転生先は、新世紀エヴァンゲリオン   作:㐂眼翔

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おらあああああああ!

書き上げたぜ!

お待ち!最新作!!

えっ!?待ってない…

ショボーン…

ジーク・ヨッピー!


彼の敗北… 下

 

 

 

頬を薔薇色に染めたレイは、同様に顔を赤らめているシンジの腕に縋り付いたまま静かに目を瞑っている。 数十階層ある地上と本部施設をわずか数十秒で結んでしまう高速エレベーターの中、大切に思っている少女と寄り添っているのだから、作戦開始前の一時の過ごし方としてはこれ以上望めないほどだとシンジは思う。 ただ、上着を羽織っているとは言え薄いプラグスーツ姿での密着は些か困るとは考えていたが。

 

(レイさん……もう少しだけ離れて欲しいんだけど……)  

 

手を繋ぐのも腕を組むのも全く問題なく嬉しいのだが、今のように抱え込まれてしまっては、 まだ幼いながらも確かな存在を主張している彼女の乳房の感触が肘のあたりに感じられてしまうのだ。 そんなものは意識するなと言っても無理な話だろう。 年頃の少年とは成熟したシンジとは言え嬉しさと気恥ずかしさ、そして少しだけ困ってしまう肉体的な変化を起こさせるのに充分だった。

 

(せっかく気持ちよさそうにしているのに離してくれなんて言えるわけないしな……それに……)  

 

理性では離れて欲しいと思っていても、本当のところは離れて欲しくない。 シンジとしても複雑なのである。

 

「ね、ねえ、レイさん?」

 

「……」  

 

意を決して話しかけるがレイは目を開けようともせずにシンジの腕からの温もりにだけ集中しきっている。

 

「お、おーい……」  

 

もう一度、挑戦してみた。 今度は彼女の気を引くことが出来たらしく、レイは伏せていた睫毛をわずかに持ち上げて、うっすらとだが瞳を見せる。

 

「……なに?」  

 

擦り寄せていた頬を離してレイは顔を上げた。 その赤い瞳は展望室での会話の前よりもどこか深みを増したように見えて、シンジはその中に吸い込まれてしまうような感覚を覚える。 見つめられると喉まで出かかっていた言葉が自分の中で雲散霧消していってしまうのをどうすることも出来なくなった。

 

「お、おう……い、いや……何でもないんだ……」

 

「……? そう……」  

 

結局、何も言えなくなってしまったシンジの顔を暫し見つめた後、レイは再び目を瞑って心地よさそうな表情でかすかに喉を鳴らした。 あどけない表情がシンジの口元を自然に綻ばせる。

 

(ナ、ナチュイ…。 ……子猫みたいだな)  

 

一瞬シンジは彼女が魅力的な肢体を持つ同年代の少女だということを忘れて、その柔らかそうな髪を撫でてやりたい衝動に駆られた。 もちろん実際にそうしてやればレイは喜ぶだろうと思ったし、彼はあと少しというところまで無意識のうちに手を伸ばしていた。 しかし、残念ながらその手は寸前のところで止まる。 無情なエレベーターが澄んだ鐘の音を響かせて最下層の格納庫フロアに到着したことを告げたのである。

 

「……なに?」

 

「あ……」  

 

ドアが開くのとほぼ同時に目を開けたレイは、ちょうど彼女の頭のあたりに翳されたシンジの手を見て不思議そうに小首を傾げた。 その仕草の愛らしさと、自分の間抜けさにシンジの顔が真っ赤に染まっていく。

 

「お、おぉ……い、いや……何でもないんだ……」

 

「……? そう……」  

 

先ほどとまったく同じ台詞を繰り返す羽目になったシンジは、やはり同様の受け答えをしてくるレイに引きつった笑いを浮かべて見せた。 そんな笑顔であってもレイは嬉しくて堪らないのか、エヴァが駐機されている施設まで向かう間中、シンジはぶら下がるように縋り付いている彼女のせいでひどく歩きにくい思いをする羽目になってしまった。

 

(まあ、いいか……レイさんが喜んでくれてるんだから……)  

 

恐らくこのままの状態で格納庫まで行かなければいけないだろうと考えると少しばかり憂鬱な気分にもなるが、他人の目にはほとんど変化が感じられないとは言え、彼だけには輝いて見えるレイの表情がそんな気分も吹き払ってくれる。 そう考えれば引きつっていた笑顔も自然な柔らかさを取り戻し、足取りや口調も弾んだものになってくるというものだ。

 

「そうだ! レイさん、花火はいつ頃がいい?」

 

「……使徒が来なければ……いつでもいい……」  

 

このときすでにレイは歩くに際して目を開けてすらもいなかった。 シンジが進もうとしている方向に合わせて足を前に踏み出しているだけで、完全に彼の目を自分の視界代わりに使っている。

 

(今は俺がレイさんの目だけど、少しずつ自分の目で色んなものを見るようになっていくんだよな……)  

 

これから戦いに赴くのが信じられないくらいに穏やかな気分だった。 彼の願いはこの世界のあらゆるものを驚きに目を見開きながら見つめ、それをきっかけにして自分の心の中に新たな発見をしていくであろうレイの後ろから、彼女の視点でそれらを眺めて、 そっと助言をしていくことだった。

