!」

 

『そっかそっか』ってトレーナーは少し笑いながら撫でてくれた。

 

 

 

 

トレーナーの車に乗ってレース場に向かう。正直に言うとあんまり緊張はしてない。『適度な緊張も大事なんだよ』って言ってたけど、適度どころかこれっぽっちも緊張してない。だって結果はもう決まってるから。

 

 

 

 

 

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ゲートが開く。皆走り出す。ああ、そんなペース?そんなんじゃ楽勝だよ。直線、第一第二コーナーを抜けて再び直線へ、だんだん前との距離が近づいてくる。第三コーナーに差し掛かった。前との距離はもうわずか。そろそろいいよね?

 

 

 

 

 

 

──第三コーナーへ差し掛かったところでトウカイテイオーが仕掛けました!先頭集団をまとめて追い抜き、差を広げていきます!

 

よし、全員抜いた。このまま第四コーナーから最終直線へ、もう僕の周りには誰もいない。ゴールが近づいてくるのが見える。あとは、ゴール板を駆け抜けるだけ。

 

──トウカイテイオー!デビュー戦を大差で制しました!クラシックにも期待がかかります!

 

 

 

 

 

「おめでとう、テイオー。このまま三冠目指して頑張ろうね」

 

トレーナーが頭を撫でてくれる。えへへ、撫でられるとついついご機嫌になっちゃうよ~

 

「ふふーん!テイオー様にかかればこれくらい当然だよ!ちゃんと見ててよね?ボクは最強のウマ娘になってみせるんだから!」

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