レイの部屋から離れて一人暮らしに移ったシンジ。 彼は新しい部屋を、自分なりに考えてコーディネートしていく。
全部1日かけてホームセンターで買い揃え、次の日に家具も合わせて自分の部屋を完成させた。
「ふ〜…こんなもんかな。 後は後々に衣類とか小物を買っていこう」
ピンポーン
すると突如インターホンが部屋に鳴り響く。 今彼が住み始めた所は、レイとミサトが住むマンションでは無く比較的ネルフ本部に通いやすい場所に建てられたマンションの部屋に引っ越していた。 彼はインターホンの音を聞き玄関に向かった。
「はいは〜い、新聞の勧誘とかなら要りませんよ〜♬」
ガチャッ
シンジはドアノブを捻り、玄関のドアをゆっくり開けた。 ドアの向こうには、肩から下げた小さな橙色のショルダーバックをかけて私服姿のマヤの姿があった。 顔を少し赤くして恥ずかしそうに佇むマヤ。
見た目は、前髪の左側にヘアピンで止めて彼女の幼く見える顔をより見えるようになり軽く化粧しているのか、可愛らしさが溢れていた。 服装は、ガーリッシュと言った所か女の子の特権であるフリルや花やリボンを取り入れたファッションであった。 軽い色合いで目立ち過ぎない見た目、マヤにあった服装だった。 靴は濃い青のバレエシューズ。
「来ちゃいました…」
「どうぞどうぞ、たった今部屋の整理が終わった所なんで」
シンジは引っ越した後、ネルフに寄った時にマヤと会い引っ越した話をした。 その時に引っ越し祝いとして、マヤを自分の部屋に招待する事になった。 最初はマヤは断っていたが、彼の少し落ち込む姿に罪悪感に襲われ結局は招待される事になった。
シンジはなんだかんだで、ネルフの職員で交流が多い方で親しみやすい彼女だった為に招待をした。 だが、マヤは確かにシンジとの交流が多いが異性であり男性の部屋に行くと考えると恥ずかしかった。 相手は中学生ではあるが、彼が普通の子供とは違い性格も良く大人顔負けの包容力を持った彼は最早歳下には見えないでいたマヤ。
「まぁ、座って待っててください。 茶とか今出すんで」
「き、気にしないで。 シンジ君」
少しテンパり気味なマヤに、シンジはそれを見て苦笑。 シンジは一旦キッチンに行き、姿が見えなくても彼が用意している音が部屋に聞こえていた。 可愛らしい絵が描かれた座布団に座るマヤは、彼の部屋の中を眺めていた。 彼の部屋は2LDKで一人暮らしには好条件の部屋だった。
一つの部屋を寝室にして、残りの部屋は居間として使い部屋中にデフォルメされた動物の置物が多数あった。 それを見たマヤは少し笑ってしまった。
(シンジ君って…男の子なのに意外に可愛らしい物を持っているのね。 あっ、キャットティーチャー)
マヤがシンジの部屋を眺めていると、キッチンから彼がお盆を持って現れる。 お盆の上にはマグカップが二つに茶菓子用に何個かお菓子が積まれた皿があった。
「お待たせしました〜、どうです? 俺の部屋は」
コトッ
彼はお盆を卓袱台に起き、自分の部屋の感想をマヤに聞く。
「う〜ん、私的には良いかなぁ。 居やすい空間ってあるじゃない、それに近い雰囲気なお部屋だと思うわ」
「良かった、俺のセンスが悪く無くて…あっ。 どうぞ」
「ありがとう、シンジ君」
そうして段々とマヤも気が解れて、シンジと色々な話をしていく。 何故、男の子なのに可愛い物が好きなのか。 一緒に住むのを拒んだのか。 学校ではどうなのか。 マヤは彼に思った事を聞いていく。
「うーん、可愛い物に対しては幼い頃から預けられた所で母親の物で多かったからかな? 一人暮らしについては、疲れたと言っときます…。 学校では皆と仲良くしてます」
胡座をかきながら大きめの猫のぬいぐるみを抱きながら話すシンジ。 そんな姿に似合ってる事にマヤは微笑む。 その後、マヤが持参したお菓子を食べて彼が感想を言っては彼が作った洋菓子をマヤに食べさせたりと色々と過ごしていた。
☆★☆★☆★
マヤを自分の部屋に招待してから数日、リツコに呼ばれネルフ本部の通路を歩いていたシンジ。 彼の周りには誰も居なかったが、彼に刺さる視線が3つ。
ジーーー
効果音でも鳴りそうな視線が彼の後ろ姿を見る女性3人。 少し遠い場所で眺め、隠れるように見てくる彼女達に気付いてしまうシンジ。
そう3人は、レイの部屋での件から彼女達はどうにかして自分達と全員で住まわせようとするミサト・アスカ・レイ。 最近まで彼女達の勧誘などがあったが、彼は頑なに拒否。 だが、彼女達はめげずに彼の後を追っていた。
「はぁ…」
シンジは溜息吐きながら目的地に向かっていった。
☆★☆★☆★
「無様ね、あの3人」
キッパリと言うリツコ。 彼女は既に3人の行動を知っている為の発言だった。 しかし、リツコも一度一緒に住もうと勧誘した人間であった。
「困りましたよ〜、頑なに拒否しても3人共諦めないし」
「まぁ…あの3人の事もわかんなくも無いわ」
シンジはネルフから提供されたリツコの部屋で、2人でお茶会をしていた。 その際に自分で作った洋菓子をリツコに食べてもらっていた。
「シンジ君は家事も出来て、人間として良くて色々と出来る男の子だから…より3人は住みたがるんでしょうね」
ポリポリ
リツコはシンジが作ったクッキーを食べながら述べた。 それに対してシンジは、彼女に淹れてもらったコーヒーを味わいながら飲んでいた。
「…どうしたら、諦めてくれますかね? リツコさん。 実際に4人で住めば…またミサトさんとレイさんの羞恥心皆無な姿を見る羽目に」
「あらっ、シンジ君? もしかして…女性には興味無いのかしら?」
普通の男性であれば喜びそうなシチュエーションなのだが、逆に困るシンジに異性に興味が無いかと思うリツコ。 リツコの言葉に溜息を吐きながら答える彼。
「興味はありますよ? なんですが…女性だけの家に自分男一人だと。 ねぇ? 困るんですよ、性欲が持て余す」
シンジの発言に理由が理解したリツコ。 彼も男なんだと気付かせられた彼女だった。 その後、リツコは彼に愚痴を吐かせて後ほどミサトを説教する事を心に決めたリツコであった。
☆★☆★☆★
今現在住むシンジの部屋の前に3人の姿があった。
「ミサト…本当にやるの?」
「もう形振り構ってられないわ、実力行使よ!」
「……」
ミサト・アスカ・レイは、彼の部屋の前で作戦会議を行っていた。 側から見れば、それを見た人間は関わろうとせずにその場を離れようとするほど少し異様な光景だった。 レイは、2人が話してる中で彼と一緒に暮らす事を強く思っている為に表情には力が入っていた。
「じゃあ…押すわよ?」
「「……」」
ミサトの言葉に無言のまま頷く2人。 そしてミサトはインターホンを押そうすると、後ろから話しかけられた。
