転生先は、新世紀エヴァンゲリオン   作:㐂眼翔

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前作から今作まで長い間、空けてしまい大変申し訳ありませんでした。m(_ _)m

待っていた読者方々には、頭が上がりません。

では、ヨッピーはもう少し筆を早くして行こうと思います。

遅くなっている時は、生温い目でお願いします。

では、どうぞ。


苦しんでいる間にも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッカッカッカッ

 

ネルフ本部の施設内での誰もいない廊下に足音が鳴り響く。 その足音は、急いでいるのが解るほど音の間隔が狭い。

 

カッ

 

突如、足音は止まり鳴らしていた人物はスライドドアの前に立つと足を止めた。

 

プッシュー

 

空気が抜けた音に近い音を出しスライドドアは開き、立ち止まっていた人間は発令所に入る。

 

「日向君、シンちゃんの容体はどう?」

 

ミサトは、発令所に入るなりオペレーターの日向にシンジの容体を聞く。 その前にはレイの散策をしていてミサトの顔には疲労が溜まっているのか、表情に余裕が無かった。

日向は椅子を回転させミサトの方に体を向けるが、ミサトの言葉に顔を歪めてしまう。 それを見たミサトは悪い予感を感じてしまい、日向に近づき両肩を掴み必死な顔でミサトは日向に聞き出そうとした。 その状況を見た周りの人間は驚いていた。

 

「ねぇ!! どうしたの、シンちゃんは!?なんかあったの!?」

 

「か…葛城さん、落ち着いてください! シンジ君は命に別状はありません。 ただ…」

 

「ただ、何よ!?」

 

ミサトの声は発令所内を響かせる程に大きく、彼女の感情は不安定になっていた。 エヴァパイロット2人共がどちらも動けない状態であり、1人は肉体的に動けず、2人目は精神的に動けずネルフとして今使徒に襲来されると手詰まりなってしまうからだ。

それにミサトは今余裕が無くパイロットとしてでは無く人として大切に思うシンジが何かあったとなれば彼女行動は当然とも言えるだろう。 日向はミサトの手を肩から優しく下ろし、体をキーボードの方に向き操作をすると液晶画面にシンジがいる病室の映像が流れ始めた。 それを見たミサトは、その映像を覗き込むように見始めた。 すると、ミサトの顔は驚愕した後に歪めてしまうほどの映像が流れていた。 そして、日向の席の隣であるマヤは苦い顔で遠目から映像を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネルフ管轄内のある病院。

 

シンジが使徒の戦いの後に運ばれた病院である。 その病院で特別にエヴァパイロットだけに用意した部屋があった。 その部屋がある一般病棟にシンジは送られていた。

今は、その病院には余り患者は居らずシンジと数人ぐらいしか居なかった。 しかし、病棟から人が聞いたら気が滅入りそうな声が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっあああああああああああああっああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

 

その声は、シンジがいる病室から響いていた。 断末魔のような声を、彼はベッドの上で悶え苦しみながら叫んでいた。 動かない左腕は、悶え苦しむシンジの体に連動して人形のように操られるように動いていた。 そして、ベッドの上に寝かされているシンジは悶えながらベッドの周りに血を撒くように吐血していた。

 

「ゲホッ! ゲホッゲホッゲホッ!! …おえっ。 …ああああああああぁぁぁぁぁ……。 あうっ!」

 

この状態を他の人間が見れば、目を背けたくなるほどの光景である。 激痛とも言える痛みに襲われシンジは無我夢中にベッドの上で暴れながら血を吐き、痛みに耐えようにも余りにも酷い痛みにベッドに置かれていたであろう枕にかぶりついていた。

 

今のシンジは、鎮静剤が切れており先の戦闘で負ったダメージが内臓に行き渡り動かない左腕のように、胸部と腹部の間を使徒の攻撃で貫かれたダメージがシンジの身体の中では内臓破裂に近いダメージを負っていた。 先の戦闘後、初号機から降ろされたシンジの状態は非常に危ない物だった。

