煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第弐拾弐話 グレンデラ沼地攻防戦 -1

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 煉獄杏寿郎と、彼に協力した商業ギルドによって、ひとつの檄文(げきぶん)が発布された。

 

 

 

『鬼殺の剣士よ、我がもとに来たれ。この世界に住まう鬼舞辻無惨を、(たお)すために!』 

 

 

 

 それは各ギルドの広告データや運営からの告知情報と同様か、それ以上の頻度でユグドラシルの空を覆った。

 もちろん、ヘルヘイムの暗黒の空にも。 

 

「ふふ。やることが派手だな~、商業ギルド、いや、煉獄さんたちは」

 

 モモンガは〈遠隔視〉の鏡で覗き見た広告の様子に苦笑をこぼした。

 動画の途中で指を絶えず巧みに動かしていたのは気にかかったが、とにかく宣伝広告としては十分すぎるほどの映像だったと言っていいだろう。〈記録(レコード)〉した映像データを、とりあえずボックスにしまう。

 

(茶釜さんは声優の仕事で、ペロロンチーノさんは期待の新作ゲームのやりこみで最近来れ(ログインし)てないからな──)

 

 今度来た時に見せてやろうとほくそえむモモンガは、円卓の間でとある人物がインするのに立ちあった。

 

「ああ、タブラさん!」

「昨日ぶりです、モモンガさん!」

 

 二人は円卓の間を後にし、第九階層のそれぞれの目的地を目指しつつ、他愛のない話に花を咲かせた。

 

「そうですか、アルベドの調子を」

「ええ。近いうちに、ここを『去る』ことになりそうなので。残していくモモンガさんのためにも、やれるだけのことはやっておこうかと」

「そう、ですか……いえ。ありがとうございます、タブラさん」

「そんなお礼を言われるほどじゃ」

 

 モモンガは別れを惜しむように、彼の言葉をおしきって言い募る。

 

「タブラさんが構築したルベドや、第八階層の“諸王の玉座に繋がるあれら”のシステム、おまけに、自分の世界級(ワールド)アイテムとのシナジー効果で」

 

 あの大ピンチを乗り越えた。

 1500人の大侵攻という、ユグドラシル史において未曽有(みぞう)の事態を。

 そう感謝を述べるモモンガに、タブラ・スマラグディナは細長い水かき付きの指を振る。

 

「それは、どちらかといえば、モモンガさんの功績です。あそこでは便宜上“彗星”の役割しかないルベドでしたが、結局、モモンガさんの発動した“死の樹(クリフォト)”──生命樹(セフィロト)たち全員の“死”には、1000人のプレイヤーはなすすべもなく飲まれてました……あー、思い出しただけでもすごかったなー、あれ。今でも背筋ぞくぞくしちゃう」

「いやいや、自分もまさか“コレ”であれだけの破壊力を発生させられる組み合わせ……シナジーが存在したのには驚きましたよ」

「とくに地球(マルクト)による大地消失はよかったですね。もう、直に味わいたくなるレベル」

 

 TRPGのみならず、ホラーゲームにも造詣が深いタブラに褒めちぎられて、モモンガは照れ笑いの表情(アイコン)を浮かべる。

 話はギルメンたちの近況について推移していく。

 

「そういえば、この間、久しぶりにウルベルトさんと連絡が取れたんですよ」

「おお…………なんて言ってました?」

「ちょっと職場が変わったことくらいですかね、新しい仕事にも慣れてきたって」

「……それから?」

「? ああ、そういえば変なことをきかれましたよ。『ベルリバーさんのことで、何か覚えてることはあるか』って」

「へえ。──なんて答えましたか?」

「そうですね──『ナザリック地下墳墓』攻略の時とか、『ベルリバーさんと言えばブルー・プラネットさんに協力して作ってもらったアマゾン風呂のこと』とか──あれ?」

 

 それはいきなりのことであった。

 

『警告。警告。当ギルド外において、大規模な戦闘行動が確認されております』

 

 ギルメンたちが組んだ警告システムが起動し、宮殿の白亜の壁に反響していた。

 同時に、外で巡回していた仲間たちからの緊急時用に起動するアイテム〈緊急装置(エマージェンシー・コール)〉がインターフェイス──モモンガの意識に警告音と赤い光を発してやまない。

 

「緊急信号! 外の巡回組‼」

「ぷにっと萌えさんたちが⁉」

 

 二人は状況を確認すべき、マスターソースのある玉座の間へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

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「くそ、くそ! この数にここまで近づかれるまで気づかないなんてな!」

「忍の勘も、アーベラージ(ほかのゲーム)のやりすぎで(にぶ)りましたかね?」

 

 己の矜持(プライド)を大いに傷つけられている弐式炎雷に、ぷにっと萌えは気安く応じる。

 

「まぁ、おそらくというほどではないですけど。おそろしく速い“斥候隊”ってところですかね」

 

