「って先週はそんなに話動いてないじゃん。」
だけど一応‥ね?やっとかなきゃだし。
「はいはい、でまあ…これからカラオケってとこだっけ?」
ざっくりしすぎってか尺がぁ…
「とりあえず早速始めようよ、キョウカ」
「‥海堂司令、なぜ‥まだ、足りないと‥」
「ミオ、今日はトレーニングも禁止されてるはずよ」
「どーせバレてないんだし、きっと私が力不足だから‥外され‥」
「ミオ!」
彼女、空音澪は禁止されていたにも関わらず、出動待機から外れてもなお、相も変わらず鍛錬鍛錬また鍛錬の生活をしていた。
「たまには休んでくれないと、心配なの、きっと海堂司令も同じように心配してるのよ。
たまには年相応に遊んできても……」
「でも、その時間も惜しんで力になれるようにならなきゃいけない‥」
そのまま澪はまたトレーニングを再会した。
「ミオ、今はあなたしか居ないけれども‥そこまで抱え込む問題ではないじゃない」
美尾は、先日の出撃時に、ほぼ何もできなかった事をきっかけにやけになって、上官の声も相方の心配も聞く耳を持とうとしていない。
「ミラージュ=エルフ、全部悪いのは私だから‥私がもっとしっかりしないと……」
ミラージュ=エルフ、彼女の心配は積りに積もるばかりだ。
・
・
・
ほぼ時同じくして、燈ヶ浜商業区のとあるカラオケボックス‥
「いらっしゃいませ、おや、響花様ではありませんか」
「はぁ、アンタかぁ‥だから良いってそう言うの、ホントにいらない」
よりにもよって今日カウンターこの人か……最悪……まあカウンターならいいけどさ。
「本日もお一人で?」
とまあいつもの決まり文句に今日は「いや、連れがいるから普通の部屋で、空いてる?」とライトの方を差しながら伝えると、「でしたらあともう少しで一部屋ご用意できます、お時間は……」といつもここまではこの人の時スムーズなんだけどなぁ……
「また1時間パック勧める気でしょ? 、ワンドリンクオーダー制の」
「何故おわかりに?」
「舐めないでよ、私の通う頻度‥とりあえずフリータイム、できるよね?」
「かしこまりました……おっと、男女お二人様でしたらあちらのフォトスポットで写真撮っていただくとカップル割がござい‥」「いや、彼、別に彼氏じゃないんで‥」「左様ですか」
彼から会計用の伝票を受け取った後で、ライトが私の服を引っ張って私の注意をひくと、「僕は撮ってもいいよ、写真一枚で‥」と言ってきたけど、「絶対御免、撮った写真店先で掲示されるからやだ」と包み隠さずやな理由を言うとライトも引き下がった。
それから階段を上がり、伝票に書かれた番号を頼りに部屋へ入ると‥あの野郎、やりやがった。
「‥広いね……」「なんで2人なのにパーティールームなの‥」
部屋番号見た時に感づいてたけど、通常4〜6人用の中規模なパーティールームだった、机から画面までが広く取られ、画面の横にお立ち台があるタイプの部屋だ。
「ここがからおけボックスって所かぁ‥」「まあ、本当はもうちょっと狭い部屋だけどね」
はしゃぐ彼を見守りつつ、有り余るソファーに荷物を投げ捨てて、コントローラーとマイクを机に持って来てっと。
「さーてと、何歌おうかな‥」
普段は1人で好きなだけ居座って歌ってたけど、今日はライトいるしなぁ‥とりあえず母さんが好きだった歌は多分知ってるだろう。
そう思って曲を一曲入れてっと‥一発目の曲目は森田交一氏作曲「BURNING HEART 」に決めた、これ元々フリー音源だったってのが驚きの一曲である。
「へぇ……こんな感じなんだ」
ライトが大人しく座って聴いている、すごく楽しげだ‥まあノリは良いけど詩が切ない歌だけどね。
歌い上げると笑顔で拍手をくれた、なんか拍手もらうのって気持ちいいかも‥
「やっぱり、キョウカの歌い方‥カナのに似てる‥ねぇキョウカ……もっと聞きたい!」
無邪気な顔で迫ってくる、なんか楽しくなって来たけど、ほんの好奇心で一個意地悪してみたくなってしまった。
「でもさ‥私はライトの歌も聞いてみたいなぁ‥」
「僕の? ……聞きたいの?」「やっぱり、ここ来たら歌わなきゃ勿体ないって♪」
そう言うと押し切られてライトも歌ってくれるみたい……だけど検索している画面は見せてくれなかった‥
「じゃあ、あんまり上手くないけど‥」
そう言ってお立ち台に登ってこっちを向くと……イントロのピアノが聞こえてくるんだけど‥ふぇ、マジで!?
