その日、すべてを思い出した。
いかにボクが馬鹿で、無能で、どうしようもないくずな存在かを思い知らされた。
大事な幼馴染をほっぽり出して、なにをやっていたのかと。
「はぁ、これで目標もぜーんぶなくなっちゃったなぁ。明日は何してすごせばいいんだろうなぁ」
ボク、トウカイテイオーが三度目の骨折をして早数日。スピカへは脱退届を出して、みんなに挨拶もしてきた。まあ、挨拶するつもりはなかったんだけど、みんないたからね。
それから何日か遊んでみたけど、一人じゃなんか詰まんないし、時間が長く感じられる。
だから、カイチョーのところに行ったんだよね。それが、すべてを知る第一歩だった。
カイチョーは、すごく疲れた顔をしていた。数年前からそんな感じだったけど、ここ数日は特にひどい。あんまり寝れてないのか目の下に隈はできてるし、なんかやつれてきてるし。副カイチョーのエアグルーヴに聞いても、教えてくれなかった。簡単に教えちゃいけないことだって。
それで、そんな会長のお手伝いならできるかもと言って、生徒会室を訪ねたんだけど、そのカイチョーにあることを聞かれた。
「なあ、テイオー。君はクレナイというウマ娘を知っているか?」
聞き覚えがあるようなないような。なんかのどのあたりでつっかえてる。
「・・・覚えていないのか?」
なんか思い出せない。それを素直に告げるととてもびっくりした顔をされた。
「そうか・・・そうか・・・。これでは彼女も報われんな」
そういったカイチョーに何のことか説明を求めると、ついてこいと言われた。彼女の顔を見れば思い出すだろうと。
そこから校舎の外に出て、着いた先は離れたところにあるプレハブだった。聞くところによると、そこはもともとあるチームのルームだったが、そこがなくなった後、あるウマ娘がトレーニングのためにと借りたらしい。
その中に入りると、居間の部分に一つベッドが置かれていた。そこには一人誰かが横になって寝ているみたいだった。
その彼女の顔を見た瞬間、ボクはすべてを思い出した。
「・・・レイ・・・」
そう、その顔こそ、ボクが小学校の時、ボクが走ってレイがトレーナーになると、そう約束した幼馴染のウマ娘姿だった。
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それからカイチョーに話を聞いた。ボクがリギルに勧誘されて、沖野トレーナーにスカウトされても受けずふらふらしていたころ、レイは忙しくトレーナーになるために突き進んでいたと。ボクのトレーニングがいつでもできるように、部屋や器具まで用意していたと。そうしてあとはボクをスカウトするだけというタイミングで、ボクがスピカに入ってしまいそれでレイが壊れた。そしてオーバーワークをしちゃったレイは完全に体を壊し、もう再起なんか絶対できないらしい。あの状況から考えて、一週間ずっと、昏睡するまでトレーニングを続けていたんじゃないかって状況分析も出たらしい。
ほんと、ボクは何をやっていたんだろう。幼馴染との約束なんかすっかり忘れちゃって、約束を無視して勝手にチームに入って走って。ちゃんとごめんって声をレイにかけなきゃいけなかったのにそんなこともせずにチームのみんなにありがとうって言って、マックイーンにどうやって伝えればなんてこと考えて。みんなよりも前に、ごめんって謝らないといけない親友がいたのに。ううん、もう親友でもないか。親友は、ボクが自分で壊しちゃった。これでレイの親友だなんて、おこがましいにもほどがある。
「テイオー、君は手伝いをしに私のとこに来たといったな。それであれば、彼女の世話を頼む。私がいくら声をかけても、彼女の意識が戻る気配はなかった。だが、幼馴染の君なら、奇跡があるかもしれない」
カイチョーにそう言われ、頷くこともできなかったけど、無理矢理カイチョーにこの部屋の鍵を渡されてたボクは、カイチョーの代わりにレイの世話をこれからすることになった。カイチョーは毎日レイの世話をしていたけど、そうしていると自分の采配のミスを実感して、それにいつになっても起きないレイがつらくて最近ほとんど寝れないらしい。だから、半分だけでもいいから手伝ってほしいと。
それは、カイチョーの心と同じように、ボクの心を真っ黒に染め上げていくことになった。でも、それでもいいかなと思う。だって、レイを壊したのはボクなんだから、その報いは受けなきゃいけない。これが彼女への懺悔になるなら。そう思いながら、ボクのレイを介護する生活が始まった。