煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第弐拾玖話 鬼舞辻無惨討伐隊 -1

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 ミズガルズ・ホームタウン……樹界都市アスクエムブラ。

 

「絶対にここを通すな!」

 

 街の門衛(N P C)たちと共に、アスクエムブラに拠点を構える初心者教導用ギルドの一人が叫んだ。

 彼の見据える先で、廻廊街道から攻め寄せてくるバケモノの群れが見える。

 商業ギルド:ノー・オータムが警鐘を鳴らしていた悪鬼の群れは、ミズガルズを中心に目撃例が絶えなかったが、まさかホームタウン……ユグドラシルの初心者プレイヤーが集うこんな土地にまで食指を伸ばすとは。運営はいったい何を考えているのか、本気で理解できないでいる。バケモノたちの群れは、そのどれもが強壮かつ悪辣なレベルステータス(少なくともLv.80強)に設定されている──その上、致命箇所・クリティカルポイントである首を落とさなければ、その悪逆無道ぶりはおさまることろを知らない。しかも、連中に倒され喰われ、仕留められたプレイヤーが、元のレベルとは関係なしに悪鬼化して、鼠算的に仲間を増やしていく。

 それが、九つの世界すべてで確認されるなど、正気の沙汰とは思えなかった。

 

「どうする、ギルド長? このままじゃ、戦線の維持もままならないぞ」

 

 わかってると仲間に叫び返したいが、言ったところで何か妙案があるわけでもない。

 アスクエムブラは不可侵地帯──門衛のNPCたちも善戦してくれているが、悪鬼の餌にしかなっていないのが現状だ。

 果たしてどうれすればよいのやら。

 この都市を放棄して逃げ出すのも良いが、ここは運営の直轄するホームタウン。

 そこを落としに来る、というか、落としに来れる敵の存在など久しくなかった。

 それこそ、

 

「ワールドエネミーの噂は本当だったようだな」

「みたいっすね」

 

 二人はワールドエネミーと戦った経験はないが、過去の動画データで、世界ひとつを陥落寸前まで追い込んだ九曜喰らいの一件を思い起こす。

 それと同等のことが今、このユグドラシルに発生しているとするならば。

 

「クソ運営め。事前告知くらい出しやがれってんだ!」

 

 毒づくギルド長に、仲間は笑いながら対応策の協議を続けようとした、その時だった。

 

「ギルド長!」

「今度はどうした!」

「助けが……助けが来ました!」

 

 指さされた天空。

 彼が見上げると、世界樹の空にはばたく巨大な最上位竜の翼がはためいている。

 そうして、一瞬の後、火線の束が悪鬼の群れを完全に焼滅させていた────

 

 

 

 

 

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 同じことが、アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ムスペルヘイム、ニダヴェリールでも起きていた。

 

「逢坂さん──ミズガルズ・チャンピオンから伝言(メッセ)受けた時は『まさか』と思ったけど」

『ワールドディザスター軍団も手に余るようだ。「増えすぎて撃っても撃ってもキリがない」とさ』

『ワールドガーディアン軍の方も似たような感じらしい』

『本格的にやばそうな奴らじゃん、こいつら』

『おいおい、火炎姫のとこにも来てるのかよ、節操なしか、コイツラ』

『ムスペルヘイムは、世界級(ワールド)アイテム“レーヴァテイン”を持った原初の炎巨人王(スルト)もいるし、基本炎熱フィールドだし、攻めようにも攻めにくいはずなんだけど。こいつら、そういうの全部無視して突っ込んでくる感じ。まさにBA・KE・MO・NOって印象』

 

全体伝言(マス・メッセージ)〉専用アイテムで繋がりあった六人のプレイヤーは、各々の担当する持ち場を確認する。

 

最上位竜騎士(ミズガルズ・チャンピオン)様は、そのままミズガルズ。

 ムスペルヘイムは火炎姫担当。

 ヨトゥンヘイムは“天裂き地吞む狼”巨狼の旦那。

 エダヴェリールは“鐵”──機械族チャンプの持ち場な」

『そういうおまえは?』

「俺っちは勿論“獅子奮迅”としてヴァナヘイムを護るさ。普段偉そうにしてる分、こういうところで亜人種代表プレイヤーの格を見せてやらんとな~」

『んでさ、残りの三つはどうするの?』

 

 TSを公言しているチャンピオンが、可愛らしい幼女の声で訊ねる。

 

「今は空席のアルフヘイムは、逢坂さん──最上位竜騎士さまが兼務してくれるってよ」

『うっわ、さすが』

『あの超最強最上位竜なら、アルフヘイムとの往復も秒で済むからな』

『セラフィムはアースガルズの防衛に専念してくれるらしい』

『あれ、アースガルズの剣帝さんは?』

「ニヴルヘイムの旦那と一緒に、氷河城攻略部隊に入ってるだろ?」

『ああ、そっか』

『それにしても、セラフィムは今回も世界級(ワールド)アイテムを使う気ゼロ、ですか?』

「仕方ねえよ。あそこの天使ギルドが保有しているのは“二十”──使えば消失する系のアイテムだ。他の世界級(ワールド)アイテムとは勝手が違う。下手に失ったら、ギルドランキングポイントが変動して、首位の座あたりから滑落するかも」

