煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第弐拾陸話 集結する柱たち -2

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 ニヴルヘイムの集合場所に集った柱は、九名。

 

「改めて言うが──皆、久しいな」

「悲鳴嶼さん!」

 

 快哉をあげる甘露寺蜜璃。

 彼女の前に現れた、集合しつつあった柱たちがオーディンの神託を受けて乗り込んだムスペルヘイム。

 そこの“炎巨人の生誕場”にて合流を果たし、ここへ来ることになった“岩柱”は、盲目の眼から涙を流し、そこに集う懐かしい面々に声をかける。

 

「ああ……こうしてまた、皆と巡り会う日がこようとは。御仏(みほとけ)に感謝せねばなるまい」

 

 彼を連れていくのに、“炎巨人の生誕場”を制する神級のNPC──炎巨人の王・スルトと柱たちの間に一悶着あったが、水柱と風柱の合わせ技によって見事討ち果たし、とにかく無事に、岩柱との合流を果たした煉獄たち。

 そんな彼らの耳に、少年のあらたまった声が注がれる。

 

「お久しぶりです、皆さん」

「無一郎くん!」

 

 またも嬉しそうに歓声をあげる甘露寺。

 そこにいた髪の長い少年は、“お嬢”が「心当たり」のある──というか、協力関係・商取引関係にある極小ギルドに、まるで匿われるようにして滞在していた。

 お嬢は脂汗を拭い、八人目の柱“霞柱”時透無一郎を一行に引き合わせることに成功。

 

「おいおい。どいつもこいつも懐かしい顔ぶれじゃねえか、ええ?」

「宇随さん!」

 

 またも甘露寺が声をあげた。

 忍の防毒面を外し、いつもの自信たっぷりな男前の笑顔を披露する宇随天元であったが、彼をここへ導いた人物に、約三名の柱が凍り付く。

 彼女は本当に仲間たち全員が勢揃いしたことを喜んでいたが、その思いは〈転移門〉から現れる骸骨のプレイヤー・モモンガの登場で雲散霧消した。

 

「ほぎゃー、バケモノー!」

 

 甘露寺が驚愕し、猫のように跳びあがった。そのまま手近にいた伊黒を抱き潰しかねない勢いで恋柱特別の刀──鞭状の刀身を一気に抜き払う。

 胡蝶に注意されなければ、両名は抱き合ったまま、協力関係を結んだモモンガ──ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの長の前で奇態を演じ続けていたやも知れない。

 

「バケモノって……まぁ、言われなれてるからいいですけど」

 

 悲鳴嶼と時透も、骸骨の登場には肝を冷やす思いでいたが、「大丈夫! 彼は我々の協力者だ! なぁ、宇随!」と煉獄に言われた“音柱”は、打てば響くように答えた。

 

「応ともよ! こんなナリだが、鬼舞辻の鬼とは無関係とは、にわかには信じがたい話だぜ!」

 

 たがいに肩を叩いて再会を喜び合う炎柱と音柱。

 訳知り顔でうなずく冨岡と不死川、そして胡蝶。

 蟲柱はそっと恋柱に告げる。

 

「甘露寺さん、伊黒さんそろそろ放してやったほうがよくないですか?」

 

 耳まで真っ赤に染めた蛇柱を、恋柱は慌てて解放する。互いに謝りあう伊黒と甘露寺。

 

「こうして煉獄さんを含め、柱が揃うのは、柱合会議以来ですね」

 

 そう静かに告げる胡蝶。

 炎柱である煉獄を無限列車の戦いで欠いてより、九人の柱が揃うことは、まずなかった。

 しかし、このユグドラシルで、九人は再会を果たした。

 憎むべき仇敵を、斃すために。

 一同は集合場所と定められていた“城”を見上げた。

 

 ニヴルヘイム・大叫喚泉(フヴェルゲルミル)の中央に聳えたつ黒城。

 

 名を腐植姫の黒城──正式名称は“黒きエーリューズ二ル”──漆黒の死の世界・ニヴルヘイムに住まう腐植姫ヘルの城館である。

 入口の敷居の名は“ファランダ・フォラズ”、客間のベッドは“ケル”、ベッドカーテンは“ブリーキンダ・ベル”などと、細部にまで情報公開が為されている。

 お嬢は溜息を吐いた。

 

「あいつが攻略した城に入る日が来るとは……」

 

 夢にも思わなかったと嘆息する商業ギルドの長。

 木こりの大男が「お嬢」とたしなめ、彼女に門衛のいない城の黒く長い門を開けさせる。

 

