絶対に寝ないドクターvs絶対に寝かせるオペレーターズ 作:8OROCHI丸
私は思えばずっとこうだった。
チェルノボーグから救出されてからずっと。
私は個人の考えのもと行動を起こしていない。ほぼすべてがロドスにとって、という考えで行動している。
私の自由意志はどこだ?ただただお飾りの役職に身を置いているだけじゃないか。
別にロドスのために、という考えが嫌いなわけではない。むしろ、こんな私を救い出してくれたことに感謝してもしきれないほどなのだから。ロドスの利益になりうることは可能な限りやろうとしたし、結果もそれなりに伴っては来た。
しかし、実態はなんだ?オペレーターを死地に追いやり、安全圏からのうのうと指揮をしているだけじゃないか。戦闘で精神的苦痛を受けたオペレーターのカウンセリング?それに感化されたオペレーターがより私を慕うようになる?とんだマッチポンプだ、くだらない。
『いい加減、認めちまえよ』
――五月蝿い
『お前は、
――五月蝿い、五月蝿い!
『アーミヤとケルシーの会話を聞いただろう?もうお前は用済みなんだよ』
――違う!違う!!
『何が違う?記憶も戻せず、かつての栄光に縋り続けるオペレーターの期待に応えることもせず、ただ生き続けているだけの木偶の坊が、今になってようやく棄てられるだけの話だろう』
――黙れ、お前は誰だ。一体何様のつもりだ。
『私はお前だ。お前のその不安定な精神が生んだもう一人の自分。表に出ない二重人格。……お前の、唯一の理解者だ』
――ちがう、私は私だ。お前など私ではない。
『そうだ。お前はお前で、私は私だ。だが私はお前でもあるし、お前は私でもある。私は私でないかもしれないし、お前はお前でないかもしれない。だがそれを決めるのは誰だ?お前か?私か?』
――違う……ちがう………チガウ……。
◆
「…ター、ドクター。おい、ドクター、聞いてるのか?」
「っ……、…すまない、エンカク、少し考え事をしていたようだ」
「そんな生易しいもんを考えてるような表情じゃ無かったがな。何があった?お前らしくもない」
「…何も、無いさ。そう、何も、無いんだ……」
「…フン。時間も忘れて考えるような事が、何もないで済ませることができると思っているのなら、俺はお前を買いかぶりすぎているだけなのかもしれんな」
「……あ」
「いつになっても訓練場に来ないからわざわざ出向いてやったんだ。それ相応の説明はしてもらうぞ?」
「……済まなかった。だが、これは本当にエンカクではどうしようもない事なんだ。私自身が、私自身と向き合って解決しなければならない事だ」
「……まぁ、いい。そんな顔では、何方にせよ今日の予定はなしだ。何を考えているのかは知らんが、お前がそんな顔をしているようでは下の者に示しがつかんぞ」
「……あぁ、わかっている」
「どうだかな」
「済まなかった。この埋め合わせは後日必ずさせてもらうよ」
◆
……最近、どうにも奴の調子が優れてないように思えて仕方がない。なぜ俺がこんなことを考えねばならんのだ…。
「……ほぉ、エンカクか。今日は一人か?」
「…これはこれは、将軍様じゃあないか。なにか用か?」
「なに、普段この時間であれば、ドクターと共にいるはずだったが、珍しく一人だったのでな」
「…それだけか?」
「何か、あったのか?」
「…彼奴は、何もないと言っていた。……あの思い詰めたような表情を、俺は知っている。戦場で、何度も見たからな。……あれは、追い詰められて、追い詰められきって、どうしようもなくなりかけている顔だ」
「……ふむ。ドクターが斯様な表情をするまでに、何か精神的な苦痛を断続的に受け続けている、と?」
「おそらくはそうだろうな。何について悩んでいるかまでは俺も知らん。……ただ、欠かさず自ら続けていた俺との模擬戦を忘れるまでに考え込むようなことだ。確実に、何かがある」
「……君も、丸くなったものだな。嘗ての君であれば、模擬戦などという遊戯はくだらぬと言いそうなものであったが」