 

(レイさんが見ていくものをいつか一緒に見て行きたい……。だけど今だけは、レイさんが転んだりしないように、俺がしっかりしていないといけないんだ……)  

 

シンジの表情が重大な責任を任された者の緊張に引き締まる。 まだ盲目のまま歩き続けている少女は、それでも新たな一歩を踏み出したことに喜び、美しい容貌を輝かせているように彼には思えた。  

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

すでに起動が終了した2体のエヴァンゲリオンがアンビリカルブリッジによって地表へと続く射出口に移動していく。 カタパルトは第3新東京市各所に設置されたゲートへエヴァを数秒で到達させることが出来る。 それはすなわち、2人を死と隣り合わせの戦場まで一瞬で運ぶと言うことに他ならず、それを見るたびにシンジは冷たい恐怖が胸の奥から迫り上がってくるのを感じるのだ。 もしもレイの身に何かあったらと思うと今でも彼女の出撃に反対したいくらいなのである。 しかし、そんなシンジの思いを知りながらも、通信機から流れてくるミサトの声は15分後の作戦開始を伝達してきた。

 

『いい、2人とも? 最後の確認をしておくわよ? 作戦開始は24時ちょうど。あと15分後に迫ってるわ。これからもう一度だけ作戦の流れを説明するので良く聞いて頂戴』

 

「はい」

 

「……はい」  

 

ミサトの声に2人が順番に返事をしたが、シンジは思いがけないことに気が付いて疑問の声をあげる。

 

「あれ……?」

 

『どうしたの、シンジ君!? システムに何か異常でも出たの!?』

 

「あ……いえ、そういうのじゃないんですよ。すみません、続けてください」

 

『もう、びっくりさせないでよね。 この段階に来て初号機が故障じゃ私たちは一巻の終わりなんだから。それじゃ続けるわよ?』

 

「はい、お願いします」  

 

シンジはそう答えながらもまだ内心では膨れ上がった疑問を抑え込みきってはいなかった。 同様に通信回線を通した会話だというのに、ミサトの声はごく普通の距離を感じさせたのに対して、レイの声だけはそれこそすぐ隣に居るかのような鮮明さを保っていたというのがその理由である。 その思いは説明の続きを始めたミサトの声が再び耳に入ってきてさらに深まったが、そのことばかりを考えているわけにもいかず、シンジはいったん説明の声以外のものを全て締め出す。

 

『本日24時から各砲座で一斉射撃を開始。使徒がそれらの攻撃に対応するしないに関わらず、 二子山山頂で自走式陽電子砲にエネルギーを充填して使徒のコアを狙撃。ここからがエヴァの出番になるかも知れないところよ』  

 

ミサトはここで少し息を継いだ。

 

『陽電子砲が命中しなかった場合には、通常のゲートではなく射出式カタパルトを利用して出撃することになるからそのつもりでね。別々のゲートから出て二方向から敵のATフィールドを中和したい所なんだけど零号機はまだ張れないのでそのまま牽制、可能ならコアを破壊すること。ただし、その間にも通常弾による砲火は続いているし、 使徒の第2射さえ回避すれば陽電子砲で再度攻撃できるわ。 くれぐれも無理は禁物よ。 いいわね、 2人とも?』  

 

ようやく言うべきことを全て言い終わったらしいミサトが確認を求めると、2人は完璧に一致したタイミングで頷いた。 それまでシンジの状態をモニターしているスクリーンに目を走らせていたリツコが、その2人の様子に納得したように微笑を浮かべる。

 

『どうやら作戦の勝算を訂正する必要がありそうよ、ミサト? 五分五分だったのをこっちが6くらいには設定し直せそうね。 パイロットがお互いをよく知っているのは大事なことだわ。 もちろん付き合っていくうえではさらに大事なことでしょうけど』

 

『何よ、それ?』

 

『あら、珍しいわね。2人のセルフ心理グラフの波を見ればすぐにわかるはずよ。 元からやや似通っていたのは確かだけど、今は本当に瓜二つになってるでしょう?』

 

『……へえ』  

 

通信回線から聞こえてくるミサトとリツコの会話に顔を赤らめているのはシンジだ。 すでに目前に使徒が迫り、しかもそれを迎撃する作戦が開始されるまであとわずかしか時間が無いというのに、彼女たちの図太さには呆れるよりも凄いと思ってしまったほどである。

 

「勘弁してくださいよ、もう……」  

 

うんざりしたような声で呟いたが、実のところはそれほど気分を害しているわけでもない。 自分とレイの精神の波長や向きが似ているというのは、さすがに緊張していたシンジの頬を緩ませるのに充分すぎることだったからだ。 サブスクリーンに目を移せば何やら頬を赤らめているレイの姿が見られる。 彼女がいま何を思っているのかまで全てはわからなくとも、シンジは常に彼女のことを考えているのだから、それと似た波長を発しているというレイの心は見当がついた。

 

(そうか……もしかして俺とレイさんの心の波長が近かったから、さっきの通信の時、あんなにすぐ傍に居るように感じられたのかも知れないな)  

 