「…何してんすか? 3人共」
「「きゃああああっ!?」」
「…!?」
意識をインターホンに向けた所に、突然後ろから本人の声が聞こえて声を上げて驚く2人と静かに驚くレイ。 シンジは私服で両手にスーパーバックを持ち、買い物帰りだと思わせる姿であった。 少し間を置いて、一旦落ち着いたミサトはシンジに言う。
「シンちゃん…私達と住みましょう!」
「断ります」
キッパリとミサトの言葉を断るシンジ。 断れた彼女は少し涙目になり顔に力を入れていた、それを見た彼は顔を歪める。 彼も意地悪で言ってるわけでは無く、本来男女で他人にも関わずに一緒に住むのは世間的に危ないから断っているのだ。 しかし、彼女達は諦めなかった。
「シンジ…あの時に言ったことは冗談だったのよ。 ゴメン、後から来たのに追い出す様な事して。 だから! 正直に言わせてもらうわ…一緒に住んで! 私なりにアンタなら、男として一緒に居れるし…後味が悪いのよ!」
「う〜ん…別にあの時に言ったアスカちゃんの言葉はおかしく無いと思ったから、素直に引き下がっただけだよ? だから気にしなくても良いんだよ? 後、一緒に住むのは世間的にアウトだから断らせてもらうよ」
アスカは彼の本音を聞き、ぐうの音言えなくなったのか顔に俯く。
「…シンジ君、一緒に住んで。 一緒に暮らして…一緒に食べて…一緒に寝たい。 私は寂しかった、でもシンジ君と短い期間だったけど一緒に暮らした時は…嬉しかった。 もう一人は嫌なの…シンジ君」
「……ゴメン、レイさん。 確かに俺も君と暮らした時は良かったと思う。 だけどね? もうレイさんはミサトさんとアスカちゃんと一緒に暮らせば一人じゃ無いよ? だから、俺じゃなくても大丈夫だよ」
申し訳なさそうに言うシンジに、レイは言葉が出ないのかゆっくりと口を開けたり閉めたりと繰り返すが声が出ないでいた。 重い空気になってしまい、このまま立っているのも限界を迎えたシンジは彼女達を避けて自分の部屋に戻ろうとした。
ガチャッ
そしてドアノブを掴み回そうとした瞬間。
ガバッ
「うおっ!?」
突然、彼の後ろから背中と両腕にしがみつく物があった。
「シンちゃ〜ん! お願いよ〜! 一緒に住んで〜! 何が悪いの…私が悪いの? ヒッグ…シンちゃんが気に入らない所があるなら直すから、お願い〜」
「…ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい…」
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌……私の全てをシンジ君に渡すから。 お願い…一人にしないで。 捨てないで見捨てないで嫌わないで…」
ミサトは大人としての威厳を捨て泣きながら悲願して、アスカは涙流しながら謝り続け、レイは目の光が無くなり2人と同様に涙を流しながらシンジにせがんだ。 そんな彼女達に驚くシンジ。 彼は少し強く理由つけて言えばもう諦めてくれるだろうと考えたが、一転彼女達はシンジに形振り構わずせがみ始めた。 彼女達の声に引き寄せられたのか、シンジが住むマンションの人間達が現れ始めた。 それを見たシンジは、彼女達を引き剥がそうとするが離れず異様な光景が出来上がっていた。
何時までも離れず、同じマンション住む人間にも見られ流石にシンジも居たたまれなくなったのか彼の口から彼女達が望んでいた言葉が出てきた。
「そうだね…ゴメンなさい。 3人共、一緒に住もう。 仲良く楽しくやろう。 俺も意固地になってたよ…だから泣き止んで」
「「「……」」」
一旦自分がしゃがみ込み、それに合わせる彼女達と目を合わせる。 少し作った笑顔を浮かべながらシンジは口を開く。 彼女達は泣き止み、彼の言葉を待っていた。
「帰ろう…俺達が住む場所に」
その言葉に3人は再びシンジに抱きついた。
「シンちゃん!」
「シンジ!」
「シンジ君…!」
シンジに抱きついた3人は、彼の胸の中で静かに泣いていた。 そんな3人を小さな身体ながら包む様に抱き一言。
「俺は…親か」
そうして4人で住む事になった。
これはレイの部屋での件で彼が断ったであろう時のifのお話。
人には意思がある。
人は一つの体に一つの意思をもたせている。
例外が存在するが、人類の9割9部9厘は一つだけの意思。
だが…人に近い存在である人造人間には意思は無かった。
人から人が生まれる際には、その赤ん坊には意思が宿る。
しかし、人が人に近い物を作り上げても…意思は宿らない。
オカルトなどで人には、《魂》と言う物が宿っている為に死んでしまうと身体から離れるとも言われている。
しかし、人が生きたまま《魂》《意思》が離れてしまったらどうなってしまうのだろうか?
そして……離れたその物は他の器に入れる事が出来るのか。
人が人に近い物を作り上げ、人の《魂》を人に近い物に入れる事が可能か…。
もし…それが可能となったら人に近い物に入った人の《魂》はどうなってしまうのか……。
……それは誰も知らない。
☆★☆★☆★
バキッ
ドカッ
メキャッ
ゴシャッ
4体の使徒に四方から凄まじい数の攻撃が、容赦無く襲いかかる。 一体一体の使徒の動きが早く、使徒からの猛攻の中で反撃をするが初号機の攻撃は空を切るだけだった。
『シンちゃん!! 逃げて! お願い!!!』
エントリープラグ内に、ミサトの必死の声が鳴り響く。 だが、彼の耳には届いておらず…今の状況を覆す為の事を考えていた。
(どうする!? 今のままじゃ、やられてしまう! どうにかコイツらを止めないと…。 だけど、分裂してからの使徒の動きが早過ぎてエヴァが追いつけない! ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!! 考えろ考えろ考えろ考えろ!!! 絶対に何かある筈だ!)
少しでも使徒の攻撃に耐えて、突破口を見つける為に初号機を身を小さくして防御体制になっていた。 だが、それを見た使徒は4体から2体になり使徒の攻撃を重くしてきた。 そして、2体になった使徒は幾分か動きが遅くなるが初号機が反撃に移ると再び4体に分裂してヒラリと初号機の攻撃は躱された。
(駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!! 油断も隙もなく反撃する暇も与えてくれない! 残り内部電源も心許ない…このままだと負ける! ………負ける? あれ……今俺が負けたらどうなる……? 使徒が第3新東京市を襲い、ネルフ本部まで攻め込まれたら……人類全員が…死ぬ? 皆…ミサトさん、アスカちゃん、レイさん、リツコさん、加持さん、マヤさん、トウジ君、ケンスケ君、冬月先生、お…父さん。 全員が死ぬ…?)