真っ先に病院に運ばれ、手術を行われて無事に終わり命に別状は無くなるが麻酔が切れた所にシンジは目を覚めした。 そして、シンジの状態を見に来たミサトを見つけた彼は尽かさずレイの心配をした。 自分の姿が余りにも酷い姿になっていたのも構わずに。 その後、鎮静剤で寝かされていたが時間が過ぎれば薬の効果は無くなり始め、再び目を覚ませば未だに内臓のダメージは響いており凄まじい痛みに襲われる事に。 普通の人間では、命を賭けた戦いの中に極限な集中力を出し途中で意識を失い、意識が戻ると大切な人を心配をした後鎮静剤で寝かされて、薬が切れて起きてみれば凄まじい痛みに襲われれば気が狂ったとしても不思議では無いだろう。

 

「ぐうううっ! ああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

彼が痛みを少しでも紛らせようと身体を動かすが、何も変わらずシンジが動けば彼の口から吐血した血は周辺に飛び散りベッドや医療機器、床まで血に塗られている悲惨な光景になっていた。

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!)

 

痛みで意識は発狂手前まで来ていたが、シンジは悶えながらも点滴されている右腕は動かさないようにしていた。 こんな状態のシンジを医者は何もしてない訳はないのだが、本来なら麻酔や鎮静剤を彼に使えば楽にさせられる。 しかし、既に薬の投与できる量が限界ギリギリに達していた。 一般の人間で効く量では、何故かシンジには足りなかった為に多く投与していた。これ以上の投与は、副作用が大きく出てしまい痛みが引いたとしても副作用の症状が出てしまう悪循環になってしまうからだ。 愚策で痛みを少しでも耐えてもらう為に、医者はベッドの上で悶え苦しむ彼をベッドに縛り付けはしなかった。 まだ意思が残っているのか、ベッドの上で暴れながらも点滴されてる右腕を動かさない所を見て必要無いと判断された。

その後シンジは丸一日、痛みに苦しみながら病棟内を鳴り響かせていた。

 

「ゲホッゲホッゲホッゲホッ! ぐうううううううぅっ!! ぎゃああああああああああああああああああああああっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室内の映像を見ていたミサトは、悲惨な光景を見て顔を青くして両手は口を抑えていた。 そんなミサトの様子を見ていた日向は、ミサトから視界を外すように顔を背けていた。 今ネルフに働く人間達が見れば誰もが、ミサトと同じリアクションを取るであろう。 大人達は使徒を子供に戦わせ、戦闘で受けた傷に苦しむ子供を見れば大人達は申し訳無くなっていた。 それに、苦しみ子供がシンジだとより一層だった。 彼は、誰に対しても嫌な顔せずに笑顔で接する少年である。 だが、普通は命懸けで戦い続けなくてはならないエヴァパイロットの事を愚痴に漏らしても不思議でも無いのだが、シンジは一言も誰にも言ってはいないのだ。 そんな彼が死に物狂いでベッドの上で悶え苦しんでいれば、そんなリアクションは当たり前だった。

 

「…レイの事は、シンちゃんには黙っといて…」

 

「葛城さん? それはどういう事ですか?」

 

日向は、単純にミサトの言葉に疑問を持つが日向の方に顔を向けたミサトは悲しみで塗られていた。

 

「シンちゃんの心を壊さない為よ…。 守った女の子が、あんな状態になった事を知れば彼は2度とエヴァには乗れないでしょうね…」

 

泣きそうになるミサトを見て、日向は驚きレイの身に何があったのか不思議に思っていた。

 

「嫌になるわね…この仕事」

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

内臓の激痛による悶え苦しんでいたシンジは、第5使徒襲来からちょうど丸一日が経過した夜に、やっとの想い出体から痛みが落ち着いてきた。 痛みは引き始めたが悶え苦しみ続けた所為ではっきりしない頭に浮かんできたのはもちろんレイのことであったが、起きあがろうとしたがシンジは自分の体に違和感を感じて、もう一度身体をベッドに横たえる。

 

「いててっ……やっぱり左腕は動かないか……」  

 