ふと思いついただけのことであったが、それが意外に的を射ているような気がして、シンジは暫し物思いに耽る。 自分たちが乗っているエヴァンゲリオンというものが何なのかなどわかるはずもなかったが、 神経と言うよりも精神を接続して動かすと言う印象を以前から強く受けていた。 そしてこれは今日初めて認識したことであったが、エヴァに乗っていると不思議な視界を得ることが出来るのだ。 もちろん現実に目が良くなると言うのではなく、もっと違った見方が出来るようになるということだが。

 

(どうしてだろう……エヴァに乗っていると人との距離がよくわかるんだ? 同じ回線を使っていても鮮明な声と、そうじゃない声の2種類がある。お父さんやミサトさんたちの声は近いけど、青葉さんたちの声は少し聞き取りづらい……)  

 

まさに不思議という言葉が相応しい感覚だったのである。 シンジはあと少しで何か大切なことを掴み取れそうなもどかしい気分を味わいながら、さらに心を奥深いところまで沈ませていこうとした。 しかし、自分の内面に旅立つには今の状況はいささか似つかわしくない。

 

『……ん。……ジ君! どうしたの!』

 

「え……あっ、はい!!」  

 

先ほどから何度も呼んでいたのだろう、レイが不安そうに彼を見つめているサブスクリーンとの画面でミサトが心配そうな表情で問いかけてきた。

 

『いったい今日はどうしちゃったの?』

 

「あ……いえ……何でもないんです。 ただ少しエヴァンゲリオンのことで気になることがあった ので……。 大丈夫です、心配はいりませんよ」

 

『……わかったわ。 信じる。 でも、今回のヤツは手強いから気を付けて。 あなたたちの役割を勘違いしないように。あなた達が牽制して敵の水晶体をバラバラにしてATフィールドを薄くして通常弾の砲火に直接さらすのがエヴァの分担なんだから。 それだけ注意して、後は気を楽にして出撃しなくていいように祈って頂戴ね』

 

「わかってます。無理はしない、ですよね?」  

 

シンジが落ち着いた表情で頷くのを見てミサトもようやく安心したのか頷き返して見せた。

 

『そういうことよ。 待機はどっちにしてもすぐ終わるから、出来たらレイをリラックスさせてやってね。初陣だし、女の子なんだから。 ちょっと数値に緊張や気負いが見えるの。 私たちよりシンジ君の方が適任だわ。 それじゃよろしく』

 

「了解」  

 

スクリーンからミサトの顔が消えると、LCL溶液に満たされたエントリープラグ内は奇妙に 静かになってしまったように思える。 空気の振動が存在するはずもないのだから当然だが、シンジはこの場所は意外に考え事に適しているのではないかとシンクロテストなどにも考えたことがあった。

 

(不思議だな……何でこんなに落ち着けるんだろ……)  

 

彼は今年の6月6日で14歳になったばかりだ。 自分が他人よりも精神的に強いなどと思ったことはなかったし、実は彼の幼少期に自分の殻に閉じこもってしまったという経歴すら持っているのだ。

 

(だけど……そんな俺がもう2回も戦場に出て、どうにかこうにかって感じだけど勝って、今はレイさんの緊張を解してあげることまで頼まれて……)  

 

自分はそんなに強くないんだと叫びだしたかった。 しかし、同時に強くならなければいけないと誓ったことも思い出す。 少しずつ心を開いてくれるようになってきたレイや皆と一緒に生きていくためには、どんなに苦し くともそうするしかないのかも知れない。 相反する想いがジレンマを引き起こし、やがては自分が引き裂かれてしまうのではないだろうかという恐怖にシンジは背筋に走る悪寒を感じた。 震え出しそうになる自分の体を抑え込むために掌に爪が食い込むほど強く拳を握ったり、歯を食いしばったりする者もいるが、今の状況においてシンジはそんなことすらも自分に禁じている。 自分の部屋で独りきりのときならばそうしたかもしれない。 父である碇ゲンドウや同居人である葛城ミサト、事情を知っている赤木リツコの元でなら、 もう少し自由に感情を表現することが出来ただろう。 しかし、今だけは駄目なのだ。 奇しくも彼はレイと同じように深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出して心を落ち着けようとしてみたが、当然のことながらLCL溶液の中に在っては吐息とともに悩みをも排することは叶わない。

 

(くそったれ……)  

 

何ともやるせない気分に彼はコックピットシートに背を預けて目を瞑った。 そうでもしなければ言葉にも出すことが出来ない想いで自分自身が押し潰されてしまいそうな気がしたのだ。

 

「碇君、どうしたの? 苦しいの? 胸が痛いわ……」

 

「え……あっ!」  

 

シンジは突然すぐ耳元で聞こえてきたレイの声に驚いて目を開いた。 零号機と繋がっている映像に慌てて目を向けると、そこには不安に満ちた表情のレイの姿が映っている。

 

「悲しそうな顔……苦しそうな顔……」  

 

彼女はぽつりぽつりと呟いた。 彼女の瞳には確かに彼を気遣う色が見られたが、まだ余裕のないレイはどうすればいいのかわからずに自分自身の不安をも募らせているように見える。

 

