名前の知らないウマ娘さん   作:小鳥遊 小佳夏

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みんなの未来へ

桜が舞う4月。別れの時期であり、新たな始まりの時期でもある。

そんな桜の下を、二人のウマ娘が走っていた。

「はぁっはぁっ、だから言ったじゃない、早く寝なさいって」

「だってだって、緊張しすぎてなかなか眠れなくってぇ」

「春休みになったら毎日言って、他の人より早くトレーニングしてもらって、もう学園生と変わらないような感じなのに?」

「でも今日から正式な学園生になるって思うと、やっぱり緊張するよぉ」

そうして二人は門の前につく。

「いよいよだね、ダイヤちゃん」

「一緒に、これからも頑張ろうね、キタちゃん」

二人はそのまま門をくぐり、学園へと入っていく。

 

「遅いわよ、二人とも」

校舎の入り口で、一人のウマ娘が待っていた。

「ごめんなさい・・・」

「キタちゃんが寝坊しちゃって」

はぁ、と軽くため息をついたウマ娘。彼女は学園の制服ではなく、紅を主体に、金色の模様が入った着物を着ていた。

「ほら、早く行きなさい。まだ間に合うから」

「はい、じゃあ行ってきますね、クレナイトレーナー」

「放課後になったらすぐに行きますね」

二人を送り出したクレナイは、後を歩いて体育館へ。今日はトレセン学園の入学式である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

入学式後の放課後。普通の入学したばかりのウマ娘はどのチームに入ろうかと、そして在校生はチームに新たなメンバーを増やそうと新歓合戦が行われている。

そこを二人のウマ娘が駆けていた。彼女たちはクラスメイトに新歓に行こうと誘われるも

「「ごめんね、私達もう決めてるから」」

そう言っていの一番に教室を飛び出し、更衣室で着替えそのままの勢いで勧誘をかわし乍ら走っていた。

ちなみに、今年もスピカはゴールドシップを筆頭に過激な勧誘をして、エアグルーヴ会長率いる生徒会に追い掛け回されているとかなんとか。

そんな中、あるチームでは新メンバーを既に二人迎えるため、トレーナーが総出でトレーニング部屋の前に並んでいた。

「お待たせしました!」

「遅くなりました!」

そこに走ってきたのはキタサンブラックとサトノダイヤモンド。

新歓をかわしてきた二人は息を切らすこともなく、トレーナーの前に並ぶ。

「予想より早かったから問題ないわ」

「うんうん、二人とも速い速い」

そう二人に声をかけるクレナイとトウカイテイオー。

「まあ、春休みのうちから先行してトレーニングしていましたし、あなた達がこうして並んでいても新鮮味が無いですわね」

「まあそうだろうが、二人も正式にそれを着るんだ。節目は大事にしないとな」

更に声をかけるメジロマックイーンとシンボリルドルフ。

 

まずトウカイテイオーはあれから復帰することなく引退。そのままクレナイのサポートに周り、今はチーム「アリア」のサブトレーナーとして、主にキタサンブラックの専属トレーナーとして活動している。

 

次にメジロマックイーン。トウカイテイオーのライバルであった彼女も、テイオーの引退後にあった天皇賞秋でライスに雪辱を果たしたものの、繋靭帯炎を発症。ウマ娘にとって致命傷と呼ばれるこの病気をテイオーというライバルがいない中克服しきることができず、そのまま引退。その後は自分が走ってきた知識や経験を生かそうと、当時トレーナーとしての道を歩み始めていたテイオーと共にトレーナーに転向。今はアリアにて、クレナイの下でトレーナーとしての経験を積んでいる。最近では、主にサトノダイヤモンドの専属トレーナーとして活動している。

 

シンボリルドルフはクレナイが目覚めたことにより不眠なども改善していたが、結局そのままエアグルーヴに生徒会を引き継ぎ、そのままウマ娘からも引退。生徒会として現役のウマ娘の幸せだけではなく、トレーナー側からみた現役のウマ娘の幸福を、また引退したウマ娘の新たな道を切り開き、更に多くのウマ娘を幸せにとの信念を胸に、今はクレナイの元でテイオーとマックイーンのサポートをしつつ経験と知識を積んでいる。三人とも、レースに出ていたころのような速度は出せないまでも、一般の人間よりも高い運動能力や筋力を保持しているほか、走ってきた経験があるのでフォームの指導やウマ娘の相談に乗ることが人間のトレーナーよりもいい指導ができるというのが最近分かってきており、この三人が指導したウマ娘の成績によっては、今後故障したウマ娘の第二の道となるかもしれないと期待されている。