『個人的にはしてほしい、とか言ってみたりして♪』

『完全に同意──でもあそこのギルド長ちゃん、超有能だし』

『世界が終わる前までには、使ってくれることを祈ろうや』

『まぁな。上位ギルドは伊達じゃないってわけだ』

『そちらはさておき、ヘルヘイムとニヴルヘイムは?』

『“深祖”くんが一挙にやってくれるって──あの見た目だけど、やる時はやるよね』

『ふふ、そうおだてないでくださいよ。照れるじゃないですか』

「でも“深き者(ディープ・ワン)”と真祖(トゥルー・ヴァンパイア)の掛け持ちとか、すごいレベル構成方法だよ、ほんと。よくそんなの思いつきますよね、っと」

 

 ヴァナヘイムにて悪鬼の群れと対峙するワールドチャンピオン“獅子奮迅”は、文字通りの獅子と肉体を駆使して、悪鬼の群れを〈次元断切(ワールドブレイク)〉の一刀で葬り去る。

 ワールドチャンピオンにのみ扱うことを許された、次元を断切する不可避の刃は、悪鬼と称されるバグモンスターの首を正確に刈り取っていく。

 

「それじゃあ、ワールドチャンピオンとして、皆でひと働き、するとしますか?」

 

 賛成の声と無言の首肯を受け取った獅子奮迅は、次なる悪鬼の群れに対して、爪牙を駆使した肉弾戦を披露する。

 近接職最強と謳われる彼らの働きによって、ユグドラシル内の悪鬼たちの蹂躙速度は、目に見えて遅滞し始めた。

 

 

 

 

 

 

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 ヘルヘイム。氷河城。門前にて。

 

「それいけ、我等のガルガンチュア!」

 

 攻城ゴーレムを動かすということで、自動操縦ではなく手動操縦にこだわったゴーレムクラフターのぬーぼーが、内部操縦席で快哉をあげていた。

 

「よおし、メガトンパンチ、HIT(ヒット)!」

 

 これ以上ないほど楽しんでいる。

 同じゴーレムクラフターのるし★ふぁーが、じゃんけんで負けた自分を呪いつつ、爪を噛む挙動を見せる。

 

「絶対ぼくの方がうまく操縦できるのに」

「まぁまぁ、るし★ふぁーさん」

 

 抑え役を務めるモモンガは、ガルガンチュアの背中や肩に搭乗した仲間らと共に、氷河城を外から攻めている。が、相手もまたさるもの。

 氷の巨兵──アウルゲルミル──は、ガルガンチュアの猛攻撃を跳ねのける勢いで回復し、極太の氷柱氷塊を生成。

 しかし、

 

「そんなもの、レーザーで諸共に焼き融かしてやんよ!」

 

 ぬーぼーが宣言しボタンを操作する間に、ガルガンチュアの起動核が光量を増し、炎熱の渦を巻く。

 そして照射。

 攻城ゴーレムから発射されたレーザーは、アニメのビーム兵器よろしくアウルゲルミルの巨体に穴を開け、足元で援軍にかけつけた悪鬼の群れをことごとく吹き飛ばしたが、

 

「ちぃ、しぶとい」

 

 氷河城を取り巻く猛吹雪の寒冷化によって、アウルゲルミルはすぐさま氷雪の巨人兵としての偉容を発揮する。焼き尽くされた悪鬼の群れも、氷雪の勢いで生焼け状態のまま進攻しようとぎこちない様子を見せる。まるで壊れた人形のような無限の悪鬼──それは、ここにいるアインズ・ウール・ゴウンメンバーを殺戮してあまりある数の暴力だ。

 

「いいないいな~」

 

 そんな空気など露とも知らず、異形かつ(いびつ)な天使は軽く提案する。

 

「ぬーぼーさん。あと10分で決着つかなかったら替わってくださいよ?」

「おーけー、るし★ふぁー。あと10分で倒す!」

「えー、そんなー!」

 

 巨大兵器の操縦権を争う二人をよそに、ガルガンチュアの進軍はついに氷河城の門前を越えた。ここまでは作戦通り。

 

「では、俺たちは氷河城『内部』に侵入します。ガルガンチュアの護衛にはテンパランス、源次郎、死獣天朱雀さんを残していきますので」

「あとニヴルヘイム・ワールドチャンピオン──最上位死霊王さんもな」

「心強いにもほどがある助っ人ですね」

 

 OKサインと表情(アイコン)を浮かべるぬーぼーとるし★ふぁー、そして残存メンバーたち。

 見上げれば、最上位死霊王(グレイテスト・レイス・キング)の“影”も確認。

 モモンガは〈全体飛行(マス・フライ)〉をかけ、無限の悪鬼の群れをスルーし、寒冷地用装備を着込んだタブラ・スマラグディナ、武人建御雷(ぶじんたけみかづち)弐式炎雷(にしきえんらい)、ぷにっと萌えを連れて、氷河城の門の中に。