「……レイさん、大丈夫だよ。 別に何ともないんだ。 ちょっと疲れてるだけだよ」

 

「そう……なの?」

 

「おう」  

 

即答して見せたシンジだったが、それは彼女を安心させるための優しい嘘と言うよりは、彼自身がそうだと信じたかったためかも知れない。 それにレイが不安そうな表情をしているよりも、先刻のように笑顔を見せてくれる方がシンジも勇気を持つことが出来るのだ。 暫しシンジの目をあの全てを見透かしてしまうような瞳で見つめていたレイは、やがて少しは安心できたという感じで寄せていた眉根を緩めた。

 

「……そう……ならいい。 でも、碇君が私と同じことをしたから……吐く息と一緒に外に出そうとしたから……だから……」  

 

レイは適当な言葉を探そうとして口ごもり、結局見つからなかったのか下を向いてしまった。 その様子にシンジの目も和らぐ。 まさかこんな彼女を見られるとは思ってもみなかったのである。

 

「……心配、してくれたの?」

 

「あ……」

 

「レイさんは優しいから俺のことを心配してくれたんだね」

 

「……そう……だと思う……」  

 

レイが素直な感謝の目をシンジに向ける。 恐らくは自分が上手く表現できなかった感情をあっと言う間に適切な言葉で補ってくれたことへのものだろうが、シンジは何ともくすぐったい気分にさせられた。 嬉しそうなレイの顔を見ていると沈んでいた心がすっと軽くなるのを感じるのだ。

 

「ありがとう、レイさん」

 

「え……」

 

「ありがとうって言ったんだよ。心配してくれて嬉しかった。 もう平気になったし、それはレイさんのおかげなんだ。そういうときはちゃんとお礼を言うものなんだよ?」

 

「お礼……私に……」  

 

レイは戸惑いを覚えながらも胸に広がっていく温かい感覚に目を細める。 彼女が覚えている限りにおいては、このような形で面と向かって礼を言われたことなど無かったのだ。 もちろん学校やネルフ本部などで他人の手伝いをしたときなどには言われるときもあったが、 今回ほど彼女の心を揺さぶる口調と表情で感謝されたことはなく、レイはいつまでも心に響き続 けるシンジの声を大切そうに胸の奥にしまい込む。 レイは心のどこかに置き忘れてしまった大切な何かが澄んだ音を立てて彼女を呼んだような気がしていた。 誰が付けてくれたのかわからない銀の鈴がそれには巻き付けられており、碇シンジという少年の存在にのみ反応して可愛らしい音を鳴らすことがある。 ちょうど今がそうだったのだろう。

 

「シンジ君……私も……」

 

『2人とも、邪魔してごめんなさい! 第1射が外れたわ! 出撃よ!!』

 

「あ……」

 

「ちっ、了解! ……レイさん、ごめん。 後でゆっくり話そうね」  

 

通信機から聞こえてきたミサトの声が切迫したものであったことから状況が芳しくないというのを読み取ったシンジは、今にも言葉を発しようとしていた少女に優しく慰めの言葉をかける。

 

「本当にごめんな。この戦いが終わったら一緒にいっぱい話をできるよ」

 

「……ええ」  

 

心が命じるままにレイは言葉を紡ごうとしていた。 シンジが話しかけてくれると言いようがないほど嬉しく、彼の温もりを感じていると心も体も暖かくなる。 それらに対して言うべき言葉をシンジが教えてくれたのだ。

 

(『ありがとう』……感謝の言葉。 私がシンジ君に言うべき言葉……言えなかった……)  

 

レイは教えられているとおりの対ショック姿勢を無意識のうちにとりながら、悲しそうに下唇を噛み締めた。 しかし、それでも彼女は自分がシンジの立つ戦場に出られるようになったこと、この戦いさえ終われば彼ともっと話が出来ると言うことを支えにして、今だけは自分の気持ちを抑制することを選ぶ。

 

(必ず伝えなくてはいけないのは言葉ではない。伝えなければいけないのは……。 そして……シンジ君は私が守る)  

 

レイの思考はここで途切れる。 凄まじいGがレイの全身を襲ったからであった。 エヴァが無慈悲な事件の待つ戦場へと射出されたのだ。 彼女の大切な想いをシンジに伝えられるまでに、かなりの時間を必要とするなどとは、このときのレイには想像することも出来なかった。  

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

「時刻午前零時。ヤシマ作戦スタートします!」  

 

発令所中央に佇むミサトが宣言した瞬間、室内に一気に緊張の糸が漲る。 源平合戦において弓矢の名手たる那須与一が、源氏方を挑発するように小舟に立てた小さな扇の的を鏑矢で見事に射抜いたという故事に習った名がこの作戦には与えられた。 与一の弓の腕前は神業という言葉が相応しいものだったと伝えられている。 そして今この時代に、大地に突き立てられた使徒という的に向かって現代の那須与一たらんとするのはMAGIということになる。 風速、気象条件、地球の自転速度など全ての条件を計算して難業に挑むのだ。

 

「南無八幡大菩薩。願わくば、この矢を的に当て給うことを……か。 まさに祈って当たるくらいならって気持ち、わかるわ」

 