 五体の敵は、蔦の死神(ヴァイン・デス)の支配下においたフィールドモンスター、ねじくれた大木に巻き付き幹から攻撃の触手を伸ばす蔦の異形種──血塗られた蔦の暗殺者(ブラッディ・アサシンヴァイン)によって見事に拘束・拘引されている。

 拘束状態においた相手に血のように赤い毒液を吐き出すモンスターは、グレンデラ沼地の固有種であり、ぷにっと萌えの眷属の一種に数えられるもの。ただし、パワータイプには引きちぎられて拘束には向かないことと、炎や氷などの属性ダメージに弱いことなどから、あまり使える拘束具ではないが、とりあえずそれのおかげで、敵斥候集団は足を止められていた。

 

「それよりも、なんなんだ、この気味の悪い連中」

 

 軍師が捕らえた者以外の斥候隊の、十体ばかりを足元に切り伏せた武人建御雷(ぶじんたけみかづち)が評する通り、肉の膨れ上がった人間の出来損ないじみた外見は、並みのゾンビなどとは一線を画す外見。その肉腫は常時膨れたり縮んだりを繰り返して、できそこなった心臓を全身に宿すようなありさまであった。これが大男や巨人サイズとなれば、ぷにっと萌えでは手も足も出せず蹂躙されるだけだろう。

 ナザリックの誇る軍師は、現実の眉をひそめた。

 

「カテゴリ欄が文字化けしていて判読できない? こんなのは初めて見たような──」

「くそ、なんだっていい!」

 

 やるのかやらないかと素戔嗚(スサノオ)を構える忍者。

 彼が感知できているだけでも、斥候などとは比較にならない数の敵が接近しつつある。

 先の五体から十体、十五体、二十体と、尋常でない速度と数で。野良(ノラ)ではありえない規模にも見える。

 そんな〈探索役〉の焦りに呼応し、ぷにっと萌えは指揮官系スキルの“眼”をもって、解析を進めていくしかない。

 

「〈上位属性鑑定(オール・アプレイザル・アライメント)〉」

 

 相手の情報の中で知りたい情報は二つ。

 

「種族不明ですが、“悪属性”、カルマ値、『極悪』! うん、建御雷(たけみかづち)さん、出番です!」

 

 野生でこれほどの値は珍しい気もするが、茶釜の使うカルマ値をさげる特殊技術(スキル)や、カルマ値がマイナスの場合よりマイナスになる超位魔法《オシリスの裁き》を使う必要もない。

「応!」と豪語するザ・サムライは、二本の刀を構え、“明王コンボ”に通じる特殊技術(スキル)のひとつを解放。

 

「〈不動明王撃(アチャラナータ)〉!」

 

 不動明王が不動羂索でカルマ値がマイナスの相手の回避力を下げていく。

 

「〈降三世明王撃(トライローキヴィジャヤ)〉!」

 

 降三世明王が手に持った槍で大地を貫くと、同じような槍が無数に出現。

 

「〈大威徳明王撃(ヤマーンタカ)〉‼」

 

 次なる大威徳明王が巨大な棍棒で周囲を徹底的に叩きのめしていく。

 

「〈軍荼利明王撃(グンダリー)〉‼」

 

 軍荼利明王が手に持った蛇を敵の群れに巻きつかせ、金縛り効果を発揮。

 そして、最後の決め技──

 

「〈金剛夜叉明王撃(ヴァジュラヤクシャ)〉‼‼」

 

 背後に現れた金剛夜叉明王が雷撃を纏った金剛杵で複数回、異形の敵を殴りつける。これで、さらになる効果が発動。

 回避不能な相手に突き立った瞬間、先の明王五柱が取り囲むように現れ、カルマ値が僅かでもマイナスになっている者の動きを完全に止める技を放つ。

 

「よしっ!」

 

 完全に決まった!

 敵の大群は完全に明王五連撃の効果で薙ぎ払われ、それ以外の者は完璧に動きを封じられる。

 そのはずなのだが。

 

「お、おいおい、この数」

 

 弐式炎雷の〈上位(グレーター)敵感知(センス・エネミー)〉でとらえられる敵情報は、インターフェイスの地図上(マップ)に光点として浮かび上がる。

 今。武人建御雷(ぶじんたけみかづち)が動きを止めた──それ以上の数がグレンデラ沼地に集結しつつある。

 

「ご、50や60じゃきかない……下手すれば200、いや300はいるぞ!」

 

 忍者の神速も、武人の刀剣も、死神の術策すら、通用するはずのない、数の暴力。

 一体を殺すだけでもなかなかの時間と特殊技術(スキル)を要した敵の軍団。

 彼ら三人にでは抗しようがない。

 結論はひとつであった。

 

「撤退準備! 建御雷さんはそのまま敵拘束を維持! モモンガさんたちに、爆撃魔法の要請を!」

 

 

 

 

 

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「ここがグレなんたら沼地地帯、だな?」

 