そこに在るはずなのに無いような不思議な感覚に囚われていた。 突発的な事故によって四肢のどれかを失った人間というのは、その場所にまだ欠損した部分があるように感じ続けるというのを彼は聞いたことがあったが、ちょうどそれと逆の感覚を味わっているように感じる。 恐らくは、ほぼ一体化しているエヴァの腕が失われたことによって精神が大きな衝撃を受け、まるで彼自身の腕が失くなってしまったと脳が記憶してしまったのだろう。

 

「でも……俺がここに寝かされているってことは……使徒は倒せたってことか……」  

 

戦闘で受けた衝撃のせいなのか、それとも激痛に悶え苦しんでいたからなのかはわからなかったが、どうも記憶がはっきりしてこない。 うっすらと覚えているのは、血相を変えて病室に飛んできたミサトに縋り付いて、レイの安否を尋ねたことだけだ。

 

「それにレイさんは無事だったみたいだな……良かった……。 それだったら、これも名誉の負傷だな……はは……」  

 

何とも不自由な生活をすることになりそうだったが、シンジは笑みを浮かべられるだけの余裕を戻していた。

 

「左手がどうなっちゃったのかはまだわからないが、何はともあれ俺もレイさんも無事に生き残ることが出来たじゃないか。 今はそれでいいと思うけどな……」  

 

右手で動かない方の腕に触れてみると、それがほとんど体温すらも感じさせないほど冷え切っ てしまっていることに初めて気が付いた。 確かにあまり良い状態とは言えない。

 

「血が…通ってないみたいだ……」  

 

さすがに背筋に薄ら寒いものを感じたシンジはそっとその左腕をさすってみる。 暫しの間そうしていると、じんわりとではあったが感覚が戻ってくるのを感じた。

 

「……大丈夫……か? そんなに酷くはないと思いたいが」  

 

結局は脳が一時的に混乱してしまっているに過ぎないのだから、なるべく常にその部分を意識するように心がけていれば、やがては現状を認識した脳が、記憶と現実の誤差を修正していくはずである。 心と体の関係については幼い頃に見た夢で理解していた。 普通なら彼はもっと不安を覚えてもいいというのに、意外なほど苦しんでいた時とは変わって落ち着いてベッドの周りを見渡していた。

 

「左腕が動かない事は、後にリツコさんに聞くとして…。 自分の事ながら酷く汚したな~、第三者から見たら殺人現場と言っても信じてもらえるぞ。 …これは」

 

数時間前まで苦しんでいた人物とは思えない発言するシンジ。 拷問とも言える痛みを、丸一日も堪えてから痛みが引いて少し余裕を持ったとしても常人とは思えない精神をシンジは持っていた。 普通なら、あの後では二度とエヴァに乗りたくないと思うのとトラウマになっても不思議でもないのだがシンジは微塵の思いも無く他の人間からは《異常》と思わせるだろう。

 

「とりあえずは、明日の朝にでもミサトさんにレイさんの事を聞こう。 もう一眠りする前に病室をどうにかしよう…。」

 

彼は今さっきの苦しみを忘れたかのようにしていた。 そしてナースコールをして看護師を呼び病室を綺麗にしてもらい、苦しみ続けた身体を休める為にベッドに身体を預け就寝する。

だが、シンジは少し嫌な予感を感じてしまった。 何か自分が知らない所で、大変な事があるじゃないかと。 誰かが何かあったんではないかと。 この時は彼も痛みが引いて、やっとの思いで休めると思うと気持ちは寝る事だけを優先していた。

しかし、それが後に猛烈な後悔を彼に抱かせる結果になる。 もしも彼が病室を綺麗にする前に目を凝らしてレイの髪の毛が落ちていたのを見ていたなら、ベッドの一部に血と一緒に点々と黒ずんだ染みを見つけることが出来たかも知れない。 自責と絶望の念に駆られた少女が噛み締めた唇から流れ落ちた血の痕であることまでは、さすがに彼も、そんな事になっているとは想像もしないだろう。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