「ようこそ、我が城へ──親愛なる“妹”よ」

「チッ。なにが妹よ。義理でしょうが、義理」

 

 いきなり複雑な家庭環境を暴露されたお嬢は、いっそ引き返そうかと本気で悩むが、もはやここはあいつの領域──ニヴルヘイム・ワールドチャンピオンの勢力圏なのだ。城のギミックすべてに通暁していない以上、お嬢たちを帰すかどうかは、この城の主人たる彼の采配にかかっている。

 

「それと、ギルド:アインズ・ウール・ゴウン、ギルド長──モモンガ殿。お会いできて恐悦至極」

 

 スピーカーから届いているらしい声は、九人の柱やクラン:キサツタイの面々も歓迎していた。

 ワールドチャンピオンという称号に違わぬ、自尊心と自負心に満ちた男の声。

 

「すでに、アースガルズ・ワールドチャンピオンにも足をお運びいただいている……どうぞ中へ」

 

 そうして十数名は中へと足を踏み入れる。

 おどろおどろしい雰囲気に包まれた場内であるが、その最上層の玉座の間へはお嬢が事前に把握していた転移ギミック(入口にあった死者の像を何体か動かす)を使って、あっという間に到達する。

 

「あらためて、ようこそ」

 

 両手にはめたグローブの漆黒が、左右に広がる。

 浮遊する“影”のような最上位アンデッド──最上位死霊王(グレイテスト・ハイレイス・キング)の姿が、そこにはあった。

 柱たちのみならず、モモンガや鬼殺隊クランメンバーたちもまた、その慇懃な口調の持ち主と対峙して、あらためて思い知らされる。

 それは、「格」の違い。

 この人物に狙われたら最後──確実にこちらが惨敗を喫する、“上の上”に位置する最高位プレイヤーの偉容──それが、さらにもうひとり分。

 

「あれが」

「アースガルズ・チャンピオンの」

「“剣帝”…………ほ、ほんものだ」

 

 クラン:キサツタイ──カラスたちは感動の吐息をついた。

 窓の外を眺めている人物は、青い外布(マント)を纏う人間種。

 しかし、彼が背中に装備する“世界意志(ワールドセイヴァー)”──普段はこん棒程度の攻撃力しか持たない、木の葉のついた樹の剣の存在感は、圧巻の一言。

 すべての剣士の上に君臨する剣士──“剣帝”と呼ぶにふさわしい風格の優男は視線を転じず、表情も変えず、一同を振り返りも、しない。

 他の特徴らしい特徴は鼻梁(びりょう)から両頬へ一文字に引かれた傷痕だろうが、あれはキャラグラフィックなのかと疑いたくなるほど、精巧にすべて作りこまれている。

 

「そして、あちらの玉座におわすのは、我が同盟者にして城の正当なる主……腐植姫さまである」

 

 腐植姫。

 腐植姫と、そう呼ばれて当然の異様が、壮麗なる玉座に鎮座していた。

 悍ましいを通り越して吐気すらこみあがる狂相──常に流動するヘドロの肉体──まるで、全身が緑がかかった漆黒に変色した“腐蝕”死体の少女──あれこそが、ニヴルヘイムの最頂点に君臨する姫君の姿であると、誰が看取し得ようか。

 

「それでは始めようか?

 ヘルヘイムにある同じ城──最高位ダンジョン──“白きエーリューズ二ル”の攻略会議を」

 

 ニヴルヘイム・チャンピオンが芝居たっぷりに演じてみせたのに呼応したわけではないが、モモンガや煉獄たちも、玉座の間に設けられた円卓に腰掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ワールドチャンピオン
【独自設定】

1、アースガルズ・ワールドチャンピオン  “剣帝”
2、ミズガルズ・ワールドチャンピオン   “最上位竜騎兵”
3、ヨトゥンヘイム・ワールドチャンピオン “天裂き地吞む狼”
4、ニダヴェリール・ワールドチャンピオン “鐵”
5、ヴァナヘイム・ワールドチャンピオン  “獅子奮迅”
6、ニヴルヘイム・ワールドチャンピオン  “最上位死霊王”
7、ヘルヘイム・ワールドチャンピオン   “深祖”
8、ムスペルヘイム・ワールドチャンピオン “絶対最強超絶無敵火炎姫”
9、アルフヘイム・ワールドチャンピオン  【“たっち・みー”引退で空席】
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