この素晴らしい世界を頑張って生き抜く 作:ゆかゆか
「ふ、不束者ですが……これから末永くよろしくお願いいたします……!!」
拝啓エリス様。ご報告したいことがあります。
ーーパーティメンバー探してたら、お嫁さんができましたーー
「はあ…………」
俺は今、ギルドのクエスト募集版の前でため息をついていた。
ジャイアントトードの討伐……食われたら終わり。
ゴブリンの群れの討伐……一人じゃ無理。
一撃熊の討伐……なめてんのか。
グリフォンとマンティコアの縄張り争い……これ貼る場所間違ってるよね?一応駆け出し冒険者の町って聞いたぞここ……
特にクエストの更新がなかったのを見届けると、取っておいたパーティ募集掲示板の近くの席に座りボーっとする。
流石に最弱職一人じゃ無理だと思いパーティ募集をしたのはいいのだが、まあ当然来てくれる人がいるはずもない。
当たり前だ。だって俺も入りたくねえしレベル1の最弱職だけのパーティとか。
「ようユウキ。相変わらず大人気だな」
「ダストか……これでそう見えんなら素晴らしい慧眼をお持ちだな。あと貸せる金はねえぞ」
「本気にすんなバカ。それに流石にお前から金借りるほど落ちぶれちゃいねえさ」
「それはひょっとしてギャグで言ってんのか?」
なぜかは知らんが、ちょこちょここいつに絡まれている。
この間の冬場投獄計画の話で同類と思われたのかもしれない。
「コラダスト、またユウキに絡んでるの?
あんたといつもつるんでると思われたらただでさえ厳しいユウキのパーティ結成が絶望的になるでしょ?」
「リーンは俺を慰めたいのか助けたいのかバカにしたいのかどれなんだ?」
「近くで死なれたらさすがに寝覚め悪いけど積極的に助けるほどの義理はない」
「さいですか……」
なんだかんだ今は土木作業などのバイトで食いつないではいるが、マジでこのままだとまずい。
今一番お世話になっている現場の作業がもうすぐ終わってしまうのだ。
そうすると俺は最大の収入源を失うわけで……
ああああ冬に馬小屋で凍死するなんて嫌だああああああああああ!
「……冒険者って厳しいんだな。俺はもっとこう、薬草の採取とかそういうクエストがあってそういうので生活できるもんだと思ってたよ」
「そういうのもないわけじゃないんだけどね。さすがにそれで生きていけるほどの量はないからなあ」
「そもそもお前のステータスじゃ森の薬草採取でも命掛けだろうな」
「いやーさすがに俺そんなに弱くは……えっなにその目、マジで?」
「「マジね(だな)」」
「……」
え、本当に?
いやいや、いよいよもって生命の危機だぞこれは。
どうするんだこれ……
「さすがにやべえな。本格的にパーティ組んでくれる人探すか」
「あてはあるの?」
「ない。いや、正確には一つだけあるにはあるんだけど……怖いというかなんというか」
「えっ、そんな心当たりがあるの!?そんなの怖いとかなんとか言ってる場合じゃないよすぐ行かなきゃ!どれどれ、募集掲示板のどの辺!?」
俺は無言で目をそらしながら掲示板の特定の方向を指さす。
そこにはーー
『パーティーメンバー募集してます。優しい人、つまらない話でも聞いてくれる人、名前が変わっていても笑わない人、クエストがない日でも、一緒にいてくれる人。前衛職を求めています。できれば歳が近い方。当方、最近十三歳になったばかりのアークウィザードで―――――』
「うわあ」
「……な?」
「パーティメンバーというより人生のパートナーの募集じゃねえか」
「というかこれこんなに個人情報書いてて大丈夫なの?悪用されない?」
「……へぇ、女でアークウィザードか」
「今リーンの目の前にまさに悪用しそうなやつがいるな」
ダストはリーンにはたかれた。
痛そうだが同情はしない。
「……でもチャンスだよユウキ。ちょっと地雷臭いけど紅魔族のアークウィザードらしいし、腕は確かだよたぶん」
「紅魔族?」
「ああ、ユウキは知らないんだっけ?
