煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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完結まで、あと6話


最終章 ── 異なる運命
第参拾伍話 モーズグズ


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 アーコロジー内。

 ペロロンチーノとぶくぶく茶釜の実家。

 

「姉ちゃん、ま~た鬼滅の刃?」

「なによ、文句でもあるわけ?」

「文句っつーより。ほんとよっぽどハマったんだなあって、感心してるとこ」

 

 ぶくぶく茶釜はリビングのモニターで再生していた劇場版・無限列車編の動画データを視聴し終える。

「何度見てもエンディングで泣ける」と呟き、アニメの骨董市で見つけた煉獄杏寿郎ぬいぐるみを抱きしめつつ、ふとメール欄を確認する。

 

「あれ? 弟、モモンガさんからメール来てない?」

「え──あ、マジできてる! あー、エロゲやってて気づかなかったな、俺」

「ほんと昔から抜けてるというかなんというか」

 

 弟のメールチェックの甘さというかゲームへの集中力などを再確認しつつ、ぶくぶく茶釜はモモンガからのメールを開く。

 

「なになに…………氷河城攻略戦?! しかも煉獄さん達と!?」

 

 いったい、いつの間にそこまで話が進んでいるのだと驚く部屋着姿の茶釜。

 彼女はどうでもいいニュースを流すモニター──ストームグレン社の何某がどうのこうのというのを消して、自室のチェアベッド──ニューロン・ナノ・インターフェースに繋がり、ユグドラシルへと行くべく駆ける。

 

「それじゃあ俺も加勢にいきますかね!」

 

 ペロロンチーノも姉の後ろ姿を見送って、自室へと向かう。

 

 

 

 

 

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「かは」

 

 吐血する女騎士。

 主人に吹き飛ばされた隻腕の女騎士・モーズグズは、機械槍を握って、態勢を整える。

 彼女の瞳に映るのは、エネルギー弾を連射し、竜尾の刀を再生させて有象無象を叩き切ろうとする鬼の王の姿。

 

(まだ)

 

 モーズグズは態勢を整えつつ、有象無象の連中が主人に攻撃するのを見やる。あの程度の攻撃を捌ききれない炭治郎ではない。

 

(まだまだ)

 

 隻腕となり、大量の血が零れる重傷の身でありながら、女騎士は敢闘の意思を崩さない。

 ── すべては主人のために。忠誠のために。自称・竈門炭治郎のために ──

 モーズグズは少しの恨みも憎しみもない瞳で、炭治郎の戦局を見守る。

 そのとき。

 彼の竜尾が、またも砕け斬られた。

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

「このクソ野郎どもがああああああああああ!」

 

 砕けても、竜尾の刃は再生可能。それこそ、上弦の壱(こくしぼう)のように、この刀は炭治郎の肉体から造られたもの。

 それを、アースガルズ・ワールドチャンピオン“剣帝”は一本、砕いた。

 さらに、

 

「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」

 

 煉獄杏寿郎の迷いない一撃が、確実に竜の骨を思わせる炭治郎の“尾”を焼き斬った。

 何か、尋常でない力の差を感じる。

 第十一開拓都市──あの初戦とはまるで別人のような。

 

 それもそのはず。杏寿郎は歴代炎柱が書き残した秘伝書を、夢の中で読み解く機会を得た。不思議な体験だった。自分のこれまでの呼吸法が、数段階向上したことを俄かに感じる。

 失意と絶望にまみれた秘伝書ではあったが、基本の書・三冊を読み込んで“柱”にまで昇格した杏寿郎だ。

 歴代の炎柱がつぶさに残した呼吸術の極意を学び取ることは十分に可能だった。

 さすがに「日の呼吸」については習得するにいたれていないが、始まりの呼吸の剣士の記録は、炎柱・煉獄杏寿郎の力となるだけの情報量だったのである。

 

 おまけに、炭治郎の精神状態も、常の状態になかったことが功を奏した。

 

 杏寿郎は告げる。

 

()()だ! 竈門少年ではないはずだ!」

「チィッ──わけのわからぬことを繰り返すなアァッ!」

 

