「……というわけなんですよね」
『キュッ』
「私も、こう、未だ状況を理解しきってないというか……」
『クルルル……』
なんとか二人を説得し、これまでの経緯を伝えた。バゼルギウスは未だ甘えるように、マムに頭をこすりつけている。
「うーん、にわかには信じがたい話やけど……んな光景見せられたら納得せざるを得んっちゅーか……」
「まあ、普通そんな反応になりますよね」
「なんか、ライダーかいなって感じやな」
確かにライダーっぽいな、と、俺達のことはとりあえず棚に上げておく。
と、隣にすわるマムに、ぽんぽんと肩を叩かれる。
「なんだ?」
「って、いうか……あなた、なんでアトラ先輩と知り合いなの?!それに隣のナルガ装備の人って……」
「兄弟子のクルガさんだが」
「そーゆーことじゃなくて!なんであんな大物2人と知り合いで、クエストを手伝ってるの?!」
「んなこと言われても」
こそこそと小声で問いただされる。
ちなみに、マムはアトラさんの後輩……つまり、龍歴院所属のハンターらしい。とはいえ、アトラさん曰くまだまだ駆け出しなのだそうだ。
「……まー、起こってもうたことはしゃーない。問題は、そのバゼルギウスくんが暴れんかとかそういうとこやな。バルクくん、聞いてもらってええか?」
「え、あ、まあいいですけど……」
帰ったらウチケシの実のハチミツ漬けを食おう。荷物に入れてきたはずだ。あと、ユクモ温泉卵も食べるんだ……
「あーあーあー、ィァ、キィィ……」
『クルルルル』
「……キィ、ァ……だってよ、マム」
「なんて?」
「ァ、あー、だから、『オレがこの娘を守る』、みたいな感じだ」
「なるほど……?」
「まァ、まああれだ。マムが止めれば暴れないってとこだな。」
あー、喉痛い。とりあえず応急処置として、回復薬グレートを飲む。甘苦いので「THE薬」という味だ。苦手な人も結構いるが、俺は割と好きだ。
じんわりとした甘さが喉に沁みる。マシになった気がする。
「うーん……せや言うんならまあ分かったけど……ギルドにどう説明すればええんや……」
「とりあえず……村に、戻らなければ、な……」
「せやな。クルガ、とりあえず先に戻って村長に説明してもろてええか?」
「分かった」
クルガさんは翔蟲を用いて、一気にキャンプの方へと戻っていった。
「さって。ウチらも戻らんとやけど……マムちゃん、一個聞いてええか?」
「は、はい?!」
「なーんで、渓流におったん?一応、バゼルギウスおるしってことで一時立ち入り禁止やったやろ?」
「え、えーっとぉ……」
「……採取じゃなかったのか?」
「ほーん?バルクくんには採取や言うたんやな?」
「そ、そうです!私、ユクモの木を採りに来たんです!」
アトラさんはニコニコしながら、マムに問い詰めている。その笑顔がめちゃめちゃ怖く見えるのは、気のせいではないだろう。
「ほんほん。で、オトモのムロトくんはどうしたんや?」
「ま、迷子になっちゃっいまして……」
「ほー?迷子なぁ……」
アトラさんが地面に手を突っ込むと、何かを取り出した。それは、黄土色の毛並みのアイルーだった。
「ご主人、ごめんニャ……」
「ムロト?!見つからないよう警戒してたは……あ」
「ほーん……無断で……へぇ」
バゼルギウスが動き出そうとしたが、アトラさんの気迫に気圧され、動かなかった。ミツネが『キュイ』と、バゼルギウスを制するように小さく鳴いた。
なんだか、アトラさんの背後にアトラル・ネセトを駆る閣蟷螂の幻が見える気がする。俺もちょっとビビっている。
「あのな……なぁぁぁぁぁぁんにやっとんじゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「ごめんなさあああああああああああああああああい!!!!!」
アトラさんのその怒声は、遠く禁足地まで響いていたらしい。
………というのは、ずっと後にとあるひとから聞いた話である。
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「うう……絶対たんこぶできた……」
「自業自得だと思うぞ、それは」
『キュム』
キャンプを通り過ぎ、徒歩でユクモ村まで戻ってきた。
アトラさんを先頭に、俺とミツネ、それからマムとムロトが横に並び、マムの後ろからトコトコとバゼルギウスが着いて来ている。
「ふう……ま、ちょいとウチも怒りすぎたわ……っと」
村の方から、やってくる三つの人影。ひとつはクルガさんで、もう一つはユクモ村の村長。
もう一つは……誰だ?装備はおそらくジンオウガ装備なのだが、見たことない形のせいで、男か女かわからない。
「ってことで戻ってきたやで」
「話は聞いております。その子の処遇は、ギルドや龍歴院に一任致しますわ」
「うんうん、ぼくもね、村長のいうことに賛成なんだよね」
ほわほわした雰囲気の人だ。誰だ?
「……あの人は?」
「あの人はマツガさん。ユクモ村専属のハンターよ」
マムが耳打ちしてくれた。なるほど、名前だけなら確か聞いた覚えがある。怒ると怖い人だとか言ってたっけな。
「それでねぇ、流石にバゼルギウスを村に置いとくのも難しいんだよねー。アトくんたち、ドンドルマ行くんでしょー?連れてってあげたらー?」
「なんで知っとる……って、そいつはこん子に出てけって言いたいんか?」
「ううん、違うよー。マムちゃんのためにも、1回ドンドルマギルドに行くのをおすすめしたいんだぁ。きみたち、あと一人なら増やせるでしょお?」
ほわほわした雰囲気ながら、割と真剣な様子は感じ取れる。
「はぁ……ウチはええけど、クルガらはどうや?」
「……俺は、いいぞ」
「俺もミツネも大丈夫です」
『キュ』
「マムちゃんは……一応聞くけど、ええな?」
「分かりましたよ、いいですよ。拒否権ないのは知ってますってば」
アトラさんは額を抑えてため息をついた。
「わーかったわかった!連絡入れてくるから、荷物纏めて広場に来てや!1時間後に集合や」
もうそろそろ夕方なのだが、そんな時間に出発して大丈夫なのだろうか。
「そうだな……先に、竜車を纏めてくる……」
「分かりました」
クルガさんも行ってしまったし、多分大丈夫なのだろう。
「はあ……じゃあ、私も準備してくるわ。ルギウス、大人しくしててね?」
「ルギウス?」
「名前よ、名前。あなたのタマミツネにも『ミツネ』って名前があるでしょう?」
バゼルギウス……ルギウスはその場に座り、待機の姿勢をとった。マムはそのまま、建屋の方へ向かっていった。
俺達も行こうとした時、ふとマツガさんが話しかけてきた。
「……きみが、バルクくんだよね?」
「え?あ、はい、そうですが……どうしました?」
「クルガくんから、色々聞いたよぉ?結構期待されてるみたいだね」
「嬉しい限りですよ」
「うんうん。ぼくもちょっと期待してるんだよね……天彗龍くん」
「!」
脳の奥で警鐘が鳴っている。何を言っているんだ?この人は。俺が天彗龍の記憶を持っていると言ったことは無い。なのに、どういう事だ?
いや、この人はなんなんだ?白っぽい瞳が、不気味に見てくる───
「……バルク、ちょっと手伝ってくれ」
「あ、はい!すみません、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃあい」
ほわほわと、手を振りながらマツガさんが見送ってくる。そこに不気味さはなく、ぽわぽわしただけの雰囲気の人がいるだけだった。
なんだったんだろうか………
閲覧ありがとうござい!!!!( ˇωˇ )