翌朝。 シンジは起床して、携帯でミサトに連絡を入れる。 レイの状態を聞くために電話をしたのだが…

 

『レイの事は気にせずに、自分の体調を早く万全にしなさい』

 

その一言だけを言われ電話を切られた。 余りの事にシンジは不思議に思い、リツコやマヤの方にも電話をするも返ってくる言葉は殆ど同じセリフ。 流石の彼も、少し苛立ちに駆られるが動くと痛む身体を休ませる為に大人しくして身体を横にして休ませていた。

 

シンジは焦った。 退院が許されるまでの3日間、彼はレイの携帯にそれこそ数え切れないほどの回数の電話をかけていたというのに、一度としてレイが電話に出ることがなかったせいだ。 繋がらない回数が明らかな異常を感じ、次第に胸を満たしていく嫌な予感が的中してるんではないかと身悶えしそうになっていた。 もちろん彼はミサトたちに、何回か確認の電話をかけている。 しかし、誰に訊いても今は自分の身体を治すことを第一にするように、レイは別に怪我をしたわけではないというように諭されるだけだ。 それだけで納得して安心できるくらいなら、初めから忙しい人間の時間を奪おうとはしない。 シンジは自分がその程度なら配慮できる人間だと自覚はしているつもりだった。

 

(結局誰も答えてくれなかった……くそっ、レイさんの身に何が起こってるのか…)  

 

レイの事に関して遠ざけようとする大人達に気が付いたシンジは、病院服から学生服に着替え無理矢理病院を飛び出した。 内蔵を痛めた身体は重い鉛でも付けたかような状態で身体に鞭をうちながら昼前に病院を出て家に寄ったときにも、一度レイの携帯に電話したが、やはり彼女は電話に出なかった。 彼女に何も無くても学校の授業が終わっていなけば電話に出れる訳無いと思い込もうとするが少しずつ不安が胸を締め付ける。 そんな彼は学生の姿は見えない通学路を、第壱中学校目指して重い身体を運ばせた。

 

「学校には居るよな……どうしてレイさんのことを俺から遠ざけようとしているだ……」  

 

静まりかえった校門前を通り抜けて生徒玄関に飛び込む。 重い身体と片腕がまったく反応してくれないために走りにくいことこの上なかったが、今はそんなことを気にしていられる心境ではなかった。 授業中と言うこともあって、さすがに廊下を靴音も高く駆けていくことはしなかったが、それでも自然に足は早まっていく。

 

(レイさん、来てるよな? もし来てなかったら……)  

 

無論、レイの姿が教室に見えなかったなら、せっかく登校してきたところではあるが、このまま彼女の家に行ってみようと考えてみた。 教室前に着いたときには、もうこの時限も終わりそうな時間になっている。

 

「頼むから……居ないなんてことないでくれよ……」  

 

願うような気持ちで身を屈め彼は教室の後ろの方のドアをそっと音を立てないように少しだけ横に引いた。 ちょうどその時、授業終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「…くそ……居ねぇ」  

 

教室内ではクラス委員長である洞木ヒカリの号令がかかり、生徒たちは最後のお勤めとばかりに起立して頭を下げると、次の瞬間にはまだ教室内にいる教師のことなど完全に忘れ去って、仲の良い友人たちと喋り始めた。

 

「どうして……レイさん……そっか。 今日だけってこともあるじゃないか。 トウジ君たちに訊いてみればいいや」  

 

今やるべきことが決まると、わずかとは言えども気が楽になるのは人間の習性だろう。 彼は普段の落ち着きようからは想像も出来ない、弱った動作で体に力を入れて、教室の中に入る。

 

「トウジ君、ケンスケ君。 教えて欲しいことがあるんだ」

 

「おお、シンジやないか。 ようやっと退院できたんやな。 まだ本調子じゃないやな、ホンマに心配したんやで」

 

「大丈夫なのか? 今にも倒れそうな感じだぞ、シンジ?」  

 

顔色が優れず弱々しく教室に入るシンジに少し怪訝そうな顔をしているが、2人は素直に彼の無事を喜んでいるようだった。 シンジは、そんな2人の優しさを感じとっていた。

 

