狸寝入りのナーベラル   作:笹鍋

4 / 8
骨と入浴するナーベラル

 アインズは、ナザリック地下大墳墓の第九階層にある自らの私室、そこの備え付けのバスルームで、大量に湯が張られた巨大な浴槽の中に浸かり、()()()を待っていた。

 同じく第九階層にある大浴場、スパリゾートナザリックほどではないが、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のメンバーにそれぞれ与えられたプライベートルーム、その浴室は浩蕩たるものであった。大人が十人入ってもまだゆとりのあるリラクゼーションバスはジャグジー機能まで付いており、ユグドラシル時代はただの装飾に過ぎなかったこれらの存在は、現在その見た目通りの働きをしていた。

 存在しないはずの心臓がばくばくと動いているのをアインズは感じていた。普段ならば、三助の蒼玉の粘体(サファイア・スライム)である三吉君に骨の身体を這いずり回らせることで汚れを落としているアインズだが、今は彼はいない。ソリュシャンが嫉妬に駆られ、三吉君をどこかに隠してしまったことがあったが、今回はそうではない。主人と二人きりで、というのが彼女のたっての希望であったからだ。

 アインズが緊張のあまりその顎骨をぶくぶくと湯の中に沈めていると、バスルームと脱衣所を仕切る曇りガラスの引き戸が、がちゃり、と開く音がした。百レベルであるとはいえ、後衛の魔法詠唱者(マジック・キャスター)、それも死霊魔法に特化したネクロマンサーでしかないはずのアインズは、その瞬間本職の野伏(レンジャー)並みの探知能力を発揮していた。アインズはそちらに背を向ける格好であったが、誰が入って来たのかをその気配で理解した。

(どうしてこうなったんだ……)

 ナザリック地下大墳墓に生きる全ての者の忠誠を集める偉大な支配者は、遂にその頭蓋骨を完全に湯船の中に隠した。

 

 

 ナーベラルが()()を手に入れたのは、全くの偶然であった。

 外の世界で“冒険者ナーベ”として活動した記録をまとめるのは、優先順位の高い仕事のひとつだ。『漆黒』の活動には常にアインズも参加している訳ではない。モモンは別の依頼で遠出しているから、などと適当に理由をつけてナーベラルひとりで依頼をこなすことも少なくなかった。そうして彼女は得た知見や活動状況を、アインズに定期的に報告書という形で提出していた。そういった事務作業を行うとき、エ・ランテルの『黄金の輝き亭』よりも、ナザリックにある二人の姉と共用の自室で行うことをナーベラルは好んでいた。そちらの方が落ち着いて取り組めるような気がしていたのである。

 直近で受けた依頼を全て片付けたナーベラルは、そういった理由で今日もロイヤルスイートにある自らの使用人室に戻っていた。しかし、彼女が専用としているオフィスデスクの上に封蝋で閉じられた封筒を見つけたのは、全くの偶然であった。

「……何、これ」

 書類を脇に抱えたまま、ナーベラルがそれを手に取り不思議に思いながら開けると、中にあったのは一枚の小さなコットンペーパーであり、『第二回ナザリック地下大墳墓好き好きアインズ様守護者記念大オークション特別招待券』と見事な達筆で書かれていた。

 その文字を見た瞬間、ナーベラルは咄嗟に招待券を胸ポケットに仕舞った。すぐに周囲に誰もいないことを確認すると、震える手つきで再びそれを胸元から取り出し、いつもは怜悧そうな瞳を血眼にしてその書状の初めから読み始めた。

 そこには、『本来選ばれた者にしか列席を許されない『好き好きアインズ様大オークション』に今回限り特別に、貴殿の参加を許可する。ただし、このオークションの存在を口外することを禁ずる。もしこれを破れば、貴殿の参加権を直ちにはく奪し、また今後一切のオークションへの参加を禁止する』とやはり流麗な字で綴られていた。また、『好き好きアインズ様大オークション』とは何か、その定義から誕生の経緯まで事細かに書かれており、ナーベラルはいつだったかのプレアデス月例報告会で、ユリとシズがこの話をしていたことを思い出した。