彼の心の中は少しずつと、絶望の感情に満たされていく。 そして、初号機の内部電源は呆気なく時間が来てしまいエントリープラグ内は暗くなり、最後の使徒の攻撃により初号機は横たえてしまう。
ガチャガチャガチャガチャ
「アアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!」
シンジは動かなくなった初号機を、雄叫びを上げながら動かそうレバーを乱暴に動かしていた。
(イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!! 皆仲良くして楽しくやって来たんだ! それなのに、突然壊されるなんて!! 皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ皆死ぬ!!! 誰もが俺を優しくしてくれる人達が…使徒に殺される! 俺の幸せを奪われる!! 暖かい場所も大切な人達も何もかも! …………何故、世界は理不尽に満ち溢れている。 ただ楽しく生きていたいだけなのに…。 何もかも神が悪い…そうだ、神が憎い!! 俺は貴方に何も望んでいない、頼んじゃいない! なのに…貴方は俺から奪っていく! 許されるか! 自分の下に仕える使徒を使い、俺から大切な物を奪わせるなんて!
許されるものか!!
いつも神は勝手だ!! 自分で人間を作り出し、気分で殺していく! 何が平等だ!!! 全知万能の神であるなら出来る筈が、世界も理不尽に作り上げた。 何が神だ! 自分のやりたい事をしたいだけじゃあ無いか!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!
そんな神…要らない。
そして、神の使いである使徒も要らない。
要らない要らない要らない…要らない!!!
俺から大切な物を奪う神など殺す!
その前に…目の前の使徒を……。
《咬み殺す》!)
そんな強い意思を感じたのか、エントリープラグ内にいるシンジは何かに引き寄せられる感覚に捉われて意識を途絶えてしまった。
すると、初号機は内部電源が切れてしまい動けなくなった筈が眼に光が灯る。 だが、不思議な事に普通は起動された初号機の眼は白なのだが紅く灯っていた。
ガキャッ
顎のジョイントが初号機によって自力で破壊され、立ち上がり歯を剥き出して海全体を震わせるほどの雄叫びを空に向かって吠えた。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ
そんな初号機の姿に何処か悲しみに満ち溢れ、泣き出す人の様な姿にも見えなくも無かった。 そして、吠え終わった初号機は使徒に向かって走り出していった。
☆★☆★☆★
ミーンミーンミ〜ンミー
パタパタパタパタ
変わらない季節での外で鳴き続ける蝉の声。 そんな中、琵琶湖の側で四角形のスチール缶を置いて中に藁を敷き火を起こしていた。
業務用の油が入った缶を中身を取り出し下に藁を追加で入れられるように少し大口の空気穴を開ける。 そして上の蓋は全開に開かせて網を乗せて完成。 即席な炙れる物をシンジは、ミサトの家で作り上げて琵琶湖まで持ってきていた。 そして、強い火を起こす為にスチール缶の空気穴に向けて団扇で扇いでいた。
「ふ〜…こんな物かな。 あ〜……あちぃ」
麦わら帽子を被り、周りの木々がある為に虫に刺されない様長袖長ズボンの格好だった。 彼はスチール缶と共に持ってきたクーラーボックスから捌かれてある程度調理された鰹の切り身を取り出した。 その鰹にバーベキューで使われる串を3本挿してから網に乗せて、団扇で扇ぎ火を調節しながら炙っていく。 皮側を炙る際に、苦味を出さない為に焦がさないように彼は炙っていく。 その工程で焦がさないようにして、炙らなさ過ぎると美味しく無いので注意。
そして皮側が炙り終われば身の方も炙る為にひっくり返すが、身の方は焦げ目を余り付けない為に網から離して遠火にする。 全体が炙れたのを確認したシンジは、炙った鰹をすぐに氷水に入れて冷やす。 (串ごと) そして、串が冷えた所で回しながら引き抜く。
そんな工程を結構の量の鰹を炙って冷やしての事を終えると、登山に使われそうな大きなバックからレジャーシートを取り出して地面に敷く。 その上にキッチンペーパーを置いていき、氷水に入れた鰹をクーラーボックスから取り出す際に皮や身についた余計なコゲを落としながら出していく。 キッチンペーパーに置いていく鰹は、天気の良い太陽の光で水気が飛んでいく。
水気が無くなった鰹を手にラップを敷き、ラップの上に薬味をパラッと敷いてから鰹を乗せ追加に鰹にかけるように再び薬味をかける。 その後、ラップで鰹を包み込んでさらにアルミホイルで巻いた。 それを新たな氷水が入ったクーラーボックスに入れていく。
そんな作業を1人でやっていく内に、最後の鰹を片付けようと手を伸ばすと彼の近くの草むらから音が鳴る。
ガサガサガサ
その音を聞いたシンジは、念の為に警戒心を高めて草むらを見ていた。 すると、草むらから可愛らしい動物が現れる。
「にゃ〜〜」
「「ミーミー」」
猫3匹が草むらから現れた。 1匹が親猫で、後に続く2匹の子猫。 それを見たシンジは、警戒心を解き猫3匹の姿に顔が緩む。
「鰹の匂いにやってきたのかな〜?」
(……キャーー!? ナチュイイ〜!! 《造語 ナチュラル可愛いの意味》 それも子猫まで〜!)
