エリートトレーナー、再起する   作:ガッチャ!マン

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XYは男主人公でやるとサナがヒロインのギャルゲになるのでおすすめです


第一話 カロスの自宅でサナといちゃいちゃする

「エリ、お風呂上がったよー」

 

 私がファイアローを撫でながら自分の写真集を読んでいると、子どもっぽい溌溂とした声が私を呼んだ。私は写真集をめくる手を止め、声の主の方へと向き直った。

 茶色の髪に小麦色の肌。普段着ているシャツと同じ、ピンク色のメルヘンチックなパジャマを着用している。いつもは結んでいる髪を解いている姿は少し新鮮だ。

 

「どうしたの? サナ。今日は随分と早いじゃない」

 

「んー、エリの写真集を見せてもらおっかなって」

 

 サナは私の向かい側にある椅子に座り、机に頬杖をついた。私に撫でられながらうとうとしていたファイアローが少し顔を上げてサナを見、すぐに元の姿勢へ戻った。

 

「ねね……撮影ってどうだった?」

 

 サナが椅子を動かし、私の耳元で囁いた。

 

「別に……ただ、バトルして、メガエルレイドとお出かけして、本を読んだり、ご飯を食べたり……少しカメラを見るだけよ」

 

「良いなぁ……サナにもメガエルレイドみたいな素敵な人がいればなー……」

 

「サナにはカルムがいるじゃない」

 

 メガエルレイドは人じゃない、と言いたいのを我慢して、私はカルムに言及した。サナはカルムのことが好きなのだ。それはもう、当人以外の全員が気付いているくらいに。

 

「ん……そう思う?」

 

 サナ軽く顔を赤らめ、私にすり寄ってきた。この子はどうもパーソナルスペースが狭くできている気がする。今いる場所が私の家なので、私が普段使っている、グレープフルーツの香りのボディソープが漂ってきた。

 

「おー、よしよし。サナは可愛いなあ」

 

 私はサナの髪をわしゃわしゃとかき混ぜ、首筋をくすぐった。サナは甘い笑い声をあげて私のひざ元へもつれ、ファイアローは面倒そうに私の膝からベッドへ飛んだ。

 サナは身をよじりながら私の膝の上に乗ってきた。私の胸元に頭をグリグリと押し付けてくるので、私はサナの生足へ手を伸ばし、くいっとその身体を持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこである。私が写真集の撮影で、メガエルレイドにされたものと同じ。

 

「きゃー! やだぁ……」

 

 うへへへ……みたいな笑いを口の端からこぼしながら、サナは私により強く抱き着いた。彼女がこういうことに憧れているのはリサーチ済みである。そもそも、写真集にメガエルレイドが私をお姫様抱っこする構図を入れたのはサナの提案だった。

 

「ほら……お休み、お姫様」

 

 私はサナをベッドに横たわらせた。ファイアローに重ならないようにはしたが、それでもファイアローは空を飛んで、彼用に用意してある止まり木へと退避する。目で謝罪をしつつ、私はサナに布団を掛けた。

 

「えー。もうちょっと話そうよ、王子様ぁ……」

 

「もう少しで日付が変わるよ、お姫様。今日は私が立て込んでて、こんな遅くになってごめんね」

 

 今日、私はカロスを旅立つ準備をしてきた。ガラル地方でポケモンリーグの委員長を務めているローズ氏から、ガラルに来ないかと誘われたからだ。そのお誘いは、私だけでなくカルムやセレナ、サナ、トロバ、ティエルノや、ジムリーダーであるコルニにまで及んだ。

 その中で、誘いに乗ってガラルへ赴くのは私の他に、カルムとサナ。ジムが落ち着いたら、という条件付きでコルニといった面々である。

 トロバは化石ポケモンの研究で忙しく、ティエルノもダンスとポケモンが軌道に乗ってきたところでカロスから離れられない。セレナはシャラシティのコンコンブルの元で、メガアブソルと修行をするらしい。

 ローズ委員長の目的は分からない。カルムはゼルネアスやイベルタルをゲットせずに逃がしたし、AZのように不老不死となったわけでもない。単にカルムの人気を得てガラルを盛り上げたいだけかもしれないが、それがカロス国外でどれほど通用するかは不明だ。そもそも何かを強制するようなことは、今のところ先方から言われていない。

 私の目的は単純で、なにやらアイドルじみたことをやらされつつある現状から脱却し、一トレーナーとしての手腕を磨くためである。

 写真集など、撮影の際にはメガエルレイドの凛々しさにドギマギしていたが、エリートトレーナーかつプロのトレーナーにまでなった私がすることではないだろう。

 私はサナの身体に毛布を掛けた。ベッドに入ってみて眠気を自覚したのだろう、目をしょぼしょぼとさせているサナの頬に手を当てて「お休み」とあいさつをした。ファイアローが自分の寝床で眠りについているのを視認すると、私は電気を消して部屋の外に出た。リビングまで出て壁掛け時計で時間を確認すると、もう深夜の12時半だ。

