この素晴らしい世界を頑張って生き抜く 作:ゆかゆか
さて、いよいよゆんゆんと活動する最初の日だ。
個人的にはこれが最初で最後にならないことを切実に祈っている。
だって俺最弱職の冒険者(レベル1)だよ?
絶対足手まといだよ?
前衛職募集って言われてたけど前衛立てないよ?
いや後衛でも何も出来ないけどさ。
昨日のうちにギルドの受付の人などにクエストを受ける時のことは聞いておいた。
その時「一人で受けるんですか!?」と驚かれたのでアークウィザードがパーティを組んでくれたと伝えると可哀想なものを見るような目で見られてしまった。
妄想ちゃうわ!!!!!
とりあえず最低限の装備……といっても武器だけだが……はギルドが貸してくれるらしい。
今の所持金かつ全財産が一万二千エリスである俺にとって、このことは非常にありがたかった。
高えんだもん装備品。
「いらっしゃいませ! お仕事なら……あっ。
空いている席にお座りください!」
「俺はクエストを受けることすら許されてないのかよ!
……いやまあ、座るけど」
最近では酒場のウェイトレスさんからもこんな扱いを受ける始末だ。
本格的にまずいよなあ……
まあとりあえず飯食ってその後支度もして……と思って集合時間の二時間前にギルドに来たのは良いんだが……
席を見渡していると、なにやら一人で大テーブルに座って色々なボードゲームやらなんやらを展開している少女の姿が見えた。
……というかアレ、絶対ゆんゆんだよな。
ほらなんか俺と目線あったらめっちゃこっちチラチラ見てくるもん。
それならもうさっさと声掛けて欲しい。
視線が気になって仕方ない。
……いや、まあパーティ組むんだから一緒に飯食うくらい当たり前だよな。うん、きっと。
今日はクエストではゆんゆんにおんぶにだっこになるだろうし、せめて朝飯の一つくらい奢ろう。金ないけど。
「おーいゆんゆん、奇遇だな」
「は、はいっ! すごい偶然ですね! ユウキさんも今来たところですか?」
「ああ、丁度朝飯にしようと思ってたんだが、よければゆんゆんも一緒にどうだ?」
いやお前、「も」じゃねえだろ、絶対俺のこともっと前から待ってただろ。
と言っても話をこじれさせるだけだと思うのでとりあえず黙っておく。
「い、良いんですか!? 私なんかと一緒で……」
「いやいや、パーティメンバーだろ? 飯くらい一緒に食おうぜ」
「パーティメンバー……私と……え、えへへ、そうですよね!」
可愛い。
ちょっと挙動不審で思い込みが激しそうなところはありそうだがなんでこんな娘がぼっちで……いや、こう見ると結構問題あるな?
まあ俺とパーティ組んでくれるような人だしな……
「それで、今日はどうする? 本来の集合時間までは全然あるけど飯食ったらさっさとクエスト行くか?」
「は、はい! それも良いと思うんですけど……その……」
「どうした?」
「いや……その……よければですけど、クエストに行く前に、えーと、わ、私と遊んで欲しいなって……」
「うん、別に良いけどその挙動不審と誤解を招きかねない表現は出来れば抑えてくれると助かる」
「ご、ごめんなさい!」
「ああいや、そんな別に怒ってるとかじゃなくて……
一応ジャイアントトードの討伐に行く予定なんだが、それで時間的に大丈夫か?」
「ジャイアントトード五体の討伐ですよね? それなら夕方近くに出発しても問題無いと思います」
「ま、マジか……あーでも、昨日も言ったように俺、最弱職だから。
多少余裕は見て動きたいな。ほら、俺たち組むのは今日が初めてだし」
「そ、そうですね……」
……出来てるよな? 俺会話出来てるよな?
