煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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自称・竈門炭治郎


第参拾陸話 竈門炭治郎

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「……モーズグズ?」

 

 どうかあなたの思うままに──それだけを言い残して去って行った女騎士の偉業。

 炭治郎は起こった事象が理解できずに呆然としていた。眼鏡と髑髏面をかぶり、銀髪褐色に鎧をまとった女騎士は、その命を賭して、主人である炭治郎を守護し果せた。

 彼の中で、モーズグズとのやり取りが、走馬灯のように駆け巡ること数秒。

 

「く! 奥義を阻まれるとは!」

 

 杏寿郎は起こった事象を正確に理解して、動けない。

 さすがの煉獄と言えども、ここまでの戦闘で蓄積した疲労、さらには奥義の使用によって、体力を大幅に削ぎ落されていた。

 

「煉獄さん!」

 

 片膝をつきかける煉獄の様子に、モモンガやカラスたちが動くが。

 

『悪いですが、我が主君をやらせるわけにはいかない』

 

 タブラとの戦闘を適当に切り上げた、ヴァフスルーズニルが転移してきた。

 彼の魔法は厄介の極み。モモンガたちは応戦を余儀なくされる。

 

「竈門、少年!」

「煉獄……さん」

 

 煉獄は呼吸術を連発した身体で、なおも赫刀を握る。重度の酸欠状態になりながらも、彼の闘志は一向に衰える気配を見せない。

 そんな様を、炭治郎はせせら笑う。

 

「なにも知らない木偶(でく)人形が、僕の配下を──幹部をやるなんてな」

「はぁ……はぁ……、都市でも言っていたな……俺が、何を知らないと、言うのだ? 自称竈門少年?」

 

 自称炭治郎は何も語らなかった。

 そして、ヴァフスルーズニルに命じ、自分たちをどこかへと転移させた。

 

「大丈夫ですか、煉獄さん!」

 

 クラン:鬼殺隊やモモンガたちに治療を施される炎柱。

 しかし、ポーションや治療魔法が何も意味をなさない。

 首を傾げるカラスたち。モモンガにしても、バグか何かを疑いたくなる事象であった。

 

「いったい、どうなって…………シラトリさん?」

 

 一行が疑念を懐く中で、全身当世具足に身を包んだ仲間が、煉獄の身体を背に担ぎあげた。

 シラトリは微かに振り返る。

 

()く走れ」

 

 極めて低い(しわが)れた声でそう告げられた一行は、第二階層から上の階層を目指す。

 

 

 

 

 

 

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 氷河城内で各地に散っていた柱たちは、各々の戦場を生き抜いた。

 甘露寺と伊黒は“音楽劇場”を征し、悲鳴嶼と胡蝶は“日本庭園”を攻略し、最上階層で戦う四人の柱のもとに馳せ参じた。

 

「ッ、煉獄の野郎は、まだかァ!?」

「心配している余裕もないぞっ!!」

 

 不死川がたずねるが、悲鳴嶼のいう通り、戦況は破局的な様相を極めていた。

 それでも、柱たちは敢闘し続ける。

 

「恋の呼吸 参ノ型 恋猫しぐれ」

「蛇の呼吸 参ノ型 塒締め」

「蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ」

「音の呼吸 壱ノ型 轟」

「霞の呼吸 漆ノ型 朧」

「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」

 

 連戦につぐ連戦。

 玉座の間から移動し、氷河城・第19階層──氷の“神殿”にて、八人の柱は結集した。

 すでに、お嬢たちは戦闘不能に陥り脱落、リスポーンしていった。

 そして、

 

「冨岡さん、無理しないで下がってください」

 

 藤の花の薬を処方した胡蝶の宣する通り、冨岡義勇は限界に近かった。

 あの転移魔法で、初手から鬼舞辻無惨の相手をさせられて、命を繋いでいられるのは奇跡とすら言えた。

 それでも、彼は柱たちを、仲間たちを守るべく、無惨の差し向ける触腕や触手の群れを「凪」の防御で守り通す。

 

「俺は、水柱として、ふさわしい、闘いを!」

 

 胡蝶は呆れたように首を振りつつ、彼の援護に終始する。

 ここで、柱が一人でも欠けようものなら、そこですべてが終わりに思えた。

 

「……相変わらず、しつこい羽虫どもめ」

「! 気をつけろ」

「大技が来るぞ!」

 

 蛇柱と風柱が予見したとおり、無惨は大量の触手を一瞬のうちに背中から九本、太腿から各四本にくわえ、肩と脇腹からも三本ずつ出し──合計29本に及ぶ高速の斬撃が解放される。それは一瞬にして起こり、竜巻か怒濤のごとき音圧と猛威の発生。

 それでも。

 

「まだだ!」

「この程度でやられる柱じゃねえぞ!」

 

 岩柱と音柱が叫ぶ通り、柱たちは全員が健在。

 一度は日本(ひのもと)で戦い、(たお)した天敵。

 風柱の不死川、水柱の冨岡などは、あの戦闘で生き残ったことにより、無惨の攻撃手段への対処法を研究、検証し続けることができた。生き残った隊士(主に炭治郎)からも話を聞けた。

 心臓が七つに脳五つ、瞬間即時再生、肉体を砕き痺れさせる衝撃波、炭治郎(人間の方)から聞いた話だと、再生能力を活かして肉体を分裂させることで逃走するなどという手段も使ってくるという。

 非常に厄介極まる敵であった。胡蝶の打ちこむ毒薬も即分解してしまう。

 だとしても、柱たちは深手こそ負ってはいなかったが、血みどろになりながら戦い続ける──

 

 と、そこへ。

 

「ようやく来たか」

 

 鬼舞辻無惨が嗤う。

 

「待っていたぞ、炭治郎」

 

 言祝ぐように、自らの後継が帰還したことを喜ぶ無惨。

 柱たちが見上げる方向──玉座の間から降りてくるように、刀を失った竈門炭治郎が、鬼舞辻無惨の戦列に加わった。

 かに見えた。

 

「炭治郎!」

 

 彼は一瞬で冨岡の刀を奪い取ると、水柱の体を蟲柱の方へ優しく押しのけ、返す刀で、こう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「────ヒノカミ神楽────」

 

 

 

 

 

 

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 先陣をきるシラトリは、まるで第九位階魔法〈三足烏の先導(リード・オブ・ヤタガラス)〉の加護を受けたように、迷いない足取りであった。

 おまけに、氷河城内の階層間を飛び越えるギミックにまで通暁しており、しかも、それらの階層はすべて柱たちによって、攻略済み。

 塹壕の戦場を横切り、音楽劇場を突っ走り、日本庭園の石橋を渡って、文字通り無人の野をいく。

 ただのユグドラシルプレイヤーとは思えない反則っぷりである。

 モモンガは軽い畏怖を込めて、炎柱を担ぐ彼の後を追う。

 クラン:鬼殺隊も、そのあとに続いた。

 続きながら、カラスは訊ねる。

 

「シラトリさん…………あなたは、いったい…………」

 

 当世具足の彼(?)は黙して語らず、ただひたむきにひたすらに、最上階層を目指す。

 鎧兜の隙間からは、稲穂のような長い白髪(はくはつ)が見え隠れしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完結まで、あと5話
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