少しずつ近寄る3匹の猫達に、荒げたい自分を抑えていた。 彼は動物なら殆ど好きであるが、一番好きなのが猫であった。 黒猫の親子は、ある程度の距離を彼から取ると猫3匹はシンジを見ていた。 だが、子猫2匹はお腹空いているのか彼に近寄ろうとするが親猫が首元を加え自分の横に運ぶ。 そんな愛くるしい光景を見て、身体を震わせるシンジ。
(くそー!! 欲望のままにモフモフしたい! 愛でたい、撫でたい、モフモフしたい!!! まぁ…餌を貰いに来たんだろうな。 一本ぐらいやるか…)
最後に残った鰹を取り出して、バックからナイフを取り出して猫達が食べやすい大きさに切り分ける。 最後に残った鰹はまだ薬味をかけていない為に猫も食べれる物だった。 そして、その場を立ち上がり少し猫達に近寄る。 すると親猫は警戒し始めたのか、彼の動きを観察するようになった。 それを見たシンジは、少し笑いながら鰹が乗ったアルミホイルを猫達の近くに置くと自分は再び元の位置に戻る。 作業が終わったシンジは、片付けをしていると猫達は鰹に群がり食べ始めていた。 そんな光景にホッコリしながら片付けて、ある程度終わると後ろから鳴き声が聞こえた。
「にゃ〜」
「ん?」
突然後ろから猫の鳴き声に振り向くシンジ。 するとそこには、触れられるほど距離まで来た猫達がいた。 親猫はシンジを見上げていると、彼の足元に近寄り身体を擦りつけてきた。 それに続く2匹の子猫も、親猫とは違う足に近寄り身体を擦りつけてきた。 今この瞬間、シンジは喜びに満ち溢れていた。 第3新東京市に来てから猫に触る事が無かった所為で、より喜びが強かった。 相手は野良の為に自分から近寄れば逃げてしまうので、眺められれば満足と考えていたシンジだった。 しかし、猫の方から近寄られて触る事を許された。
とりあえず片付ける手を止めて、しゃがみ込んで猫に手を伸ばすと3匹は逃げる様子も無く彼に懐いていた。
ナデナデナデナデ
親猫を撫でられ彼は、心の中で歓喜に溢れていた。 すると、残った子猫達が彼の胸に向けて跳んだ。
「ミー」
「ミ〜」
「おっ!?」
突然の事に驚きながらも、子猫2匹を優しくキャッチする。 抱えられた子猫達は、より一層に彼の胸に自分の事を擦りつけるように懐いていた。 そんな姿に彼は、メロメロになりながらその場に胡座をかいて足の中に子猫達を収める。 手が空き親猫の喉元に手を伸ばして撫でる。
ゴロゴロゴロゴロ
そんな音を立てながら為すがままでいる親猫。 静かで自然に溢れた場所に好きな猫と戯れているシンジは幸せに浸っていた。 そんな中、シンジは可愛らしい猫達を写メする為にポケットから携帯を取り出して猫達を撮影する。 シャッター音が鳴るが、そんな音にも驚かずに親猫はシンジの側で横になっており子猫は既に寝ていた。
3匹の姿に彼は溜息を吐く。
(いや〜…満足! 久々に触ったわ〜、心安らぐわ〜。 後は帰るだけだけど…元鞘に戻ったって言うべきだろうけど。 あの人達は……俺の意見を聞かないでやんの)
シンジは心の中で、そう思いながら上を向き青空を眺める。
レイの部屋に襲来した2人とレイが、彼を引っ張りあって時の事。
「レイ! これは上官命令よ、大人しく離しなさい!」
「駄目…断わります」
「諦めなさいよ、ファースト!」
そんなやり取りをしている3人。 間にいる彼は、引っ張られてア〜としか言えないでいた。 場が膠着状態になり、どちらも引かない状況の中でミサトは提案出す。
「じゃあ、シンちゃんに決めて貰いましょう。 それなら納得できるでしょ?」
「「賛成」」
本人の意思も関係無く話しが勝手に進んでいく。 3人は一度彼を離して、彼の意見を聞こうとする。 だが本人は呆れ顔でいたが、女性3人は気にせずにいた。
「シンちゃん、どっちにする? 私の家か…レイの部屋か、住むならどっち!」
力強く言うミサト。 他の2人も彼の言葉を待っているのか真剣な表情。 しかし、なんと無くテレビ番組使われていそうなセリフにシンジはミサトのセリフにイラッとする。
「あのね〜…言う必要ないでしょうよ。 今日でレイさんの部屋から出るし、新しく部屋も見つけたし。 俺がどっちにも付かずで話は終了でしょ?」
「「「駄目、決めて」」」
息の合わせた3人のセリフに溜息を吐くシンジ。 彼も男子中学生であるが、一人暮らしに苦は感じさせない家事が出来る能力を持っている男の子。 最初からミサトの家で住む事に、躊躇していた彼だったがレイと同じように一人暮らしが出来る機会に喜んでいたシンジ。
彼も彼でミサトもレイも女性にも関わらずに、羞恥心関係無い格好で部屋にいるものだから彼の気疲れは加速していた。 確かに、信用してくれてる事には嬉しかったが限度があったのだ。 シンジも男である為に、欲情しない訳では無い為にそんな赤裸々な格好での日々が修行に近かった。
「駄目も何も意見が分かれてるんだから、手っ取り早く本人である意見を出してるんでしょうよ?」
「駄目よ、シンちゃん! 貴方が居ないと私の日々の癒しが!」
「シンジ! 悪かったわ、あの時の言葉は冗談だったの!! ゴメン! そして、助けて! あの家、どんどんゴミ屋敷化して黒い奴が!!!」
「…シンジ君はこれからも一緒に住むの」
「駄〜目、はーい決定! 終〜了〜、解〜散〜…」
最早悲願するように、腹部にミサトが抱きつき涙目で見つめアスカは右腕にレイは左腕にこの世の男性が見たら、シンジを亡き者としようと襲いかかるであろう光景。だが、彼は自分の意見を曲げずにいるとミサトは2人にシンジにとって余計な事を言いはじめる。
「…ねぇ、貴女達。 ここは手を組まないかしら? 私達はシンちゃんと住みたいでしょ? なら全員で住めば解決しない?」
「おいコラ、三十路前」
ミサトは2人を味方につける為に(最早なりふり構わず)、シンジを自分達と住まわせようと提案する。 流石の彼もミサトの言葉にタメ口。 それを聞いた2人は、目を合わせてアイコンタクトをとったのか頷き合うと息を合わせて行動に移る。
アスカとレイは、彼の両腕を広げさせてシンジの腕を持ったままで右回りする。
「what? what! what!?」
為すがままに彼女達に回される焦る彼。 ミサトは一度抱きしめる力を抜いていた為に、彼女の腕の中で彼の身体が回転して背中が見えると再び抱きしめる。 左程重くない彼の身体を脇の下から腕を通して持ち上げて、彼の胸の前にミサトのガッチリと拘束した両手。 彼の両腕を後ろに持っていきアスカがホールド。浮いた両足を脇に抱えるレイ。 女性3人に拘束されて、余りに異様な格好にシンジは冷や汗をかく。
