煉獄杏寿郎と巡るユグドラシル【オバロ×鬼滅】   作:空想病

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第参拾玖話 鬼舞辻無惨、地獄に落ちる

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「ここはなんだ?」

 

 純粋な漆黒の闇。

 しかし、ここはユグドラシルの氷河城ではない。

 煉獄杏寿郎も、柱たちも、モモンガも、鬼殺隊(クラン)なる目障りな蠅どもの姿もない。

 ふと、背後から近づいてくる気配を感じる。

 

此処(ここ)こそ貴様の地獄なり」

「誰だ!」

 

 衣擦(きぬず)れ。

 草鞋(わらじ)の音。

 刀と鞘の咬合(こうごう)

 稲穂のごとき白髪(はくはつ)

 

 

「誰と訊かれれば応えよう。私は、貴様の地獄の番人だ」

 

 

 そこにいたのは、老骨まで透けて見えそうな、年老いすぎた剣士だった。

 だが、鬼舞辻無惨は双肩に、(いわお)を乗せられたような威圧感に支配される。

 老剣士の佇まい。

 醸し出される雰囲気。

 額に燦々と刻まれた、太陽の、痣。

 

「ば、…………馬鹿、な」

 

 無惨はせめてもの抵抗を試みるが、触腕と触手は一切動かない。

 気づけば、数多の縛鎖によって、人々になした害悪の分だけ巻きつけられた透明の拘束具に、鬼舞辻無惨は捕らわれている。

 

「こ、これは夢だ、夢に決まっている!」

「いいや、夢ではない。……いざ、参る」

 

 老剣士は一歩を踏みしめる。そのたびに脂汗にまみれる無惨。

 一部の隙もない構えから繰り出されるのは、無惨が怖れおののいた、日の呼吸の十二の円環──十三番目の型。

 

「ぐあああああああああああああああ、ゆ、夢だ、これは夢だあ!」

「夢であろうと何であろうとも、貴様が罰せられる事実に変わりなし」

 

 赫刀が、逃げようともがく鬼舞辻無惨の首を、胴を、両手両足を、()ねた。

 全身を襲う灼熱感。繋がり修復することのない傷。

 それでも、無惨は死なない。

 彼はすでに──死んでいるが故に。

 

「な、何故、貴様が地獄(ここ)にいる! い、いや、先ほども氷河城で?」

「当然の疑問だ」

 

 老剣士・継国(つぎくに)縁壱(よりいち)は答えた。

 

「私は、私が死した際に、我が剣の才賦を冥府の大王・閻魔王(えんまおう)に献上した。その功をもって、我が魂は現代において、愛する者たちと再会し、幸福なる生を謳歌している」

 

 鬼舞辻無惨は言われている意味が分からない。

 わからないが、自由のきかない身の上で、どうにかこうにか縁壱という天敵と、その背後に爛々と輝く巨躯──地獄の主・閻魔王とやらから逃れようと苦しみもがく。

 老縁壱は呟き続ける。

 

「我こそが継国縁壱の剣才そのものなれば。我はこれから、この地獄にて、貴様が()した罪業の数だけ罰を下す獄吏(ごくり)であり、執行人となる」

「ふ、ふざけるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 こんな理不尽があってたまるかと吠え散らす無惨に構わず、縁壱は丁寧に一刀一刀に真心を込めるように、鬼の始祖として幾千幾万の人々を喰らった正真の悪鬼を責めさいなむ。

 老縁壱は告げる。

 

「さぁ、己の喰らった人々の数を思い出すがよい。我が刃はその人々の分、貴様を魂の髄まで切り刻もう」

「ううううわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ─────────ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、鬼舞辻無惨は己の地獄に墜ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




個人的に、老いた縁壱さんのCVは、中田譲治さんのイメージ



完結まで、あと2話

次回は明日朝06:30更新予定
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