絶対に寝ないドクターvs絶対に寝かせるオペレーターズ   作:8OROCHI丸

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なんにも釈明できません………
これ書き始めたのどうやら4月らしいんですよね
何をやってたんでしょうね


きっと、彼方に

ドクターは、……いや、”元”ドクターは、宛もなく荒野を彷徨っていた。

 

自由というものは、真に自由な選択を得られてきた者にしかわからない。彼は常にロドスの為に生きてきた、そこに自由意志は無かった。だから、何をすればいいのか、何をしていいのか、まるでわからない。

 

今、この場における彼は、産まれたての赤子にも等しい行動権しか持っていなかったのだ。

 

「……自由というものは、果たして本当に”自由”なのだろうか」

「私は今、ありとあらゆる(しがらみ)から解放され、自由を得たと思っていた」

「…しかし、私は何を求めている?」

「行く宛も無い、ただの浮浪者に成り下がった私は、一体何をすればいい?」

 

嘗てのドクター(もうひとりの私)であれば、悩むことのない課題だったのだろう。……いや、もうひとりの私であれば、そもそもロドスを離れるという行為すら頭の中には浮かんでいなかったのだろうな、と思案する。

 

「……待てよ?」

 

私が記憶を失った原因は未だに不明だが、私が記憶を失った事柄に深く結びついている場所がある。

 

「ならば―」

 

「―どこに行くんだい?ドクター」

 

「……モスティマ」

 

堕天使モスティマ。

なぜ、ここにモスティマがいるのか……。

 

「…ドクターでなくなった私が、君にすべてを打ち明ける必要はない、そうだろう?」

 

「そうだろうね。だけど、それじゃ私が納得できないかな。ドクターがどうしてロドスから逃げ出そうと思ったのか、それは私にもわからない。…けど、君をこのままみすみす行かせるわけにはいかないね」

 

「…………、モスティマ。『私に関わり引き留めようとしたことは忘れろ』」

 

「………っ、う……っ!!へぇ、…それが、君のアーツかい?…ふぅ、危ない危ない、これは強力だね」

 

「…最後通告だ。モスティマ、全て無かったことにして、帰ってくれ。……でなければ、私は―」

 

―ワタシは、キミを殺さなければならなくなってしまう

 

 

……きっと、ドクターがそれを言わなかったのは、せめてもの情けだったのかもしれない。

ありとあらゆる事象を自分に都合良く書き換える能力の代償として、[身体の85%が源石(オリジニウム)と同化ないし置換されている]今の状況で、正しい判断なぞ下せるわけもなかっただろう。

身体が源石(オリジニウム)そのものになっていく感覚というものが、果たしてどれほどの人に理解してもらえるのか…。

 

―呼んでいる

 

―呼んでいる

 

―ワタシを呼ぶ声がする

 

「……ああ、なんだ、そんな簡単なことだったのか」

 

「…ドクター?」

 

 

「さよならだ、モスティマ」

 

「!!?」

 

………ドクターは消えた。

この場から、跡形もなく、瞬時に。

 

「これは、一体……!?」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「総員、なんとしてでもドクターを探し出せ!!今彼に消えられては不味い!!」

 

ケルシーは焦っていた。

ようやく、ようやく目処が立ったというのに。

 

「全ての捜索行為は私の名の下に許可する!!責任は私が後でいくらでも負う!!何をしてもいい!!」

 

「ケルシー女史。緊急事態である故、我らカランドは独自の情報網で探すが構わんか?」

 

「それで見つかるなら御の字だ!シルバーアッシュ、頼んだぞ!!!」

 

「承知した。盟友は必ず見つけ出して見せる!」

 

 

「探偵の出番なのだ!!いっくのだー!!!」

 

 

……いや、ケルシーだけではない。

多かれ少なかれ、ロドスにいるということは、ドクターに恩義を感じている人が多いのだ。

 

「レッド、ドクター、失いたく、ない」

 

「…へぇ、キミとは珍しく気が合うねぇ。ボクの狂気を肯定してくれる彼は、きっとこの先見つからないからねぇ、アッハハハ!!」

 

 

