響ヒビカセ心ニ届ケ(仮題)   作:高町魁兎

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この作品はフィクションです…
当作品に登場する人名、地名、団体名は全て架空のものです。
仮に被っていたとしても一切関係はありませんのでご了承ください。



第一篇 Angel Awaken
#01屋上のカナリア


 今年もまた渡る……鳥たちの歌……また、帰るその日まで……

 

 これはよく母が歌っていた歌、私の母は空のエースたちの一人で、その当時に襲来した脅威を退けた英雄だなんて言われてるけど、実際はちょっと間の抜けた人。

 その部隊は七音遊撃隊(オクターヴ・ウィングス)と呼ばれ、そのムードメーカーで仕切り役、私にとっては誇れる母だ。

 でも、その母は私に少し変な形をしたハーモニカのような笛を預けて失踪して、それからもうすぐ6年、私はこの歌が恋しくて度々自分で歌っては母のことを思い出して空を眺める

 今日もまた口ずさみながら空を眺めて……今、どこにいるのかなぁ……生きているのかな……何をしてるのかなぁ……いつか会えるなら、会えるなら、会いたいよ……

 

 

「────────心地よい風が〜その身伝い いつの日か温もりに別れを告げて〜♪ ─────」

 ガチャっとドアの開く音と一緒に聴き慣れた声がした。

「やっぱりここにいた」

「はわわっ!? あっ……」

 ドサっと鈍い音をたてながら私の体がコンクリートに打ち付けられた。

「イタッ……もー、脅かさないでよあお〜」

 4月某日の昼下がり、私は学校の屋上階段の屋根の上に登って、縁の方に腰掛けて、風を受けながら歌っている所を見つけた幼馴染の愛緒(あお)に驚いて屋上に転落した。

 落ちた方向が逆だったら真っ逆さまだったよ……アブナイアブナイ。

「大丈夫? 、またあんなところ登って……」

「だってさぁ〜あそこ風が気持ちいいんだもん」

 さっきまで座っていたあたりを指さしてフグのように頬を膨らますと、愛緒は少々呆れ気味で私を見ている。

 このやりとも流石に慣れっこなご様子だ。

「はいはい、まあバカと煙はなんとやらって言うの根拠あるのかもね、でも確かに高いとこって風が気持ちいいのは認めるよ」

「でしょ!」

 ここ燈ヶ浜(とうがはま)は内陸部と離れ島が橋で繋がっているような形の少し変わった街、それ故に海が近いから普段から潮風が強く吹いて来る、だけどそれが気持ちいい、だからこそ高い所で全身で受けたいほどに心地よい風が吹く、それには愛緒も同情してくれたみたいだ。

 だけど、いつもよりも風が強かった気もする。

 今度は愛緒が呆れた顔をしたままこんな事を言った。

「だけど、そこ登るのはねー、危ないし、あとたまーに下からパンツ見えてるし」

「それ早く言ってよ!」と私は顔を真っ赤にして校庭まで聞こえそうなほどの大声で愛緒に怒鳴ると、愛緒はお腹を押さえて笑っている。

「もちろん地上からはほとんど見えないけどさ……ここからだと丸見えだよ〜w.あーお腹痛い」

「ああ、なんだ……愛緒にしか見られてないならいいや」

 そう言うと愛緒は“そう言う問題じゃないんだけどなぁ”と言いたげな顔で私を見る。

「で、愛緒はなにしに来たの?」

「お弁当、持ってきてないよね?」

 そう言うと鞄から小さな包みを二つ出して片方を私に差し出して……

「ハイ、響花のぶんほんっとこう言うところ抜けてるんだから」

「あはは……毎度ごめんね」

 包みを受け取って広げる、そういえば今昼休みだった。

 ちょうど名前を呼ばれたし、今更だけど自己紹介しておこう。

 私はキョウカ、天音響花(あまねきょうか)。好きな事は歌うことと空を眺めること、座右の姪は、「誠心誠意、有言実行」これは母さんの教えから来てる。

 よく私に「まずやると決めたならやり通しなさい、口に出したら覆さないこと」と言い聞かされて、育った名残なんだけどね。

 さてそんな話はまた後でするとして、愛緒から包みを受け取り結び目を解くと、美味しそうな香りがしてくる、横では愛緒がスマホを操作して動画サイトのアプリを開いて男女二人組のアーティストの映像を映す。

