「くぅー、やっと終わったー」
どうもどうも、旧多です。デビュー戦から数ヶ月が経ちまして、ただ今お正月でございます。マックイーンさんに関してはあれから何度かレースに出て、なんと無敗です。いやほんと最高。お給料アップ間違いなしですよ(笑)
ちなみに先程までずっとパソコンとにらめっこしてまして。定期的にある担当ウマ娘のトレーニングとレースの記録をまとめる作業に思ってたより時間がかかってしまったんです。
とりあえず書類は印刷して提出用の箱に入れて……っと。そろそろトレーニングの時間ですね、行きましょうか。
ドアの前まできたところ、向こうから物音が。マックイーンさん、もう来てるみたいですね。
「どうも~今日は早い……です……ね?」
いつも僕が座っているはずの席には知らないウマ娘が、しかもいつも僕が座ってる席に座ってトランプタワー作ってます。
「……」
あれ?もしかして部屋間違えたかな……部屋番号を確認したところ”229”……間違ってないですね。改めてその方を見てみると雰囲気がマックイーンさんに少し似ています。彼女も親戚の方でしょうか?
「あのー、僕らに何かご用ですか?」
彼女は答えようともしません。というか目も合わせてくれません。それほど集中しているのでしょうか。いや、なんだコイツ。仕方がないのでトランプタワーが完成するまで待つことにします。
しばらくすると彼女が最後の一枚を置き終わったようで。立派なトランプタワーですね。即撤収していただくことになりますけど。というわけで改めて声をかけることにします。
「ええと、何かご用ですか?」
「いや、やることないから気まぐれで入ったら急にトランプタワー作りたくなってな!それだけだよ」
いや、何しに来たんですかマジで。ここでトランプタワー作ってなんの意味があるんですか。ていうかどうやって入ったんですかあなた、鍵持ってるの僕だけだったはずなんですけど。
「それじゃあそろそろ行くよ!じゃあな!」
いや、せめてそのトランプタワーくらいは片付けていけよ。そうツッコむ気力さえ失せました。とっとと帰れ。その時、部屋の扉がゆっくり開きました。
「ごきげんよう、トレーナーさん。どなたかいらっしゃいますの?」
マックイーンさんが入ってきました。そしてソイツと目があった瞬間
「なっ!?ゴ、ゴールドシップさん!?」
「よう!マックイーン!」
あ、やっぱりお二人とも面識あったんですね。それじゃあそろそろ帰ってもらって……
おや?マックイーンさんの様子が……
「まあちょうど良かったですわ。貴方には聞きたいことがありましたので」
「お?なんだ?ゴルシちゃんにかかればなんでも答えて──」
「──昨日から取っておいた駅前の店で数量限定でしか買えないとても貴重なシュークリームが見当たらないのですが、もしかして何かご存じでは?」
「シュークリーム?ああ、あれか!実はな、ゴルシちゃんが火星に行くための燃料になっちまったんだ」
いや、どういう言い訳ですか。御影さんでもそんなこと言いませんよ。あ、マックイーンさんの形相がだんだん鬼のように……これかなりまずい状況では?
「とにかく!火星の神秘を発見するにはお前のシュークリームが必要不可欠だったんだよ!めんご!」
──ダァン!!!!!
あ、ちなみにさっきの音はマックイーンさんが思いっきり床を踏み鳴らした音です。威圧が僕にも伝わってきます。ちなみに今一歩も動けません。あ、トランプタワーが無様に崩れ落ちていきます。
「……ゴ、ゴルシちゃんのトランプタワーがあぁぁぁ!!お前、エッフェルとブルジュハリファの気持ち考えたことあんのか!?こんな有様にされてこのアタシが黙ってると思うなよ!?アタシを本気にさせるとどうなるか──
あっ、逃げ出した。
──教えてやらぁ!」
そのまま窓に向かって走っていっていきます。
「ゴルシちゃんは風!やっぱ鳥!」
なんか言い覚えのあるセリフと一緒に窓を突き破って飛び降りてしまいました。次の瞬間、マックイーンさんも走り出して
「なら、刺身にでもしてやりますわ!」
どっかのオネエみたいなセリフを吐きながら同じように窓から飛び出していきました。
外を見ると寒空の下凄い速さで疾走する二つの人影が遠くに見えます。双方めちゃくちゃ早いですね、本番のレースでも活かせないかな……あ、止まった、捕まりましたね。
「もしもし、旧多です。窓一枚の修復をお願いしたいのですが、いや僕じゃなくてですね、なんというか嵐に巻き込まれたというか……あ、それは大丈夫です、覚悟してますので。はい、ではお願いします」
──費用も自前かぁ……しばらく寒いなぁ……