イントロのピアノが終わると、紛れもなくそれでしかないギターが聞こえて来た‥ 真行寺恵里さんの「IN MY DREAM」である……ウソっ歌えるの?
彼はなんの違和感もなく歌っている、当然はじめてだからキーが下げられていると知らずに歌っているけど‥逆に下がった後の高さがちょうどあっているようだった‥がやはり音域は足りてなかった。
「‥疲れるけど、結構楽しいかも」
歌い切った後は息切れしつつも楽しげに笑っている、まあ私は予想の80°上のものが来て驚いたけど。
それから、2人で交互に歌っていく……
ちょくちょく新しい曲を交えつつも大半は母さんのMDにあった曲ばかりだけど‥
そうして1時間以上が経った頃、ライトが上着を脱いでバサっとソファーに投げた。
「あっつ‥」「そういえば羽‥平気になった?」
「ぜんぜん……」
ありゃりゃ‥1日じゃ克服は出来ないか……だけど。
「でも、キョウカと居ると忘れちゃいそうなほど楽しいから平気だっただけ、ありがと、キョウカ」
と、無邪気な笑顔で言われて私の顔が火照っていく……
「キョウカ? どうしたの?」「なんで‥も、ないからっ! ホントに!」
ライトの顔から目を逸らすと、愛緒からメールだ‥内容はベルと2人で航太の応援に行ってたけどその写真と『そっちは楽しめてる?』と言う一文が添えられてる……って今日航太試合だったの!?
「ははぁ‥あお、こっちの写真が欲しいってことね‥」
非常に隣の方が原因で撮りづらいのですが
と内心思いながら画面を見ているとライトもそれを覗いている。
「ツーショット自撮りってやつ? 仲良しな人が良くやるってカナが言ってたやつだ」
‥そんなところまで吹き込まれてるのか……
「楽しそうだね‥キョウカ」「あーもーわかった、撮りたいんでしょ?」
「バレた?」
彼はニコッと笑って私を観ている‥完全にペース乗せられた‥なんでライトとだと調子狂うんだろ……ほぼ親戚の子を世話するみたいな気分だよ……
結局、私の携帯の画角に2人で入れるようにくっついてこっちも写真を撮って愛緒に送った‥返信になんと書かれるかは期待しないでおこ‥
ではでは、写真を撮ってる間にいい感じに休めたし次は‥とリモコンを手に取った時に、久々にある歌が歌いたくなった‥何故思い出したのかわかんなけど。
「キョウカの番だ‥」
ガイドのカウントを聞きながら大きく息を吸って……
「────────胸で輝く、心の牙♪ 喰らいつけ人狼戦隊♩ウォルフファイブ! ──」
この歌はみんな一度は通るみ‥あぁ親の意向で見せてもらえない家もあるからこの文言はダメか。まあ5人のカラフルな戦士達が戦うあのシリーズの中でもこれは私の直撃世代の作品”人狼戦隊ウォルフファイブ“の主題歌だ。
この作品は主人公5人が人狼で、悪い人狼を追い払って人間を守ってくれるんだけど‥最初の方は5人を受け入れてくれる人が少なくて苦しむって言うダークファンタジー的な要素があって、新しい物好きの少年真吾が5人の事を避けずに最初に受け入れてくれて、その子の努力や戦いで助けた人が増えていくようになって次第に受け入れる人が多くなってくれて……って描写に心打たれて、よく覚えている戦隊である。