……紅魔族って言って、生まれつき魔力が高い種族がいるんだ」
「へえ、そうなのか」
「まあ、変わり者が多いんだけどね」
「それはこの募集見てりゃわかる」
「あはは……でもほんとにチャンスだと思うよ?紅魔族の人って性格で敬遠されがちだけど実力は高い人が多いし」
「……じゃあリーンたちのパーティで雇ったりは?」
「あたしたちはほら……一応あたし中級魔法使えるウィザードだもん」
……まあリーンの言う通りなんだよなあ。
別に、この募集の彼女が地雷臭いとか言うつもりはない。
それを言い出したらそもそも俺は見えてる核地雷みたいなもんだぞ。
ただ怖いだけだ、断られるのが。
断られる確率のほうが明らかに高いんだから。
「……迷惑になるんじゃとか、断られるだろうなとかいろいろあるだろうけど、だからって待ってるのは意味ないと思うよ?」
リーンに痛いところを突かれる。
そうだよな。俺にもう失われるプライドなんてないし。
失えるのは命だけとすら言えそうな状況になりつつあるのだ。
というかなんだよリーンのやつ。
そこまでする義理ないとか言いつつめっちゃ面倒見てくれるじゃん。惚れそう。
「ありがとな、リーン。お前にはいつか必ず恩を返すよ」
「おい、俺にもちゃんと返せよ」
「うん、もしユウキが商人として大成したらよろしくね」
「ああ。……って俺が冒険者として大成する確率0かよ!」
「あははは!」
笑われつつ席を後にして、あのパーティ募集をしている一人の少女のもとへ向かう。
……え、うそ、なんかめっちゃ睨まれてない?
助けてリーン、エリス様。ユウキちゃんくじけちゃう。
……い、いや、勇気を振り絞れ……!
「あ、あの」
「ひゃ、ひゃいっ!」
いやなんでこの子のほうが挙動不審なんだよ。
だ、だが言ってやれ俺!
「そ、その、俺は赤城祐樹。最弱職の冒険者なんだが、もし良かったら俺とパーティを組んでくれないか?」
「え……嘘……私が、パーティに誘われてる……?
ゆ、夢じゃないよね……いやきっとこれは夢……目を覚ましたらきっと……」
「あ、あのー?」
なんか明後日の方角を向いてブツブツ呟きだした。
……というか、自分から募集の貼り紙出しておいて夢も何もないだろう。
……しょうがない、話を聞いてもらうためだ。
俺は目の前の女の子の肩を掴んでこちらを向かせて、
「夢なんかじゃない。君の力が俺には必要なんだ。
その、なんだ……俺は力不足かもしれないけど、君の助けに頑張ってなりたいと思っているので、とりあえずパーティを組んでみてはくれないかな?荷物持ちでも何でもやるから……」
我ながらよくここまですいすいと言葉が出てくるものだなと思う。
しかも言ってる内容かなり情けないし。
……俺、どんどん人として大事なものを失ってる気がするなあ。
……あれ、女の子の様子がおかしい。なぜか肩を震わせて……って泣いてる!
「……っ、ぐすっ……」
「い、いやちょっと待って。
そんなに嫌がられるとは思ってなくてだな、えーとそのごめ……」
「……しくお願いいたします」
「えっ?」
「ふ、不束者ですが……これから末永くよろしくお願いいたします……!!」
「うん一回ちょっと落ち着こうか」
え?ちょっと待て。今俺たちってパーティを組む交渉をしていたよな?
別に縁談とかお見合いとか、そんな話じゃなかったよな!?
