煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第参拾話  鬼舞辻無惨討伐隊 -2

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 ヘルヘイム。氷河城。

 第二階層“ダンスホール”にて。

 

 

「風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風」

「蛇の呼吸 弐ノ型 挟頭の毒牙」

「霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫」

「水の呼吸 参ノ型 流々舞い」

「蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角」

「音の呼吸 肆ノ型 響斬無間」

 

 

 大量にうごめいていた悪鬼の群れを、柱たち六人が根こそぎ討ち果たしていく。

 悪鬼の群れにとって、鬼殺の剣士──柱たちが扱う呼吸術と日輪刀の合わせ技は効果覿面。

 悪鬼たちは修復する間もなく首を切られ、その肉体を崩壊させていく。まるで舞踊のごとく舞い斬る柱たちのもとに、後続組が追い付いた。

 

「遅かったなァ、おまえら」

 

 嫌味で言ったわけでもなく、不死川は最後に残った一体の鬼の頚を()ねた。

 モモンガやアースガルズチャンピオンたち後衛の出番もなく、ダンスホールは制圧された。

 

「数だけ揃えたところで、柱たちの敵ではない。ということか?」

 

 疑念する冨岡に同調するように、伊黒も簡単に滅殺できた悪鬼の残骸を確かめる。ボロ炭のごとく変じていく様は、まさに、鬼舞辻の鬼の特徴と合致していた。

 

「ちなみになんですけど」と胡蝶。「一番上まで、あとどのくらいかかる目安ですか?」

 

 訊ねられたお嬢は、ニブルヘイムの黒城と照らし合わせるに……少なくとも18層ありそうだと応える。

 

「拾捌、か。それは多いと考えるべきか?」

「なんにしろ、この調子なら楽勝じゃねえか?」

 

 岩柱と音柱が、各々見解を述べた時だ。

 

 

「さて、それはどうでしょう?」

 

 

 全員が刀を、武器を構えた。

 その先に(あやま)たずいた声の持ち主は、「久しぶり」と誰もが言いたくなるような、少年だった。

 緑と黒の見慣れた羽織。鬼殺隊なら誰もがよく知る、鬼の妹を連れて戦った鬼殺の剣士──だが。

 

「本当に、鬼になってしまったんだな」

 

 一同を代表するように、冨岡が声を発すると、炭治郎は乱杭歯を見せびらかすように嗤笑(ししょう)する。

 禰豆子を入れていた箱のない肩をすくめてみせた。

 

「てめえらが俺のことをどう思っても勝手だが、俺はお前らを殺さなきゃならねえんでなあ」

「……そうか」

 

 獰猛な口調と表情に、冨岡は決意を固めた。

 煉獄が、不死川が、伊黒が、胡蝶が、宇随が、時透が、悲鳴嶼が、甘露寺が、──冨岡義勇が日輪刀を構える。

 最初に踏み込んだのは兄弟子であり水柱の冨岡。たった一合、打ち合う瞬間、彼を呼び水に周囲の柱たちも参戦しようと呼吸術を練り上げようとした、その時だった。

 

「なにッ?」

「これは!」

 

 煉獄たちやクラン鬼殺隊を含む全員の足元に展開されたのは、〈転移〉の魔法陣。しかし、ありえないことだ。転移阻害などの対策を貫通されてしまっている。

 見ればいつの間にやら、一行の背後に転移してきた魔法詠唱者(ヴァフスルーズニル)によって、柱たちは分断の憂き目にあった。

 

「ッ、炭治郎!」

 

 冨岡が叫びながら水の呼吸 壱ノ型を繰り出したが、その前に彼の存在は氷河城内のどこかにとばされる。

 

「いかん!」

 

 悲鳴嶼の迅速かつ的確な判断で、手近な者と近づき手を繋ぐよう命令される一行。

 煉獄と不死川はカラスたちの首根を掴み、伊黒は甘露寺と、胡蝶は悲鳴嶼と、宇随は時透と、お嬢は自分の護衛たちと木こりのランとで、互いを繋ぐ。

 そして、転移した。

 それぞれの場所へ。

 

「は!」

「んだァ、ここは!」

 

 煉獄と不死川たちがとばされた先は、さらに巨大な悪鬼うごめく“大食堂”、伊黒と甘露寺がとばされた先は舞台上に鬼の気配ただよう“音楽劇場”、胡蝶と悲鳴嶼がとばされた先は、実に風情(ふぜい)漂う“日本庭園”、宇随と時透がとばされた先は、建物内とは思えぬ“塹壕の戦場”、お嬢とランが飛ばされた先は城の最上層に近い“武者溜”であった。“剣帝”のみが何らかの方法で魔法を「両断」し、その場に踏みとどまることができた。