なーんかライトと一緒にいたら思い出しちゃったよ、だってウォルフファイブの5人が人狼なのを隠してるのと同じように、ライトは背中の羽を隠し続けなきゃいけないんだから、頭の中で勝手に照らし合わせてしまった。
「闇夜を超える♪ 光の爪♪ 引き裂け人狼戦隊ウォルフファイブ!」
と2番を歌い終わると私はつい‥「情熱の牙! レッドウルフ! ……大地に響け! 勇気の遠吠え! ────────」と何年ぶりかわからない名乗りをやってしまう……そして難なく歌い上げると、ライトは興味深そうに画面を見つめていた。
「キョウカ……これ‥」「ライト? どうか‥した?」
「キョウカって、こう言うの見て育ったの?」
あながち否定できない事を言われてしまったのが非常に辛いところだから、苦笑いしながら正直に言った。
「まあ、ちっちゃい頃の思い出だからさ……よく公園でお兄ちゃんと、後もう1人、あっちに居た友達と‥後2人は毎回違ったり居なかったりしたけどのめり込むようにみて、たくさんごっこ遊びしたりしてね……私はレッドかイエローが多かったかなぁ……」
「へぇ‥その友達って、愛緒じゃないんだよね? 名前出さないってことは」
「うん、もう随分長いこと連絡も取ってないんだけどね……でも私がこっちくる前は交換日記もやってたくらいの仲だったはずなのに‥何故か顔も名前も思い出せなくてさ‥」
「‥そんな事ってある?」
「でも実際に、昨日ライトと会って、母さんが居なくなる前の事を一気に思い出したんだけど、それでもあやふやな記憶しか返ってこなくて」
ライトは不思議そうな顔して首を傾げた。
「キョウカってもしかして重度記憶喪失経験者?」
「いや、一回もないけど‥」
なんで急に思い出したのか‥そして何故今まで忘れてたのか……
「ごめんね、キョウカ,とりあえず、考えるの別の時にしようよ」
「‥だね、とりあえず折角ここ来たし、次ライトの番だよ」
午後14:00、ショッピングモールのとある一角
「とりあえず、これからどうするか」
さっきまで目についた困った人の話を聞いては、助けてあげてを繰り返しているうちにすっかり昼過ぎになってしまった。
だけど私が今抱えている問題はひとつも解決していない。
その問題を挙げるならまず、結局こっちのお金には両替してないし出来ないし‥連絡手段が無いからこっちの知り合い経由での帰還も難しいし‥ 当然“ラープリューム”たちの力を借りれば移動は容易いけど、目立つし……完全に詰んだ状況に噴水に腰掛けながらため息を吐く‥しかも肝心の奴等の足取りも見失いっぱなしだし……何よりあの弓、アークウィンガーの自動修復はかなりかかりそうな見込みで‥結局しばらくは止まらざるを得ない‥まあ幸い私服捜査中だったから服装で目立つ事は無さそうだからそれだけはラッキーかな‥
「はぁ‥」とまたため息が漏れる。
とりあえずここに居てもしょうがない、この辺の地理でも覚えr‥!?
「──────って! ……──────」
数百メートル先で耳が長くて背の高い女性が慌てて逃げる男を追いかけているのが見えた‥微かに聞こえる声と口の動きから読み取ると、恐らく「待って‥それを返してください!」と言っているようだ。
ひったくりか?