「弱気ね、ミサト」

 

「そりゃそうよ。 当たらなければ第2射までの時間を稼ぐのは子供達なんだから」  

 

彼女は顔を顰めてエントリープラグ内を映すモニターに目を向けた。そこではシンジとレイが何やら会話をしているのか、お互いにわずかな身振りを混しえながら 口を動かしていた。 映像のみで音声がカットされているのはリツコがマヤに命じて相手側からの音声を切っておくようにさせた結果である。 ミサトの視線を追ったリツコは深い溜息を吐いた。

 

「……ごめんなさい、失言だったわ」

 

「いいのよ。 要は当てりゃいいの。 MAGIに任せておけば弾道の確定だけは完璧のはずよね」

 

「ええ。私たちに出来るのはそれこそ祈るくらいだわ」  

 

言いながら視線を二子山山頂の映像に移したリツコは、急造りのシステムがまともに稼動してくれることをまずは祈っていた。

 

「第1次接続開始します。 第1から第803まで送電開始。 電圧上昇、圧力限界へ到達しました」  

 

淡々と報告を続けるマヤにしても祈りたい気分でいっぱいだった。 サブスクリーンに映っている少女は、恐らくはシンジとの会話の時にしか見せないのだろうが、 初々しい恥じらいとシンジへの信頼を全身で表現していたのだ。

 

(こんな子だったなんて……私にはわからなかった……)  

 

あの少女のことを綺麗だけど冷たそうな感じがすると思っていたマヤは、シンジによって生命 を吹き込まれたあとのレイを見て激しく自分を責めていたのだ。 一瞬、報告が滞ってしまったのもそんな自責の念がまた沸き上がってきたためだった。

 

「マヤ、今は集中して。 レイは怒ってなんていないわ。 不器用だけど優しい子よ」

 

「え……あ、すみません! 全冷却システム、出力最大!」  

 

リツコが特に声を荒らげるでもなく言うと、彼女は真っ赤になって報告を再開した。

 

「大丈夫よ、マヤちゃん。 どうせ私を含めてレイに謝らないといけない人間ばかりなんだから。 まあ、例外と言えばもちろんシンジ君。それに碇司令……ああ、そう言えばリツコも最初からレイには優しかったじゃない」  

 

慰めの言葉をマヤにかけながらミサトは発令所内を見渡すと、その言葉に首を引っ込める者が何人も見られた。 彼女の直属の部下である日向もその1人である。

 

「きついですよ、葛城さん……まあ、謝らないといけないのは事実ですね。 おっと陽電子流入、 極めて順調です。第2次接続開始します。加速器、運転開始いいですね?」

 

「いいわ。どうせ時間がないんだからリツコを信じてどんどん繋いじゃって」

 

「……光栄だわ」  

 

報告の中に冗談口を混ぜながらも誰1人それを禁止しようとはしない。 それはネルフという組織が純粋な軍隊ではないことから極度の緊張状態を維持し続けるためにはどこかで圧力を抜いてやる必要があったためと、口頭報告はあくまでも慣例であって作業状況 自体は内容を把握している指揮官たちにとってはスクリーンを見つめていれば充分にわかるというためだ。

 

「第3次接続完了。 全電力最終ラインに向かいました。 葛城さん、各砲座に指示をお願いします」  

 

日向の要請にミサトは片目を瞑って頷くと、インカムのマイクに指示を乗せる。

 

「各稼動砲座に伝達。 絶対に陽電子砲からの攻撃ラインに入らないで。 それだけ気を付けてくれ れば後は自由に撃って良し。 固定砲座については万が一にも外れた場合、出撃するエヴァンゲリオン両機を援護するために温存よろしく!」  

 

ある方法をミサトは考えていた。 エヴァによってATフィールドの中和さえ出来れば、通常弾でも充分に使徒にダメージを与えることが可能だと言うことである。 しかし、それも現状ではA.T.フィールドを張れるのは初号機しかおらず今回の使徒は水晶体を対処できれば通常弾でもダメージを与えられる可能性が。 しかし闇雲に撃ちまくって使徒に破壊されては不可能になるばかりか、エヴァの射出を隠蔽するための役にも立たなくなる。 それでは意味が無いということを踏まえた指示だ。

 

「電圧、発射点に向けて上昇していきます。 あと15秒で臨界に到達です。 カウント開始」  

 

日向がMAGIが表示するカウントを声に出して読み上げる。

 

「14、13、12、11、10、9、8……も、目標に高エネルギー反応発生!」

 

「何ですって!」  

 

ミサトが驚愕に目を見開き、リツコは青ざめて口元を押さえたが、むろん驚いたのは彼女たち だけではなくオペレーターたちも同様であった。 絶叫に近い声で矢継ぎ早に報告をし始める。

 

「周縁部をエネルギー体が回転! 水晶体、陣形をとり収束します!」

 

「加粒子砲、来ます! 狙いは二子山の自走式陽電子砲のようです! あ……しゅ、出力、前回攻撃の25%!?」

 

「えっ!?」  

 

その日向の報告にこそリツコが驚いた声をあげた。 マヤも同様に隣に座る彼を振り向く。 MAGIによる弾道計算の概要を理解している2人の女性には、使徒が行おうとしていることを正確に理解することが出来た故である

