エリートトレーナー、再起する   作:ガッチャ!マン

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(この話の)主人公は、(XYの)主人公カルムたちと旅を共にした設定です


第二話 サナとコルニがカルムを巡ってプチ修羅場

 翌朝、私は六時に目を覚ました。布団に入った時は3時ちょうどだったので、三時間程度しか睡眠を取れていない。とはいえ、私はリビングに敷いた簡易ベッドで眠っている。あまり遅く起きるとサナに寝顔を見られるかもしれない。別に見られても構わないのだが、普段はちょっとお姉さんぶっているので恥ずかしいのだ。あの子の前ではできるお姉さんでいたいと思う私である。

 

「みんな、おはよ……」

 

 私はモンスターボールからポケモン達を出し、寝ぼけ眼を擦りながら言った。出てきたのはエルレイド、シザリガー、ライチュウ、キレイハナの四体である。ファイアローはサナと一緒に私の部屋でおねんねだ。

 四匹にフードを配ると、私自身は冷蔵庫から総菜パンを取り出して食べ始めた。モソモソ、ノロノロと食べていると、いち早く食事を終えたエルレイドが、キレイハナのために栄養ドリンクを作り始めている。私はエルレイドのそばに寄って、やはりタラタラと食べながらその手つきを眺めていた。

 毎日のことなのですぐ作り終えたエルレイドは、私にドリンクを差し出した。私はそれを受け取り、片手にパンを持ちながらキレイハナへ差し出す。満開の笑顔で受け取り、クピクピと飲むキレイハナを見ながら、私はエルレイドを手招きした。

 私はロッキングチェアにエルレイドを座らせて、その膝の上に私も座った。身体を丸めてエルレイドの胸元にすり寄ると、頭と背中を撫でてくれる。私は時々、無性に誰かに甘えたくなってこんなことをすることがあるのだ。

 シザリガーやライチュウも、私の足元に集まって床で丸くなる。キレイハナだけ、光合成できるように作られている照明のもとで踊っていた。

 その約二時間後、起きてきたサナが、寝ぼけて壁にぶつかるまで私はエルレイドの腕の中でうつらうつらとしていた。

 

 

 

「うーん……」

 

 ファイアローの空を飛ぶで移動しながら、私は唸っていた。まるで母親に甘える子どものように……もしくは年上の恋人に甘える女の子のようにエルレイドに甘えてしまったことについてだった。

 エルレイドはかっこいいし、端正な顔つきをしているし、凛々しいし、強いし、気が利くし、優しいし、可愛いし……と文句のつけようもないポケモンだ。だからといって、他人が同じ屋根の下で眠っているのに、あんなことをしたのは初めてである。冒険の途中でフラダリさんに負けたことや、四天王のドラセナに惨敗したことが、思ったよりもメンタルに効いてきているのかもしれない。なにゆえあたしが二番目なの、等と言われても困る。

 私の家があるのはミアレシティ。カルムのいるアサメタウンに赴き、彼と合流してからミアレシティにとんぼがえり。そこから公共交通機関でガラルへと向かう予定となっている。

 サナはゲッコウガに抱きかかえられて地面を走っていた。カルムから貰ったタマゴを返して育てたものだ。恐ろしいことに、空を最短距離で飛んでいるファイアローに負けない速度を出している。この速度は、メガエルレイドやライチュウにも出せないだろう。

 少しもしないうちにアサメタウンに到着し、私はファイアローから地面に降り立った。

 

「ありがとう、ファイアロー」

 

 そう声を掛けてボールに戻すと、それと同時にサナも到着する。サナも地面に降り立つと、背伸びをしてゲッコウガの頭を幾度か撫でてお礼としていた。

 

「カルム!」

 

 私が腕時計を見て時間を確認していると、サナが嬉しそうな声音で呼びかけた。その声に釣られてカルムの家を見ると、ちょうどその彼が出てきたところだった。

 

「やあ、サナ、エリ」

 

 カルムは白いインナーの上に黒いシャツを羽織り、赤色のスキニージーンズを履いていた。ちなみにサナはいつも通りピンクのシャツと短いホットパンツ。私は普段の紫の上下ではなく、黒いシャツに赤い上着を羽織り、リボンタイを付けて、白いプリーツスカートを履いている。靴や靴下は上半身に合わせて、赤いローファー、黒いニーハイソックスといった感じである。

 

「おはよ、カルム。今日は大人っぽい服装だね」

 

「おはよう、サナ。サナもいつも通り素敵だよ」

 

 こいつ、よくもまあこんな歯が浮くようなことを言えるもんだ。私は呆れかえって、それを隠すために腕時計をもう一度見た。

 

「おはよう、エリ。調子はどう?」

 

「まあまあってところね。あなたは絶好調みたいだけど」

 

「分かるかい? 新しいポケモンに会うのが楽しみでね」

 

「久しぶりにサナに会えて嬉しいんじゃない?」

 

「まあね。君とも」

 

 会ったばかりの頃は、こいつ「ふーん」だの「関係ないね」だのとそっけない口ぶりだったのに、やけに打ち解けたものだ。私は少しおかしくなって小さく笑った。

 

「カルム! 忘れ物あるよー」

 

 和やかなムードになったと思ったら、カルムの家の中から聞きたくない声が聞こえてきて、私は少しげんなりした。中から、クイックボールのぎっしり詰まった袋を持って、コルニが出てきた。

 サナはカルムに惚れている。更に、私の見立てではコルニもカルムに惚れている。そしてこの三人が集まると、サナとコルニがカルムを巡ってバチバチすることがあるのだ。

 