 

トレーナーの陣の最後にクレナイ。彼女は目覚めた後、鬼のようなリハビリをこなすことで、引退したテイオーくらいの力を出せるようになった。だが実際にレースに出た経験はないため、テイオーのサポートを必要としており、知識はクレナイ。経験はテイオーのコンビでトレーニングの指導をすることになった。今でこそマックイーンとルドルフもクレナイの下にいるが、いつか彼女たちが自分のチームを持ったら、テイオーと二人で指導していくことになるのだろうと思っている。

 

キタサンブラックとサトノダイヤモンド。この二人はクレナイが目覚めた後も頻繁にトレセン学園に足を運び、クレナイのお見舞いをしていた。それもあり、また二人がレースに出るウマ娘を目指していたこともあり、内々にトレーニングをクレナイ達に付けてもらい、長期休暇の時はトレセン学園に泊まり込んでの合宿も行った。そのため学園の生徒やトレーナーからは既にチームアリアのウマ娘として認識されているくらいである。この春正式に入学を果たし、ここから四人の指導でさらに力をつけ、レースに出ることになるだろう。

 

「さてさて、普通に歓迎会を開くのもいいんですけども、ここは私達。ウマ娘流の歓迎会がいいのではと思いまして」

「二人はもう着替えているし、先にいつものコースに行ってて。ボク達もすぐに行くから」

「「はい、わかりました」」

 

トレーニングコースで待つ二人。

「歓迎会って何やるんだろうね、ダイヤちゃん」

「わかんないけど・・・でもあの人たちだし、すごいことやってくれそうじゃないかな、キタちゃん」

そんな話をしていると、レース場の入り口から四人の姿が。

「この雰囲気も久しぶりだな」

「まあ、ケガをしてからはレースすることもありませんでしたし」

「二人とも喜んでくれるかな?」

「まあ、驚いてくれるのは間違いなんじゃないかしら?」

キタサトが目を見開く。

白地に青の勝負服を着たトウカイテイオー。黒を基調とした勝負服のメジロマックイーン。軍服に似たデザインの勝負服はシンボリルドルフ。最後に、紅に金色の着物を模した服を着ているクレナイ。これは彼女の着るはずだった勝負服。長年しまわれていたが、ついに日の目を浴びることとなった。

「みなさん、それは・・・?」

ダイヤの疑問にクレナイが答える。

「これが私たち流の歓迎会。今まで一度もあなた達と本気の勝負をしたことが無かったから、ここらで一度、ね」

その言葉にキタサトの顔がぱぁっと明るくなる。

「キタちゃん、ようやく一緒に走れるね」

「はい、負けませんよ、テイオーさん」

「ダイヤさんとも、初めてですわね」

「はい、マックイーンさん。あこがれの人と勝負なんて、楽しみです」

そこでクレナイが手を叩く。

「それじゃ行くわよ。芝2400m。新入生の二人が内枠ね。位置について」

内側からキタサンブラック、サトノダイヤモンド、トウカイテイオー、メジロマックイーン、シンボリルドルフ、クレナイの順に並ぶ。クレナイが手に持ったコインを上に弾く。

そしてコインが落ちると同時に全員がスタート。

「速い!?」

「っ!!」

トレーナー組のスタートダッシュに少し遅れるキタサト。でもまだまだ伸びる体を精一杯に動かしてトレーナー組に追いすがる。先頭からクレナイ、マックイーン、ルドルフ、テイオー、キタサン、ダイヤモンドの順でコーナーを曲がる。

そして最後の直線。

「私は、最強の、皇帝だぁぁぁぁ!!!」

「ボクは皇帝を超える帝王だああああああ!」

「テイオー、あなたには負けません!!!」

「楽しいわねぇ♪ あと、すこしっ!!!」

「私は、テイオーさんを超える!!!!」

「マックイーンさん、勝負です!!!」

後ろからすごい勢いで追い上げるキタサンと、そこから逃げようとスパートをかけるトレーナー組。だが、引退したのもあってか、最後の最後に追いつかれ、皆が横一列に並ぶ。

「「「「「「だあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」

そのまま横一列でゴールを駆け抜ける。

 

桜舞う4月のターフ。そこに集まった6人は、これからもトレーナーとして、そして走るウマ娘として、明るい未来を駆けていく。




最後なのでからっからです。

これで本編は完結ですが、もう1話だけ、おまけをつけたいと思います。
でもこれだけは先に告げさせてください。

ここまでの読んでいただき、ありがとうございました。
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