煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第参拾肆話 鬼舞辻無惨討伐隊 -6

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 永久氷河で建造された氷河城。

 第二階層・ダンスホールにて。

 

「お久しぶりですねぇ、煉獄さん」

「自称・竈門少年──俺は君に、ひとつ問いたい」

 

 煉獄はまっすぐな視線で少年の双眸をとらえた。

 

 

 

 

 

「君は誰だ?」

 

 

 

 

 

 意表を突かれたように硬直する炭治郎。

 

「な、何言ってるんですか。俺は」

「竈門炭治郎では、断じて、ない」

 

 開拓都市での初戦を忘れた煉獄に、あらず。

 そう断言する炎柱に、炭治郎は険しすぎる視線を送るが、杏寿郎は続けざまに言い放つ。

 

「たとえ、君がそのように鬼舞辻無惨に吹聴(ふいちょう)されようとも、君の中には、他の誰でもない、君自身がいるはずだ」

「……どういうことですか、煉獄さん?」

 

 煉獄と合流できたモモンガは、声をひそめてたずねるが、煉獄は「待ってほしい」というように手を軽くつきつけた。

 沈黙を余儀なくされる一行は、自称・竈門炭治郎という名の鬼の反応を待つ。

 炭治郎は、ぽつりとつぶやく。

 

「…………そう……僕は竈門炭治郎じゃない……でも、あの方に言われた通り、この細胞の記憶の通り、竈門炭治郎を演じなければならない……」

「では自称・竈門少年よ。君の本当の名は、何という?」

 

 一種、慈愛すら込めて紡がれた疑問の声に、炭治郎は竜尾の刃を取り落とし、顔面を押さえつけて狂態を見せる。

 

「僕は──ボク、ハ、アアア、ああああっ!!」

 

 ダンスホール内に激震が走った。

 炭治郎が何かしたのではなく、その隙を突くようにアースガルズ・ワールドチャンピオンが樹剣の一刀を見舞おうとして、

 

「くそ!」

 

 寸前、モーズグズの機械槍と水晶の盾に阻まれる。

 

「いい加減、うざったいにもほどがある!」

 

 増強されたステータスと共に、〈次元断切〉の一撃がモーズグズを襲う……が、

 

「クソ。これだけやっても」

 

 モーズグズは片腕と盾をなくしながら、健在。逆に“剣帝”の腹を蹴って、距離を取った。

 狂乱し狂壊する主人の傍近くで、彼の肩を撫でようとして、

 

「僕に触れるなあああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 鬼の一撃が髑髏面の女騎士を吹き飛ばした。彼女が隻腕になってまで守り通した、主人からのの蛮行。

 あまりの事態に色を失うモモンガたち。

 当の本人は、その精神性は、それどころではなかった。

 

「僕、は、ぼく、ボク、ちがう、俺は竈門炭治郎、俺は俺だ……そのように創られ、そのように「かくあるべし」と定められた……ただ、それだけの存在だ」

「……そうか」

 

 煉獄は諦めたように肩を落とした。

 

「ならば、自称・竈門少年よ。君は我等が倒すほかない」

「やってみせろよおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 言いつつ、エネルギー弾を口腔に迸らせる炭治郎。

 煉獄は、炎刀を赫然と輝かせつつ、鬼の少年を討つべく闘う。

 

 

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」

 

 

 エネルギー弾を神速で避けた煉獄の一撃は、速度も、重みも、段違いであった。竜の骨を思わせる炭治郎の刀と、それを握る右腕を、諸共に“焼き斬っていた”。

 

「っ、なにぃッ!?」

 

 驚愕の悲鳴をあげる炭治郎。

 刀と腕を再生するのは容易だったが、その速度はこれまでの比にならぬほど遅々としたもの。

 

「貴様、一体、なにをした──“なにが起きたというのだ”!」

 

 鬼の形相で問いただす少年に、煉獄は平然と答える。

 

「説明など無用だ。──ただ」

 

 簡潔に言い添える。

 

「不思議な夢を見た。

 その夢を見て、俺は君を、そして鬼舞辻無惨を斬ると、そう決めた」

 

 だから斬ったのだと、馬鹿の一つ覚えのように繰り返す煉獄。

 呼吸を静かに整える柱の様子に、鬼の王の後継者は赫灼の双眸を差し向ける。

 

「はっ。教える気はなしか。ならば、その手足を引き裂いてでも聞き出してやるッ!」

 

 太陽を克服したはずの炭治郎は、炎柱の日輪刀を最警戒しつつも、攻撃に臨む。

 煉獄は、極めた炎の呼吸と赫刀をもって、鬼である自称炭治郎との戦いに挑む。

 

 

 

 

 

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 玉座の間を飛び出した義勇、お嬢、ランの三人は完全に形勢不利であった。

 

「くそ! 触手の数多すぎでしょが! サキュバスでももう少し慎ましいっつうの!」

「お嬢、意外と余裕ありすぎです!」

 

 準ワールドチャンピオン級の力を持つ彼女の戦闘速度は、柱のそれに何とか追随可能なレベルであった。

 イナズマの反応速度で打ち払い蹴り落すお嬢と、彼女から加護を分けてもらって高速戦闘に順応している木こり(ランバージャック)

 さらに、防御戦においては、冨岡義勇には一日の長がある。

 狭い玉座の間から飛び出し、氷の列柱が立ち並ぶ宮殿エリア──そこで紫電を纏って戦うお嬢たちと、水の呼吸を極めた義勇。

 そんな三人を前に、無惨は溜息を吐き落とす。

 

「そろそろ遊びにも飽いた……(ことごと)く始末してくれる」

 

 最初に狙われたのは当然、柱として長年に渡り鬼殺隊を率いた水柱・冨岡義勇。

 拾壱ノ型 凪でも防ぎようのない数の触手と、二つの巨大な触腕にむさぼり喰われようかという、その時。

 

「風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風」

「音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々」

「霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り」

 

 三人の柱が、今まさに絶命しかけていた冨岡を救った。

 無数の触手が削ぎ落とされ、二つの触腕も意味を成すことなく千切れ落ちている。

 

「とりあえず五体満足だったようだなァ」

「よくこの人数でもたせられたもんだ」

「すごいです……冨岡さん」

 

 冨岡は緊張の糸がほどけ、その場で膝を屈しかけた。

 だが、まだ終わりではない。

 

「ここからが本番だ」

 

 揃った柱は四人。あと五人の到着を待つ必要があったが、

 

「……目障(めざわ)りな連中だ」

 

 鬼舞辻無惨は本気で潰しにかかった。

 

()()()

 

 己の血を黒い茨のように変化させ、無数に生えたそれを、有象無象どもへと斬りかかるように振り向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第二章、終了
次回から第三章にして最終章「異なる運命」開始
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