「おはよう、コルニ。ジムの方は順調?」

 

「おはよう、エリ。忙しいけど何とかやれてるよ」

 

「おはよ、コルニ。元気そうで良かった! この前はシャラサブレありがとね~。すっごく美味しかったよ!」

 

「おはよう、サナ! あれはうちの町の自慢だからね! おじいちゃんも大好きなんだ!」

 

 お、どうやら今日はそこまで雰囲気が悪くない。ひどい日だとそのうち取っ組み合いに発展するんじゃないかというくらい険悪な時もあるのに。

 ……と思っていたら。

 

「はい、カルム。忘れ物。あ、ちょっとネクタイが曲がってるよ。少し待ってね……うん、これで良し!」

 

「ありがとう、コルニ」

 

 ……何を正妻面しているんだ、こいつは。私ですらそう思ったのだから、サナがなんとも思わないわけがなく。

 

「ところでコルニはなんでここに? ガラルには行かないんだよね?」

 

「出発前、カルムのルカリオに会ってたんだよ」

 

 一瞬で場の空気が冷えてしまった。私は空を見上げた。良い天気だなあ。快晴ではないがしっかりと晴れている。雲一つないのよりも、少しくらい雲が浮いている方が見ていて良いかもしれない。

 

「君がサナのゲッコウガ? 確かケロマツの頃に一度会ってたね」

 

 ピリピリとした雰囲気に気付いているのかいないのか、カルムがサナの脇に控えるゲッコウガに近付いた。ゲッコウガは自分を生んだ親の主を前に、粛然と襟を正している。カルムはゲッコウガの頭と顎の下を軽く撫でて、サナに向き直った。

 

「サナから貰ったフォッコもマフォクシーになったよ。カビゴンの調子はどう?」

 

「カビゴンもゲッコウガと同じですごく元気! 毎日たくさん食べててびっくりしちゃう!」

 

 以前に聞いた話だと、カルムとサナは道をふさいで眠っているカビゴンを協力して捕獲したことがあるらしい。その時のカビゴンのタマゴも、カルムはサナにプレゼントしていたようだ。

 サナはちらりとコルニを見た。カルムのルカリオは、元々はコルニのポケモンだった。それとは逆に、サナのゲッコウガとカビゴンはカルムが渡したタマゴから孵った。カルムはマフォクシーのタマゴをサナから貰っている。

 コルニはカルムに渡しただけで貰っていないが、サナは渡した上で貰っている。うーむ……だからどうしたというのだ。他人の色恋沙汰にあれこれ口を挟むと、ギャロップやゼブライカ、バンバドロに蹴りつけられて首の骨を折られてしまう。とにかく、サナはコルニにマウントを取っているのだろうか? 私は貰ったけどあんたは貰ってないよね? と。私の邪推なら良いのだが。

 サナもコルニもすごく良い子なのに、男を巡るとこうもなってしまうのか。私は腕時計を確認するふりをしつつ、大きくため息をつきたい心情になっていた。

 

「エリはご両親に会わなくても良いのか?」

 

「んー……連絡はしてあるし、別に良いかな……。ティエルノやトロバは?」

 

「あの二人は忙しくて来れなかったんだ。移動中にでもホロキャスターで連絡を取ろうと思ってる」

 

 カルムはそう言うと、モンスターボールからリザードンを出した。旅の途中、カルムと戦った際には幾度となく苦汁を舐めさせられた相手である。バトル中ではないので今はおとなしいが、いざバトルが始まってメガシンカすると本当に手を付けられなくなる。噴火している最中の火山のように荒々しく燃え盛り、夏の日差しのように熱く周囲を照らすのだ。

 

「エリはファイアローがいるよな? サナ、一緒に乗ろう」

 

「はーい。リザードン、よろしくね!」

 

 サナはゲッコウガをボールに戻すとリザードンに乗り込んだ。私もボールからファイアローを出して、その背中に跨った。

 

「じゃあ、コルニ」

 

「うん」

 

 カルムとコルニは言葉も少なく、固く握手を交わし合った。

 

「用事が済んだら、またカルムの隣に行くから」

 

 コルニは強い。格闘使いとしてだけでなく、メガシンカの深度も他の使い手とは段違いだ。それだけに、トレーナーとしてカルムと肩を並べている自負があるのだろう。私も本気のコルニ相手だとちょっと分が悪いところがある。

 そこがサナとコルニの違いだ。サナは旅の中で花火を見たり、カビゴンを捕まえたり、その他色々と思い出を重ねている。しかし、トレーナーとしての実力はかなり引き離されている。

 カルムもやはり男の子なので、強い相手には好意を抱きやすい……のか? 私は女子なのでその辺りは分からないのだが。

 

「じゃあ行こうか」

 

 カルムはリザードンに乗り込んだ。形としては、カルムが前で、その後ろにサナが座っている。サナはカルムの腰に腕を回して強く抱き着いた。

 

「またね、コルニ」

 

「今度はバトルしようね、エリ」

 

 私はコルニと拳を軽くぶつけ合った。彼女とはジムバッジ戦以外で七回戦っており、そのうち四回が私の勝利で終わっている。次回、八回目の対戦はこれまで以上に気合を入れなければならないだろう。ちなみにサナとは三回、その全てが私の勝ちで終わっている。カルムには幾度となく挑んでいるが全て惨敗。くやしい。

 

「ファイアロー、よろしく」

 

 ファイアローの頭を撫でながらそう言うと、ファイアローは大きく鳴いて返事をしてくれた。




次回以降はガラルが舞台になります
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