 確か、二人は競売人の役を務めていたはずだ。壊滅的なネーミングのこのオークションは、アインズに何かをしてもらう権利を競り合うというものだったと記憶している。初めてこのオークションの存在を知った時は、至高の御方のご厚意を金銭によって競るなど不敬ではないのかと内心思っていたが、実際のところこの催しがどれだけ素晴らしいものなのかは理解していた。オークションに『出品』される権利は、どんなものでも構わないのだ。

 アインズと一緒にしたいこと、してもらいたいこと、想像できるその全てが実現可能となれば、興奮のあまり暴走するシモベも出てくるだろう。そういった者を抑え込むストッパーとして、姉たちはオークショニアに抜擢されたのだろうから。

(しかし、どうしてこんなものが?)

 招待状を置いていったのは、ルームメイトでオークションの進行役でもあるユリだろうか。しかしその理由が分からない。ではもうひとりのオークショニアであるシズか。いや、もっとありえないだろう。『極寒の視線』とも称される無機質な緑の瞳を持つあの妹が、このようなことをする動機がない。ならばやはりユリか。あの聡い姉は、妹が主人へ抱いている思慕の情を見抜いてこれを自分にくれたのだろうか。

 そこまで考えて、ナーベラルはこの誰何に意味がないことに気が付いた。誰がこれを置いていったにせよ、自分に『好き好きアインズ様大オークション』の参加権が与えられたことに変わりはない。それよりも、自分の分の出品をどのようなものにするか、そちらを考えるべきだ。

 ナーベラルは招待状を大事そうに懐に仕舞い込むと、上機嫌でアインズへの報告書を作り始めた。この招待状が、単にナーベラルの机の上に忘れ去られていただけで、彼女宛のものではないという可能性はナーベラルの頭にはなかった。

 

 

(なぜ、彼女がここに?)

『第二回ナザリック地下大墳墓好き好きアインズ様守護者記念大オークション』、その会場に現れたポニーテールの戦闘メイドの姿を見て、デミウルゴスははて、と疑問に思った。二回目となるこのイベントの予定された参加者リストは、前回と同様のメンバーとなっており、そこに彼女の名前はなかったはずだが。

 縦縞の入った赤いスーツをフォーマルに着こなした最上位悪魔(アーチデヴィル)は、基本的には職務に忠実なナーベラルがここに来た理由を推理していたが、その手に蝋で閉じられた手紙のようなものを握っているのを見て、事情を把握した。参加者と同様、やはり二回目もオークショニアとして選ばれたプレアデスの長姉の方を見やると、普段は見る者に知的な美女という印象を抱かせる眼鏡のメイドは、その顔を驚愕の色に染めた後、喜んでいるのか焦っているのか複雑な表情を浮かべていた。

(どうやら、()()にやったようではないみたいですね)

 ユリが妹を想うあまり、主人を慕うナーベラルにこっそりと招待状を渡したのかと思ったが、彼女の様子からするとまた別の事情があるらしい。苦い表情をしたユリが、デミウルゴスの方に深く頭を下げた。

「デミウルゴス様、申し訳ございません。……どうやら、私たちの自室に招待状を置いてきてしまっていたようです」

「ふふふ、ユリ、構わないとも。元々、このような至高の催しを我々階層守護者だけで独占する等あまりにも傲慢ではないか、という考えからあれを作ったんだからね。アルベドが納得しないだろうから、様子を見て少しずつ参加者を増やそうかと思っていたんだが……ナーベラルがどのようなものを『出品』するのか、興味がある。アルベドには私の方から説明しておきますよ」

(アインズ様はここ最近、ナーベラルを気に入っておられるご様子。『添い寝券』程度であれば、アインズ様も彼女にはお許しになられるかもしれません。これは、面白いことになりそうですね……)

 ナザリックきっての叡智を持つ忠臣は、くつくつと咽を鳴らすように笑った。

 

 

「今日の分はこんなものか」

 上がってきた書類に目を通しているふりをしながら、流れるようにハンコを押すだけの簡単な作業も、それが山と積みあがればアインズを疲労させるのに十分であった。一応、何点か適当に定めた書類をその日の目標として、理解すべく目を通してはいるのだが、アインズの頭では理解できない内容であることが殆どだ。したがって、最終的にはリズミカルにギルド長としての印を押すだけのマシーンと化しているのが常である。しかし、今日はアルベドが不在のため普段よりは気が楽であった。聞くところによると、何やらデミウルゴスが仕事の相談があると言って連れて行ったらしい。

