煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第弐拾肆話 グレンデラ沼地攻防戦 -2

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 ヘルヘイム。

 グレンデラ沼地の西端にて。

 

「炭治郎様」

 

 伺いを立てるようなヴァフスルーズニルの嗤笑を、少年は睨み据えて返す。

 

「我が方が多少おされている、そう言いたいのだろう?」

『おそれながら。今回のプレイヤー共は、強壮をもって鳴るギルド。名をアインズ・ウール・ゴウン。抵抗の勢いが他のギルドのそれを上回るのは、当然というモノ』

「チッ。知ってたのなら最初から申し立てておけ──モーズグズ」

 

 少年の厳しい呼び声に、銀髪褐色の女騎士は即応して現れた。

 

「御前に」

 

 騎士槍を掲げ跪く女騎士に対し、炭治郎は冷淡に告げる。

 

「二個中隊を率いて側背を突け。頃合いは今より半刻ほど後」

『御意』

 

 そう言って引き下がっていく眼鏡姿の女騎士に、炭治郎は一瞥もくれてやらなかった。

 主人と従者として完成されきった態度ではあるが、もう少し情緒というモノを大切にされてはと思うヴァフスルーズニルであったが、

 

(まぁ、この私が指摘することでもありませんね)

 

 そう思いつつ、念話(テレパス)による通信が入る。

 

「ファフニールたちが所定の位置につきました」

 

 炭治郎はひとつ頷き、「行軍開始」を告げる。

 

 

 

 

 

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「だあああああああああああああああああああああ、うざったああああああああああああああああい!」

 

 弐式炎雷の喚声が響く中。

 炭治郎のくだした鬼たちの再生力と突貫力に、ナザリック勢は苦戦を強いられていた。

 

「なるほど。これを真正面から受けた第十一都市の連中が苦戦するのも、頷けますね!」

「冷静に分析してる場合か、大ピンチだぞ、これ!」

 

 今日のギルドメンバー数──その中でも戦闘面で使い物になるのは、たったの八名。

 脱退や長いこと非ログイン状態が続いている仲間もいる中で、不死に近い“悪鬼”の群れは無双ゲーなみの勢いで、ナザリックメンバーを押し包もうとする。

 後方で指揮と強化と戦況分析を続けていたぷにっと萌えは、自陣の側面に武御雷を配置──ほどなくして、大量の鬼を引き連れた銀髪の女騎士が躍動して現れた。

 

「建御雷さん、持ちこたえて!」

「とは言われてもな、ッ!」

 

 斬神刀皇と騎士槍が激突し、彼女の背後から殺到する悪鬼たちが武人の全身に絡みつかんとするのを、モモンガの〈全体即死(マス・デス)〉が一挙に潰すが、

 

「モーズグズは健在……しかも、殺したはずの連中が復活してくるとか、どんなクソゲーだよ、運営!」

 

 テンパランス、源次郎、死獣天朱雀、あまのまひとつ、ぬーぼー、るし☆ふぁー、そしてタブラ・スマラグディナによって、ナザリック表層への侵入は防がれているが、単純な物量差は絶対的な武力をもって、彼らを押し包もうとしていた。

 

「モモンガさん、冷却時間(リキャストタイム)は!?」

「あと10秒粘ってください!」

 

 了解の掛け声をあげる異形種のプレイヤーたち。

 タブラ・スマラグディナの錬金術による一撃が、モーズグズを後方へと弾き飛ばした瞬間、

 

「いきます! 超位魔法──〈失墜する天空(フォールン・ダウン)〉!」

 

 一陣営につき、一日四度しか使えない超広範囲爆撃攻撃を、モモンガは二度目の詠唱に取り掛かる。友軍への攻撃(フレンドリィ・ファイア)が無効扱いの世界だからこそできる、自爆じみた殲滅魔法の連発であった。これで自軍にも被害をもたらす仕様になっていたら、モモンガたちは全滅を余儀なくされていただろう。

 課金アイテムを使って即発動された破壊力の熱波に、さしもの悪鬼たちも消滅と融解をまぬがれない。

 しかし、モモンガは(ほぞ)を噛んだ。

 

「一日に、しかもこんな短時間に、超位魔法二発も消費するなんて」

 

 久々の実戦ということもあって、個々人の技のキレのなさや指揮系統の乱れっぷりは認めざるを得ない。

 気が付けば、ナザリックを取り囲む表層の壁際にまで後退させられていた。

 さすがに毒づくメンバーたちが多い中で、モモンガも焦りを覚える状況の中──

 

「なんだなんだぁ? 随分と派手なもんじゃねぇか?」

 

 その声の主は突如として現れた。

 

「な」

「いつの間に!?」

 

 探索役(シーカー)である弐式炎雷すら瞠目して驚愕する先──モモンガの隣に、銀の額当てにジャラジャラ音を立てる派手な忍──立寸六尺を超える男が現れていた。

 

 二回の超位魔法の青白い派手な輝きに魅入られた鬼殺隊の柱の一人が、静かに、だが笑い声を防毒の面布の下に隠して微笑する。

 

「今の“魔法”とやらはお前さんの仕業だな? 随分と派手じゃねえか!」

「え、人間、種?」

「そんなアホな!」

 

 自分の感知の網をくぐってきた忍──もとい鬼殺の柱の装束に身を包む男の登場に凍り付く、弐式炎雷(にしきえんらい)

 

「敵なのか、味方なのか、どっちだぁ!?」

 

 モーズグズと鍔迫り合いながら指揮官とギルド長の判断を仰ぐ武人建御雷(ぶじんたけみかづち)