「…ちょっと、君達…落ち着こうか。 なんだい? これ…最早技だよ。 何処かのプロレス技の合体技…」
そんな彼の言葉にミサトとアスカはニンマリと笑い、レイは少し笑った。 何処か送還される気がしないでもない予感に駆られるシンジ。
「意見が3対1で…皆で住む事になりました〜」
「「わ〜(棒)」」
「ファッ⁉︎」
シンジは彼女達の企みを分かってしまい、驚き余りに可笑しな驚き方になってしまった。 最早彼は完全拘束されて抵抗する手段が無くなってしまった。 彼女達はシンジを連行していく。
「じゃあ〜…出発!」
「「おー(棒)」」
キィ
開かれる玄関。
「ちょっ! 待てー! フザケンナ〜!! なんだ、この数での実力行使は! 俺だって男してやりたいこと一つや二つあるんだぞー! おいコラ、聞いてんのか! まって! 本当に待って!? あーーーー……。 人の! 人の!! ひ・と・の・は・な・し・を・聞っけーー!」
バタン
静かに閉められ、その部屋には静寂が立ち込めていく。
「はぁ〜、本当になんだよ…あれ。 俺に選択権なんか無いやん。 くそ〜…なんで俺の周りの女性は、男である俺と住みたがるのかねぇ…」
あそこまで自分を無力化され、街中で運ばれている自分を見る通り過ぎる通行人の視線や通り道の商店街の人間達にはニマニマされるとされる始末。 恥ずかしさの余りに、ミサトの家に着き降ろされた瞬間に居間の隅で少し落ち込むシンジであった。
「いつか絶対仕返ししたるぞ、くっくっくっ」
彼がそう3人に仕返しをする事に悪い顔しながら決心すると、足の中で寝ていた1匹の子猫が可愛く欠伸をして起き始めては近くにあった片付けていなかったナイフを口に咥えて草むらに入っていってしまった。
「あっ! ちょっ、待て! 子猫!」
片手に未だに眠る子猫を親猫の横に置き、シンジはナイフを咥えた子猫を追いかける為に草むらに入っていった。 子猫を追いかけるシンジを眺めながら、親猫は彼に任せたと言わんばかりの鳴き声を一つ。
「にゃ〜〜ご〜」
ガサガサガサガサ
「つ〜か〜ま〜え〜た〜」
「ミーミー」
シンジは子猫を追いかけて、芦ノ湖から離れ山の中にまで入っていた。 その為、整理されていない山道を20分ほど子猫との追いかけっこのお陰で彼は汗だくになりかけていた。 捕まえた子猫からナイフを取り上げ、ポケットに入れ子猫を抱き上げて来た道を帰ろうとする。
「あ〜…疲れた。 流石に山道は疲れんな。 まぁ、後は戻って帰るか。 はぁ、一人暮らしはもう無理なのかな…」
彼は男性なら憧れるような状況にも関わらず、愚痴を漏らしていた。
それもその筈、再びミサトの家に戻ればゴミ屋敷一歩前までに汚れており仕方なく彼が片付け(他の3人にもやらせたが、片付けがした事が無いのか要領が悪くより長く時間がかかっていた為にシンジ1人でやる羽目に)をした。 その後は良い時間になれば食事を作るがミサトのツマミやアスカの要望など比較的にレイは何も言わず(肉関係含まれない)、シンジは3人それぞれのご飯を作る事になった。
そんなミサトの家に、男1人女3人での生活を数日過ぎると彼はより一層に頭を抱える事に。 ミサトは彼が居なかった間のストレスが溜まっていたのか、シンジに酒のツマミの要望が多くなった。 アスカは家事の能力が無いのか食事や洗濯など全部が、シンジに任せっきり。 (彼女の洗濯物を洗って、洗い終わり乾いた下着を畳んでいる時には少し彼は涙が出そうになっていた) そして、レイが2人より頭痛を抱える事になった。 ミサトの家には部屋が3つしか無く、4人では溢れる所シンジが居間で寝る事になった。 元々彼は私物が少なかったので、シンジは苦では無かったが何とレイはシンジの服などを自分の部屋に持っていく行動をし始めた。
最初彼は彼女の行動に理解が出来なく、レイに聞くと本人はスラッと答えた。
「シンジ君の匂いが付いた服を嗅ぐと落ち着く」
その答えに最早、椅子に座っていたシンジはテーブルに頭を打ち付けた。 恥じらいも無く彼女は、シンジの匂いを好み彼の停止が無ければ彼女に服を持って行かれることに。 (嗅ぐだけでは飽き足らないのか、自分で着ることも多数)
そんな彼女達とこれからも暮らしていくのかと考えるシンジは、良心の塊と呼ばれても可笑しく無い彼にも疲労の影が見え始めていた。
「…なんだろ、俺がオカシイのか? 最早、周りに振り回され過ぎて何も解んなくなってきたぞ……うん?」
そんなシンジは子猫を抱えながら、来た道を戻っている所に廃墟になっている建物を発見した。 寂れており何処と無く異様な雰囲気を漂わせた小屋は、山の中で静かに佇んでいた。
「へぇ〜…こんな所に小屋なんかあるんだ。 なんか怖そうだけど」
そんな事を言いながら、シンジは廃墟になった小屋から離れ芦ノ湖に戻っていった。 シンジが去っていたその後、小屋の中からは物音が小さく鳴らしていた。
☆★☆★☆★
「う〜ん…上手い!」
「本当、美味しい」
「この鰹のタタキ、良く出来てるなぁ〜」
場所はネルフ本部の発令所、そこで3人のオペレーターである日向マコト、青葉シゲル、伊吹マヤが簡易テーブルを立てて鰹のタタキを食べていた。
「だけど、あの子本当に優しいなぁ。 元々葛城一尉の為に作ったにも関わらずに、俺らまでにくれるなんて」
味を楽しみながら、日向は彼の感想を述べていた。 そんな日向の感想に、他の2人も頷いていた。 シンジは芦ノ湖で大量に鰹を炙っていたのは、ネルフ関係の人間や親しい人間などにお裾分けする為であった。
「もう彼は嫁に出しても文句無しだな。 中学生で男子にも関わらずに、この料理の出来栄え。 性格も良く顔つきも中性的で可愛らしい。 あの子と付き合える女の子は幸せだろうな」
青葉が鰹のタタキを食べながら喋っていると、ふと日向が気になった事をマヤに問いかける。
「そう言えば、伊吹ってこの中で一番彼と親しいよな? シンジ君とはどんな感じなん、伊吹?」
「えっ!? いや、シンジ君とは何も…。 いつも優しくしてくれて、先輩と一緒にお茶会開くぐらいよ」
「ぶっちゃけの話…マヤちゃんって、彼の事はlike?love? どっちなんだ」
いきなり青葉からの恋話に、顔を真っ赤にするマヤ。
マヤは彼と会うまでは、男性との関わりが無く最低限でしか接触が無かった。 そんな所にシンジと出合い、彼の触れ合いで自分より歳下にも関わらずに好意を持ってしまう彼女。 歳にあってはいない彼の精神年齢に包容力がある男の子。