「ありがとう。 内蔵を痛めて左手がまだ動かないけど、とりあえずは平気だよ。でも、そんな事よりレイさんは学校にきてないかな?」

 

「そんな事って……お前の体やろが……で、綾波やったな。 あいつならシンジと同じで全然来とらんで。まあ、綾波は前から休みがちやったから、誰もあんまり気にもせんかったんやけどな」  

 

それこそ自分の体のことなど大した問題ではないというシンジの様子に呆れた口調を隠そうともしないが、トウジは肩を竦めつつも彼の質問には答える。

 

「来てないだと……?」  

 

シンジの顔がにわかに青ざめていく。 彼が前から感じていた嫌な予感が現実になっているかと思わせる。

 

「な、何や、どないしたんや、シンジ? ワ、ワシが悪いこと言ってしもうたんか?」  

 

まさか自分の何気ない言葉がシンジにこれほどまでの変化を起こさせてしまうとは、思っても見なかったったのだろう。 やや乱暴そうに見えても、トウジは他人を傷つけるのは嫌いだったのだ。 何しろ、彼が倫理の授業で書かされた自分の性格分析という作文でも、考えが足りないせいで知らぬ間に他人を傷つけるのが、自分の中で特に嫌っている部分だとしているくらいである。

 

「……ごめんよ、トウジ君のせいじゃないんだ。 ただ、ずっと入院してたせいでレイさんと会ってなかったし……今回は一緒に出撃したんだ。 誰も教えてくれないんだ……」

 

「そうなんか……仲間のパイロットの状態もわからんっちゅうのは難儀やのぉ……。 あないなオナゴに戦わせておいて申し訳ないっちゅう気はあるんやで? そやけどワシらは何もできんからのぉ……」  

 

トウジはもしも自分に出来ることなら替わってやりたいという真情を素直に露わにした口調で嘆いて見せる。 彼が本気でそう思っているのがよく理解できたシンジは、それで少し心と体が軽くなった気がしていた。

 

「そう言ってもらえるだけで嬉しいよ、トウジ君…。 ありがとう」  

 

シンジと彼とは感情のすれ違いもあったわけだが、それが解決してみれば本当に気持ちよく話せるタイプの少年だった。 そういった友人を持つシンジには、彼の存在は大切に思えていた。

 

「……なあ、シンジ。 俺、ちょっと思うんだけどさ……」

 

「え?」  

 

2人の会話が一段落したのを見計らって、それまでは黙って何かを考え込んでいたケンスケが口を開く。 トウジとは逆に物事を熟考してから口に出すところのあるケンスケは、ともすればその場にいても一時的に会話の流れから抜け落ちてしまうときがあったため、このときもシンジは唐突に声をかけられてような気がして少し驚いてしまった。

 

「どうしたのさ、ケンスケ君?」

 

「いやさ……トウジも言ってたけど……いや、替わるってわけじゃないんだけどな。 エヴァのパイロットって……お、俺にも出来ないか!?」  

 

最初こそ口ごもっていたケンスケだったが、核心の部分を口に出してしまった後は、もうシンジが口を挟む暇もないほどの勢いで話し始めた。

 

「前にも言ってただろ? なりたいんだよ、俺! どうせならやる気があるヤツの方がいいと思うんだ。推薦とかですぐってのは無理でも、せめてテストとか受けさせてくれるように紹介してくれないか!? 頼むよ、シンジ!!」

 

「き、訊いてはみるけど……そんなにいいもんじゃないぞ……?エヴァパイロットは……」

 

「それは感じ方の違いってやつだろ? 俺はずっとそういうのに憧れてきたんだし、それなりに知識とかだってあるつもりなんだ。 それじゃ、よろしく頼むな!」

 

「お、おう……それじゃ俺は今日のところは帰るから……」  

 

なぜ彼がそんなにもエヴァのパイロットになりたがるのかを相変わらず計りかねながらも、今は一刻も早くレイの家を訪ねなければならない焦りに任せて頷く。 ケンスケ自身のたっての願いではあるが、シンジの心にはこれでも自分以外のエヴァパイロットがいなくなれば誰も傷つかないと自己犠牲で思っていた。