『さてさて今週もこの時間がやってまいりました……」

2×Ysh(ツヴァイワイズ)だ!」

「先週のラジオの公開収録のアーカイブだよ〜」

『こんにちは、最近は一日中家にいる事が多かったせいか、ドラムで使わない筋肉が悲鳴あげてます、メインパーソナリティのYURI(ユウリ)です』

『ユウくんがこんなんなせいで久しぶりにゴミ箱湿布だらけで苦笑い中、同じくメインパーソナリティのYUKI(ユウキ)です』

『この番組では我々新世代のカップルアーティスト……ってこの肩書きいい加減捨てたい』

 この二人は、ギターボーカルのYUKIとドラムボーカルのYURIの二人と言う構成の変わった夫婦バンド、コンビ名は2×ysh(ツヴァイワイズ)

 そんな変な肩書きがある中ビジュアルはアラサーとは思えないほど若々しい、さらに二人は中学2年生の頃からの付き合いらしく、フリートークを回させると適度に仲良く、適度に喧嘩して非常に面白くなるから曲の人気もあるけど、二人で一緒にこういったトークショーのオファーをよく受けるらしい、そのせいかこのラジオはすごく人気で私も愛緒もほぼ毎週聞いているほど大好きな番組だ。

「やっぱり、映像あるとより面白いや」

 動画を見ながら箸をすすめる、そう言えば何故か屋上って私たちしか居ないことが多いんだよなぁ……

「キョウカ、もうすぐだよ」

「あれっ? この回だったっけ?」

『続きまして、ラジオネーム“屋上のカナリア“さん、2×Yshのお二方こんにちは! 『こんにちは〜♪』さて────────』

 私はつい恥ずかしくなって動画を止めた。

 まさか動画公開された回が私のふつおたが読まれた回……流石に学校じゃぁ……

「キョウカ……恥ずかしいの?」

 愛緒はニヤッと笑いながら私の指を退かす。

「いやーあのね……あお……」

「えいっ」

『────────今週のテーマは私の思い出の小物という事で、私の回答は母から貰ったハーモニカのような笛です。

 私が小さい時に時々吹いてくれた曲も込みで思いれがあって、その母とは今は離れて生活してるのですが、首からずっと下げているほど大事にしています』

『なんかすごいハートフルなお話だね』

『この屋上のカナリアさん高校生で別居中となるとかなり辛そうだけど、思い出の笛を御守りに頑張ってると……これから何回でもお母さんが恋しくなりなってもめげずに頑張れ!』

『私たちもそのうちこう言うエピソードに出てくる曲書きたいね』

『だな……とお時間やってまいりました、じゃあこの“屋上のカナリア”さんのリクエストナンバーでCM入りましょうか』

『ではお聴きください、ラジオネーム”屋上の歌姫“さんのリクエストナンバーY×2sh(ツヴァイワイズ)でFUBUKISTART』

 この歌は歌始まりで、その歌い出しの歌詞が終わり、間奏が入った頃、私は呆然としていた。

「そう言えばキョウカ、もしかして今も……?」

 愛緒が聞いてきても私はまだまだ固まったままだ。

「キョウカ……キョウカ? 、聞いてる?」

「……ッ! ……ごめん、あお、聞いてなかった」

 身体を揺さぶられてやっとボーッとした状態から戻ってきた。

「で、キョウカ……もしかして今でも首から下げてるの?」

「ふぇ? 、えーっと……これのこと?」

 私は制服の中からその笛を出す、一応大事なものだからなるべく肌身離さず持ってたいし、校則的な都合で校内ではバレないよう隠してるけど。

「やっぱりあのお便り、嘘は一個も言ってないけど、母さんは……」

 その続きを言おうとすると愛緒が「そう言う解釈違いはよくあるし、ハートフルかどうかだったら結構ハートフルじゃない?」と言いながら私の口に手を当てて、自分の口に人差し指を当てて静かにのジェスチャーをした。