「いっいや!? シンジ君は良い子だし、私のような人間じゃあ…つり合わないと思う。 それに私と彼じゃ歳が離れてるから…」
最初顔を紅くしながら言うマヤだったが、少しずつ落ち着いていくと彼女は変わって落ち込んでいく。 彼女は確かに彼に好意を持ってはいるが、完璧に近い男の子に自分とは合わないのではと思い気分を落としてしまう。 そんなマヤの様子に慌て始める2人。
「いやいや! 伊吹も悪くないなら、彼にアプローチして行くのも手だと思うけど」
「そうそう、マヤちゃんは可愛いだから自信持ちなよ」
その後も2人はマヤを励ましていた。
☆★☆★☆★
「うまいな」
「あぁ…」
司令室でゲンドウと冬月が、シンジのお裾分けを食していた。 暗い部屋で男性2人は、面を合わせるように椅子に座っていた。
「やはりシンジ君はユイ君に似ているな。 大学の時も、作りすぎたのを私の所まで持ってきてくれて笑顔で渡してくれたもんだ。 それが息子であるシンジ君も、これを私達に持ってきて笑顔で渡す所なんてそっくりだ」
「…そうだな」
冬月は昔の事を思い出しながら、鰹のタタキを味わっていた。 ゲンドウの方は実の息子が、ここまで出来る人間だと思っていなかったのか少し言葉に間があった。 だが、シンジが幼い頃の事を思い出せば昔から何でも出来た子供だと思い出すゲンドウ。
「最早…あの子は婿でも嫁でも行けるな」
「冬月やめておけ。 意外に洒落にならないぞ、あいつは…。 最近のシンジを見ていると活発なユイにしか、私には見えないでいるのだから」
「そうだな、シンジ君は相手が男でも女でも関係無さそうに見えるからな。 実際に今は…葛城君の所でレイも含め4人で住み始めている。 彼は男であるのに、浮いた話すら出てこないし良く出来た子供だ」
当の本人であるシンジは、女3人の相手に頭を抱えいる事は周りの人間は知らない。
「本当に彼は…関わる人間を変える力を持っているな。 レイも然り国連軍やネルフの人間達も最初は、他人との距離を測るのが当たり前だったがあの子が介入すると全員が距離を縮めているのだから」
冬月が言った通り、彼が来る前のネルフの職員や国連軍の人間などは他人との距離を取っていた。 それとは変わり、レイは他人との関わりを持とうとしなかった。 そこにシンジが介入すると、周りの人間は彼に集まり自然と他人との距離を縮めていた。
「…そんなシンジに隠して行かなければならないと思うと、私でも心苦しい」
「《人類補完計画》…。 シンジ君がこの計画を知ったらネルフ…いや、大人達を嫌うかも知れないな」
それから2人は、司令室で会話無く鰹のタタキを食べ続けていた。
☆★☆★☆★
夜、ミサトの家では4人揃って帰ってきていた。
「〜♫ 〜♬」
アスカは脱衣所で服を脱ぎながら、上機嫌なのか歌っていた。 他にレイは今でペンペンを正座した脚の上に乗せてお腹を撫でており、ミサトはリビングのテーブルの側にある椅子に座り鰹のタタキを食べながら缶ビールを片手に上機嫌で飲んでいた。 残り1人、シンジは夕食で使われた食器を流し台で洗っていた。 そんな光景を第三者が見れば、シンジの立ち位置が彼女達の親に見えなくも無いだろう。
ガラッ
「♬〜」
服も下着も身に着けた物を脱衣所に置き、アスカは一切身につけず風呂場に入っていった。
『あっつ〜〜〜〜い!!!』
「うん?」
食器を洗っていたシンジは、風呂場から叫び声が聞こえ振り向く。
ダダダダダダッ
ターン
「あっつ〜〜い!! シンジ!! 何よあれ!? すっごい熱いじゃない!」
アスカは行き良いよく、リビングと脱衣所と仕切るカーテンを開けてシンジに文句を言う。
「だから〜、言ったでしょ? 入る前に良く混ぜてから入れよと」
シンジは一旦洗っていた食器を流し台に置いて、最後に入浴する為か椅子の上に用意したバスタオルを持ちアスカに近寄り体に巻いてあげた。 その行動にアスカは、今自分の姿が産まれたての姿だと気付いて悲鳴を上げそうになるが目の前にいる彼は気にしていないのか表情一つ変えていなかった。
「それに女の子が男の前で、スッポンポンで出てきちゃダメでしょ。 はい、脚に冷えたお絞り。 熱かったんでしょ? 跡になるから冷やしときな…やれやれ、待ってて羽織れる物持ってきてあげるから」
シンジは冷えたタオルを彼女に渡してリビングから離れ、アスカの部屋に向かい羽織れる物を取りに行く。 それを静かに見守ってしまったアスカは、ミサトの方に顔を向けて問いかける。
「あれ…ミサト? 私って、そんな魅力無い…?」
アスカの反応は当然と言える。 彼女なりに自分の身体には自信があったのだが、異性であるシンジに裸を見たにも関わらずに平然とされ少し落ち込むアスカ。 バスタオルで隠された身体から出た手足だけでも、彼女の美貌はあった。
布が太股の真ん中より少し上から、下に沿って健康的な太股と脹脛。 女性ならではの丸みを帯びた形状、太過ぎず細すぎない美脚。 バスタオルで隠された胸は程よい大きさが実っており、その上の肩と腕まではスラッと流れるような肌で美しさがあった。 そして今髪留めが無い為に髪が下ろされており、今の彼女には何処と無く大人の女性と変わら無い美貌と幼い雰囲気が相まって男性が見れば興奮物であろう。 しかし、シンジには何の反応が見られなかった。
「シンちゃんも、あそこまで見たのにあの反応じゃあ…見た目から言わせてもらうと最早お婆ちゃんよね。 世話好きな…まぁ、アスカ。 気にしないで、シンちゃんが変わってるだけだから」
「うぅ…なんか納得できない」
ミサトは軽く励ますと、アスカは納得出来ないと言わんばかりの表情しながら椅子に座り脚を冷やしていた。
(もしかして…シンちゃんって、不能じゃないわよね? 前から私がちょっかい出してる時も、そんな反応しなかったし。 …いや、でも前に事故で私の半裸を見せた時顔を赤くしてたわ。 後、ちょっかいじゃなく人肌恋しい時にシンちゃんを後ろから抱きしめた時も恥ずかしそうにしてたし。 うーん、わからん。 シンちゃんのツボが…)
ミサトはビールを飲みながら、考えていたが結局解らないでいた。
アスカの部屋に足を運び、シンジは部屋に入り1人になると突如両手で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
