ヴィレッジ 1919   作:ペニーボイス

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※番外編コメディです
著しいキャラ崩壊(何を今更)がありますご注意ください


オリ主が『デューク』となった後、四貴族やミランダ相手に商取引を行う話。
菌の影響で人格に変化があったはずだが、デュークが接する限りあまり変わってない模様で………


蛇足シリーズ
笑ゥせばすてぃあん Aust.Ⅰ


 

 

 

 

 マザー・ミランダはこの村を作り替えてしまったが、人間の根本にあるものまで作り替えることはできなかった。

 それは欲求であり、時に欲求は外部からもたらせられる物でしか解決できない問題でもある。

 ミランダが村を閉鎖して外部との繋がりが途絶えた後、外界と村を唯一繋いだのは行商人の存在だった。

 

 

『火器・薬品・食品・古品商

        デューク

 

 店の営業を許可する。

 村長代理行政執行官

 マザー・ミランダ』

 

 

 

 

 ……………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 行商人の朝は早い。

 

 午前4時、デュークこと私は自身の荷馬車にちゃんと発注された商品が積載されている事を確認する。

 発注に漏れがあれば、あの村では大変な事になるであろう。

 ……具体的に言うと、泣かれるのである。

 未だに馬曳きの荷馬車しか使えない行商人が、村にとっては外界との唯一の繋がりなのだ。

 発注者達は何週間も前から私が商品を届けに来るのを楽しみに待っている。

 楽しみどころか、それがなければ生活できないものもいるのだ。

 だからちゃんと発注したものが届かないと、発注者…主に四貴族…は、私に危害を加えても無駄な事であるから泣くしかない。

 目の前で異形の怪物に声を挙げて泣かれるのは、どうとも言えない罪悪感を強いられるのだ。

 

 

 額縁にはマザーミランダからいただいた営業許可証が飾られている。

 荷馬車の車軸がちゃんと装着されて、故障の類がない事を確認すると、私はようやく馬車に乗った。

 片手に持つリストに目を通す。

 さて、今日の取引は…まずはドミトレスク城からか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 著しく肥ったせいで服のサイズには困るようになったが、代わりに徴兵された時よりも多くの物を持ち運べる筋力がついた。

 ドミトレスクの城の中まで馬車を入れるわけにもいかないから、これは重要な能力である。

 私はドミトレスクの人々に発注された品々を持って城の中へと入っていく。

 そこに住む人々は変わってしまったが、城自体はあまり変わっていないように見えた。

 

 

 城の中へ入ってしばらくすると、何かの羽虫が無数に飛び回り始める。

 それを見た私は、早速品物の一部を下ろしてリストを取り出した。

 早速、今日の最初の取引というわけだ。

 

 羽虫はやがて集合し、3人の娘の姿へと変わる。

 ドミトレスク家のお嬢様方もミランダの実験台にされてしまった。

 結果として蟲の集合体となったわけだが、しかしながら彼女達にも物欲はある。

 三姉妹の内カサンドラが、とてつもなく明るい顔をして話しかけてくる。

 

 

「ああ!セバスティアン!」

 

「デュークです」

 

「頼んでいた品は持ってきてくれた!?」

 

 

 だから、私はもうセバスティアンじゃないんですよ。

 せっかくイメチェン(劣化)したのに何でこう…と思いながらも間違いを指摘するが、カサンドラは全く気にも止めてない様子。

 仕方がないので、私は持ってきた品々の中からカサンドラに頼まれていた品を渡した。

 

 

「ありがとう、セバスティアン!」

 

「デュークです」

 

「これが欲しかったのよ!…エルヴィ●・プレスリーの最新アルバム!

 

 

 

 正確にはもうエルヴィ●はとうの昔に亡くなってしまっているし、彼女が最新アルバムと呼んでいるレコードはもう何十年も前の品である。

 

 行商人の馬車は、そんなに大きなものではない。

 ところが外界との繋がりがそれしかないとすると、その限られた容積の中に村中の物欲をバランスよく詰め込まなければならないのだ。

 だから娯楽関係は後回しになりやすいし、外界との繋がりがないこの村では、流行が何十年と遅れてやってくる。

 つまるところ、私の村は今何十年越しのエルヴィ●・プレスリーブームというわけだ。

 

 

「ベイラ、後で蓄音器を貸してくれない?」

 

「ええ、勿論!3人で聞きましょう。ありがとう、セバスティアン。」

 

「デュークです」

 

「ダニエラがビート●ズを欲しがってたから、次はそれをお願いね?」

 

「ほほう、それはそれは。難しいですが何とかしてみましょう。」

 

 

 ビート●ズのレコード…それも今も尚蓄音器で再生できる物となれば余計に難しい。

 正直今回のエルヴィ●だってスペインの友人達の協力がなければどうにもならなかった。

 これだから蓄音器は!