俺も元の世界では流石にゆんゆん程ではないが人付き合いがそんなに得意ではなかったので不安だ。
女の子との会話とかわからねーよ。
「そ、そういえばユウキさんは冒険者なんですよね? なんのスキルを習得しているんですか?」
「あー、今は片手剣スキルと初級魔法だけだな。俺、まだレベル1だから」
他の職業と異なり、冒険者は他人にスキルを教えてもらってようやくスキルを習得する権利を得られる。
俺は初期にスキルポイントを2持っていたので、スキルポイント1で取れそうなスキルをダストとリーンにビールらしき何かを奢ることを条件に教えてもらったのだ。土下座して。
剣と魔法の組み合わせってまさに王道って感じだしな。
……初級魔法には基本殺傷力は無いらしいが。
本当にあの二人にはめっちゃ助けられている。
今度仲間のアーチャーのスキルも見せてくれるって言ってたな。ほんとさまさまだ。
「そうなんですね、私は昨日言った通り中級魔法を取っています」
「らしいな、期待してる」
「そそそそそんな! わた、私に期待なんて……」
「そこで挙動不審にならないで! ……それじゃあ注文しようぜ。
その並んでるボードゲームやトランプで遊ぶための時間も欲しいし」
というかこの世界トランプあるのね。
「それではテレポートでクルセイダーを前に出しますね」
「ぐぬぬ、これじゃあ攻撃が届かないな……
やっぱずるくないかテレポート」
「せ、正式なルールですよ!」
「納得いかねえ……冒険者をこっちに移動させるぜ」
適当に朝飯を終え、俺たちは今、チェスのような謎のゲームをしている。
しかしこのゲームがなかなか曲者で、テレポートだのなんだの複雑かつ壊れたルールが大量に存在するのだ。
駒の名前はどうやら冒険者たちの職業をもとにしているようだが、アークウィザードが明らかに強いし、正直アークプリーストとかはあんまり息していない。
冒険者? まあ元となったのが最弱職だし……
「ふふふ、追い詰めましたよユウキさん、これでもう詰みです!」
「甘いなゆんゆん。よく見ろアークウィザードの配置を」
「アークウィザード? ……あっ! ま、まさか!」
「その通り! さあ刮目せよ! 『エクスプロージョン』!!!!!」
叫ぶと俺はゲーム盤をひっくり返す。
これは俺の頭がおかしくなったとか負けたくなさ過ぎて無茶苦茶やったとかそういうのでは無く、ルールブックにも書かれた正式に認められた行為だ。
よし、これで俺の一敗三分だ。
……おいそこ、一回負けてんじゃねえかとか言うな。
初回プレイの時の負けは仕方ないだろ。
「またエクスプロージョンにやられた……もう一回! 次は、次は勝ちます!」
「いやもう一回負けてるけどな俺」
だが一度コツをつかんだゲームで俺は負けることはないぜ!
……勝てもしないけど。
「『エクスプロージョン』!」
「『エクスプロージョン』!!」
「『エクスプロージョン』!!!」
「『エクスプロージョン』!!!!」
「わああああん!! やっぱりこのルールおかしいわよ!」
「それに関しては100%同意するわ。
……なあ、このゲームいつまで続けるんだ?
そろそろ出発してもいい時間じゃないかなーと思うんだが」
「えっ、もうそんな時間ですか!?
す、すいません! やっと他の人と遊べると思ったら嬉しくって……」
外はもうすっかりオレンジ色に染まっている。
朝飯食べてから割とすぐ初めてついでだからって昼も食べてまた遊んで……
いくらなんでも遊びすぎた。何時間やってんだ。
「よし、じゃあ出発しようぜ」
「えっ? 申請とかは……」
「なんとなくこうなりそうだから先に済ませてたんだよ」
「そうなんですね! ありがとうございます!」
「おう」
そうするとゆんゆんは持ってきたボードゲームなどをしまい始めた。
……そんなに大きな袋を持っているようには見えないのだが、ひょっとしてあれも魔法の力だったりするのだろうか?
そして俺たちはギルドを後にして、ジャイアントトードの生息する町外れの平原へと向かう。
よし、はじめての
やったるぞ、このクエストでゆんゆんに良いところを……!
第一村人……じゃないジャイアントトード発見!
いやなんだよあれでかすぎるだろ! こんなん勝てるわけが……
「あ、見つけましたよ! ユウキさん! 『ファイアーボール』!」
巨大蛙はあっという間に炎に包まれてしまった。
……いやいや、そうだ、見た目より弱いんだろうきっとあいつは。
そうだ、良いところを!
よし、あそこにいる二匹を……
「『ライトニング』! 『ファイアーボール』!」
一匹は稲妻に貫かれ、もう一匹は先ほどのように炎に包まれた。
……良い、ところを……
そうだ! 俺もやればできるんだ!
そして俺は貸し出されたショートソードを構え蛙に突撃し、
死闘を繰り広げた末に蛙の頭に斬撃を複数回浴びせなんとか勝利した。
あ、危なかった。何回か飲み込まれそうになったぜ……!