さっきあたりを見渡していた時に見つけたたまたま何も下がっていない状態の広告用ポールに助走をつけて掴んでぶら下がりながらタイミングを図る。
一般男性の100m走は確か平均15秒台として推測すると‥「そろそろかなっ……いち、にーいの……さんっ!」
1で上腕に力をグッと込め、ポールに体をグッと引き寄せて、2でそのまま懸垂逆上がりして腕を伸ばして調整し、3で足を乗せ、鉄棒技のグライダー、別名飛行機飛びでさっきの男性に飛び掛かり、その男性をガッチリホールドしたまま受け身を取りつつ投げ、床に倒れたところで女性から盗ったであろう鞄を取り上げた。
「お兄さん、前方不注意ですよ〜♪」
さて、あとはあの人が追いついたら鞄を返せば‥
「いったい何が飛んできやがッ! 空色の瞳‥赤いリボン‥!」「ん?」
起き上がった彼は私を見るやそう呟いてぶつかった時に懐から落ちたバタフライナイフを拾って私の腹部を狙ってくる、だけど私は“視力も瞬発力も鳥並みだ”、ナイフを交わして腕を掴むくらい朝飯前。
そのままナイフを落とさせて回収して、「バタフライナイフだなんて小洒落た凶器なんか使っちゃって……」と少々かっこつけながら刃をしまう‥けどここで油断するんじゃなかった、彼の懐にはもう一本鞘のついたナイフがあったのだ。
「キサマぁ!」「ッったっ! ……」
切っ先が私の太腿あたりを擦る。刺さりはしなかったけど浅く切られた、咄嗟に傷口に手を当てると彼は私の写真だけ撮った後でもう一撃……と言うところで女性が追いついたのに気づき逃げていった‥呟いた内容的にも、もしかして昨日の奴等の仲間?
「────────はぁ‥はぁ‥」「あっお姉さん‥この鞄ですか?」
「えっと……あっはい‥取り返してくれたんですか?」「ええ‥」
足に傷さえ負ってなきゃなぁ‥私ってホントこう言う時にかっこつかない。
「ありがとうございます……あの‥お怪我は……」
「大丈夫です、私の鞄にガーゼと包帯は入ってるので、自分で‥」
「私の為の行動でお怪我なされたんですから‥お手当しましょうか?」
ここはお言葉に甘えよう……
「傷口、結構深いですけど‥」
「このくらいはなれっこです、これより深くいった事もありましたし‥」
「だとしても傷口が閉じるまではここでじっとしてください‥そろそろガーゼ固定しますね」
「いたたっ‥あっもうちょっとキツくて大丈夫です」
「これくらいでしょうか?」
「アたたたたっ!」「ごめんなさい、やっぱり少し緩めますね」
噴水の近くのベンチで切り傷の手当をしてもらった、けど心配する必要0だったなぁ‥ちゃんと正しい応急処置の知識を持っている方だったし、手つきから見て実践経験も多そうだ、この人保育士さんとかベビーシッダーなのかな? もしくは看護婦さん? 、だけど明確にするのは止そう、アバウトに、アバウトに聞こう。
「手慣れてますね……お仕事で手当てすること多いんですか?」
「お仕事でもやりますけど、私が面倒みている子が居まして‥その子がよく怪我をして戻ってくるもので」
やっぱり、そう言う類のお仕事の方っぽいね‥
「へぇ〜、いくつくらいの子なんです?」
「今年で高校2年です」
って事は家政婦説が濃厚だね‥と考えていると、こんなことを聞かれた。
「──あなたも見かけはそれくらいに見えますが‥」
まあ聞かれますよね……
「歳はそれくらいですけど‥私、学校には行ってなくて、この歳でもう就職してます」
「あら、そんなにお若いのに‥」「別に家計が苦しいとかでは無いんですよ、それに高等教育機関修了相当の卒業資格はもう取っちゃってるので、実質飛び級したみたいな感じですし、今のお仕事もかれこれもう4年くら‥」
うっかりしてた、私の世界と日本とじゃ常識が違う、日本の義務教育は9年だけど、私の世界は8年だ、話の流れ的に私が16〜18って事になるから日本の常識で測ったら仕事のキャリアが4年だと義務教育期間既に働いてるって計算になってしまう‥やっばどーしよ、誤魔化せてればいいけど‥
