男子高校生冒険者の日常   作:minmin

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あんまりご都合主義じゃない、異世界転移したのに「リアル」な男子高校生の日常をのんびり書いていきます。



男子高校生、冒険者として登録する。


男子高校生冒険者の登録

「異世界なう。冒険者ギルド前なう。って呟きてー」

 

 

 

 俺、坂本悠一17歳。今、冒険者ギルドの前にいるの。……いや、これはメリーさんか。TS、女体化を否定はしないけど俺は好きじゃない。好きじゃない、というか抜けない。トゥイッターなんてないから、せめて脳内で実況でもしてみようか。

 

 

 

「なんだよ、なうって。そんなの死語……じゃねえけど。使ってるの、なんとかクリニックの院長くらいじゃね?」

 

 

 

 今ツッコミ入れたのが小林健太。通称コバ。福岡に住んでたらしい。

 

 

 

「どうなんだろうね。ちょっと前、~なうに使っていいよ、とか流行ってなかった?」

 

 

 

 こっちは佐藤尊。通称ソン。ほんとうはタケルなんだけど、刑事ドラマで同じ字でソンって呼ばれてる奴がいたからソン。あとちょっとイケメンでムカつくからソン。埼玉に住んでたらしい。何もない田舎だよとか言ってたけどうっせーよ。関東圏のイメージする田舎と、こちとら日本地図に書き忘れる奴がいるくらいの田舎の四国様の田舎とは全然違うんだよなめんなコラ。

 

 

 

 特に何もした覚えがない。クラスに美少女やイケメンが転校してきたことも、突然異能に目覚めたり、実は特殊な血筋だったり偉人の生まれ変わりだったりすることもない。勿論トラックに跳ねられたり、跳ねられそうな誰かを助けてもいない。3人とも初対面だし、共通点なんて高校生でタメってことくらいしかない。なのに、ある日部屋でいつも通り寝たと思ったら、起きたら異世界だった。な、何を言っているのかわからねーとは思うが安心しろ、俺もわからない。

 

 

 

 偶然通りかかって助けてくれた酪農家の爺さんが言うには、俺たちみたいな異世界人が突然現れるのは「この世界ではたまにあること」らしい。子孫も大勢いるから、イトーだのサトーだのいう名字もそこそこいるんだとか。そのまま色々とこの世界について説明してくれて、ついでに暫く衣食住の世話までしてくれた。マジ感謝。

 

 ソンは数日経っても「だ、大丈夫かな?いきなり売られたり殺されたりしないかな?」つっておどおどしてたけど、俺とコバの意見は世話にならなきゃどうせ野垂れ死ぬだけだってことで一致していた。着の身着のままで異世界にポン、と放り出されて自力で生きていけるなんてのは漫画かラノベの中だけだ。多分数時間は目覚めた森の中にいたと思うんだが、食料調達したり、火を起こしたりできる気なんてこれっぽっちもしなかったもんな。(ちなみに3人ともいつのまにか制服を着ていて、それ以外は何も持ってなかった)

 

 

 

 そんなこんなで多分3ヶ月くらい薪割りだの掃除だのを手伝いつつ飯を食わせてもらって、今日牛乳を届けにいくついでに冒険者登録をしてきたらいい、って勧められて馬車に乗ってこのブレガストの街まで来たわけなんだが……うん、我ながら文才あるんじゃね?

 

 

 

「おい、なにボーッと突っ立ってんだよ。さっさと行くべ」

 

 

 

 背中をバシン、と叩いてズカズカギルドの中に入っていくコバ。もうちょっと感慨に浸るとかないのかね。つーか背中痛え。ソンはちょっとビクビクしながらコバにくっついてた。ったく。

 

 

 

 中に入ると、なんつーか思ったより普通。ほとんど木造だけど、役所とか銀行の受付みたいなのが正面にあって、そこに……食堂?居酒屋?みたいなのが横にくっついてる感じ。フードコートみたいな?ふーん、なんてキョロキョロ見てたらコバ(と後ろにくっついたまんまのソン)はもう受付で話してた。あいつほんっと図太いのな。

 

 

 

「お連れさんですか?では貴方もこちらご確認をお願いします」

 

 

 

 パーペキな営業スマイルで紙渡してくれたのは美人のお姉さん!……じゃなくて多分30代くらいのおばちゃん。ついでに言うとぽっちゃりしてる。夢、ブロークン。

 

 ざっと読むと(何故だか読み書きは最初からできてた。ついでに言うと会話も。どう見ても読んでる文字は日本語でも英語でもないのに、読んだり書こうとすると脳内で勝手に日本語になる)多分誓約書とか契約書みたいな感じ。利用規約に同意しますか?ってアレ。ちなみに、俺はまともに読んだこと1度もない。ハーイ、同じ人手上げてー。ダイジョブ、オニーサンオコラナイカラ。

 

 

 

「んー……とりあえずサインして問題ないかな。要するに、依頼主とのトラブルは自己責任のものと、ギルドが責任を持つものの両方があるよ。自己責任の依頼も、依頼書と冒険者登録票を役場に提示すれば公平に裁いてもらえるよ、ってことみたい。あとはまあ、色々危険とかはあるけど原則自己責任だよってことみたいだね」

 

 

 

 めんたまをギョロギョロ動かしながらソンが言う。そういや速読できるとか言ってたっけ。つーかもう内容全部把握したのかよはえーなおい。

 

 

 

「内容をご確認の上、同意して登録するようでしたらこちらに登録名の記入とサインをお願いします」

 

 

 

「登録名?本名じゃなくてもいい、っつーこと?」

 

 

 

 渡された紙を見ると、確かに本名の記入欄とは別に、冒険者名記入欄がある。

 

 

 

「はい、魔法使いの方の中には、本名を知られてしまうと不都合のある方もいらっしゃいますから。ただ、様々な不正防止の観点から、1度登録すると滅多なことでは変更はできませんのでご注意ください。…………これはお節介かもしれませんが、あまり奇抜なお名前は後々後悔される方が多いので、おやめになったほうがよろしいかと」

 

 

 

 んんん?さっきまで営業スマイルだったおばちゃん、なーんかやけに真剣な顔……?

 

 

 

「そうですね、今まで変更を申請されて却下された方々のお名前だと……お名前の前に『勇者』って付けられた方とか」

 

 

 

 あ、コバの肩がピクって動いた。

 

 

 

「大賢者、大魔道士、聖騎士、漆黒の、白銀、闇の、光の……辺りが定番でしょうか。大体数十日で後悔されて変更を希望される方が多いですね」

 

 

 

 おばちゃんが例を挙げる度にコバがピクピク反応して、最後にはブルブル震えだした……うん、おばちゃん、見事なオーバーキル。後ろからこっそり覗くと、冒険者名の欄に『漆黒の戦士ケンタ』ってバッチリ書いてあった。ポン、と優しく肩を叩いてやる。

 

 

 

「俺は良いと思うぜ?漆黒の戦士ケンタくぅん?」

 

 

 

「うっせぇわ!!!!!」

 

 

 

 慈愛に満ちた笑みで言ってやったのに、怒鳴られてしまった。解せぬ。

 

 

 

 




こんな感じのお話がのんびり続く予定です。

次回『男子高校生冒険者の約束』
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