(ヌアァー!! モロに見てしまった! やめてくれよ! 出しようにない俺の性欲を刺激するの! だから嫌なんだよ、彼女達は良いだろうけど俺が辛いんだよ! 表に出せない性欲がががががががっ! 何だよ! 俺の事を男として見てないの? それは落ち込むレベルだわ…、とりあえず気を取り直してなんか着れる物持っていかないと)
その後、シンジはアスカの部屋にあるタンスから下着と羽織を取り出して彼女に渡しにいった。
☆★☆★☆★
ガヤガヤガヤガヤ
昼休みの第一中学校。 生徒全員が昼食で自宅から持ってきた弁当や購買にあるパンなどを購入し、各自それぞれで食事をとっていた。
「なんやてー!?」
「シンジ! イマ、ナンテイッタ!?」
シンジ、トウジ、ケンスケは屋上に移動して、弁当やパンを食べていたがシンジの発言に驚きの余りに声をあげる2人。 ケンスケは最早片言だった。
「だから今は4人で暮らしてるよ。 俺とレイさん、アスカちゃんにミサトさんで」
今この場にはレイの姿は無かった。 この日はネルフで零号機の実験により休みだった。
「なんて羨ましいんだ…シンジ変われ!」
「せやなぁ、オナゴ3人に囲まれて暮らせたら幸せやろうなぁ…シンジ。 どうなんや?」
凄い表情しながらケンスケは彼に迫り、トウジはシンジの様子に気付いたのか少し質問した。 すぐそこまで近寄っているケンスケの事は、気にせずに間間で食べながら話す。
「いや〜…本当に男1人の肩身の狭さ。 日々気を使っていないと、何があるかわかったもんじゃあないよ? ケンスケ君、変われるなら変わろうよ。 出来るなら変わってほしいもん、家事云々は別に良いとしてラッキースケベとかは勘弁。 あんな所じゃあ発散すら出来ないから、余計にムラムラするよ」
真剣な表情で話すシンジにケンスケは近寄った分だけ身を離してしまい、トウジは苦笑しか出せないでいた。 そんなシンジに話を変えるために、トウジは恋話を持っていた。
「せやかて、シンジ。 ワレかて男さかい、異性に興味はあるんやろ? 実際に学校ではモテるんやから」
「そうだそうだ」
そう第一中学校に入学して間もなく、女子からのシンジの人気は高かった。 学年関係無く学校の女子達は、彼にラブレターを下駄箱に送られるほど人気があった。 しかし、シンジはラブレターだけでは無く告白もされたが全部断っていた。
「あるにはあるよ…だけど今は青春する前にやる事があるからね。 恋沙汰で疎かにして人類絶滅なんて笑い話にすらならないし、後いつ死ぬか分からない仕事してる中でもし俺が死んだら残された恋人が可哀想じゃん。 だから…俺には恋人すら作る気は今は無いよ」
それを聞いたトウジとケンスケは、少し浮いた話でも出るかと思っていたが予想が外れ真剣な理由を言うシンジに戸惑う2人。 今の彼の肩には人類の未来がかかっていた。 余りにも重い話に、ケンスケが話の話題変えた。
「まぁ、そんな所がシンジのいい所だからな。 そう言えば、今日街のゲーセンで《アイアンフィスト6》が入るんだってよ。 結構数入れるって話だから、俺らも待たずに出来るかも」
「おっ、それは行かんとアカンな。 どうやシンジ? 放課後にでも行かへんか? お前の王様には、苦渋を味合わせられたさかい」
「ごめ〜ん、学校の後は本部に行かないと…。 明日なら大丈夫だよ?」
「そっか、今日の午後は短いから早く行けると思ったんだけど…。 シンジが行けないなら、明日に回そうぜトウジ」
「せやな、焦る必要無いしな。 じゃあ、シンジ明日やな。 それとワシのベアーは一味違うからな」
「本当ゴメンね、明日は絶対行こう。 トウジ君…君にはメキシカン・マグマ・ドライブ2の餌食になってもらう、フッフッフッ」
そんな少年達は、年相応の話をして日常ならではの遊ぶ約束を交わしていた。
★☆☆★☆★
シュッ
ヒュッ
ババババババッ
凄まじい攻撃の数が、空気を切る音が鳴っていた。 しかし、その攻撃は相手に一つも当たらないでいた。
「あー、もう! なんで当たらないのよ、シンジ何かズルしてんじゃ無いの!!」
ネルフ本部にある道場に、道着姿のチルドレン3人とミサトが居た。 その中、シンジとアスカは模擬戦をしていたが彼女の猛攻にシンジは軽く躱していた。 そんなアスカの言葉に彼は苦笑してしまう。
「な訳ないでしょ…それにアスカちゃん、マジでやってるでしょ?」
「当たり前よ! ここまで躱されたら、イラっとするわよ!」
端の方でレイは体育座りをしていて、その側でミサトが腕を組みながら2人の様子を眺めていた。
アスカは総合格闘技をドイツにいた時に教えられ、それをシンジに向けて攻撃していた。 名の通り総合格闘技は、打撃・投げ技・固め技などを用いた格闘術。 彼女は、立っていれば打撃で隙あれば投げ技や固め技に持ち込もうとしていた。 しかし、シンジには通用せず打撃は避けてその中に織り交ぜて彼の道着を掴もうとすると払われた。 それに彼は避ける際に、彼女から距離は取らずにひらりひらりと中に舞う羽のように避けていた。
「キー! 舐めてんのアンタ!? アンタも攻めなさいよ!」
彼女はシンジからの攻撃が無い事に、腹を立てたのか彼に攻めてこいと催促した。 余りにも防戦だけでは、シンジも訓練にならないと思い少し身体を自然体にした。
「じゃあ…行くよ」
「かかってきなさ…」
そう言った彼はアスカの返事を待たず、スッとその場をしゃがみ込むように爪先立ちする。 その瞬間、片足をバネのように反発させアスカに低空で接近する。 それを見た彼女は迎撃する為にシンジの顔を目掛けて前蹴りを放つ。
「ふんっ!」
しかし、既にシンジは途中で方向転換したのかその場におらず彼女の蹴りは当たらなかった。 それどころかアスカはシンジの姿を見失ってしまった。 今彼女の周りに不可解な音が道場を鳴り響かせていた。
キュッダンッキュッダンッ
アスカはその音が鳴る方に顔を向けるが誰も居らず、そしてシンジの姿も捉える事も出来ないでいた。 それと変わり、シンジとアスカの模擬戦を眺めていたミサトは驚いていた。
アスカからは自分の周りを探すが彼の姿を見つける事は出来ないでいる、しかし第三者視点であるミサトからはシンジの姿は見えていた。 だが、今のシンジは奇妙な移動方法を行っていた。
人間は二足歩行であり、足を使って移動するのが常識である。 その足は腰より下が『脚』となるが、基本膝を使って前後左右に動く事が出来る。
例え話だが、二足の人間と四足の動物が同じ能力差でジグザグな動きをするに適したのはどっちと聞かれれば少し悩むであろう。 簡単な話にしてしまえば、四足である動物が群を抜くであろう。 理由は四足動物の場合、両手足を使いブレーキと加速の役割を二本で行って人間では出来ない全身を使っての動きが出来る為に瞬発な移動を可能にさせる。