 

「明日は朝から来れると思うよ。 それじゃ……」

 

「ちょっと待てや、シンジ。 綾波のところに行くんやろ?」

 

「お、おう、そうだけど」

 

「本調子じゃないのはわかっとるけど、そう気怠そうな顔せんでくれや、な?」

 

「え……あっ、ご、ごめん……」  

 

重い身体を教室から出るために身体を動かしドアの前まで行くと、背後からトウジの声に呼び止められてシンジは我知らず気怠そうな表情になっていたらしい。 そのことにまったく気が付いていなかったシンジは本当に申し訳ないように謝罪したが、トウジは特に気にした風もなく片手をひらひらと振る。

 

「ええて。 ワシの方が悪いんや。 ちと頼みがあってな」

 

「頼み? 俺に出来ることなら構わないけど」

 

「シンジにも関係あることやしな。 お前に頼むんが一番だと思っとんたんやが、なにせシンジは学校に出てこんし、しゃあないから待っとったんやわ。 それで頼みっちゅうのはやな……」  

 

ここでトウジは急に言いにくそうに口ごもった。

 

「うん?」

 

「そのな……まあ、なんや……つまり……つまりな、ワシはシンジと綾波に礼を言わなあかんと思っとっ てな」

 

「え……お、お礼……?」  

 

照れ臭くてたまらないという様子のトウジはそっぽを向きながらモゴモゴと言ったが、その不器用だが真っ直ぐな気持ちはしっかりと伝わってくる。

 

「…ワイの早とちりでシンジを殴ったと言うのに、あの時ワイとケンスケを助けてもろうた。 そして綾波も戦うようになったんやろ? けどな、シンジには謝ったが綾波にはまだ礼を言っとらんのや。ワシらを、守ってくれてありがとうさんって…」  

 

ようやく自分の伝えたいことを全部言い切ることが出来た彼は、身に余る大仕事を何とか片付けたとでも言うような表情で溜めていた息を吐き出す。 その姿を見つめていたシンジは、幼い頃に夢で現れたあの人に魅了された微笑みを浮かべて力強く頷いた。

 

「……きっとレイさんも喜ぶと思うよ。 必ず伝えるからよ」

 

「頼みたいんはそれだけや。 急いどるところ悪かったな」

 

「ううん、いいんだ。 それじゃ、今度こそ行くよ。 また明日な、トウジ君、ケンスケ君」  

 

そう言ってシンジは踵を返した。 ずっと学校を休んでいた彼に大丈夫なのかと声をかけてくるクラスメートたちに出来るだけ笑顔で応えながら教室の外に出ていく。 そんなシンジの後ろ姿を見送っていたトウジは、彼の左腕が体の動きに振り回されているだけで、意志を持った動きを全くしていないことに初めて気が付いた。 とりあえずは平気だとシンジは言っていたが、どう見ても、どう考えても平気なはずがない。

 

「今にも壊れそうに痛々しい感じやな、あいつは……」

 

「ん? 何か言ったか、トウジ?」

 

「いや、別に何でもあらへんわい。 ワシは早弁でもして、さっき使うた体力と気力でも充填することにするわ」  

 

普段は彼などよりも遙かに目端が利くというのに、何故あれに気が付かないのだろうかと内心 で溜息を吐きながら、トウジはその言葉どおりに鞄から弁当箱を取り出していた。      

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

ネルフによって管理されている地域であるために、レイのマンションがある場所はいつもながら閑散としていた。 学校からは近くも遠くもなく、ネルフ本部の地下施設まで繋がるエレベータードームにだけは、 目と鼻の先というのがレイの住居の特徴である。 外には特に何もない地域なのだ。 シンジは片腕が動かないためにバランスを取るのに苦労しながらも、咳き込みながらも学校からこの場所までをどうにか転ばずに歩いてこれた。

 

「げほっ。 ……居る、かな?」  

 

