絶対に寝ないドクターvs絶対に寝かせるオペレーターズ   作:8OROCHI丸

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えー、深くは語りません、ええ(


停戦数日経過

あれから数日が経過した。

膨大な量の書類を処理しつつ、秘書に代わる代わる書類に関する注意などを口頭で伝えるなど、私にとってはかなり充実した生活であったことは明白である、と言おう。

 

…これが、私の最後の仕事になる、と。

誰にも言えない、言わない、言う必要がない。私は終ぞ、記憶を、経験を、思い出を、思い出すことは出来なかった。

 

私はがらくただ。自我をもつ事を許されなかった、ドクター(記憶にない誰か)として生きることを強いられた、哀れな人形。

 

私が居なくても、もう大丈夫。

私を慕ってくれる、私を尊敬してくれる、私を心配してくれる大切なオペレーター達を最後まで裏切ってしまう事になるが、きっと、彼ら彼女らなら乗り越えていける。

 

本物(偽物)になれなかった偽物(私自身)は、今日を以て私自身の手で処分するとしよう。

 

 

「…やぁ、見回りお疲れ様」

 

「ど、ドクター!?お、お疲れ様です!!」

 

「特に異常はないかい?何かあったらすぐにアーミヤや私達に知らせてくれて構わないからね」

 

「はっ!特に異常などはありません!ドクターは何用で此方まで?」

 

「…少し、外を歩きたくてね」

 

「……?でしたら、ハッチをお開け致しますよ?」

 

「すまない、そうしてくれると助かるな」

 

…ギギギ、と鈍い音を立てて、外出用のハッチが開く。

 

「……ありがとう、『君は私を外に出したことを綺麗サッパリ忘れ、そのままロドスを発艦させてくれ』て構わない」

 

「はっ!!了解いたしました!!お気をつけて!!」

 

ガゴン…と、閉まる。

閉まって、しまった。

 

「本日も異常なし!!」

 

 

……ロドスを、出た。

これは、私が、私のために、私の意思で、ロドスを離れた。

 

……私に残された時間は、あとどれくらいだろうか。

ここから、どこに行こうか。

ああ、私は、本当の意味での自由を手に入れたのだろうか。例えそれが、翼を持ちながら、飛び方を知らない、哀れな雛鳥であろうと。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ケルシー先生!!ドクターはどこですか!!?」

 

アーミヤが、ひどく焦燥した顔でケルシーに詰め寄る。

 

「なんだ、騒々しい。奴ならいつものように執務室にいるのではないか?」

 

「……居ないんです。執務室にも、自室にも、パフューマーさんの温室にも、ドクターが自発的に行きそうな処をくまなく探しましたが、どこにも居ないんです!!!」

 

「…何?」

 

流石のケルシーも、慌てたように立ち上がる。

 

《全艦通達。ドクターが消息不明。直ちに総力を上げて捜索せよ。繰り返す。ドクターが消息不明。直ちに総力を上げて捜索せ

よ。また、ドクターを最後に見かけたものは速やかに第二医務室へ来るように。以上》

 

 

「何故だ、何故誰一人ドクターを見ていない!!」

 

……ロドスにとって最悪だったのは、今日に限って、ドクターを見かけた人間が極少数しか居ないこと。その極少数の人間が任務で()()()()外出していたこと。入り口を見回っていた見張りが何者かによるアーツ攻撃によって記憶混濁状態になっていた事だろう。

 

「ドクターは見かけてませんよ、私が通した人はドクターではありませんでした。私が通したのは……、はて、何故、思い出せない。何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故ナゼナゼェェエエエェ?!?!????」

 

……錯乱した見張りは鎮静剤を投与された後、ベッドに拘束された。

 

「くそっ……!!何故だ、何処に行ったというのだドクター…!!!」

 

「ケルシー先生……、どうして、…どうしてですか……、ドクター………」

 

 

「ドクターが行方不明になったというのは本当か」

 

「ふ、フロストノヴァさん!?なにか心当たりが!?」

 

「…フン、あいつめ、本当に私以外に言っていないのか……」

 

「話せ、フロストノヴァ。どんな些細なことでも構わん、今わたしたちが欲して止まないのは情報だ」

 

〜〜〜

 

…あいつのアーツの効果は知っているか?そもそもアーツを持っている事自体を知っていたか?

知らないだろうな。これは私が救われたときに初めて知ったことだ、やつは私以外に話したことはないと言っていたが、まさかそれが真実であったとは思いもよらなかったな。

 

あいつのアーツは『未来改変』。本来未来で起こるべくして起こるはずだったことを強引に捻じ曲げ、自分の理想とする未来に作り変えるという最悪のものだ。

 

…顕著なのは私の生存だろう。やつは私がどう足掻いても死ぬしかないという未来を強引に捻じ曲げた。やつが心のなかで強く念じた、私に死んで欲しくない、という精神に作用したと話していたな。

 

………少なくとも、私は見回りをしていた人間にアーツを行使した、と考えるのが妥当だとは思うが。『ドクターがロドスの外へ出た』と伝える未来を捻じ曲げたんだろう。

 

未来を変える、という能力が並大抵の代償で済むとは思わん。そもそも、私を生かしておくのだってやつは満身創痍と言うのも生温いレベルのダメージを受けていた。当然だろう、死が確定している人間を生かすなど、死人を生き返らせるのと同等の禁忌にも等しい。

 

たしか、やつは体質的に寝れないのだったな?私が思うに、やつは記憶を無くす前、睡眠という大きな代償を払ったのではないか、と推測するが…。だとすれば、私を救った分、そして、見回りの人間にかけた分で一体どれほどの代償がやつに降り注いでいる?

 

未来改変の能力は絶対のようだ。現にドクターが外出したことを、今ここに至るまで誰も知らなかったわけだからな。

 

〜〜〜

 

「……だが、そうなると面倒になったな」

 

フロストノヴァは沈痛な面持ちでアーミヤとケルシーを見据える。

 

()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「「っ!!?」」

 

「朝なのか、昼なのか、はたまた今すぐなのか、それすらわかっていない状況だ。……どう探す?どう捉える?お前たちに明確なビジョンがあるか?」

 

「……現時点では、無い」

 

「だろうな。…大方、こうなる事も予想しなかった……、いや、予想()()()()()()()の間違いか?」

 

「…何が、言いたい」

 

「お前たちはいつまで、やつに理想を押し付けるつもりだったんだ?記憶を失い、嘗ての同胞の名前、顔、声、全てを失ってしまったやつに、お前たちは何を要求した?お前たちは嘗てのドクター(すでに失った理想)ばかり追い求め、今のドクター自身を見ていなかったのではないのか?」

 

「……」

 

ケルシーとアーミヤは、何も言えない。

正しくその通りだったからだ。

 

ドクターに記憶を取り戻してもらうことを第一に考えた。それがドクターにとっての幸せだと断じて疑わなかったからだ。

ドクターの為に考えた、考えた、()()()()()()()()()

 

彼自身のことを、何回見ただろうか?

彼自身のことを、何回考えただろうか?

 

後悔は、戻らない。戻れない。




はい大変申し訳ございませんでした。
えー、精神を病んで8月に実家に帰り、そのままなぁなぁで全く更新してませんでした。はい。

例の知り合いが更新したから僕も勇気を振り絞って更新しようと頑張ってみました。
おそらく今後とんでもないくらい不定期になる可能性が高いというか不定期になる可能性しかないというか何というか保険を書けさせてください()
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