「人は如何様にでも変わるものだ、将軍。お前とて、ロドスに来てから変わった事の一つや二つあるだろう?」
「…フッ、そうだな…」
「……どうせここに来たんだ、死会おうぜ将軍」
「…良かろう。私も君と闘ってみたかったところだ。お手柔らかに頼むとしよう」
◆
「……ド、ドクター、宜しいですか?」
「…ああ、アーミヤか、構わないよ。どうした?」
「…そ、そのですね……」
視線が明後日の方向を向いている。
明らかに落ち着いていない。
「……じ、実は……」
「…実は?」
「…え、ええと、その……」
「…キミは踏ん切りがつかないのだな、アーミヤ」
「ケ、ケルシー先生……」
「全く、ドクターから仕事を取り上げたのは自分だからと、自主的にやるのではなかったか?」
「………すみません」
「あのー、私、状況、掴めない。おーけー?」
「どうにもアーミヤは君の前だとすんなりとものを言えないようだ。代わりに私が言うが、いいな?」
「…はい、すみません先生」
「ではアーミヤから許可も降りたことだし、単刀直入に言わせてもらおう」
「………何かな」
「…そのだな、ここまでドクターに対して休むように言ってきたわけだが…。手が足りない」
「………?」
「…つまり、少々早いが、君に仕事に戻ってもらわざるを得ない状況になっているということだ。」
「……ええと、仕事が追いついてない?」
「そういうことだ。今まで君一人がほぼ全ての書類作業をしていた結果、君が仕事をしなくなって数日経ったが、数日で既に2週間以上の遅れが出ている。これは非常に由々しき事態だ」
「……私、一月先ぐらいまでの仕事やってなかった?」
「何故なら書類仕事ができるのが人事部と会計部、それからカランドの主とライン生命から来た二人程度しか居ないんだ。しかもライン生命から来た二人に関しては鉱石病のせいできっちりした時間を取れない。実質戦力になっているのがロドスの人員の1割未満だ」
「……えーっと……。仕事に戻るのは了承するんだけど、それ、まずくない?色々と」
「そう、非常にまずい。それもこれもドクターが大丈夫だからと言って散々仕事を押し付けたアーミヤの責任が大きい」
「………(申し訳無さで今にも泣きそう)」
「そこで、君に他オペレーターの教育の助力を頼みに来た。仕事ができる人員が増えれば、君が必要なくなり、私達としても助かる、引き受けてくれるか?」
「…………………ああ、わかった。協力しよう」
「そうか、ありがとう、では必要なことは伝えた。私はこれで失礼する」
「…わざわざ、伝えに来てくれて感謝するよ」
「あっ、…ド、ドクター、私も失礼しますね」
「ああ、お疲れ様、アーミヤ。……お疲れ様」
「…?なんで2回仰られたんですか?」
「…ああ、気にしなくていい。これからのことを考えるだけだ」
「そうですか…、では、お疲れ様でした!」
「………ああ」
◆
「……面と向かって、要らないと言われたか」
やはり、記憶のない私に、利用価値など無かったのだ。
必要な事。そう、ロドスから私を切り捨てるという重要な事を、わざわざケルシーとアーミヤは伝えに来た。オペレーターの育成の仕事とともに。
「……はは、人生とは、ままならないものだな。はっはっはっは………」
仕事は仕事だ。
与えられるものに対してはそれ相応の対価を示さなければならない。
私の最後の仕事だ。
◆
「…あの、ケルシー先生」
「どうした、アーミヤ」
「先程の、ドクターが必要ないというのは……?」
「ああ、ドクターだけに仕事を任せっきりにしてしまう状況が必要なくなるし、その分の時間をオペレーター達との交友に使ってもらえれば作戦立案もしやすくなるだろうから私としてもそっちのほうが助かる、という意味だったが?」
「……そうでしたか」
(ケルシー先生は明らかに言葉が足りていない………。ドクターが、変な勘違いを起こさなければいいんですけど…)
皆こんな駄文を見て面白いと思ってくれてるのかしら………
感謝しかない
それにしても、このドクター
ロドスのためを思って自分を切る気だぜ?
いい話だ。感動的だな。だが無意味だ(•‿•)