『 ──────もう一度、足並み揃えて、今度はリセットのない道へと……ready to START〜♪』

 曲が終わりCMに入るところで愛緒が私の口に当てた手を離して、携帯を操作し、広告を飛ばす。

「響花は昔っから変なところだけ過剰に気にするんだから」

「でもさぁ、実際母さんは行方不明だし、肌身離さず持ってるけど、母さんの笛よりもあの歌の方が……クドクドクドクド……」

「だから気にしすぎだって」

「だとしてもその辺厳密にしたいし……」

「ラジオのお便りの解釈違いはよくある事だしさぁ……」

 愛緒が私を宥めてると新曲の告知が始まった。

「そう言えば今日だね‥キョウカ、予約表持ってるよね?」「もちろん持ってますとも、帰りに受け取りに行く予定」

 

 この時は気付く由も無かった、その笛が私の日々を狂わせていくことを ────────

 

 

 

 同日16:30ごろ、とあるラジオ局にて

「お疲れ様でした〜」

「じゃ、お先でーす」

 件のY×2shの二人が収録を終えて足早にスタジオを後にした。

「あんなに急がなくても、今日のスケジュールはこの後空きですよ?」

「だからこそ、もうひとつの方に割く時間にしなきゃなんですよぅ」

「……海堂さんからの指令でも?」

「ああ、だからここまでお願い」

 二人は車に乗ると、地図を見せ、マネージャーの運転で指し示された場所の近くへ向かった。

 目的地付近の駐車場までは十数分で到着し、2人は降車して通信を繋いだ。

「……海堂司令? とりあえず指定ポイント付近に到着したが?」

『ああ、こちら司令部、いきなり本題だがその辺りで度々観測される異常波形と別の異常波形がここ一週間、同時に観測されている。 何かの予兆かと思ってな‥今回はその現地調査を頼む』

「この辺って昔七音遊撃隊(オクターヴ・ウィングス)の一人が失踪した時に反応が途絶えた場所の近くか」

「ちょっ優くん……それってその人のミイラとかいないよね?」

「どうだろな、でも失踪した機体の波形と違うならそこで……」

『ああ、何かの変化が起きたか……並行世界との扉が近々開く予兆か……」

「……既に開いた後かどうかの観測と警戒って事か、了解、獅童優(しどうゆう)「同じく獅童優希(しどうゆき)、「調査任務を遂行します」」

『毎度すまないな』

 と二人が行動を開始したところを下校中にCDを受け取った帰りに私はバッチリ目撃していた……Y×2shの二人がなんでこんな港街に……そういえば確か去年引っ越したってラジオとか色んなメディアで言ってたし……それがこの辺とか? ……いやいやいや……お忍び旅行かもしれないし……気になる……てかホントに変装しないんだあの二人、プライベートで出歩く時……とりあえず、話しかけてみようかな……

「あっあのー、二人ってY×2sh(ツヴァイワイズ)の……」

 私が話しかけると、二人はほぼ何の抵抗もないような感じで……「おっ、よくわかったな……」と言いながら振り向いて私の制服を見て「君、この辺の子?」と聞かれた。

「はいっ! 、あっ……あの〜お二人はなんでこんな辺境……街に?」

 緊張して喋りがおぼつかない……オドオドしすぎだって私! 

