果たしてどちらの?
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「何? しくじった?」
炭治郎からの良くない報告を受けた鬼舞辻無惨であったが、その詳細を聞くにつけ、大したことではないという判断を下す。
「気にするな炭治郎。おまえが無事でいることが何よりもうれしい。これは本当のことだぞ?」
まるで飼い猫を愛でるような心地よい声で、自分の生み出した炭治郎をほめそやす無惨。
「そのような些事よりも、はやくおまえに会いたい。軍勢をすべて連れて戻るにはどれほどかかる……いや、いっそのこと……」
鬼舞辻無惨は黒い嗤笑に真っ赤な三日月を灯した。
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「以上が、この“黒きエーリューズニル”の特異性能であり、公開していなかった内部情報だ」
「……」
「……」
「……す」
すげえ秘密を暴露された気分のモモンガは慌てて口をふさぐ。自分一人だけ子供のように狂喜し、発言するのが恥ずかしくなったからだ。
「本当にそんなことが?」
「可能だ」
ほかならぬ私自身が確認したと、お嬢に向けて頷く、不定形アンデッドの王。
「考えたことはなかったか? 何故、ユグドラシルに死の世界が二つも存在する? ニヴルヘイムはヘルヘイムと混同されることもある世界であり、その支配者たる
「い、いやあ……」
想像の
単純に北欧神話に照らし合わせて二つの冥界を造ったと思い込んでいた。
(そういえば、タブラさんが、何か仮説を立ててたけど、学のない俺じゃあよくわかんなかったっけ)
アインズ・ウール・ゴウンに属する仲間の一人のことを思い浮かべかけて、モモンガは喫緊の話題が何であるか思い出す。
「それで、白城に入城、いや潜入することはできると仮定して、問題は外からの、ですよね?」
「ああ、外の凍てつく吹雪や死のクレバスを踏破することは、人間種や亜人種には難しい。だが、そこは異形種プレイヤーである我々の腕の見せ所だろう?」
違うかねと逆に訊かれたモモンガは「なるほど」と首肯する。
「外側を我々のギルド:アインズ・ウール・ゴウンが攻め立てる、うちの攻城ゴーレム“ガルガンチュアをすぐに用意しましょう”──そして、内側を煉獄さん達の鬼殺隊が」
「潜入し蹂躙する」
そうすれば、さしものヘルヘイムのラストダンジョンも攻略されること疑いなし。
「いやしかし、これほどの情報をいただけるとは……正直驚きです」
「なぁに。ダンジョンの特性を理解できても、異形種プレイヤーしかいない
「以上に不可能──というわけですね」
ユグドラシルには三つの種族が存在する。
人間種、亜人種、異形種。
だが、運営の計らいによって、互いの種族は反目し殺しあうことを常としているユグドラシルで、真の意味で三者が協力強調する環境を整えることは難しい、以上に不可能な状況にあるといっても、けっして過言にはならない。
「ところで、ワールドエネミー・鬼舞辻無惨とやらは──失礼。どうした?」
仲間から連絡を受けたらしいニヴルヘイム・ワールドチャンピオンが虚空を見つめた。
そして、影が驚嘆の吐息を漏らす。
「なに……九つの世界すべてで『悪鬼の群れ』を確認?! 本当か、それは!?」
煉獄たち柱を含む全員が腰をあげた。
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それは唐突に、そして同時多発的に起きた。
「ぐああああああああああああああああああああ──ッ!!」
炭治郎の増やした戦力が、ユグドラシル各地──アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ムスペルヘイム、ニダヴェリール、ニヴルヘイム、ヘルヘイム──九つの世界の都市や町や村落などを襲った。
「ぐぉ、あ、おおおおおおおおおおおああああああああああああああああああ──ッ!!」
襲われたものも即座に悪鬼化する、まさにゾンビイベントさながらの状況に、ユグドラシルは追いやられた。