 

「ここが氷河城」

 

 建物に入った瞬間〈飛行〉の魔法がキャンセルされた。

 荘厳なシャンデリア、氷結した戦士の装備、視界の端ではアイテムを収めていそうな宝箱まである。

 ──ユグドラシル史上、誰も足を踏み入れたことのないそこへと足を踏み入れた、その感動に酔いしれる間もない。

 

「モモンガ殿!」

 

 先に到着・潜入していた煉獄たちと合流できた。

 二人は人の手と骨の手を固く握り合わせる。

 

「息災で何よりだ!」

「煉獄さん、こちらの四人が、俺の仲間です」

 

 まずは簡単な自己紹介から。

 それを済ませる前に、不死川などの急先鋒たちは階段を駆け上がって「置いていくぞォ!」と圧をかける。

 対して煉獄は「すぐに向かう!」と豪語し、不死川や伊黒、時透や冨岡、胡蝶や宇随らを連れて氷の螺旋階段を駆け上がっていく。

 

「お初に御目もじ致す──私は“岩柱”。名は悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)

「あの、煉獄さんがお世話になったと聞いて、あ! 私の名前は甘露寺蜜璃(かんろじみつり)です! よよ、よろしくお願いします、骸骨さん!」

 

 柱を代表して残った岩柱、元継子(つぐこ)として炎柱のもとで修業した恋柱が、煉獄と共に残った。

 早速、盲目の岩柱が先を促した。

 

「炎柱、煉獄から話は聞いている、ももんが殿。だが、今は火急の時ゆえ」

「ええ、わかってます」

 

 見上げるほどの巨躯に数珠をさげた太い首──間違いなく、過去のアニメ動画映像で見た岩柱に相違なかった。

 そして、もう三人。

 商業ギルドの長。お嬢と、大男の木こり・ラン。そして商業ギルドの猛者(もさ)、護衛役が数人。

 一行はさらにもう一人、強力な助っ人を雇っていた。

 

「──マジもんの“剣帝”さんとお会いできるとはな」

「ザ・サムライ的には手合わせでもお願いしてみたいところ?」

「こらこら、二人とも、そんな悠長なことを言ってる場合じゃあないよ?」

 

 武人建御雷(ぶじんたけみかづち)弐式炎雷(にしきえんらい)、ぷにっと萌えの三人が、アースガルズ・チャンピオンの偉容に接し、感動を禁じ得ないでいると

 

「いきましょう、モモンガさん。鬼舞辻無惨のもとへ」

 

 タブラ・スマラグディナに促された。

 頷くモモンガ。

 クラン:鬼殺隊や商業ギルドの長らを加えて、モモンガたち一行は螺旋階段をかけのぼる。

 

 

 

 

 

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「もう一度、言ってみよ」

「し、侵入者です……無惨様」

 

 炭治郎は片膝をついて脂汗を床に落としていた。

 

「この城に、氷河城に、侵入者だと?」

「間違いございません」

 

 報告したヴァフスルーズニルによって、螺旋階段の先頭をいく柱たち五名の姿が映し出される。

 そのうちの何人か──風柱、蛇柱、そして水柱の顔に覚えがあった鬼舞辻は、不愉快の極みと言わんばかりに掌中のワイングラスを砕き、握り潰した。

 さすがに、自分が生きるか死ぬか──太陽に焼かれるか否かまで死闘を演じた相手だ。たとえ羽虫のような存在でも、嫌が応でも鮮明に記憶には残る。

 さらに、そのあとを追いすがるように、三名の柱と侵入者たち複数。

 

「これはどういうことだ、炭治郎?」

「も、申し訳ございません。第一階層および地下階層の悪鬼たちまで門前へと派兵したことで、警備が手薄に」

「それは私の過ちだとでも?」

 

 問いただす無惨。

 何も言えない炭治郎。

 時が静止したような二人の様子であったが、

 

「……そうだな。これは我が過ちであった、許せ、炭治郎」

 

 その一言に、炭治郎は安堵の吐息を吐きかけた。

 

「しかし、この最上層“玉座の間”にまで、あのような害虫どもに侵犯されてはたまらん──わかるな、炭治郎?」

「はっ、ただちに迎撃に向かいます!」

「それから、各地を攻めている中で、幹部の鬼を一名選抜し、呼び戻せ。おまえ一人では荷が重かろう」

「はっ。そのようにいたします!」

 

 視線を合わせることなく、主従は命令を与え、与えられた。

 炭治郎は視線を伏せたまま玉座の間を辞していく。

 

「さぁおまえもゆけ、ヴァフスルーズニル」

「畏まりまして」

「そうだ、いまひとつ申し付けておこう」

「なんなりと」

 

 オーディンに並ぶと称される魔法詠唱者にも、無惨は出撃の命令を下した。

 玉座の間に残されたのは、猿轡(ボールギャグ)をくわえた小娘(ヘル)と、モニターに映る炎柱・煉獄らの様子を不快気に見つめる無惨だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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