それぞれ思惑はあれど、皆考えることは一つ。

 

ードクターを、失いたくない。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「……此処に、きっと」

 

すべての答えは、此処にある。

そんな予感を、疑うことはない。

 

 

始まりの地。チェルノボーグ跡地。

天災から始まり、レユニオンの暴動、更にはタルラとの死闘によって移動都市としての機能を完全に失った廃墟。

 

ここに来た目的はただ一つ。

―石棺。ただそれだけ。

 

元ドクターの天才的な頭脳で導き出した”仮説”が本当のことであるとすれば、この石棺に全てが隠されているはず。

 

石棺を開けようとして…

 

 

「…ドクターっ!!!!」

 

…ああ、忌々しい。

よりにもよって、このタイミングとはな。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ドクターっ!!!!!」

 

見つけた。

私たちの希望!

 

「ドクター!探しましたよ!!帰りましょう!!!ロドスへ!!」

 

 

「…ああ、アーミヤ。キミは、賢い子だな。あぁ、とても賢い。……その賢さが今は、とても煩わしく感じてしまうよ」

 

「…ド、ドクター?」

 

「…ハ、ハ、ハ、ハハハハハ……。大方、ケルシーの伝手だろう。この気配は、カランド…、ペンギン急便…………、ああ、アビサルも、S.W.E.E.Pもか。全く、揃いも揃ってご苦労さまと労いたいね。」

 

 

様子が、おかしい。

いつものドクターじゃない。

 

「ドクター…?もう、いいんです。帰りましょう、みなさんが待ってます。お願いですから」

 

「…いいや。その願いだけは、今は聞けない。賢いアーミヤであれば、分かるだろう?」

 

何故?

どうして、ドクターは私たちを拒むのですか?

 

「…なぁ、ケルシー。満足か?君が創り出した幻想の世界は、君にとって満ち足りるに値するものだったのか?」

 

「…………、ドクター。君の妄言に付き合っている暇はない。これだけの騒ぎを起こしたんだ。それ相応の処罰が下るのは覚悟しているんだろうな??」

 

……そうだ、

ケルシー先生なら、きっと…!

 

 

 

「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ……。妄言?笑止だぞ、ケルシー。ワタシをこうしたのは他ならぬキミのはずだ。まるで私が狂っているかのような印象操作はやめてもらおうか?」

 

ケルシーの目が、ほんの僅かに左右に揺れる。

……ああ、動揺したな。

()()()()()()()()()()()()()()

 

「目を揺らしたな?ワタシにこう言われて、思い当たる節があるからそのように動揺するんだ、キミもまだまだ未熟だなぁ?」

 

「…ドクター、いい加減にしろ。これ以上お前に付き合う暇はないと言っているだろう。今すぐその喧しい口を閉じろ。でなければ」

 

「でなければ何だ?ワタシを殺すか?やってみせろよケルシー。お前に出来るならな」

 

 

膠着。

まるで動かない空気。

 

「なぁ、ケルシー()()?どんな気分だ?ワタシは全てを理解したぞ。キミが何をしようとしたか、何をしたかもな」

 

「…………めろ」

 

「あぁ、アーミヤにはわからんか。教えてあげよう。ケルシーはな」

 

「……やめろ」

 

「ケルシーはな、ワタシの主人格に…」

 

「やめろと言っているだろう!!!Mon3tr!!!!」

 

ドガァァァァァァァァン!!!!!!

 

さしものアーミヤも、ケルシーがいきなりドクターを攻撃するとは思わなかったのだろう。反応が一呼吸遅れた。

 

「ケルシー先生!!?」

 

「奴の言葉に耳を貸すなアーミヤ!!勝手な憶測に形成された下らん妄言に過ぎん!!!絶対に聞くんじゃない!!」

 

 

「ハ、ハ、ハ………まだ、ワタシが間違っていると言うんだな、キミは」

 

ガラガラガラ、と崩れる瓦礫。

そこから出てくる()()のドクター。

 

「アーミヤ、ケルシーはな」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 

 

 

 

ケルシーは、崩れ落ちた。




こっからハッピーエンドまで持ってけんのかな俺

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