「ま、まあいったん落ち着いて話をしようぜ?なんか勢いだけみたいになっちゃって
ちゃんとした自己紹介もできてないし……」
「自己紹介……そうですよね、ごめんなさい。
パーティメンバーができると思ったら私、とっても嬉しくて……でもそれで自己紹介もできなくなっちゃうようなのいりませんよねごめんなさい!」
「違うから!別にそういう話じゃないから!自己紹介できないから解散ってどんなパーティだよそれ!!!」
あ、頭痛くなってきた……本当に大丈夫なのかこの子。
「え、えーと!私、ゆんゆんと申します!職業はアークウィザードで、中級魔法が使えます!」
「ゆんゆんか、さっきも言った気がするけど、俺の名前は赤城祐樹だ。
えーと、その……最弱職の『冒険者』をやってる」
「はい!よろしくお願いします!ユウキさん!」
「へっ!?」
「ど、どうしたんですかユウキさん?」
「い、いや俺比喩とか生業とかでなく職業の冒険者だよ?それにレベル1だし。いいのか?」
「私も、パーティ組むのはこれが初めてですしまだレベルもそんな高くないですし他の紅魔族のみんなと違って中級魔法しか撃てないですから、大丈夫です!」
「大丈夫な要素ある!?
聞けば聞くほど俺とゆんゆんの格の違いを見せつけられてる感じがするんだが!?」
「そ、そんなことないです!」
「そ、そうか……じゃあパーティ結成ってことで、明日から本格的に……」
「は、はい!」
かなり遠回りをしてはしまったが、なんとか念願のパーティメンバーを手に入れた。
とりあえずゆんゆんとは明日の昼間にギルドの酒場でまた集合するということで今日は解散した。
しきりに同じ宿屋で寝泊まりしたがるので、自分はお金がないことと男女パーティでそうすることの異常性を必死に説いて説得した。疲れた……
そして報告のためリーン達の元へ戻ると。
「結婚おめでとー、ユウキ」
「最弱職の分際で幼妻娶るとはな、なかなかやるじゃねえか」
「はっ倒すぞお前ら」
「アハハ……でも、気づいてなかったの?ゆんゆんさん、結構大きな声出してたじゃない」
「えっ」
「ああ、こっちにまで聞こえてきてたぜ」
……あそこのテーブルからここのテーブルまでは、結構な距離がある。
それで聞こえていたということは?
「あ、ああ、ああああ」
「明日の酒場の話題は『紅魔族を誑かした冒険者の男』で持ち切りだろうな」
「うわああああああああああああっ!?」
「まあまあ落ち着きなよユウキ、まだゆんゆんさんは十三歳でしょ」
「そ、そうだ!法律的にまだ三年は結婚できないはず!それなら何らかの誤解だという風に……」
「三年?一年だろ」
「え?結婚できるのって女性は十六から……じゃないの?」
「ユウキって変なところで常識ないよね。
少なくともこの国では十四歳から結婚は可能だよ」
「じゅ、じゅうよん!?」
まだロリじゃねえか!?なんだよこの国ロリコンの巣窟かよ!?
というかまずいじゃねえかそれ!
「ということはゆんゆんはあと一年で結婚出来て……」
「まあ、断片的にあんな声が聞こえてきたら、そういう可能性は考えられるよね」
「実際どうかは置いといて、からかいのネタとしては最高級だな」
「そしてそこから派生して根も葉もない噂が生まれてくるんですねわかります」
……本当に俺の幸運働いてるんだろうか。
ひとまずはあの変な子……ゆんゆんと良好な関係を築くところからだ。
……でも、聞いたところによると紅魔族って、好戦的で中二病君なのが多くて、センスが壊滅的というのが聞いていた話だが、ゆんゆんはそんなことはなさそうだ。
ーーまあその代わりに別の点で問題抱えてるけど。
……まあ、パーティが作れたのは本当なんだから。
頑張ってみようかなと、少しは思えた。