 ようやく作業が終わり、アインズは一息ついた。そろそろ風呂に入るか、と思い立ち、傍に控えていたメイドに声をかける。

「――インクリメント」

「はっ」

 アインズが仕事をしていた決して短くない時間、ぴんと背筋を伸ばした直立の姿勢で全く微動だにしないままアインズに視線を注ぎ続けていたおかっぱ頭のメイドが、そう返事をする。

 まるで先程まで時間を止められていて、今この瞬間にそれが動き出したかのような振舞いである。アインズからすればこちらの方が余程機械じみていると思うのだが。

「私は風呂に行ってくる。三吉君とタオル類、それと着替え一式を持って来い」

「――アインズ様、その件に関してなのですが」

 内心、感情の分かりにくいメイドだな、と感じていたインクリメントが、珍しく言葉を濁すかのような言い方をしたので、アインズはおや、と思った。

「なんだ?」

「今日の御湯殿についてなのですが……こちらをお預かりしております」

 そう言って彼女が差し出したのは、一枚のカードだった。

「『アインズ様とお風呂券』?……ああ、そういえばもう『給料日』だったか」

 アインズはそれに見覚えがあった。以前アインズが階層守護者たちに自分の欲しいものを提示せよ、と命令したときにデミウルゴスが上げてきたものだ。どうやら、過去にウルベルトが『裸の付き合い』について語っていたのを耳にしていたらしく、彼にしては珍しいことを頼んできたな、と思ったのを覚えている。最初アインズは、それがアルベドの希望のものだと勘違いしたほどだ。

「またデミウルゴスか?ははっ、あいつも意外と可愛いところがあるじゃないか。よし、インクリメント。デミウルゴスに私の部屋に来い、と声をかけておけ。折角だ、偶には私の部屋にある風呂に入ってみようじゃないか」

(まだ使ったことはなかったけど、あそこも驚くくらい広いんだよなぁ。スパリゾートナザリックだと、他の者と鉢合わせてしまうかもしれないし、デミウルゴスもそれはきっと本望ではないだろう。自分の給金を使って得たものだ、横取りされるのは気分が悪いんじゃないか?それであれば、俺の部屋にあるバスルームを使おう。確かあいつは、日曜大工が趣味っていう設定だったっけ。どんなものを作っているのか、ひと風呂浴びながら聞いてみるのも悪くない)

 愉快な想像に気分を良くしたアインズは、鷹揚に笑いながら、自室へと向かうのであった。勘違いを正そうとメイドが後ろから呼び止める必死な声は、デミウルゴスとどんな話をしようか想像に花を咲かせているアインズには届いていなかった。

 

 

 アインズが至高の四十一人、そのひとりである死の超越者(オーバーロード)に与えられた部屋でデミウルゴスを待っていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

「入れ」

 部屋の主人が入室の許可を出すと、重厚な扉は音を立てることなく、静かにゆっくりと開いた。

「ようやく来たか、待っていたぞデミ――?!」

 アインズの私室に緊張した面持ちで入ってきたのは、ビジネスマンか弁護士を彷彿とさせる姿の丸眼鏡の悪魔ではなかった。

 

「準備に時間がかかってしまい、大変申し訳ございません、アインズ様」

 そこにいたのは、この頃アインズの中で、かつての仲間たちが遺していった忘れ形見という以上の存在になりつつある黒髪のメイド、ナーベラル・ガンマだった。

 

 

(どうしてこうなったんだ……)

 アインズはナーベラルに身体を洗わせながら、自身は現状を導いた原因について振り返る。

(あのお風呂券は、デミウルゴスが寄越したものではなかったのか?確か、守護者たちでオークションにかけられた品だったと聞いたような気がするが……)