 

「ちょっと、予定がズレたか? まぁいい」

 

 残されたのはモモンガ一行五人とアースガルズ・チャンピオン。

 そして、敵は炭治郎とヴァフスルーズニル。

 炭治郎は嗤って語り掛けた。

 

「さぁ、お互いバケモノ同士、仲良くしましょうよ」

 

 モモンガは笑える気分では、なかった。

 

 

 

 

 

 

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 柱たちがまんまと分断の罠にかかった様子を、鬼舞辻無惨は愉快気に頬を吊り上げながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

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 分断された煉獄たちは、高い天井を落ちながら告げる。

 

「しまったな! ここでこのような罠に陥るとは!」

「泣き言いっても始まらねェ! とっとと連中をぶちのめして、再合流だ! 煉獄!」

 

 うむと頷く煉獄に、不死川は刃を受けるように告げる。

 二人の刃が交錯した瞬間、互いに強靭な握力が発生し、ジリリと火花が散らされ、鉄の焦げるような臭気があたりを漂う。

 

「おお、これは!」

 

 本物の赫刀。

 はじまりの呼吸の剣士にしか見られなかった特徴だが、不死川たちはその発生に必要な、柱並みの「万力の握力」を習得済み。

 

「一気に行くぜェ!」

「応!」

 

 二人は大食堂の天井から落ちながらも、呼吸を整える。

 

「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」

 

 二人の技が、幽鬼のごとく漂っていた巨大鬼の首を断ち切り、一挙に無人の大食堂と化す。

 

「怪我はないか、カラス殿、シマエナガ殿!」

「は、はい!」

「オオルリとシラトリっつーのも、無事だな」

 

 さてと考え込む煉獄と不死川。

 

「問題は、ここが城のどこか、ということだな!」

「だなァ。いっそのこと窓をブチ破って、外から上に登っていくか?」

「あ、えと、その、それは無理だと思います、不死川さん」

 

 カラスがギルド拠点の説明をしている間に、シラトリがまるで導かれるように、大食堂内のひとつの扉の前へ進む。

 そして、扉を開ける。

 

「シラトリさん、どこへ向かえばいいのかわかるんですか?」

「………………」

 

 全身当世具足の彼(?)は(もく)して語らず、ただ、一行を導くように前へと進む。

 

「まぁ、他にあてがあるわけでもなし! シラトリ殿の迷いない様子に任せるのもよいだろう!」

「これで敵の大群に襲われでもしたら目も当てられねえがなァ……俺は上を目指させてもらうぜ」

「大丈夫か、不死川一人で?!」

「互いにガキじゃねぇんだ。それに、俺ァ一刻も早く“上”に行きてえ」

 

 そうつぶやく風柱であるが、彼にしても城の情報など頭に入り切ってない。

 とにかく上へ目指すかと思いきや、くだり始めるシラトリの様子に、全員は不安げな眼差しを隠せなかった。

 煉獄は熱い眼差しで宣う。

 

「では俺はカラス殿たちと行こう! 正直、下にいるはずの竈門少年には、言ってやりたいこともあるしな!」

「応。んじゃあ、ここで一旦お別れだ。全員死ぬんじゃねえぞ」

 

 炎柱と風柱は、互いの道を進むことに迷いはなかった。

 

 

 

 

 

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「────ここは?」

 

 どこだと疑念する水柱・冨岡義勇。壮麗な窓の外は、猛吹雪のすさぶ白亜の闇。

 兄弟子としてのケジメとして、自分が炭治郎をやらねばならないと気が()いていた。

 そのせいで仲間たちとはぐれてしまうとは、柱失格と言われてもしようがない、と思ったその時。

 

 

「久方ぶりだな、柱の男よ」

 

 

 冨岡は、その声に悪寒を感じた。

 最初に、その声を聞いた時には、炭治郎が傍にいた。

 その炭治郎は、今や最悪な敵手の側に、ついている。

 

 

「柱と言えど、私と一人で戦えばひとたまりもあるまい?」

 

 

 臓器か爪牙のごとき触腕を伸ばす鬼舞辻無惨……彼が背にする玉座の間にて、冨岡義勇は最悪に近い条件で、宿敵と相対する。

 一触即発の空間の中に、

 

 

 

「おっと、そいつはどうかな?」

 

 

 

 チャイナドレスを身に着けた、若い女性の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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