 

「まずいわ、ミサト! 陽電子砲の弾道が狂う!」

 

「ちょっと、それって!?」  

 

オペレーターたちの席に駆け寄ったミサトが、彼女たちの手元にある戦況分析用のスクリーンに目を落とすと、そこには2つのエネルギー流がそのまま進んだ場合の弾道が予測に従って描き 出されており、そのコンピューターグラフィックは絡まり合って湖に落ちる様子を示していた。

 

「どっちにしろ撃たなかったら破壊されるだけじゃないの! 日向君、撃って! 早く!!」

 

「は、はい! 陽電子砲発射!!」  

 

上司の切羽詰った声での指示に気圧された様子の日向は、慌てて彼女の言葉どおり二子山の司令部に向かって叫んだ。 一瞬の遅れの後に山頂から眩い光のラインが放たれ、MAGIの予想が正しいことを証明した。

 

「さ、最悪だわ! マヤちゃん、エヴァを緊急射出して!」

 

「はい! エヴァ両機、射出カタパルト作動します!」  

 

メインスクリーン上ではようやく溜め込まれていたエネルギーを収束点から全て放出しきった使徒がまた新たなエネルギーを充填するべく沈黙を開始していた。 わずか数秒間の空白時間に人類側は全てを終わらせなければならないのだ。

 

「ミサト! 恐らく使徒に強力なATフィールドを使用させれば少しだけど再充填までの時間を稼げるはずよ!」

 

「えっ!? サンキュー、リツコ! 全稼動砲座及び固定砲座、一斉攻撃開始! 通常砲火でも一点に集中すれば、いくらあの化け物使徒でもATフィールドの強化くらいするはずだわ! それでどれだけ稼げるかはわかんないけど、今の私たちには1秒でもほしいのよ!! 撃ちまくって!!」  

 

リツコの言葉に起死回生の機会を得られたとばかりにミサトが檄を飛ばす。 そして彼女はインカムの回線を切り替えて、それまでは双方向回線を閉じていたエントリープラグに向かって叫んだ。

 

「2人とも、邪魔してごめんなさい! 第1射が外れたわ! 出撃よ!!」  

 

万策破れるかたちになったネルフには、もう頼るべきものがエヴァンゲリオンとそれを動かす ことが出来る子供たちだけになっていた。 ミサトは血が吹き出るほどきつく唇を噛み締めて不甲斐ない自分を責めるが、そんなことは生き残った後で2人に土下座でも何でもすればいいのだ。

 

「二子山司令部に通達! 砲撃までの時間を1秒でも縮めて頂戴! それが出来ればボーナスでも休暇でもこの私が司令に直接交渉するわ! お願い!!」  

 

ミサトの咆哮が発令所の空気を震わせる。 燃えるような瞳でスクリーンの向こうの使徒を睨み付ける彼女の姿は、見る者に畏怖すら感じさせるほどの迫力を備えていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

わずか数秒とは言え、押し潰されてしまいそうな凄まじい圧迫に耐えきると、2体のエヴァンゲリオンは一瞬だけ無防備な姿を空中にさらしてしまうが、すぐに射出の勢いと重力が相殺しあって自由落下へと移行する。 もちろんこの瞬間を狙い撃たれれば一溜まりもなかっただろうが、ミサトはエヴァが地表に出 るまでの所要時間を計算させ、それに合わせて集中した火力を使徒に叩き付けている。 これによって使徒に水晶体を陣形をとらせATフィールドの展開を促し、再充填を少しでも遅らせると同時に無防備なエヴァを狙撃されることを防ごうと言うのである。 どうせ同じだけの弾薬を消費するのだ。 それならば散発的な攻撃を繰り返すよりも可能な限り効率よく、タイミングを計った攻撃をと考えた結果だろう。 人類側の思惑は見事にはまり、エヴァは地表に降り立つまでの恐怖に満ちた数秒間を被害無く凌ぐことに成功する。 加粒子砲の再充填が始められてからここまでが約4秒。 この区画に設置された固定砲座と、第5使徒の予期せぬ襲来に備えるために残された警戒用の稼働砲座を除いた全ての迎撃用設備が攻撃を仕掛けても、使徒の再攻撃を延ばせるのはリツコの計算によると約3秒でしかなかった。 つまり当初から予測していた所要時間の11秒と、決死の覚悟で稼ぎ出す3秒を足した14秒がシンジたちに与えられる時間なのだ。 そのうちの4秒間はすでに消費され、残る10秒間で使徒のコアを破壊できなければ、陽電子砲の第2射が発射されてから使徒のコアを撃ち抜くまでの数秒間は自力で耐えるしかない。 死の宣告を受けた者は必死に足掻くしかないのである。

 

「レイさん! 牽制! 早く!!」

 

「くっ……!」  

 