 インクリメントからそれを渡されたとき、アインズはてっきり前回と同様にデミウルゴスが自分と『裸の付き合い』をしたくて『アインズ様とお風呂券』を送ってきたのだと早とちりしていた。しかし今、この状況から鑑みるに、あの券の所有者はナーベラルであったらしい。まず、よくそれを無事に勝ち取ることができたなと感心する。アルベドやシャルティアが怒り狂って妨害しそうなものだが。

(いや、二人は俺が断るだろうと考えたのか)

 前回、アルベドがアインズにして欲しいこととして提示したのは、『アウラやマーレが知らなくていいようなことまでする添い寝』であった。当然アインズはそれを却下したのだが、アルベドとシャルティアはその苦い経験から、デミウルゴスならばとにかく、ナーベラルと入浴を共にするのはアインズが是としないだろう、と推測した可能性がある。というか、それしか考えられない。アインズの頭には、ナーベラルを陰で嘲笑する二人の姿がありありと浮かんだ。

 そういう想像もあり、女性とのお風呂は流石に、と断ろうとするとくしゃりとその端正な顔を泣きそうに歪ませたナーベラルを突き放すことなどアインズにはできなかった。

(それにしても……当たってる!当たってるって!)

 アインズは、手ぬぐいでごしごしと一生懸命に主人の背骨を磨いているナーベラルの姿を浴室鏡越しにちらりと一瞥した。力を込めているからだろう、その顔は真っ赤になっている。バスタオルで身体を覆い隠している彼女の胸部は、大きく盛り上がっている。真祖(トゥルーヴァンパイア)の少女のような詰め物ではない、本物の果実のそれだ。こんもりとした双丘の間に深い谷が刻まれているのを見て、アインズは慌てて視線を逸らした。

 主人の身体の汚れの一切を落とそうと、一本一本骨を黙々と洗っているナーベラルは、手ぬぐいを持った両手をリズミカルに上下させている。その揺れに合わせて、ナーベラルの豊かな二つの膨らみがたぷん、たぷんとアインズの身体に勢いよくぶつかっている。主に仕えるメイドとしての彼女の本分が出ているのか、ナーベラルは骨を磨くことに夢中でそれに気がついていないようだ。

「……おふっ」

 背中に感じる幸せな感触に思わず声を漏らしてしまい、一切動いていない口を慌てて押さえるが、ナーベラルはそれにも気づかない。

 アインズは恥ずかしさで居ても立っても居られなくなり、

「もうよい」

とナーベラルの手を止めさせた。

「はっ。……まだお洗いできていない部分があるのですが、よろしいのですか」

「構わにゃ……構わないとも。ありがとう、ナーベラル」

 以前マーレにしたように、「今度は私がナーベラルの身体を洗ってやろう」と言いかけたが、アインズは寸でのところでなんとか堪えた。

(流石にセクハラっていうレベルじゃないだろ、それは!……いや、今更か)

「では、私は先に湯に浸かっている。お前も、自分の身体を洗い終えたら……来ると、いい」

 そう一方的に告げ、アインズは極力ナーベラルの方を見ないようにして、再びリラクゼーションバスにのろのろと腰を下ろした。

(精神の鎮静化が働いている感覚は確かにあるのに、どうしてこんなに落ち着かないんだ……)

 ナーベラルが部屋に来た時から、アインズが頼りにしているアンデッドの種族的特性(スキル)は問題なく発動していると、その身体が教えてくれている。だが、一時的に落ち着いても目の前に裸同然の美女がいるのだ。鎮静化が際限なく働き続けている今の状況も道理であろう。

 瞼を閉じてシャワーを浴びているナーベラルは、普段は後頭部でまとめている黒髪が、背中一杯に溢れるほど広がっており、その艶やかさはアインズの意識を惹きつける。なでらかな撫で肩、すらりとして均整の取れた手足は、神が造りたもうた美の極致だ。

(いや、実際は弐式炎雷さんが創ったんだけどさ)

 火力特化のドリームビルダーであるハーフゴーレムのことを思い出す。思い出して、アインズは急に弐式炎雷に申し訳ない気分になってきた。いや、どちらかというとそれを忘れてここまで来れたことが奇跡だったのだろう。

(うわあああ!本当に俺は一体何をやってるんだ!?ナーベラルと一緒に風呂に入るだなんて、それは弐式炎雷さんの創ったNPCを汚す行為じゃないか!うおおおお、穴があったら入りたい!)

