今回も捏造設定や自己解釈が多分に含まれています。お気を付けて、
『ギジャァァァァァ!!』
まるで人間の赤子が泣き叫んでいるような、悍ましい咆哮が響き渡る。
ガーグァ達は逃げ出し、俺とミツネ、それからゴア・マガラの3体だけがこの場に残った。
「そっちから来てくれたのは好都合、だが……」
タイミングが悪い。不意打ちを仕掛けたかったが、正面から来られてはそんなことは出来ない。
しかし、やらないという選択肢はない。目的は触角の破壊、それだけは忘れないようにしなければ。
先に動きだしたのは、俺達。足元を狙い、抜刀と同時に斬払う。
ミツネも同時に動き、泡を撒き散らして滑りながら反対の前脚を狙い、突進。
ゴア・マガラは攻撃をモロに受けるものの、怯んだり揺らいだりせず、翼脚を振るって薙ぎ払いをかけてくる。
俺はゴア・マガラの懐に潜り込むように回避行動をとり、ミツネは身を屈め、勢いのまま泡を利用して滑りながら、当たらない位置取りへ。
黒触竜の懐に潜りこんだことをいいことに、思いっきり腹部に斬撃を仕掛ける。
すると、ゴア・マガラはそのまま羽ばたき、何か黒いものをその場に撒いた。
その黒い何かを吸い込んでしまう。途端に、咽て、頭痛が悪化し、気分が悪くなった。
忘れていた。どうして忘れていたんだ。
「狂竜症」……マガラ種特有の鱗粉により引き起こされる、ある種の疾患。
ひとたび生物が吸えば、蝕まれる。モンスターは、尚更。
『キュ……』
「遠距離支援を頼む!」
『キュィ……キュ!』
ミツネは物分かりがいい子だ。こう言っておけば、黒いの……狂竜の原因には近づかないはずだ。
問題は、俺。ゲームでは何度も殴っていたら治っていたが、現実はそうもいかないだろう。実際、今強烈な倦怠感と頭痛に襲われている。狂竜ウイルス自体は、ゴア・マガラは自衛の、その生体であるシャガルマガラは生殖のための物質だ。単なる病原体とは訳が違う。
どちらにせよ、対象を弱らせなければならないという意味では同じ用途だ。即効性を備えていることに、何ら不自然はない。
気合で持ち直し、カカルクモナキを構える。もしもゲームと近い仕組みで治るのなら、運動することで体温を上げるべきだろう。ウイルスとはまた違うが、その名を冠するなら熱によわい……と、思う。マガラ種自体、火に弱いし……。
とにかく、攻撃を仕掛けていく。ミツネの圧水ブレスや泡の助けもあり、不利属性ながらも順調にゴア・マガラに傷がついて行く。
が、それとともに気怠さは増していく。動けど動けど、治る気配はない。やはり、当たり前ながらゲームと現実は違う。
それでも、気を確かに持ちながら攻撃を仕掛け続ける。
粉塵爆発を躱し、前脚叩き付けや薙ぎ払いを切り払い、
すると、身の程知らずな龍の子は、その翼脚を地面にしっかりとつけ、叫んだ。駄々をこねる子供のように、「この場は自分の物だ」と主張するように、狂竜の力を高めた。紫の触角が、ヒトの子供が気に入って持った枝のように主張する。
我儘な子には仕置きを。これはヒトも龍も同じだ。駄々っ子には灸を据えてやらなければなるまい。
ならばともう一度刺突を繰り出せば、龍の子の前脚に突き刺さる。
痛みに悶え、暴れる龍の子から無理矢理
まだ足りないのか。そう思い、突進してやろうとした瞬間。
俺の体が吹き飛んだ。
時間差爆発式の狂竜の塊。それに気が付かず、直撃してしまったのだ。
地面に叩きつけられる。立ち上がろうにも、今度は打ち所が悪かったのか、それとも狂竜症が進んだせいか、力が入らない。
龍の子の翼脚が振り上げられたのが見えた。それは、的確に俺の首を狙っていた。
間に合わない。その文字が脳裏によぎったときだった。
『キュ……ヒュェェェェ!!』
『グゥウ?!』
何か弾けるような爆発音がして、龍の子が体勢を崩した。その周囲には、青く光る泡が浮遊している。
『ヒュイイ……キュイィ!』
声の主へと目を向ける。
そこには、小さな泡狐竜が――――ミツネが、黒触竜に向かって威嚇している光景があった。
黒い鱗粉の海の中で、右目に灯る青白い光が、泡と共に周囲を淡く照らしていた。
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