 緑と黒の市松模様の羽織が特徴的な少年の問いに、「はい、我が主(マスター)」と答える黒髪に白衣の男──ヴァフスルーズニル。

 彼は神クラスの魔法詠唱者であり、グレンデラ沼地に炭治郎の県族軍を送り込む転移魔法(ゲート)を行使し続けていた。

 炭治郎は吐き気を催した様子で口元を押さえる。

 

「──薄気味悪い森だ。おまけに、この胸焼けするほどの瘴気。ただの人間であれば、〈毒〉に侵されること疑いないな」

「まさに。ですが、鬼の王であるあなた様には涼風も同然でしょう?」

「無論だな」

「とにかく、この沼地に(たむろ)する者らを、……おや?」

 

 斥候部隊が何者かに攻撃され拘束されたことを察知する魔法詠唱者。

 

「どうやら、()()()()()()ようですな」

「モーズグズ」

 

 呼び出した女騎士は、新調した眼鏡や髑髏の面を下に向け、片膝をついて命令を待つ。まさに王に仕える騎士のごとく。

 

「敵が爆撃を仕掛けた瞬間にこちらも動く、そのつもりで準備を──」

 

 言う間に、空が青く白い光に包まれる。

 これは超位魔法の詠唱陣。だが、詠唱者は森の向こうで直接攻撃にはいけない。

 炭治郎は(わら)う。

 

「話が早くて助かる……さぁ、この間の汚名を返上するぞ」

 

 彼の創造主/無惨は寛大にも炭治郎を許したが、彼自身は惨めにも命令を遂行できなかった自分を恥じていた。

 そして、超位魔法──〈失墜する天空(フォールン・ダウン)〉は、炸裂する。

 

 

 

 

 

 

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「まずは一発!」

 

 お返しすることはできた。

 派手な閃光は太陽を地表に顕現させたような、視界に映るすべてを純白に染め上げる。超高熱の発生に伴い、それに巻き込まれた森と敵は諸共に絶熱の中で消滅する。

 超級の熱源が生じていたのは数秒。そのあとには巨大な円を描く、死の大地。

 

建御雷(たけみかづち)さんが止めていた敵は一掃。他にも150ばかりが熱源内で消滅したようです」

 

 冷静に分析する軍師を隣に、モモンガは僅かながら浮足立っていた。

 敵は、ぷにっと萌えたちの証言から言って、あの竈門少年(自称)であることは、ほぼ確定。

 その証拠に。

 

(やっこ)さんのおでましだな」

 

 弐式炎雷が愉快気に巨大忍者刀・素戔嗚(スサノオ)を背に構えなおす。

 効果範囲外の外周に、悠然と姿を現した竈門炭治郎。

 当然、彼の戦闘力──とくに即死攻撃の類は危険であると教え込まれているメンバーたち。

 

「タブラさん。玉座を一時“預けます”。戦闘詳報などは逐次(ちくじ)送ってください」

「了解です、モモンガさん」

 

 さらに、いざとなればタブラは、モモンガも賞嘆するほどの魔法戦闘力で、敵軍を蹂躙してくれることだろう。控え選手としては申し分ない。

 

 本日、ナザリックにいたのは、四十一人中わずか十一名。

 

 モモンガ、タブラ・スマラグディナ、武人建御雷(ぶじんたけみかづち)弐式炎雷(にしきえんらい)、ぷにっと萌え、テンパランス、源次郎、死獣天朱雀、あまのまひとつ、ぬーぼー、るし☆ふぁー……以上、十一人。

 

 だが、モモンガは思う。

 

(正直、下の三人は実戦闘力が微妙すぎる上、今日はそれぞれの工作(クラフト)作業にかかりきりだ)

 

 あまのまひとつは鍛冶長として、メンバー全員分の武装メンテ担当。ぬーぼーとるし☆ふぁーはゴーレムクラフター。おまけにるし☆ふぁーに関しては、他のギルメンとのコミュニティ能力に問題があるときてる。

 

(実質、戦闘参加できる員数は)

 

 たったの八名。

 ──それでも。

 

「うちの庭で、好き勝手暴れられてたまるかってんだよ!」

 

 メンバーらにもギルド長の本気ぶりが伝播したように、現実の表情を厳しいものに変ずる。

 

「いくぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに、グレンデラ沼地攻防戦が、開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 同時刻。

 

「まったく、何が起こってんだか?」

 

 そのド派手な魔法の炸裂音を聞いて、銀の額宛てをシャランと鳴らす人間種の剣士が、興味をそそられた。

 彼は忍具のひとつである防毒面を口元に巻きつけつつ、小気味よい口笛を鳴らす。

 鍛え上げた耳と瞳が、青白い光爆の発生方角を、確かにとらえていた。

 

「派手なやつが多いぜ────この世界はよ!」

 

 音柱(おとばしら)

 宇随天元(うずいてんげん)

 彼の、柱随一を誇る疾走の速度を、止められる者はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遊郭編、わかっちゃいたけど、派手柱かっこよ
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