 アインズがひどく自己嫌悪に襲われていると、直前までとは由来が異なる精神鎮静化の作用が働き、また自己嫌悪に陥り、また鎮静化が働き……とアインズが感情のウェーブに揉まれていると、身体を洗い終えたナーベラルが、どこかで見た覚えのあるぎくしゃくとした足取りでアインズの待つ巨大な浴槽へやって来ていた。

「……入れ」

「し、失礼いたしましゅ」

(あ、可愛い)

 のぼせたのかと思う程顔を赤らめる彼女に、先程自分も噛んだこと等忘れて、アインズがぼけーとそう考えていると、ナーベラルがその肢体を覆っていたバスタオルをはらり、と解いた。皮を剥かれた蜜柑のように、その滑らかな肌が露わになった。

 単に、器量が良いというだけでなく、眉が良い、眼が良い、鼻が良い、唇が良い。それに仕草や、その肉付きまでもが、アインズの好みにぴたりと来ている。

(あ、鼻血出そう)

 既に亡者と化しているアインズの身体からそのような生理的反応が現れる訳はないのだが、アインズはそう錯覚した。それほど、ナーベラルの身体が扇情的だったのだ。

 人間の鈴木悟の時分であれば意識を手放していただろう。アインズはアンデッドの身体になったことを心から感謝した。

 おっかなびっくり、といった様子で身体を縮こまらせて足から湯船にゆっくりと浸かるナーベラルを、最早アインズは一切視線を取り繕うことなく凝視していた。

(そういえば、守護者の皆も俺のお世継ぎが欲しい、みたいなことを言っていた気がするなあ。……いや、言ってなかったか?はあ、ナーベラルは本当に可愛いなあ。こんな子がアインズと一緒に風呂に入りたいって、そのアインズって奴は前世でどんだけ徳を積んだんだ?こんな子が俺のものだったなら――)

「……はっ!」

 精神が鎮静化され、思考の海に揺蕩っていたアインズは我に返った。

(だめだ、何を考えてる俺!冷静になれ冷静に!俺はアンデッドだ、性欲はないとは言わないが、殆ど枯れているはずだ!涅槃に入っているも同然!煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩の――)

 その時、既にアインズの隣で湯船に浸かり、幸せそうな顔をしていたナーベラルが、固まっているアインズに突然身体を寄り添わせて密着させると、

 

「あいんず、さま?」

 こてん、と首を傾げた。

 

(うおおおおおおおおおおおお!……うおおおおおおおおおおおお!)

「あいんずさま、どうかされましたか?」

(うおおおおおおおおおおおお!……うおおおおおおおおおおおお!)

「あいんずさまー」

(うおおおおおおおおおおおお!……うおおおおおおおおおおおお!)

 

「……はっ!済まない、ナーベラルがあまりにも可愛くてな――って、おい!どうした、ナーベラル!?しっかりしろ!」 

 アインズが精神鎮静化のループから抜け出すと、ナーベラルは顔が首の付け根まで朱を注いだように火照っており、アインズの肩にもたれかかってぐったりとしていた。

 

 

「ただの湯あたりですね、わん」

「――そうか。助かった、礼を言うぞ、ペストーニャ」

「礼などと畏れ多い。アインズ様に仕える者として、当然のことをしたまでですわん。……それで、なぜナーベラルはこのように?」

 ナザリックのメイド長であり、高位の神官でもあるペストーニャ・ショートケーキ・ワンコは、ベッドの上ですやすやと眠る二重の影(ドッペルゲンガー)を診ながら、そう主人に尋ねた。

 ナーベラルは病気から身を守るマジックアイテムを賜っており、本来ならば湯あたりなどとは無縁のはずだ。

「あー、それは、だな……」

 まさか裸で、何も身につけていなかったからとは言えないだろう。いや、入浴するのだから装備を脱ぐのは当然のことではあるのだが――自分の口からそれを言っていいものか悩んだアインズが、結局ペストーニャに事の顛末を話したのは、それから十五分後のことであった。 

 

 

  

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。