「でも、早くから働いていてやっぱり、もうちょっと学生で居たかったなぁとか思った事はないんですか?」
あっよかった‥私が何歳か厳密に言わなかったから違和感を抱かれてない。
「‥まあ、学校、行けばよかったなぁって思う事は結構ありますけど、それでも、自分の決めた道ですので」
厳密に言うと私はとある火災で天涯孤独になった災害孤児であり、その後もある事情があって修学経験は無いし、高等教育機関卒業資格を既に取ってるのも、就職済みなのも事実だけど‥まあ学校に行こうと思えばちゃんと奨学金を出そうって名乗り出てくれた方も居たよ、居たけど結局この仕事してる状態だし‥まあ後悔はしてないけどね。
「我が道を信じて逸れず歩く‥ですか、ミオにも見習わせたいですね」
「ミオ?」「さっきの、私が面倒みてる子です……あの子、自分の意思とは関係なく敷かれたレールから逸れずに、ずっと自分を縛ってて‥」
親から勉強勉強って言われてるタイプの優等生なのかなぁ、まあそう言う子に私を見習わせようとしても見習おうとしない気がするけど。
「人の人生にとやかく言えるほど私は生きてないですけど‥人生いろいろですし、だけど、私を育ててくれた人はこう言っていました、人は自分のやりたい事を見つけたら、どこまでもそこへ一直線に飛んでっちゃうって、だから勝手に巣立ってくまでは心配でも見守り続けろって」
私はニコッと笑って育ての親の名言を締めくくった。
「勝手に、ですか‥」
お姉さんは感心しているのか目が大きく開ける。
「ところで、いったい何をしてたらあんなひったくりに?」
「ただ、夕飯の買い物に来ただけです‥本当はミオと一緒に来たかったんですけどね」
「お姉さん、その気持ち、よくわかります。
振る舞う相手と一緒に献立を考えながら買い物するのって楽しいですし」
「ええ、昔はよく付いてきたんですけど、最近はあんまり‥」
「恥ずかしいお年頃なだけでは?」
「たしかに、そうかもしれませんね」
2人で顔を合わせて笑いあった。
まあ、この時の私は‥このお姉さんとは、この後にすぐ、すごく特殊な形で再会するとは、思いもしなかったけど。
午後18:00ごろ、とあるマンションの一室、空音澪の部屋……
「ただいま戻りました」
お姉さんは自宅に着くと彼女、ミオを呼ぶ‥けれど返事はない。
そのまま靴を脱いで上着をかけて居間に入ると、彼女はノートを広げたまま眠ってしまっている。
「そんなところで寝ると、風邪引くわよ」
そう言いながら彼女を抱き抱えてソファーに寝かしつけてから台所に立って下拵えを始める。
まな板を叩く音が響き、その音に気がついたミオが起き上がった。
「ミラージュ=エルフ、遅かったね、なにかあった?」
「ええ、買い出しに行ったらひったくりに会いまして」
「ふーん、相変わらずドジなんだから」
彼女はそう無愛想に言うと、ソファーの背もたれに隠れてため息をひとつついた後で狸寝入りだ。
「ミオ、今日はあなたの好きなケーキもあるわよ‥この甘党さん」
寝たふりをしたミオは、「いつまでも子供扱いしないでよ」と思いつつも、つい口角が上がってしまう。
実は彼女、空音澪は食の好みはすごく子供っぽいのだ。
同刻、語り手響花に戻って‥地下格納庫
「夜ごはん、本当によかったの?」「うん、だって何から何までキョウカに出してもらうのは流石に申し訳ないし……僕がヒモ男みたいだし」
「そこ気にしなくていいのに‥」
カラオケボックスから出て、何個か寄り道した後でここに戻って来たんだけど、彼は愛緒のお誘いも受けず、帰りで何か食べて帰るのも遠慮してそのまま帰って来た。
「それに、愛緒を脅かしちゃうかもしれないし‥だからもうちょっとは……」
「別に、あお意外と歓迎してくれそうだけど」「でも、まだ‥心の準備が」
昨日の一件で私が母さん──天音奏叶の娘だと確信してから私とは打ち解けた? けど、やっぱり‥外見で驚かれないかは心配するようだ。
「それに、ここにはキョウカが居ないと出入り出来ないから、キョウカが僕とここまでもう一回来なきゃいけなくなるけど‥この事情を説明してないからあっちから見たら不自然でしょ?」