初号機は2丁パレットライフルで牽制しつつ狙撃されないように使徒の周りを移動し零号機盾を構えながらガトリング砲で牽制、それまでは壁に阻まれていた通常弾が挟み撃ちの形でエヴァ2体の攻撃でA.T.フィールドに隙間が出来て使徒に直撃し始める。 そんな隙間に凄まじい集中砲火を浴びせかけられた第5使徒は地面に突き立てた楔のためだけでなく、元より回避運動を得意とする形状ではない。 剥がれ落ちた青く輝く結晶体の欠片が、周囲の爆発光を反射して幻想的な空間を作り出したが、 それを愛でるには状況が切迫しすぎていた――使徒が攻撃方法を切り替えたのである。

 

『シンジ君! レイ! 避けて!!』

 

「え!? うわっ!?」

 

「くっ!」  

 

ミサトの絶叫とともにシンジたちに襲いかかったのは、使徒の水晶体6個の内一つはエネルギーグラインドブレードを形成しつつ残り5個の水晶体が2体のエヴァに極めて放射時間の短い加粒子砲の閃光を放つ。 彼女の指示に咄嗟に反応することが出来たシンジは、間一髪でそれを回避することが出来たが、 いかに本来の機体に乗っているからと言っても、未だ実戦慣れしていないうえに機体との連動にもやや不安の残るレイは、渡されていた盾でかろうじて防ぐしかなかった。

 

「レイさん! 大丈夫!?」

 

「……な、何ともない……平気……」  

 

唐突な攻撃のために大きくバランスを崩された零号機だったが、SSTOと呼ばれる大気圏内外両用輸送機の基部にも使われている特殊合金に、超電磁による被覆加工を施した盾は、出力の弱い加粒子砲を見事に防いでいた。 彼女が言うように怪我などはしていないと確認できたシンジがホッと胸を撫で下ろすが、そこへすぐにまた数発の閃光が降り注ぐが、シンジはコントロールレバーを力強く握る。 すると初号機の目は光る。

 

「レイさんはもう少し下がって!! 初号機、前に出ます!」

 

『ちょっ!? シンジ君!?』

 

シンジは、高いシンクロ率とエヴァとの繋がりの強さによる4つの目でコックピットのモニターで武器収納ビルの位置を把握しエヴァの目で、使徒との戦闘を行う。 元々初号機の動きは、シンジの送る思考で動かしてると言うが殆ど自分の体を動かすのと変わらないほどの動きだった。 そして、もう一つ。 彼は今のエヴァパイロットの中でA.T.フィールドを発生出来るのだ。 しかも、彼が想像する形に変えられる異質な特技がある。 それがあれば、シンジの思い通りにA.T.フィールドを使えるのだ。

 

「よっと!」

 

キンッ

 

使徒の水晶体から撃たれるビームを左手で払うように、左手にA.T.フィールドを纏う形を作り出してビームを空高くに弾く。 使徒の周りで初号機に纏わりつかれ次々と攻撃されるのが嫌なのか、使徒は零号機に一つだけ水晶体を残し4つの水晶体で初号機を迎撃をし始める。 手数が増えながらも、初号機は街に被害ない様に曲芸師のように空高くに跳躍しつつ躱し攻撃を弾いている。

 

『シンジ君!その調子よ!!』

 

使徒は学習しているのか、初号機の着地寸前に砲撃を行う動きや街を守ろうとしてる初号機を逆手を取るように避けれないように攻撃をしてくるようになった。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

その攻撃に初号機は、足を止め4つの全方位の砲撃を手足を総動員させ弾いていく。 時折、水晶体4つの加粒子砲を放つがエヴァのA.T.フィールドを正面で受けず斜めに張り弾く。

 

「what!? どうしたんですか、ミサトさん!? 早く撃ってくださいよ! もうレイさんは保たないんですよ!?」  

 

雨霰と降り注ぐ光の矢は、激しく動き回って牽制を続ける初号機に擦過傷を与えながら街を守りながら、それでも不安と焦りの暗雲を貫いてくれるはずの陽電子砲の閃光は訪れなかった。 零号機は、水晶体一つと言えどシンジと比べエヴァを動かせず防戦一方だった。

 

『2人とも! 一旦、下がって!』

 

「でも止まったら強い攻撃が来ますよ!?」

 

『大丈夫よ、そいつは思ったよりも頭がいいらしいの! もしも今以上に攻撃方法を変えたら自分がやられるってことくらい気付いてるはずよ。 早く後退しなさい!』

 

「了解! レイさん、戻るよ! 合図したら走るんだ、OK!?」  

 

厳しい声で命令するミサトに気圧されたのもあったが、彼女なりの作戦を自分が意地を張って潰すのは愚の骨頂と悟ったシンジは、盾による防御とライフルの牽制をマニュアルとおりに繰り返しているレイに声をかける。

 

『2人で同時に後ろを見せるのは危険よ。 レイには可能な限り最短距離を走らせて、シンジ君はそれを援護。 レイは防御装甲に到達次第そこに射出するバズーカでシンジ君を援護すること。 いいわね、レイ?』  

 

常に命令には躊躇なく従ってきた彼女に対するものとは思えないミサトの言葉だったが、その 判断は完璧に正しかった。

 

「……わかりました……」  

 

無論、指揮官であるミサトの言葉に首を縦に振ったレイだったが、それはかつての彼女がしていたような即答ではなく、本来であれば意見しようとしたであろう所に機先を制されて言葉を呑み込まされたという方が近い。 レイの声がかすかに震えているのは初陣の恐怖か、それとも別の感情によるものか?