 竜尾を伸ばし応戦する炭治郎だが、今の炎柱の力は、まさしく神懸かり的なもの。

 

「炎の呼吸 陸ノ型」

 

 煉獄の繰り出す呼吸法と剣技に、炭治郎は押され始めた。

 

「炎の呼吸 漆ノ型」

 

 うなりをあげる炎熱と劫火。

 速攻で少年の五体を叩く剣技。

 

「炎の呼吸 捌ノ型」

 

 ワールドチャンピオンも呆気にとられるほどの精密かつ超常的な連撃に、炭治郎は初めて胴体を袈裟斬りに引き裂かれた。

 

「クソが!」

 

 だが、傷は即座に──上弦の参のそれを上回る速度で──回復。

 

「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎」

 

 巨大な炎の虎が形成された。

 炭治郎はなす術もなく虎の炎撃に引き裂かれ、もとい焼き喰われた。

 

「が、あ……なめるなよぉ!」

 

 即座に再生を繰り返す炭治郎。

 もはやモモンガたちは見守るしかない。両者の間に展開される、圧倒的な力量の差を。

 

「炎の呼吸 壱ノ型」

 

 そんな小技で何ができると油断してしまう炭治郎。

 竜尾をさらに強化し、計九本の触手と化す刀を振るい──

 

不知火(しらぬい)

 

 その声を耳朶(じだ)に感じた瞬間、自分の刃と(くび)が、諸共に叩き斬られていた。

 いつか見た光景のようだ。

 列車の中で。

 鬼の頚をすれ違いざまに切り落とした彼の姿が、炭治郎の心の(うち)に像を結ぶ──否、これは“自分の記憶ではない”!

 

「不愉快、ダァッ!」

 

 頚を斬られても、炭治郎は健在であった。鬼舞辻無惨と同じこと。鬼の王たる炭治郎を殺すのに、頚を斬った程度ではまだ不足。

 先ほどまで刀傷があった頚部分は、黒い肉腫で覆われ繋がってしまう。

 

「くっ、ならば!」

 

 煉獄は一瞬の躊躇(ちゅうちょ)なく構えた。

 一瞬でも多くの面積を根こそぎ抉り斬る──それ以外に勝機はない。

 

「炎の呼吸 奥義!」

 

 炭治郎もまた、あの戦いを思い出し身震いしてしまう。そんな自分が悍ましいし恥だった。

 そちらには構うことなく、炎柱は全身に燃え滾る闘気を一気に解放、刀を後方へ構えたまま、胸のうちで叫んだ。

 

(心を燃やせ────俺は炎柱・煉獄杏寿郎!!)

 

 紅蓮の闘志が龍のごとく舞い上がり、煉獄の踏み込みがダンスホールの床を溶かし割る。

 

「玖ノ型 煉獄!!」

 

 炎の龍をかたどる斬撃を見て、鬼の王(たんじろう)は過日の思いに──叫びに──全身が支配される。

 

(こんなにも、すごい、まさに奥義だったんですね……でも、俺は、僕は……)

 

 自称炭治郎が迎え撃とうと試みた直前だった。

 

 

 

 

 

特殊技術(スキル)────ギャッラルブルーの盾」

 

 

 

 

 

 驚愕したのは、炭治郎と杏寿郎の両方、同時であった。

 機械槍を盾のごとく展開した女騎士──髑髏面すら解け素顔を露わにした銀髪褐色の戦乙女の巨人──モーズグズが、煉獄の奥義を、完全に受け止めた。防御役(タンク)としての面目躍如ではあったが、

 

「モーズ、グズ?」

 

 炭治郎は彼女の名を呟くしかなかった──

 煉獄の奥義を、主人を屠る一撃を真正面から受け止めた女騎士は、ただれた肉で、焼けきれた身体で、炭治郎の方へ振り返りながら微笑み、そして、 

 

 

 

 

 

「 どうか  あなた  の  思う  まま  に  」

 

 

 

 

 

 その言葉を最後に、消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




モーズグズ、死亡。
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