言われてみればこの空間はある意味「本鍵も合鍵も失くして、本鍵は出て来ず、私が合鍵を持っている」と言う状態だ、めっちゃ不便じゃん。
「でも、さっきの買い物で調達した食料品でもそこそこバリエーションはできそうだし、だから多分大丈夫」
「ホントに?」「ホンt‥がんばってみる」
ちょっと不安げになってる。
「私、泊まってこうか?」
「そこまでしてくれなくていいよ、気持ちだけで十分。
だってキョウカは帰る家があるんでしょ‥カナはこう言ってた、”
キョウカは帰る場所で待ってる人が居るんだし、ちゃんと愛緒のところに帰ってあげなよ」
「ライト……じゃあ何かあったら連絡してよ」
「うん、りょーかいっ。
今日はありがと、すっっっっっっっっっごく楽しかったよ」
両手で円を書くように大きさを表現していて、幼さが滲み出るような仕草だった。
「じゃあ」「バイバイ、キョウカ」
「うん、またね、ライト」
エレベーターに乗って地上へ出る、とりあえず出てくる所を見られてはないっぽい。
そのまま水原家へとまっすぐ帰宅? でいいのかな……とりあえず、愛緒の家へ向かった。
「おかえり、キョウカ」「た‥だいま、あお‥おっ? 今日鍋?」
玄関で靴を脱ぎ、暖簾を潜って居間に入ると、居間の真ん中にある円卓にはカセットコンロと土鍋が用意されていた。
「ううん、すき焼きだよ〜……ってなぁんだ、ライトだっけ? あの子連れてこればよかったのに」
「いや、本人が遠慮したからさ‥てかそもそもすき焼きちょっと奮発してない? 私逆に呼ばなかったの申し訳なくなるんだけど」「いやいや忘れた? 今日はお父さん帰ってくるんだって」「あ〜そう言うことー」
水原家は基本両親揃って家にいることが少なく、子供だけで食卓を囲むため、滅多に鍋料理はしないのだけど……漁師である愛緒の父、
「今日日出海さん戻ってくる日だったんだ‥って結海さん居なくない?」
「お母さんの運転で一緒に帰ってくるってさ……って言うわけでキョウカ、ちょっと手伝ってよ」「はぁいはい、何すればいい?」
「具材切って、他はやるから……コウタも一緒にね」
「はぁ? 、なんで俺も‥めんどくさ‥」「じゃあテキトーにやっちゃっていい?」「いいよーある程度雑でも怒らないから」
ああ、居候してる身でありながらこんなこと言うのも変かもしれないけど‥なぜか、自分の家じゃないのにすごくこの場所に帰ってくると、安心感があって、なんか心があったかいんだ……なんでだろ。
20:10ごろ、漁船岩動丸
「どうしたんです? ヒデさん、灯台はいつもどうりじゃないですか?」
「いや、俺の見間違いか? ‥砂浜になんか青い光が見えんだが……」
「青い‥? 確かに焚き火にしては色が変ですし、花火にしては光が大きいですね」
「まさか幽霊だったりしてな」「水死体の幽霊の人魂ですかね?」
「ただの海が好きなだけの魂かもな」
日出海さんと、仲間の漁師とで2人で冗談を言いながら笑った。
だがこの青い光、いや青い大きな炎は他の船からも見えていて、目撃者は皆、人魂のようだったと語っている。
だが、その青い炎の正体は誰も知らない、知っているはずがない、なぜなら……
「中々の太刀筋だな、慣れていないにしてはな」
「‥はぁ‥はぁ‥確かに慣れてませんよ‥故に、私にこの手を使わせた時点で‥峰打ちで終わる保証はもうできません」
砂浜に怪しく光るその火は‥空色の瞳をした赤いリボンの少女が操る蒼い炎なのだから。
To be continue
次回予告
さてさて、今回でご紹介ありました赤いリボンの少女です、響花と別の2人目の語り部やってまーす。
と、次回はなななんと!
「って流暢に次回予告しないでよ、まだ名前も名乗ってないのに」
いーじゃんキョウカ、もうちょっと焦らしたって…ってほら尺がもうないからタイトルコールしなきゃじゃん!
「ちょっと!」
次回、第6話「砂浜の妖火」
刮目して待てっ!「コラ!逃げるな!」