 一度CDプレイヤーを持ち込んでみたことはあったが、三姉妹は「音が安っぽい」という理由で受け付けず、それ以来このレコード調達は私の負う任務の中で殊更に難しい難題でもあった。

 

 

 

 エルヴィ●プレスリーのモノマネをしながらはしゃいでいる三姉妹と別れた後、私は品物を持って上の階へと向かう。

 いかにも城主の部屋という感じの部屋の前に立つと、私はかつてセバスティアンであった時と同じようにドアを3回ノックした。

 中から「入りなさい」というご返答をいただき、私は襟首を正してからドアを開く。

 そこにはこの城の城主、オルチーナ・ドミトレスクがいて、私を見るなり目の色を変えてきた。

 

 

「………wow……wow………セバスティアン!」

 

「デュークです」

 

「頼んでた品は持ってきてもらえた?」

 

「勿論ですとも。こちら、『赤●字社特産・季節の血液詰め合わせ』にございます。」

 

「ああ〜↑これよ!コレを待ってたのよ!最近の娘ったら夜更かしする上に脂っこいものばかり食べるから!」

 

 

 オルチーナ様はそのまま私に駆け寄ると、その大きなお体を曲げて私の額、両頬に接吻をして下さる。

 そして『赤●字社特産以下略』セットの中にある輸血パックを手に取って、ストローを突き刺し、待ってましたとばかりにそれを飲み干した。

 

 

「あ〝あ〝ーッ、生き返るゥゥゥウッ!」

 

「飲み過ぎにはご注意を。入手には限りがございますので。」

 

「分かってるわセバスティアン!」

 

「デュークです」

 

「私だって、本当は侍女達をああなるまで吸い尽くすつもりはなかったのだけれど…仕方ないじゃない!吸えって言ったのは()()()()()()なのよ!」

 

 

 オルチーナ様はため息混じりにソファに腰をかけ、かつてのように私を対面に促した。

 

 

「おやおや、それではお言葉に甘えて」

 

「……ふぅ…そもそも、あなたにも問題があります、セバスティアン」

 

「デュークです」

 

「侍女達にこんな本を与えるからこんな事になるのよ!」

 

 

 そう言ってオルチーナ様が振り上げたのは一冊の本。

 タイトルにはこうある。

『トワイラ●ト』

 

 

「そもそも私だって好き好んで血を吸ってたわけじゃないの!先天性の疾患なんだから仕方がないでしょう!?」

 

「存じあげております」

 

「それなのに!…侍女達ったらあなたから買った本にハマって!『オルチーナ様…私に罰を与えて!』だとか何とか言いながら、しなくてもいいような粗相をわざと繰り返すのよ!?」

 

「………はぁ」

 

「もう幽閉するしかないじゃない!でも幽閉したら幽閉したで、何故か悦んでるのよあの子達!最近の娘って、いったいどうなってるの!?」

 

「それは存じかねます」

 

「………はぁ。ともかく、『トワイラ●ト』の続編も含めて、私の許可なしに新しい書物の購入は禁じます。分かってくれるわね?」

 

「ええ、かしこまりました。」

 

「なら結構。………ところでセバスティアン?」

 

「デュークです」

 

「最近どう?風邪とかひいてないかしら?あ、もう既に私たち風邪以上の病気なわけだけど。そうじゃなくて…ああそう、怪我とかしてないかしら?」

 

「………大丈夫です」

 

「何かあったらウチに帰ってきなさい。部屋はいつでも空けておくわ。ああ、心配しなくてもあなたの血は吸わないから安心なさい。コレステロールや脂肪分が…あらごめんなさい、失礼がすぎるわね。ともかく、何かあったら私に相談するのよ?いい?大丈夫?おっ●い揉む?

 

 

 あまりの"代わり映えのしなさ"に、私は軽く目眩を覚えて目頭を抑える。

 昔からオルチーナ様にはそういうところはあったが………

 ママ過ぎるだろ、いくらなんでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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