 あのナザリックの軍師こと、ぷにっと萌えでさえも、瞬時に判断は付きがたい状況であったが、

 

「あなたは宇随さん! 宇随天元(うずいてんげん)さん、ですよね?!」

 

 モモンガは彼の名を正確に言い当てた。言い当てることが可能だった。煉獄たちと知り合ったことで、過去の日本で大流行した鬼滅の刃・遊郭編を視聴する機会に恵まれていた。

 

「んん? そこの髑髏(どくろ)野郎、俺のこと知ってんのか? 鬼、にしては気配が違うしな?」

 

 むしろ彼らが敵対している肉腫の鬼どもの方こそが、鬼舞辻の気配が濃いと覚る宇随。

 骸骨のプレイヤーに興味を惹かれる宇随に対し、モモンガはナザリックの石壁の上で懇願する。

 

「お願いします、加勢してください! 煉獄さんたちにも会わせたいですし!」

「れん、ごく、──! おまえ、まさか煉獄を知ってるのか!? ハハッ!!」

 

 宇随は快活に笑った。

 小山のごとき邪竜ファフニールが現れても。彼の戦気と戦意は()えることを知らない。

 

「いいぜいいぜ! さっきのでかい爆発といい、派手な奴は好きだぜ、この俺様はな!!」

 

 助太刀を買って出た音柱・宇随天元は、鎖で柄の繋がれた黄金に煌く大刀二本を解放。

 

 

 

「音の呼吸 一ノ型 (とどろき)!」 

 

 

 

 超位魔法ほどではないものの、人間の剣技で穿たれた爆発の破孔が、沼地の岩盤を盛大に抉りぬいた。

 その余波を受けた炭治郎の鬼どもが四肢を砕かれ、活動不能に追い込まれる。

 

「どけどけぇ! 宇随天元様の御通りだァッ!!」

 

 防毒の面布を顔に巻いた彼は、忍の爆薬を惜しげもなく使い、黄金の刃の双刀を軽やかに振るいつつ、“悪鬼”たちを文字通り滅殺していく。

 

 

 

 

 

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「……何? 増援だと? しかも、たった一人?」

 

 伝令役を務めるヴァフスルーズニルから戦況をきかされ、炭治郎は舌打ちを禁じ得ない。

 

『増援の名前は、“宇随天元”と名乗ってるらしいですが?』

「──宇随さんか」

 

 炭治郎の記憶を取り出して思い出す鬼。

 遊郭編で戦闘不能の傷を受け引退したはずの音柱が、ここで戦線に復帰するとは予想だにしない事態である。

 

『いかがいたしましょう? 柱の攻撃は、炭治郎様の鬼どもへ有効。いたずらに兵力を失いかねませんが?』

「わかっている……一時撤退だ。ここいらのモンスターを狩りとって、鬼に出来たことだけでも目的は達成されている。ギルド攻略など二の次でしかない。モーズグズとファフニールに帰投命令を出せ」

『御意』

 

 ナザリックなる組織(ギルド)など歯牙にもかけない様子の炭治郎。

 彼は全軍に思念を飛ばし、撤退を命じた。

 

 

 

 

 

 

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 宇随は音の呼吸を連発しつつ、ナザリックのメンバーを適時援護してくれた、そんな最中で。

 

「あ? 鬼どもが引いていくぞ?」

 

 彼の眼にも明らかなように、“悪鬼”たちが引いていくのがわかった。

 追撃をかけようとする音柱であったが、モモンガはさすがにそれを止めた。

 

「た、たすかったあ~」

 

 思わず腰を抜かして本音を漏らす、ぷにっと萌え。

 おそらく史上最もナザリックの表層付近まで近づきつつ、余力を残したまま撤退してくれた敵であった。

 正直、宇随の援護が間に合わなければ、確実にメンバーたちの抵抗は破られ、あの肉腫の鬼どもに、ナザリックの第一階層は蹂躙されていたことだろう。

 

「ありがとうございます、人間種の、えと」

「宇随天元様だ。よく覚えておきな、小僧」

 

 ぷにっと萌えの頭をわしわし撫でながら、「で?」とモモンガに振り替える宇随天元。

 

「煉獄は今、どこにいるんだ、モモンガさんとやら?」

「ええ。ミズガルズのシュヴェルトラウテ城に──あなたさえ良ければ、すぐにでも案内しますが?」

 

 ギルド長モモンガは、ぷにっと萌えとタブラ・スマラグディナに表層の沼地地帯の片づけを依頼して、宇随と共にミズガルズを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ニヴルヘイム。

 ガルスカプ森林地帯にて。

 白く霞む視界──真っ黒かつ不気味な森──恐狼(ダイア・ウルフ)などの群れが(つど)う、危険な双樹の森の中で、腰に白刀をさげた髪の長い少年は、あるものを見つめる。双樹の群生地帯で、彼がそれを見つけたのは偶然ではない。柱としての鋭敏な感覚が、鏡の存在をボウっとする彼に教えてくれた。

 

 

「……………………これ、鏡?」

 

 

 手首を振って鏡を叩こうとすると、腕が鏡の内に沈み込んでいく……

 

 

「なんだ、アンタ? ──人間種のプレイヤー?」

 

 

 時透無一郎は振り返った。

 そこにいたのは、輝く球体に六翼の羽根。

 この時はまだ(・・)熾天使(セラフィム)の異形種プレイヤー。

 名は、カワウソ。

 時透が見つけたそれは入口──ギルド拠点・ヨルムンガンド脱殻跡地城砦(ぬけがらあとちじょうさい)へと続く、転移の鏡であった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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