 この壁掛け時計は、カロスのチャンピオンであるカルネがデザインしたものだ。女優としての彼女が時計メーカーとコラボして出したらしいが、どこにカルネのデザインが出ているのか正直分からない。アラビア数字が12個と尖った針が三本あるだけじゃないかと思うのだが、カルムに言わせるとビンテージ物の趣があって上品らしい。その時は、何をかっこつけているんだとわき腹を小突いてやったが。

 私は引っ越しの準備でがらんどうになったリビングを見回して、大きく息を吐いた。別に家を引き払うわけではない。大量にあった観葉植物を実家へ送ったので、スペースが空いたのだ。

 

「みんな、出ておいで」

 

 私はウエストポーチからモンスターボールを全て取り出し、地面へ投げた。小さな光が連鎖して、その中からポケモンが現れる。

 エルレイド、シザリガー、ライチュウ、キレイハナ。サナと同じ部屋で眠っているファイアローを含めると、この五匹が私の仲間だ。

 

「遅くなってごめんね。今、食べ物を用意するから」

 

 私は冷蔵庫から、使い捨ての紙製トレイに乗ったポケモンフードを取り出した。冷蔵庫の中には、他に明日の朝ご飯しか入っていない。出発と同時にブレーカーを落とすつもりで、冷蔵庫の中を全て空にしていたのだ。

 ポケモンが食事をするのを横目に、私はペットボトルから水を紙コップに出して口に含んだ。外で食べてくるつもりだったので、自分の晩御飯は用意していない。しかし、予想外に忙しく、何も食べていないので腹ペコだ。サナの前ではそんな様子を表に出すわけにもいかないので、我慢していたのだが。

 

「シザリガー、おいで」

 

 頃合いを見計らって、私はシザリガーに声を掛けた。ひょこひょこ近付いて来るシザリガーのはさみと手を繋いで、私はバスルームへと向かった。

 

「あっ……靴下が伝線してる……」

 

 脱衣所に入り、私は自分の履いている二―ソックスが痛んでいることに気付いた。普段なら気付くことでも、あまりに忙しすぎて見落としていたようだ。

 私は靴下を脱ぎ、上着、シャツ、スカートと脱いでいく。下着を外して洗濯ネットに入れると、髪留めを洗濯機の上に置いた。

 

「うー……ん」

 

 鏡の前に立つと、当然だが一糸まとわぬ姿の私が映し出される。痩せている。トレーナーとして戦うためにトレーニングは欠かさず行っているし、普段はちゃんと食事も取っているのだが、どうも細すぎる。どうやら私は肉が付きにくい体質のようだ。これでは長丁場のバトルの時、どうしても体力面で劣ってしまう。

 それとは別に、胸元のアレも気になるところである。サナよりは大きいがセレナより小さい。トレーナーとしての資質とは関係ないので、別に何とも思っていない。私は全く、これっぽっちも気にしていない。

 私はバトル中、かなりアグレッシブに動き回るティエルノの体格に憧れているところがあった。洗練された無駄のない動き。まあトレーナーはあそこまで動く必要がないので、その動き自体が無駄なのだが。無駄に動いて視線にブレを生じさせたら、ポケモンへの指示や状態の確認が遅れてしまう。

 

「シザリガー、はさみ出して」

 

 私はシザリガーとともにバスルームに入り、スポンジを手に取った。シザリガーのはさみは大事な部分だ。バトルで酷使するし、日常生活でも使う。はさみが自身のアイデンティティに直結するので、ここの手入れは欠かすことが出来ない。少し臭いが洗えば気にならなくなる。

 

「はい、ゴシゴシ、ゴシゴシ」

 

 左手ではさみを固定しながら、右手に持ったスポンジで磨いていく。途中で柄付きのブラシに変えて、奥の方までこそげるように洗うと、シザリガーは満足して鼻歌を歌い出した。

 私も自分の身体を洗い、湯船に浸かってから出ると、パジャマにしているジャージに着替えた。洗濯機を明日の早朝に予約し、リビングへ出る。

 

「ライチュウやキレイハナの調子はどう?」

 

 リビングでは、エルレイドがライチュウにブラッシングをしていた。キレイハナも、花に良い成分の入った栄養ドリンクを飲んで嬉しそうに踊っている。このドリンクは、私がシザリガーと入浴している間にエルレイドが作ったものだ。普段からそうなのである。

 エルレイドは小さく頷いて返事をした。ライチュウもキレイハナも毛並み、花並みが良い。

 

「いつもありがとう、エルレイド」

 

 私はエルレイドにお礼を言うと、その頬に軽く口づけした。

 

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