「きゃあ!」
「うわぁあっ!」
「なんなんだ、こいつら?!」
「どこから湧いて出やがった!?」
しかし、
「おい、あれって」
「レイドボスの!」
驚愕の悲鳴と共にプレイヤーたちの前に現れたのは、神クラスの該当、もしくは準じる精強かつ壮烈なレイドボスモンスター。
それらの指揮支援を受け取りつつ、悪鬼の群れはユグドラシルを穢し覆いつくす……
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『な、なるほど、さすがは無惨様です!』
主人の仕掛けた大攻勢に対し、敬服の声を落とす炭治郎。無惨は不敵な微笑みを浮かべ
「私が求めているものはすでに得られた──おまえだ、太陽を克服した炭治郎──我が後継として、その領地は多い方がよいに決まっているからな」
『は、はい!』
「そして、次に欲するものは、この世界そのもの」
無惨の目的は、このユグドラシルを征すること。
鬼舞辻無惨は炭治郎に命じ、また、氷河城内の戦力の一部を解放して、外の世界への進軍を開始させた。
これまでの出来事や騒乱は、ほんの小手調べ。その中途で鬼殺隊という
「炭治郎。おお、私のかわいい炭治郎よ。私の代わりに“青い彼岸花”を探せ。私自身が太陽を克服するためにも……そのために、邪魔な者どもはすべて駆除する」
鬼殺隊も。
ユグドラシルプレイヤーも。
すべてが邪魔してくる世界であるというのなら。
「このユグドラシルのすべてを、お前が征するのだ、炭治郎」
鬼舞辻無惨は、まさに世界の敵として暗躍の限りを尽くす。
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アースガルズ。
裏ヴァルハラにて。
唐突なことだが。
モーズグズは、炭治郎の無惨に対し怯えきった様を見るのが嫌いだった。
さもありなん……とは思う。
あのような暴虐の徒が主人では、気苦労が絶えないことも、頷ける。
だが、女騎士モーズグズは、冥界を流れるギョッル川、その大河にかかる黄金橋の誇り高き番兵である。
それを一刀のもとに討ち取った彼の手腕──力の粋は言うに及ばず。それほどの力の持ち主が、あのような蛮鬼の支配下にあるなど、断じて間違っていると思考できる。
呼吸術なるものはよく理解できないが、とにかく炭治郎は女騎士モーズグズを打ち倒し、その血を混ぜる儀によって、モーズグズの忠節は彼にささげられることとなった。それほどの実力を発揮したのは彼であって、決して彼を生み出した創造主とやらではない──とモーズグズは考えている。
不敬な考えやも知れない。
炭治郎の耳に入れれば、必ずやモーズグズを手酷く るだろう……それも、彼という主の差配であるならば耐えられる。
モーズグズは、竈門炭治郎に心から、感謝すらしている。
彼のおかげで、ヘルヘイムとニヴルヘイム──両界の狭間しか知らなかった女騎士は、たくさんの世界を見ることができた。
彼と共に旅することで、ほんのわずかながら、冥府の空気とは違う世界を知ることが叶った。
ミズガルズの世界樹の巨大さ。
心地よく吹き抜ける風の匂い。
人々でごった返す都市の喧騒。
すべて、モーズグズ一人では、見ることのできなかった──見ようとさえ思わなかった──世界の広さを、知った。
故に。
モーズグズは今日も先陣を切り、機械槍をとって
彼女がいるのは、裏ヴァルハラと呼称される
ここのモンスター共を悪鬼化できれば、必ずや炭治郎の戦力増強へと確実につながる──彼からお褒めの言葉でもいただければ重畳というもの。
大恩ある主君──緑と黒の市松柄の羽織を纏う“鬼の王”──竈門炭治郎への忠節を胸に、彼女はアースガルズ……壮強なる戦死者たちの集う
ミズガルズはグレンデルマザーが、ヴァナヘイムはフレイヤが、アルフヘイムはファフニールが、ヘルヘイムはフリームスルサルとスヴァジルファリが……といった具合に、悪鬼の将帥級に位置する者どもによって、
冥界の女番人は、自分の唯一の主のためにのみ、その長大な槍を、盾を、鎧を、力を、戦場にて振るう。
運営「────ゾンビイベントとか聞いてないんですけど?」