木村夏樹からロックと言われた僕   作:おののっきー

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第2話

 

 

 

 

 

あれからも木村さんとは交友が続いている。学校では顔を会わせれば挨拶するし、昼食も一緒に食べる仲だ。

 

ただ、木村さんは軽音楽部に入り、僕はバイトを始めたため、放課後の交流はほとんどなくなった。

 

 

放課後、学校が終われば部活に行くこともなくバイト先へ向かう。僕がバイトしている所は本屋だ。大きいチェーン店のような本屋ではなく、町に一つあるくらいの地域密着型の本屋で、本だけでなく文房具や学習道具、子供向けのおもちゃ等も売っている。あまりお客様で賑わっているとは言えないが、静かな雰囲気が気に入っていた。

 

「お兄さん!これ下さい!」

 

「え?あ、分かりました。レジに来てください。」

 

声をかけてきたのは小学生くらいの女子。髪は肩くらいで中性的な子だ。持っているのはヒーローのおもちゃ。僕も子供の頃はヒーローのおもちゃでよく遊んでたな……。ちなみに、今でも日曜朝早くに起きて見ていたりする。

 

「へへ~、これで五人揃って戦えるぞ!」

 

おもちゃを買っていった子は元気に店を出ていった。元気な声とは裏腹に店では閑古鳥が鳴いていた。……本の確認でもしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かに客が入ってくる。あの人は……珍しくこの店の常連でもある、黒髪が綺麗な女子高生だ。前髪が長く顔は見たことがない。よくこの店に来て大量に本を買って帰っていくお得意様だ。今日も本を物色している。目当ての本が見つかったのか本棚の上の方に手を伸ばしている。この店は台座の数が少ないため近場になかったのかもしれない。

 

「お客様、どの本をお求めでしょうか?」

 

「え、あ、その……………という本を……その、すみません……」

 

「いえ、……これですね。どうぞ。」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

その他の本は自分で取れる位置にあったのか苦もなく選んでいって会計を済まし店を出ていった。いつも思うが、両手で抱える量の本を毎度持って帰るのは大変ではないだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ!」

 

「……へ?」

 

木村さんがやって来た。危うく整理中の本を落とすところだった。そのくらいの衝撃だった。

 

「え、木村さん、部活は?」

 

「今日は休みだ。時間あったから、せっかくだし小野のバイトしてる姿でもからかってやろうと思ってな。……でも、ふーん。様になってんじゃん。」

 

「本屋の店員が様になっているって言われてもな……」

 

「ま、いいや。店員さん、何かオススメあるか?」

 

「うーん……僕が最近ハマってるのはこれかなあ。」

 

そう言って僕が差し出したのは流行りのヒーローの卵が成長していくバトルものだ。僕は友情、努力、勝利!な少年漫画が大好きなのだ。

 

「お、これ見たことあるな。じっくり読んだことはないから読ませてもらうぜ。サンキュな。」

 

「あ……あれだったら貸そうか?僕の家にそのシリーズ全巻あるから。」

 

「マジ?いいのか?」

 

「うん、明日学校で渡すよ。それでもいい?」

 

「もちろん!最近小遣いきつくてな……ありがとな。」

 

「木村さんの頼みだから。全然大丈夫だよ。よかったら今度感想教えて欲しいな。」

 

「おう。じゃあまた学校でな。」

 

そう言って木村さんは店を出ていった。クラスメイトにバイトしてる姿を見られるのは気恥ずかしいものがあったが、久しぶりに話せて少し楽しかった。帰ったら早速本を持っていく準備をしないといけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日朝、朝会前にぼくは木村さんまで会いに行った。

 

「木村さん、これ、例の漫画。とりあえず10巻だけ持ってきた。」

 

「おお、早いね。ありがとな。帰ったら読ませてもらうぜ。代わりと言ってはなんだけど、これ。貸すよ。」

 

「これって……CD?」

 

「あたしが今一番好きなバンドのやつだ。借りっぱなしはしょうに合わないからな。貸すよ。」

 

「うわぁ……!ありがとう木村さん!その本も読み終わったら続き持ってくるから言ってね!」

 

「そんなにいっぱいあるのか……面白いな、ほら、先生来るからまた後でな。」

 

「うん、また。」

 

 

 

 

 

 


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