/
・
氷河城各所に散った柱たちも善戦していた。
「うっしゃあ! ここの敵は全滅できたぜ!」
「──ありがとうございます、不死川さん」
「感謝されるほどのことじゃねえ、時透」
煉獄たちと別れ、一階層上で闘いの気配を感じた不死川は、煉獄に後事を託し、音柱と霞柱のもとに合流した。
戦塵と泥土、機械の部品や歯車の欠片で薄汚れた三人であるが、風柱の文字通り疾風怒濤の活躍によって、第五階層“塹壕”エリアはたった三人の手でクリアされた。
「どうした時透? 倒した敵を眺めて」
「いえ。この機械の兵隊、縁壱零式みたいだなあって」
霞柱は小鉄少年と共に造り上げた“からくり人形”のことを想起せずにはいられなかったらしい。
「何はともあれ、俺たちは上の階層を目指すぞ、そこに鬼舞辻無惨がいるはずだァ!」
「応とも!」
「ええ!」
不死川の先導を受けて、宇随天元と時透無一郎は、迷宮のように入り組んだ城内、その最上層階層を目指す。
・
蛇柱と恋柱──伊黒小芭内と甘露寺蜜璃の二名も、“歌姫”が制するエリア、第十一階層にある“歌劇場”での戦いに勝利した。
「やったー! さすが、私と伊黒さん!」
「う……うん、そうだな」
恥ずかしげもなく抱き着く恋柱の
「行こう、甘露寺。今度こそ、君と二人で」
鬼舞辻無惨を討とう。
「はい! がんばります!」
えへへと笑う蜜璃が伊黒の手を取って立ち上がる。
・
「貴様が最後の一体だ」
第八階層“日本庭園”にて。
岩柱・悲鳴嶼行冥は影絵のごときバケモノと相対する。
敵が見せていた幻の御館様は、蟲柱・胡蝶しのぶと共に倒し尽くした。
倒しても倒しても湧いて出てくる、敬愛する人物。その姿その異能に
『チッ。盲目のやつが送られてきて、そいつが“柱最強”とか、マジ最悪』
「そうだな。分断作戦までは見事極まりなかったが、その程度でどうにかなるような我々ではない」
「おまけに、私は柱の中では
ここには上弦の鬼がいない。
鬼舞辻無惨であれば、複製品を造っておいておくぐらいのことも可能であろうが、所詮は柱や鬼殺隊の連中に誅戮されたものたち。あの炭治郎ほどの性能を発揮するものではないと判断を下した無惨の、個人的な問題に帰結する。
「──南無阿弥陀仏」
悲鳴嶼の念仏のもと、影絵のバケモノ──敵の思考の中で一番戦いにくいであろう人物を一人選んで、それを投写投影する能力を持った氷河城の守備兵は、見事に首を断たれ潰され、討ち取られた。
・
一方で。
劣勢に立たされていた柱もいた。
「善戦はしていたが、かくもあっけないとは」
そう主張する鬼の始祖の眼前で、北欧の雷神・トールが、首と胴を割られ絶命していた。
紫電の輝きが残照のように散り、巨大な戦鎚ミョルニルも、バラバラに砕け散ってしまう。
お嬢は思い切り舌を打った。
「クソっ、うちの最高戦力をこうも簡単に!」
「最高戦力? は、聞いて呆れる」
それを聞いた玉座の男はせせら笑った。
「ならば底が見えるというもの。主人である貴様の能力も、大したことはあるまい」
頭の中の糸がぷつりと切れそうなお嬢を、大男の護衛・ランが後方に下げる。
「すまない」
そういって血みどろになりながら戦っている水柱は、かなり
「貴公らが来てくれなければ、俺は早々に、無惨に狩られ喰われていただろう。かたじけない」
「はいはい」
おざなりに、だが満足げに頷くお嬢。
そこへ無惨からの容赦ない攻撃──爪牙と触手の群れが殺到。
肩を弾ませて呼吸を整える冨岡義勇は、「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」で、無惨から伸びる触腕攻撃をすべて叩き切っていく。
しかし、
(凪でも防御が間に合わんとは!)
氷河城最上階層“玉座の間”。
その空間を席巻するのは間違いなく、致死レベルの鬼の血を混入した無数の触手と触腕が二本。
かつての戦い──無限城から市街地戦へと移行するまでの戦いをなぞるように、義勇は、鬼舞辻無惨の攻勢を一手に阻む。
が、結果はこのざま。
お嬢たちの反撃や迎撃、イナズマパンチやイナズマキックもあって致命傷を受けずに済んでいるが、果たして自分は、仲間たちが到着するまで、この鬼の始祖と戦い続けられるだろうか。
(弱気を吐くな!)
義勇は呼吸を整えた。
仲間たちはきっと来てくれる。
そう信じて、水柱は柱としてふさわしい戦いを繰り広げていく。