 するとYURIさんはすんなりと「この辺に用事がってね……」と地図を見せながら教えてくれた。

「ってなると、こっちからの方が近いですよ」

「そうなの? じゃあ案内してもらってもいいかな?」

「よ、よろこんで!」

 今度はYUKIさんが私に尋ねてきて私に携帯を差し出す、私は喜んで了承して案内する……だって母さんが居なくなったばしょn近辺だもん……何年か前まで、悩み事があるとあの近辺に行っては母さんがいる気がして、色んな事吐き出してた。

「この辺です」

 その場所に行く道は行き慣れているためすんなりとたどり着けた、まあ……未だにそこは禁止線が張り巡らされた廃墟なんだけども。

「案内ありがとね」

「いえいえ……たまたまこの辺の地理に詳しいだけなので」

 にしても奇妙だ、この辺に用事がると言ってたけれど二人はこの辺りにはこの廃墟と漁師組合の事務所くらいしかなく、なんかの撮影かと思ったけど違うっぽい。だけど黄色いテープの向こうの母さんの反応が無くなったあたりを見て私が立ち去るのを待ってるっぽい。

「……また違うパターン、まさかな」

 YURIさんが何かの端末を見てボソッと言った……なんか怪しい、と思っていると。

「道案内してもらっちゃったし……なにかお礼しないとね」

「いえいえ、私、お二人にたまたま会えただけで……もう、十分嬉しいですから!」

「珍しいね、他の子とかは写真とかサインって言ってくるけど、意外と無欲? 、それとも……」

「でも、お二人って事務所側のあれこれが確か……」

「非営利のファンサだからOKだよ、優くん、優くん、ちょっとこっち来て♪」

 うっそぉ……この人たちプライベートでも営業モードだ……私はお言葉に甘えて、受け取ったばかりのCDジャケットにサインを入れてもらった上に2ショット‥いや3ショット? 写真まで……こんなラッキー中々ないよね? 

 それから私がその場から一旦離れるとおふたりはあのあたりに入っていった、なんで話題沸騰中のアーティストがあんな場所に……あっ、ヤバっ。

 ポケットに手を突っ込むと自分の手元にある携帯と別にもう一個……って事は今片手に持ってるのは……これYUKIさんのだ! 

 次の瞬間にはもう足が出ていた、黄色いテープをかき分けあの廃墟の中へ入って二人を探して、「あの! 携帯、忘れっ……」と声を出した時、私が首から下げていた笛が光って床に吸い込まれるように落ち、その場にはコロンっと携帯だけが落ちた……画面上向きで。

「……あれ? さっきの子の声が……」「俺もきこえた……ってユキ、お前携帯落としてるぞ」「ええっ?!」

 

 その床の下へ全身が吸い込まれると今度は滑り台のような床の上に落ち、下へ下へと滑り落ちていく、少しすると光が見えた、一体どこに通じてるの? 

 その光を突き抜けると、私は放り出されるように宙を舞ってそれから硬いタイルの様な質感の床に落ちた。本日2度目の転落である。

「イタタタタ……ここ、ドッ!? ────────」

 受け身は母から教わっていた為、転落による怪我はほとんどしてないけど、私より遅れて降ってきた鞄がちょうど起き上がったところで私にカウンターアタックを仕掛けて来た、教科書やら色々含めてかなり重たくてそこそこ痛かった。

 そしてもう一度顔を上げてあたりを見渡すと、真っ白な壁にいくつかの大きい機械が置かれている何かのガレージ、いや格納庫って言うべきかな? とりあえずそんな感じだった。

「とりあえず、出口をさがさないとだよね」

 鞄を持って立ちあがると、あわただしい足音がする。

 誰かいるのかと思った時にはもうそれは目の前まで迫ってきて、こっちに飛びついて来て、私の身体に抱きついたまま「待ってたよ、カナ」とはっきりとした声で言った、けれどその直後になにかに気が付いたのか手を離して距離を置き、警戒体制らしき構えをとって私をギロッと睨み付けて来た。

「─────カナじゃ……ない、似てるけど、違う……どうやって入ったの? なんでここにいるの?」

 なんでって言われても……

 

 

 これが私たち二人のファーストコンタクトだった。

 To be contend




次回予告

落ちた穴の先には母さんの事を知る男の子
そして私の知らない場所では、大きな事件と激戦が繰り広げられていて・・・
ってそもそもこの子何者?
次回、第2話「隠された翼」
物語はまだまだこれからだよっ。
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