 

「気を付けてね、レイさん! ちゃんと援護するからさ!」

 

「あ……え、ええ」

 

「GO!」

 

「……わかった……先に行くから……」  

 

去りがたい様子の彼女もシンジに一括されたことで零号機の方向を変えるが、このときレイの表情は極めて複雑なものになっていた。 心の中を様々な種類と属性を持った感情が交錯し、それらが一体となった奇妙な何かが彼女のまだ幼い心を支配していく。 どうして葛城一尉は自分をシンジの傍に居させてくれないのか? シンジを危険な場所に置いたまま自分が撤退しても良いのか? 彼にとっては自分が傍に居るか居ないかなどはどうでも良いことなのか? それらはとてつもなく不条理な疑問でありながらも、レイにとっては極めて重大で無視し得ないものばかりだった。

 

「……シンジ君……」  

 

零号機を操りながら彼の名を呟く。 特に最後の疑問はレイの心を大きく掻き乱し、さらなる混乱へと彼女を向かわせるべく拍車をかけるのだ。

 

「……怖い……シンジ君……私、怖い……」  

 

新たな感情がレイの中に芽吹いた瞬間であった。 あちこちが欠落していた彼女の心のパズルに組み込まれたその新たなピースの名前は、『恐怖』 という厄介でもあるが大切な心の欠片の1つだった。 使徒によって命を奪われれば二度とシンジの温もりに触れることが出来なくなると思うと、レ イは氷の刃を心臓に差し込まれたような気分になる。 そしてそれ以上に恐ろしかったのは、彼にとって不必要な、役に立たない存在になってしまうことであった。 今の彼女にとって、シンジの傍に居ることで与えられる喜びは、生きることそのものの喜びにも等しい。

 

(駄目……私……やっぱり……)  

 

レイの中にほんの小さな躊躇いが芽吹き、それは彼女の心を満たしているシンジの温もりへの渇望を肥料にして爆発的な勢いで膨れ上がった。

 

「レイさん、止まっちゃ駄目だ!! 危ない!!!」

 

「え……あ……」  

 

シンジが感じたように心を繋いで動かすのに近いエヴァのメカニズムは、搭乗者の本当の心を読み取ってそのとおりに行動していた。 彼女が自分でも気が付かないうちに歩みを止め、初号機の背中を見つめていたのである。

 

「危ねぇ!!! 避けろ!!!」

 

「!?」

 

「レイさぁぁぁぁん!!!」  

 

レイは目を見開いて自分に迫ってくる閃光を見つめていた。 それは初号機を狙った流れ弾のようなもの。 しかし、それが到達すればATフィールドを展開していないエヴァの装甲など易々と貫き、 自分の命を一瞬で奪ってしまうと言うことを確かに感じた。

 

(死ぬ……? 嫌……私……まだ……)  

 

絶望がレイの心を塗りつぶしていく。 しかし、その閃光が彼女の元まで到達することはなかった。

 

「あああああああああああっ!!!」  

 

耳を塞ぎたくなるような苦痛の叫びが通信回線を通して零号機にも届き、左腕を根こそぎ失った初号機は最後の仕事と言うが如く。 初号機の右腕にA.T.フィールドを剣状に纏い、5つの水晶体を横一線に振り破壊に成功するが、その前に5つの水晶体は陣形をとり加粒子砲をエヴァ初号機に向かって放っていた。 その砲撃は、もう満身創痍のシンジは初号機を動かせず真面に喰らい初号機の胸と腹部の間を貫いた。初号機の左手だけ残り、茫然と立ち尽くす零号機の足元で跳ねた。

 

「シ……ンジ……くん……?」  

 

レイの呼びかけにはいつも暖かい笑顔と優しい声音で応えてくれた少年が返事をしない。その間にも標的を彼女に変えてエネルギーグラインドブレードを形成していた水晶体を零号機に向け閃光を放つ第5使徒に対する以上の恐怖と絶望感をレイに与えることとなった。

 

「…い」  

 

使徒の水晶体が輝きを発し、そこから放たれた無数の光が動こうともしない零号機に迫る。その瞬間、彼女の中で何かが弾けた。

 

「い……い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが彼の敗北……

 

この先世界は……

 

人類は……

 

それは誰も知らない……




ふう…。

仕事前に書き上げたぜ…。

言っときますけど、最終回じゃないからね?w

「また俺やられてるよ…」

仕方ない、諦めろシンジ。ヨッピーから生まれてきた以上は、茨の道なのだ。

「うげぇ…」

よし、あえてこんな終わらせ方したから更新を遅くしようと思うだが。どうかね、シンジ?

「逆になんでそんな事するのよ?」

えっ?意味深な終わり方で、読者達に焦らせようと…

シュッ

ドクシャアアアアアアア

ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……………

キラーン

「天丼だな…。読者方々安心してください、自分からヨッピーに書かせるようにしますので。まぁ、良ければ感想にジーク・ヨッピーとでも書いてあげてください。無理には言いませんので…。では、次回作で」

































サラダバー!アイスバー!!ドライバー!!!

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