名前の知らないウマ娘さん   作:小鳥遊 小佳夏

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最後のライブ

「ねえちょっと、最近テイオーがなんかおかしいんだけど」

発端はダイワスカーレットが言ったその一言だった。

テイオーのやつが骨折して走れなくなってしばらく。スピカを脱退した後はどうしてもすれ違い、あたしはもうしばらくテイオーに会ってない。特に放課後は姿を見ないしな。そんなある日、スカーレットのやつがなんかよくわからないテイオーの近況を届けてきた。

「スカーレット、なんかおかしいって何なんだよ」

「ついさっき、テイオーとすれ違ったときのことなんだけど・・・。いくらテイオーって呼んでも返事がなかったのよね。しかも変にサイズの大きい制服を着て」

「あ、それなら私も見たぜ」

会話に入ってくるのはウオッカ。ウオッカのやつも何かを見たらしい。

「ちょうど会長とテイオーが話しているときなんだけどさ。テイオー、会長に「クレナイ」って呼ばれてたんだよな。しかも話し方もいつもと違っておしとやかって感じだった」

「テイオーのやつがおしとやかって、あいつ何か悪いものでも食べたか?」

「それはテイオーに悪いんじゃないか? スペじゃあるまいし」

「それはどういうことですか?」

あたしがそれでからかうと、スペシャルウィークがジト目でこっちを見てくる。いや、変なもの食べそうなウマ娘ナンバースリーに入りそうじゃん? スペのやつって。

「でも、確かにテイオーさん、なんか変ですよね・・・。走れなくなったのがつらかったんでしょうか・・・」

まあ、最近テイオーに起こったイベントなんて、それくらいしかないもんなぁ。

「最後に、何か大きいことやらせてあげられないかなぁ」

ウオッカがそうつぶやく。

「あ、それいいですね!」

「そうね、あんたにしてはいいアイデアじゃない?」

大きいこと・・・か? おおきいこと、ねぇ。

「ではでは、最後に引退ライブやらせてあげる、というのはどうでしょうか」

「お、それいいんじゃないか?!」

「そうね、それなら走れなくても、最後の大舞台を作ってあげられる!」

スペシャルウィークの提案に、ウオッカとダイワスカーレットが乗る。

でも、なんか違和感があるんだよなぁ。あのテイオーが、こんな時間差でおかしくなるなんてことあるんだろうか。それに、最近の放課後どこかに行っているっていうのもなーんかひっかかる。あたしのゴルシちゃんレーダーがなーんか違和感をささやいてる。

「なあ、トレーナー。少し席外すわ。調べもの終わったら戻ってくっからよ」

そう部屋の隅で何かの作業をしてたトレーナーに告げて部屋を出る。ま、こうもやもやしたことは解消しないと気持ちよく過ごせないし、マックイーンにいたずらも吹っ掛けられないしな。

 

え、今の話にマックイーンがいなかったけど何してるかって?

あいつはトレーニング。テイオーに何があっても、いつか帰ってくるだろうから、それに備えて鍛えるんだとさ。ほんと、信頼してるってのは青春みたいでいいねぇ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・・・・・・・。本当、なのか・・・」

「ああ、今言ったのはすべて本当だ」

あれからテイオーのことを調べ始めて数日。最終的に生徒会長であるシンボリルドルフにたどり着いた。今は療養しているルドルフだが、それだけに簡単に話しかけることができた。それで今のテイオーの状態について聞くと、あっさりと答えが返ってきた。

だが、それはあまりにも重すぎる答えだった。そうか、確かにこれならテイオーが壊れるのもうなずける。

「しかし、まずいな・・・」

あたしはルドルフにライブの話をすると、ルドルフが絶望に沈んだ顔をした。この話、もう生徒会を通じて許可が下りている。

「許可が下りているのか・・・。エアグルーヴの決済だろうな。彼女には何も伝えてなかったからな・・・。そうか、私は何かすれば間違え、何もしなくても後悔することになるのか・・・」

完全に沈み込んだ空気の中で全ての話を聞いたアタシは、そのままでトレーナーを強襲。その話をトレーナーにだけはした。

「そうか・・・そんなことが」

「ああ、あそこでライブの話は止めるべきだった。あたしのミスだ」

「いや、その話を後押ししたのは俺も同じだ。知らなかったは良いわけにもならない。二人とも同罪だよ」

沖野トレーナーと一緒に沈み込む。こいつはウマ娘と同じ目線で居てくれるやつだからな。こいつにだけは伝えておきたいと思ったんだ。まあこれを伝えたうえで一つ決めなきゃいけないことがある。

「で、だ。ライブ、どうする?」

トレーナーは深く考え込んで、結論を出す。

「今更止めるわけにもいかんだろう。テイオーも最初は嫌がっていたらしいが、他のメンバーがしつこく迫ったせいで頷いている。ここで今更やめるなんては言えんだろう」

「お前の顔はやりたくないって言ってるが? まあ私も同じ気持ちだが」

「そりゃ、今すぐにでも中止したいさ。でも、こんな話広めるわけにもいかない以上、辞める理由がない。まあでも、ありがとうな。この話を調べて俺にしてくれて」

「そりゃ、お前はあたしたちのトレーナーだからな。それに、あんたは知らないより知っていたほうが一番いいと思うからな」

「ほんと、いいやつだよな、お前は」

あたしからすると、こいつもいいやつなんだがな。

にしても、あたしたちは最悪の選択肢を選んだ気がしてならない。このまま何事もなく終わってくれればよいのだが。テイオーのことを案ずるとともに、そんな思いであたしとトレーナーの心が一つになった。




マックイーンを書き忘れていたので、追加しました。
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