この素晴らしい世界を頑張って生き抜く 作:ゆかゆか
どうも。赤城祐樹17歳。一度死んで異世界転生してます。
突然ですが今俺は。
「……悪いことは言いません。アカギユウキさん。
……あなたは冒険者ではなく商人の道を歩むべきです」
冒険者になれるかどうかの瀬戸際に立たされています……!
「……おお……! ここが異世界か……!」
気付くと俺は、レンガの家が並ぶまさにファンタジー! というべき様な世界にいた。
お! 今獣耳の人が歩いてた! それにエルフ耳もいる1あれがエルフか!?
なんかやる気出てきたあ! 全力で働くぜ!
……さて、落ち着こう。
とりあえず異世界に来たならまず行くべきは冒険者ギルド的なところだよな。
……で、どこにあるんだろう。
ヤバい。いざ来た時のこととか考えてなかった。どうしよ。
改めて、自分の服装などを確認する。死んだときの服装……ふっつーのズボンとTシャツの上にパーカーというものだ。まあ外出した時そのまんまだしなあ。
ふとポケットに何か入っているのに気づく。
「なんだこれ……ん、一万……エリス?」
ああ、そういえばこの世界の貨幣単位の名前は『エリス』だったな。さすがはエリス様だ。貨幣の単位になるなんてすごいぜ!
確か一エリスが一円だったっけ。
某国民的RPGとかでも初期百Gくらいの所持金しかもらえないと考えると良心的……なのか?
うーん、でも人生の初期資金一万円と考えると絶望的な気もする。
まあいいや。とりあえずはその辺の人に話しかけてみよう。
「あー、そこの人! 冒険者ギルドの位置って知りませんか?」
「ああん? お前、誰に向かって口利いてるのかわかってんのか?」
あっやべ、いきなり地雷踏んじゃった☆
確認してなかった俺が悪いけど、金髪のめっちゃガラ悪そうな男に話しかけてしまっていた。
事前確認は大事だね!
「い、いや、そういうつもりじゃ……」
「なんだって? 冒険者ギルド? んなことも知らねーのかよ?
仕方ねーから特別にこのダスト様が教えてやるよ、その代わり代金は──いでっ」
「なーに初心者いじめてんのよ。というか教えるも何もそもそもあたしらも今から行くんだから一緒に行けばいいでしょ」
「んだよリーン、せっかくの臨時収入のチャンスだったのに……」
男の背後から青いマントを着た女の子が出てきて男の頭をはたいた。
なんだ、この光景?
「あーごめんね、ルーキーくん。
こいつはダストって言って、それなりに腕は立つんだけどいつもしょーもないことばっかりやってんのよ。
で、あたしがリーン。一応こいつとパーティ組んでるウィザードで、中級魔法までは使えるわ」
「あ、これは丁寧にどうも。
えーと、俺は赤城祐樹。この街には遠くから来たからあんまり勝手を知らないけど、一応冒険者を目指してる。よろしくな」
「アカギユウキ? 何だ、変な名前だなあお前」
「ちょっとダスト、失礼でしょ? ……確かに変わってるけど」
しっかり自己紹介を決めたつもりだったのだが。反応はそんなに芳しくない。
なんでだ。
「あっ、ひょっとして君って『ニホンジン』なんじゃないかな?」
「へっ?」
唐突に聞こえてきたなじみのありすぎる言葉。
「えーとね、君みたいな変わった格好で変わった名前の世間知らずの人たちがたまにいるんだけど、その人たちって自分のことをそう呼ぶって話でね」
「あー、そうなのか……てか世間知らずって」
「うん、それでニホンジンには王都で活躍するような有名冒険者も多くいるらしいのよ。それで君も冒険者になるのかなって」
「マジかよ。それなら恩売っとくべきなんじゃねえの?」
「いや、俺はそんな大層なもんではないぞ……」
転生特典もただの幸運だしな。戦いにおいてそこまで有利になるようなもんじゃない。
……あれ、俺ひょっとして外れの特典引いてない?