レイの部屋を訪ねるのこれで2度目になるが、どうせ来るのならばもっと落ち着いた時に来たい所だがそうも言ってられない。 しかし、現実には前回来たときよりも更に酷い状況になっている可能性もある。 このまま彼女の部屋まで行ってみて、もしもレイが不在であれば、もうどこを探していいものやら見当も付かない。 だが、それでもレイが部屋にいてなお彼の電話に出ようとしないということよりは、まだその方が数段いいとも思えるのだ。 ファーストチルドレンという重要人物であるレイが行方不明になっているなどは有り得ず、自宅に居ないということは即ちネルフ本部に出頭しているか、それとも最低限ミサトたちが居所を掴んでいるはずなのである。

 

「居るはず……きっと部屋に居る。 レイさんに何か起こってるに違いない……」  

 

どうしてミサトたちがそのことを教えてくれないのかは気になったが、彼は結局我慢しきれず病院を飛び出したのが現状。 今すぐに連絡を取ろうとすれば、たちまちあの何もない病室に逆戻りという可能性が高い。

 

「お父さんやミサトさんたちが俺に言えない事なんだ。 そんな気の遣い方をされたくない。 俺はレイさんのために出来る事なら何だってする」  

 

事実、病院を脱走してきているのだからその言葉には真実味がある。そう口に出すことで意を決したシンジは、マンションの入り口へと向かって足を踏み出した。 しかし、マンションの行く手にシンジの監視をしている諜報部員達が立ちはだかるように立っていた。 シンジは彼らが自分の目の前にいることに不思議に思っていた。 本来、彼らはシンジの視野に入らないように監視しなくてはならない筈が目の前に立っていた。

 

「…碇シンジ君、速やかに病院に戻ってください」

 

「…げほげほっ。 ははっ、やっぱりレイさんに何かあったんだ…。申し訳ないですが、その言葉には従えませんね」

 

7人の諜報部員とシンジの周りには、緊迫の空気が漂って来た。

 

「碇司令と葛城一尉の命令により、碇君。 君をあそこには行かせる訳にはいきません。 どうか、その身体を病院で休めてください」

 

7人の中に真ん中に立つ鈴木は、他の6人に指示を出してシンジを連行しようと近寄ろうとすると、シンジは動かない左腕を右手で動かす。 左手は鎖骨の方まで持っていき左肩と首で少し挟み固定し、右手で左肘を持ち左腕を固定した。

 

「すみませんね…、ゴホッ。 俺はレイさんの心配で来て痛い身体を鞭を打って此処まで来たのに、『はい、わかりました』って言えないですね、ゴホゴホッ…。 誰もレイさんの事を教えてくれないなら、自分で行くしか無いでしょ?」

 

1人の諜報部員が、シンジの身体に触れようとするとスルリと彼はその手から躱した。 その諜報部員は、驚いていたが他の諜報部員達がシンジに群がるように捕まえにかかった。

しかし、どの諜報部員にはシンジを捕まえることが出来ないでいた。 彼らにとっては、確かに捕まえる瞬間までは彼はそこにいるのだが気がつけば手は空を掴むだけ。 シンジは、顔を青くしながらも汗をかきつつ諜報部員の手から避けていた。 四方から囲うような形で、シンジを捕まえようとするが1人タックル気味にシンジの腰に目掛けて捕らえようとするが。

 

くるっ

 

シンジは諜報部員の背中に自分の身体を浮かせて左肩から乗り、前転するようにして躱し尽かさず次の諜報部員2人が左右から迫るがバスケで言うならダックインと言う技に近いしゃがむ体制に近い行動で躱していく。

数十分の攻防の中、大人7人の中学生1人で大人達は1人の子供を捕らえる事が出来ないでいた。 流石のシンジも、身体にハンデを持ちながらも7人の大人達から逃げ切れているのは凄いことだが最早時間の問題だった。 既に彼の足は震え、逃げながらも吐血を吐き、顔は青から白く息をきらしていた。 そんなシンジを見て、1人の諜報部員は彼に話しかける。

 

