『泥翁竜』オロミドロ。本来はもう少し山奥に生息しているはずなのだが、近年の百竜夜行の影響で大社跡まで降りてきている。
百竜夜行とその元凶はクルガさんがどうにかしたのだが、それでも影響はすぐには収まらない。一応自然現象なので、尚更だ。
ただそれはそれとしても、どうして今オロミドロがここにいるんだ?!環境安定だったし、出現してもオサイズチ、強くてクルルヤックと書いてあっただろ?!トラウマクエストかなんかか!
……とは思ったが、そういや『美味なるキモを求めて』なんてクエストが存在した気がする。確かあれ、ラギアクルス乱入だったな。
しかも、いくら環境安定と書いてあっても自然は自然。どうしてもイレギュラーは起こる。
オロミドロはこちらを捉えながら、ゆっくりと近付いてくる。
さて、問題がある。こちらの戦力は俺とミツネ。俺の装備は狐刀カカルクモナキ、水属性を宿す太刀だ。泡狐竜であるミツネも、扱うのは水属性。
オロミドロは海竜種であり、しかも泥濘の地で暮らすため、水属性に強く火属性に弱い。
ぶっちゃけ、相性最悪ってやつだ。仮にオロミドロが下位個体の最小金冠、その上で弱補正個体だとしても、勝てる見込みは低い。リオレウス探してきて相手してもらう方が早いレベルだ。
こういう時は、あれだ。
「逃げるぞ!」
『キュイ!』
ミツネが大きな泡をひとつ放ったのを見て、ミツネを抱えると直ぐに翔蟲を使い、離脱する。
泥がバンバン飛んでくるものの、なんとかなっている。
ただ、なんかしつこい。とにかくしつこい。どこかに隠れて、視界から外れなければダメそうだ。岩山や木々を利用して……
「うおっと?!」
地面が隆起する。オロミドロが泥を隆起させたのだ。ギリギリの高度で当たらなかったものの、もし当たればひとたまりもないだろう。
翔蟲を使い、時々壁を駆け上がり、走って逃げる。こんな状況で、翼がないのがもどかしい。翼さえあれば、逃走にこんな苦労をしないどころか、撃退もできただろう。飛べた時の記憶があるため、なんというかな……。、
まあ、ないものねだりを今している場合ではない。
▼▼▼
「はー、はー、はーー……」
『キュゥゥ……』
頂上にお堂のある岩山などを伝い、狭い道に入ることによって何とか撒くことができた。流石に疲れたため、近くの岩にもたれかかる。
俺もミツネも無事だ。ただ、納品のためのタケノコが一つ足りない。これでは、クエストをクリアすることができない。
ゲームではないのだから、数分後にリポップする、なんてことはない。とはいえ、さっきの場所まで戻って採取するにはリスクが高い。オロミドロはおそらく、あのあたりを縄張りにしている。ならば、戻っているところだろう。
生き急ぐ意味はない。前はなかなかに短い生だったのだから、今度こそ天寿を全うしてやるつもりだ。
「……キャンプに戻って、連絡を入れることが先決、か」
初クエストが失敗というのは癪だが、仕方がないと割り切るしかないな。
そう思って立ち上がったとき、足元に何かが当たった。何かと思って見てみると、そこにはタケノコが生えていた。
そういえば、タケはとにかく繁殖力が高い。だからこそ、だいぶ無法な感じで生えてくる。
試しに軽く周囲の土をどけて見てみると、ギリギリの範囲だが、「特産タケノコ」と言えるものだった。幸運だ。いや、幸運スキルなんて発動していないけど。
タケノコを採取してポーチに突っ込む。これでクエストをクリアできる!
「よし、戻るか!」
『キュ!』
子泣キジを道中捕まえつつ、キャンプへと向かう。俺はファストトラベルは苦手なため、徒歩だ。
道中、特にこれといったモンスターは見かけず、オロミドロもあの場所にいるものだと踏んでいた、のだが……。
……キャンプ前の、いわゆるエリア1。奴はそこにいた。警戒するような様子で、分泌液を用いて地面に潜っていた。
ここを抜けなければ納品はできない。
「どうするべきか……」
使えるものはないか。持ち物は、回復用のアイテムに罠2種類。カゴにはエンエンクとクグツチグモ、子泣キジ。
「……やってみるか」
『キュ!』
▼▼▼
エリアの真ん中まで行き、子泣キジを設置する。甲高い声が響き渡り、オロミドロはこちらに気付き、地面を泳いで接近、襲い掛かってくる。
タイミングを見極め、抜刀。そのまま、尾を弾き斬る。尾の一部を欠けさせることしかできなかったが、怯んでくれたのだから十分だ。
すぐに立て直して再度襲い掛かろうと、オロミドロは跳び上がろう……として、転倒する。足元が泡まみれで、滑ってしまったのだろう。
そう、俺が気を引いている間に、ミツネが泡をまき散らしていてくれたのだ。これで、大きな隙ができる。
「よし、行くぞ!」
『キュイ!』
キャンプの方まで走る。ミツネは滑りながらついてくる。距離を離し、少しすると流石に起き上がり、俺達を逃がすまいと泥を飛ばそうとしてくる。
……が、その目論見は、ひとつの柿によって外れる。
子泣キジによって誘われたビシュテンゴがやってきたのだ。ビシュテンゴは煽るようにくるくる動く。すると、オロミドロはそれにキレたのか、ビシュテンゴの方へと向かう。
その隙に俺達はキャンプに戻り、タケノコを納品してなんとかクリアすることができたのだった。
閲覧ありがとうございます( ˘ω˘ )