「……ここが冒険者ギルドだ。冒険者登録なら奥のほうの窓口でできるぞ」
「それにクエストの受注とか、あと食事もできるわよ」
「なるほど……二人ともありがとな」
「いつかなんか奢れよ」
「まったくダストは……まあ機会があったら一緒に冒険しようよ。そのときにはあたしらのもう二人のパーティメンバーも紹介するわ」
「ああ、本当にありがとう。いつか必ずお礼はするよ」
「おう、金でいいぞ金で」
無言でリーンがダストの頭をはたく。
なんだかんだでいいコンビ……なのか? この二人は。今リーンが言っていたことを考えると、いつもは四人パーティで行動してるのか。
……さて、俺はギルド内を見回してみる。
「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥に、お食事なら空いている席にどうぞー」
ウェイトレスが笑顔で出迎えてくれる。
なるほど、酒場が併設されているな。リーンが言ってたのはこれのことか。
そこかしこに鎧を着こんだいかにも重戦士といったような風貌の人やローブを着込んだ魔法使いのような人などがたむろしている。
すげえ……これが冒険者ギルドか!
さて、受付は四つあるが……一つだけ並んでるな。
まあそれも当然のことだろう。
なぜならこの列の先の受付をやっているのは美人のお姉さんだからだ!!!
うーん、ここに並んでもいいんだが……
いや、こんなんで時間をとるべきでもないだろうな。他のところでいいや。
「すいません」
「はい、今日はどうされましたか?」
「えーっと、冒険者になりたいんですが、遠くから来たので勝手がわからないんですよ」
「あっはい冒険者登録ですね。登録手数料として千エリス掛かりますがよろしいでしょうか?」
「大丈夫です……あっ、今一万エリス札しかないんですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。こちら九千エリスのお返しです」
初期資金の十分の一を使い果たしてしまったぜ。いやまあ別にどうせこれから稼がなきゃいけないんだが。
「さて、まあ知っているとは思いますが一応形式上説明させていただきますね。
まず冒険者はモンスターなどといった人に害をなすモノの討伐などを生業とする職業です。まあそういった討伐のみでなく、遺跡やダンジョンの調査などで生計を立てる人もいますし、何でも屋のようなものですね」
「そして、冒険者には各職業というものがございまして、それぞれに応じたステータスの強化やスキルの習得ができます」
おお、ワクワクしてきた。
まるで本当にアニメやゲームの世界にそのまま飛んできたようだ。
受付のお兄さんが俺の前に運転免許証のようなものを差し出した。
これが冒険者カードなのか?
「さて、こちらをご覧ください。
ここに表記されているのがレベルです。モンスターの討伐などをすると経験値が入っていくわけですが、通常であれば見えないそれをこのカードは可視化してくれます。
経験値が貯まるとレベルが上がってより強いスキルを習得できるようになったりするので、ぜひ頑張ってレベルを上げてください」
なるほど、本当にゲームのようなシステムになっているんだな。
ただ敵を倒しただけで強くなるというのはなかなか謎なシステムだよなとは思うが、まあ強くなるものは強くなるのだから仕方ないのだろう。
「ではまずはこちらの用紙に身長、体重、年齢などの記入をお願いします」
「はい」
えーと、名前はアカギユウキ、身長は170㎝……本当だ、断じて169㎝ではない。それで体重は57㎏で……黒髪で……
うん、まあこんなもんかな。
驚くことに日本語で書いていると認識していた俺の字は見事にこの世界の字へと変換されていた。
これが謎パワーか。
「はい、受理しました。
それでは、こちらのカードに触れてください。するとあなたのステータスがわかりますので、それに応じて職業を選んでくださいね。職業によって覚えられるスキルも変わるので、真剣に選んでくださいね」
「はい」
カードに手を触れる。
へへへ、ここからきっと俺の輝かしい冒険者生活が始まるんだ!