……ちなみに、その間にゆんゆんは何の問題もなくジャイアントトードをもう一匹仕留めていた。
「それではクエスト達成報酬にジャイアントトード七体の回収分併せて、十三万五千エリスになります。
お疲れさまでした」
「……ありがとうございます」
俺は死んだ目で答え、ゆんゆんが待つ酒場のテーブルへと向かう。
そしてすぐさまゆんゆんに向かって土下座する。
「誠に申し訳ありませんでしたああああああああああ!!」
「え、ええっ!? どうしたんですかいきなり土下座なんかして!
か、顔を上げてください!」
「……パーティメンバーになったというのに足しか引っ張ってないので……」
「そ、そんなことないですよ! ジャイアントトードを三匹討伐したじゃないですか!」
「……一匹はゆんゆんが他を瞬殺している中死に物狂いでやって死にかけてようやく討伐。残り二匹はゆんゆんにトドメ直前にまで弱らせてもらってだけどな……」
流石にそれで経験値をもらうのはどうなのかと考えたのだが、これは紅魔族の間で『養殖』と呼ばれるれっきとしたレベル上げ方法ですから、とゆんゆんに固辞されたので結局受け取ってしまった。
……こんなパーティメンバーで本当にごめんなさい……
その甲斐もあり、見事俺のレベルは4へと上がっていた。
……うう、死にたい。
「だ、大丈夫です! レベルさえ上がればユウキさんもどんどん強くなれますから!
だから今は私を頼ってください。わ、私たち……その、パ、パーティなんですから!」
「……本当にごめんなさい……」
地雷っぽいとか重そうとかパーティ募集と出会い系間違えてんのかとか勝手に思ってて本当にごめんなさい……
この娘めちゃくちゃ良い娘じゃん。本当になんで今までぼっちだったのさ。
「それで、報酬は……」
「全額持って行ってくれ」
いくら俺が貧乏とはいえ、流石にこのお金を受け取る気にはなれない。
これは正真正銘ゆんゆんが100%貰うべき報酬であると思う。
「そ、そんなわけにはいかないです!
半分こ! 半分こしましょう!」
「いやいや、俺なんかがもらうわけにはいかないんだってマジで」
「……わかりました。そこまで言うなら私が受け取りますけど……
じ、じゃあその代わり、私と同じ宿屋に泊まってください!」
「……はい?」
何が「じゃあ」なのか一切わからないんだが。
どういうことなんだ……?
「ユウキさん、お金がないって言ってたじゃないですか。
……でも、報酬はもらえないというなら報酬は私が受け取りますので、せめて食費とか宿代とかは出させてください」
い、いや、それが同じ宿に泊まる理由にはならないと思うんだが。
それにその提案ってそもそも……
「ま、待ってくれ!
……そもそもゆんゆんは、明日からも俺とパーティを組んでくれるのか!?」
あの醜態で完璧に愛想つかされたと思っていたんだが。
というか正直我ながらパーティを組み続けるという選択肢は常軌を逸していると思うが。
「だ、だって……ユウキさんは私の初めての人ですし……」
「うんちょっと待とうかだからそういう言い方やめてって言ったよな!」
「えっ? …………っ!!!
ご、ごめんなさいごめんなさい! そういう意味じゃなくって……!」
さすがにこれは自分で気づいたのか顔を真っ赤にして弁明してくるゆんゆん。
多分(パーティを組む)初めてのってことなんだろうけどさあ!
夕方に出発して帰ってきたため今は夜。
酒場はまさに賑わっている時間帯だ。
こんなんを聞かれてあれこれと噂されたりとか、俺は嫌だし多分それ以上にゆんゆんのためにならない!
「ゆ、ユウキさんもレベルが上がって転職したりすればちゃんと戦えるようになりますから!」
「だからってそれにゆんゆんを付き合わせるわけには……」
「そ、それは大丈夫ですから!」
「でもだからって宿とかまで世話になるわけには……」
「き、昨日はああ言ってましたけど、やっぱりパーティを長い間組むなら情報の共有とかはしやすいほうがいいと思うんです!
……また一緒にゲームもしたいですし」
……どんどん断る理由がなくなっていく。
いやなんというかこの提案をそのまま受け入れるのは罪悪感がやばい。
ぼっちに付け込んで利用するなんてことは、さすがに俺の良心が許さない。
でも、非常にありがたいお誘いなのは違いないし、これに乗らないと俺が明日からちゃんとした生活を送れるか怪しいのも事実で。
……くっ、で、でも……うぅ……
「……わかった。これからもよろしくな、ゆんゆん」
……俺はこの瞬間、自分がどうしようもないクズであることを自覚した。
すまないダスト……俺、お前と同類どころかお前より酷い奴だったかもしれねえわ。