「何故!? 君は、そんな体で辛い思いしながらも彼女に会いに行こうとする! 彼女は我々大人達がなんとかする! だから、君はそんなに頑張らなくていいんだ!」

 

スーツでサングラスを掛けた姿で1人の諜報部員は、感情を表すように言う。 彼らは、目的や命令に忠実に動き感情を表さないのが彼らだった。 しかし、彼らの目の前に立つ少年を見ていると感情を表に出してしまっていた。 余りに見てられないほどの状態で立っているシンジの目は変わっていなかった。

 

「……ハッ…ハッ…ハッ。 まぁ、これは俺の我儘見たいなもんですよ……誰もレイさんの事を俺に教えないって事は何かあったに違いないじゃないですか…」

 

一度、深呼吸をして息を整えようするシンジ。 そして、彼らを力強く見た。

 

「俺だって、こんな体で貴方達と鬼ごっこしたくありませんよ…。 普通に家に帰って飯作ってミサトさんと話してペンペンを愛でて、身体を休ませる為にゆっくり寝たいですよ……だけどね! 彼女が泣いてるかもしれないのに、自分だけが楽な思いなんて出来るわけないんですよ! 彼女が助けを求めていなくても、その涙を止めてやるのが男ってもんでしょうが!」

 

シンジは両足に力を入れて、肺に酸素を限界まで取り込むと次の瞬間。

 

ワッ

 

凄まじい音量のシンジの大声が、周りに鳴り響く。 周りの音をかき消すほどの大音量で、近場にいた諜報部員達は一瞬だけ目を閉じてしまう。 その瞬間を狙ってシンジは、両足の力を極限まで抜きしゃがむ体制になると素早く力を込めると諜報部員の間をすり抜けるように跳躍する。

諜報部員の視点だと、いきなりの大声に驚き目を閉じてしまい目を開けた時には、その場に彼の姿は消えていた。

 

「ゲホッ…ゲホッ…」

 

諜報部員の後ろから咳が聞こえ、振り返るとシンジが後ろ姿で立っていた。 咳が止まり、シンジは口から血を吐き出すと口一杯の量が地面を染める。

 

「…ゲホッ、これは俺の我儘なんで処罰は覚悟の上なんで…。 ここで逃したとしても、貴方達には何も責任は課せられないと…思います。 そうだ…今度どっかに食事行きません? 俺はアルコールは無理ですが、楽しく騒ぎましょうよ…。 まぁ、その前に女の子の涙を止めてきますね…」

 

シンジは、レイのマンションに向けて弱々しく歩き始める。 その後ろ姿を見ながら、諜報部員達は誰1人動かず1人の諜報部員は懐から携帯を取り出す。

 

「すみません、対象は捕らえられず見失ってしまいました」

 

諜報部員の携帯から、相手側からの声が他の諜報部員にも聞こえるほどだった。 だが、諜報部員は顔一つ変えずに一言。

 

「我々がやるよりも、彼なら彼女の心を癒す事が出来ると思います」

 

彼はそれだけ言うと、電話越しから声が聞こえているが途中で停止のボタンを押した。 そして、サングラスを外しシンジに向けて言葉を送る。

 

「碇シンジ君…どうか、彼女を」

 

諜報部員達は、本来の監視位置に戻っていった。

 




いや〜、遅くなってしまいましたわ〜。(´Д` )

「本当に申し訳ないよ、前作での後書きで偉そうな事を言っちまったよ〜。 俺…」

「いいえ、シンジ君の所為ではないわ。 悪いのは作者であるヨッピーだわ」

…えぇ、全て悪いのはヨッピーですわぁ……。 レイさんに言われると心に来るわ…

「これからの作品を更新速度を早めれば、読者達は許してくれるんじゃないかしら」

それは…

「まぁ、レイさん。 ヨッピーにも都合はあるさ。 読者方々も気長にお待ち頂ければ幸いです」

シンジ……、よしエヴァ最終巻を買って気合入れて書いて行こうと思います。

では、サラダバー!

「さよなら〜」

「また次回作で…」

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