「アカギユウキさんですね。ええと……
な、なんですかこの幸運値!? 高レベルの踊り子やバードでもなかなか見られない数値ですよ!?」
受付のお兄さんの驚いた声が聞こえたからか、ギルド内の視線をそれなりに集めたようだ。
しかし俺の今の幸運値ってそんなにすごいのか。エリス様万歳。
……あ、飯食ってたっぽいリーンとダストもこっち見てる。いぇーい。
しかし、これだよこれ。
この俺の潜在能力でギルドがわっと沸き立って、それでそれで──
「……あ、でも、幸運以外は軒並み平均値より低いですね……
知力は平均的か少し上くらいですが、この魔力だと魔法職は厳しめかな……」
「……え?」
「…………悪いことは言いません。アカギユウキさん。
……あなたは商人の道を歩むべきです」
「なんでだああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「っぷ、くくっ……まあまあユウキ、元気だしなって」
「リーン、笑われながら慰められるとダメージが増すんだが」
「あーっはっはっは! ざまあねえな新入り! 俺は最初からお前みたいなのはダメだと思ってたんだよ!」
「ダスト、お前は容赦なさすぎるだろうが! というか俺お前が貸し作っといたほうがいいかなみたいなこと言ってたの覚えてるからな!?」
「ふーっ、ふーっ……いや、ごめんごめん。
だってあんなに大きな声出されて視線集めといて結局なれるのが『冒険者』だけだったって……ぷふっ」
「まったくだぜ。お前のその規格外に高い幸運。実はただのハリボテなんじゃねえの?」
「あの受付の奴は絶対に許さねえ……!」
変に期待持たせやがって。
ダメだったならダメだったではっきり最初から言ってくれりゃあよかったのに。
ていうかなんで真っ先に幸運見るかなあ。
他見てからならあんな反応にもならんかっただろうに……!
「はーお腹痛い……でさ、実際どうすんのユウキは?」
「くそ、めちゃくちゃ笑いやがって……どうって、冒険者やってくしかねえじゃん。商人やるにも元になる金ないし」
「冒険者やってくって……お前レベル1の
「……リーン、ダスト、俺たち友達だよな?」
「ごめん。さすがにそこまでのお世話はあたしたちにはできないかな」
「まったくだ。お前みたいな荷物持ちもままならなそうなやつに報酬分けるなんて御免だね。というかいつ友達になったよ俺らは」
「ですよねー」
まあさすがにそこまでしてもらおうとは思ってはいない。
むしろそこも手伝ってくれるなんて言われてたらさすがに断って……たかな……
いや、うん、たぶん断ってたな。うんうん。
「いやー、でも本当に幸運値はすごいね幸運値は!」
「『は』を強調すんな。本当に働いてるのかこれ? 今の状況すでに不幸でしかないだろ」
「それは確かにね」
「まあまあ元気出せや! 今日は奢ってやるよ最弱職!」
「くそ、途端に上からになりやがって……」
「ダストは他人に奢るより先に借金返してよね。どうせ奢るってのもツケででしょ」
「いや、将来的にこいつに返してもらえやいいだろ」
「お前奢りの意味知ってる!? というかその最弱職に何の期待をしてんだよお前は!」
「まあまあそう邪険にしないで、多分これでもこいつなりに気を使ってんだと思うよ?」
「……本当か?」
「いや、こんくらいしとけば警察にお世話になった時の保証人候補増えるかなと思ってな。最近もうリーンやテイラーしか来てくれねえしよ」
うわあ……ちょっと見直しかけた俺がバカだった。
いやでも、正直俺の良識が全力でそれはダメだと訴えかけてきてるだけで、正直ダストとは仲良くなれそうなんだよな。
今はまだ異世界転生によるテンションの高さも相まってごまかせてるだけで。
「正真正銘クズだよお前は! …………とも言えねえかもしれないんだよな」
「ち、ちょっとユウキ! いくら困っても犯罪はだめだよ!? というかユウキのステータスじゃ返り討ちに……」
「ちげえよ! いや違わないけど! てか返り討ちに遭う前提かよ!
……今はまだよくても、冬になったら金なきゃ下手すりゃ凍死もんだろ。そうなったら死ぬよりかは軽犯罪犯して牢屋に入ったほうがマシかなって」
「お、そこに気付くたあ、案外目の付け所は悪くねえな」
「うっわあ……」
だすと の こうかんど が 1 あがった!
りーん の こうかんど が 10 さがった!
「ま、まあその方法はどうかと思うけど、冬を越す方法を考えなきゃいけないのは本当だね。
冬って、寒いのもそうだけどそのせいでモンスターの活動が鈍くて全然収入ないから」
「おいおい、そう言ってももう冬は結構近いぜ。間に合うのかよ?」
「冬ってそんなにやばいの? ……マジで?」
「「マジね(だな)」」
……拝啓、エリス様。
俺、異世界で冬を越すことなく貴女に逢いに行けそうです。
そして疑いたくはないのですが、授かった幸運は、ちゃんと俺を守ってくれているのでしょうか……?