では、二足である人間は歩く走ると言った移動は不向きなのであろうか。 否、四足に勝る物は無くとも四足に近い物は人間には持っていた。
バスケット選手とかで使われるであろう『全身バネ』と言った物を使えれば少し四足に近づける機動力を得る事が出来る。 歩く際に膝を使わなければ不自然な動きになってしまい、走る際にも同じ。 人間が脚を使っての動きには膝が重要である。
膝を曲げて進みたい方向に向けて伸ばす。 この一連の動作によって、人間は歩く難無くある事を学んだ。 すれば人間は膝を伸ばさず、常に曲げていれば素早く動けるのか。
それを実戦させているのがシンジの動きであった。 彼は折り曲げていた片足で加速に使い、残った脚でブレーキにして使う動作を交互に使っていた。 そして常に爪先立ちがポイントである。 人の足は前がブレーキの役割で、踵が加速させる役割をもっていた。 元々つま先と大腿四頭筋は、ブレーキをかける筋肉である。 大半の人間はつま先を使って歩いたり走ったりする。 なので、普通の人間が踵を上げて走り始める所シンジはつま先立ちから踵をつけてから移動していた。
その為に移動してる時に、止まる時のブレーキ音とその場から動く踵を踏む音の正体。 それに彼は動物のように身体を丸めては伸ばす動作を入れている為に瞬発力が常人離れした速さを出していた。
そして彼を捉えられないアスカに、シンジは彼女の死角を常に把握し近づいていく。 近寄ったシンジは一度彼女の前に突然姿を現した。 それに驚くアスカは、瞬時に彼の顔に左ストレートを放つがギリギリで横に躱されたら、伸び切る前の左腕を彼は右手で掴み彼女の右側に回り込む。
シンジは左腕が伸びきった瞬間、左腕を彼女の右足に円を描くように持っていく。 するとアスカの身体は左腕を自分の右足に持って行かれ、身体がつんのめり前転するように転がってしまった。
バタンッ
道場の畳にアスカが横たわった音が鳴り響く。
「………」
彼女は余りの事に頭が追いついていないのか、仰向けのまま天井を眺めていた。 それを見たシンジは身体を起こし、ミサトの方に向いて声をかける。
「ミサトさん、終わったよ」
「はっ!?」
彼の声に信じられない物を見て唖然してる所を我に戻るミサト。 人間に出来ると思えぬ機動力、無駄の無い相手を転がせた芸術的な技。 ミサトなりにシンジの事で、もう驚く無いだろうと踏まえていたが彼の引き出しの多さに驚いてしまった。
「シン…ちゃん? 何あの動きは…」
「えっ? 人間が持つ物を使っての移動方法ですよ、少し疲れますけど」
その言葉に寝ていたアスカが起き上がり、凄い形相でシンジに襲いかかる。 それを見たシンジは、驚きながらも彼女の攻撃を再び躱していく。
「キ〜!! 腹立つわ〜、あんなデタラメな動きをしてたのに! 息ひとつ切らして無いなんて…シンジ。 覚悟しなさい!!!」
負けず嫌いな彼女には、自分を簡単にあしらわれた事に腹を立てて彼に襲いかかっていく。 それにシンジは少しやり方を変えて、彼女の攻撃に合わせて畳に転がせる。 面白いほどに彼女はシンジに躱されては、畳に転がせて他の人間が見れば新たな遊びだと思われる光景だった。
「はぁっはぁっはぁっ…何よ、アイツ。 私も体力ある方だけど…はぁはぁ。 汗を流しも息切らさ無いなんて、おかしいわよ」
流石のアスカも疲れたのか、横に寝っ転がっていたが彼にミサトの側まで運ばれ引き続きでレイと模擬戦をやっていた。 アスカと変わり、レイは教えられた物をシンジに向けて攻撃するがアスカと同様に簡単にあしらわれていた。
ミサトは横に壁に寄りかかりながら座るアスカに、あの日の事を話した。
「アスカ…シンちゃんは、普通の子供とはかけ離れてるわ。 私も前に模擬戦やった事あるけど…一回も攻撃が当たらなかったわ」
「えっ! うっそ!?」
アスカは一度、ドイツに来たミサトと手合わせした事があり彼女はミサトの実力を知っているつもりだった。 歳上で経験量が違い勝てなかったが、努力と時間でミサトに勝てるとアスカは思っていた。 それが自分より勝るミサトを、一度も当てる事すら出来なかった話を聞けば驚くであろう。
「後もう一つ…彼、護衛の諜報部員7人から逃げ切ったのよ」
「…本当に何なのよ、アイツ」
最早驚きを超えて呆れてしまうアスカ。 そしてふと気付いたのかアスカは、気になることをミサトに聞く。
「じゃあ、何でアイツは使徒との戦いであんなになるのよ? あそこまで戦闘能力と身体能力があれば、使徒も簡単に倒せる筈よ。 …前の一つは、私だけど」
「そっれが分かんないのよね〜。 シンちゃんのエヴァの操縦にミスは無いんだけど…毎度毎度と大怪我を背負ってくるのよね」
ガシガシと頭を掻くミサト。 チルドレンの中では頭一個とは言わず、飛び抜けた能力を持っているにも関わらず使徒との戦いでは苦戦を用いられる。 ミサトは何故彼が苦戦するのかが理解出来ないでいた。
「世の中分からない事があり過ぎなのよね…」
ミサトはそう呟くと、それを見ていたアスカは前に顔を向け未だ模擬戦をやっている二人を眺めた。
(確かにシンジは、デタラメ的に能力は高いけど…最後は私が超えてみせる! それが私の今の目標なんだから)
アスカは彼に初めて顔を合わせてた時に言った言葉を、消えること無く彼女の胸の中で燃え上がっていた。 そんな中、シンジとレイは模擬戦をしていたが彼女も彼の体力についていけなかったのか横たわっていた。
その後、3対1で彼と模擬戦をやったが1対1と同じ様に彼女達の攻撃は彼には当たらないでいた。
そして、新たな使徒は静かに日本に近づいてきていた。
ぬぁー!最近閣下と呼ばれ始めたヨッピーです。(`_´)ゞ
自分で書いたとはいえ…レイちゃんが〜!
後、ハーメルンでの《新世紀エヴァンゲリオン》で人気の高い作品が出始めてヨッピーは感激していますw
自分では考えられない進行や、ストーリーなど色々な物を見てヨッピーは学習しております。( ̄Д ̄)ノ
そして今の立ち位置が丁度よく人気があり過ぎると(あり得ない)、ヨッピーは期待に潰れるでしょう。
なのでこれからも気軽に投稿していきたいと思います。
ちょくちょく他の作品も出そうと頑張ってはいます。
最初に出したifの話は、ある人の要望を取り入れてやってみましたw
ではまた次回作で…ジーク・ヨッピー!(`_´)ゞ
…名前、ヨッピー・ザビにしようかなぁ。